滲む街の灯
団体の元役職が集まり忘年会を兼ねて旧交を温めた。
飲むほどに酔うほどに盛り上がって、いつ果てるともわからない談義が続く。
イタリア料理と美味しいワインに酩酊したので、ころ合いを見計らって中座した。
クロークで「黒革のハーフコートを」と言って渡されたものを無造作に来てタクシーに乗り込んだ。
タクシー等で帰った翌朝は大概カミさんに勤め先まで送ってもらう。
今朝 車のキーをコートのポケットに探した、確かにポケットにいれた筈のキーが無い。
ポケットを探しているうちに、コートの取り違いに初めて気付いた、なんてことだ、私が昨夜着て帰ったのはイタリア製の高級品であり、本来着て帰るべきものは量販店の特価品である。
この高級品を身にまとうのは誰か?すぐに察しがつき、電話した。
案の定である、これから名古屋に出張するというので「すぐに届けましょう」と言ったら「着るものはたくさんあるから、ついでの折に事務所に届けておいて」と達人は少しも慌てない。
寒い夜をコートなしで帰った達人を思うとこちらの身が縮んだ。