自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

道央の旅(6) ~ワンダー! この動物園①~

2016-06-08 | 旅行

旭山動物園。この名はずいぶん知られています。来園者の減少で廃園が検討されていたのが,劇的に復活・再生を果たした施設で,北海道を訪れる人を魅了する要素をたっぷり秘めた動物園となっています。ということは,子どもにもおとなにも魅力的だということでもあります。

訪れるすこし前のニュースで,大阪の天王寺動物園が入園者数で旭山動物園を抜き,全国で〇位になったと報道していました。「それでどうしたの?」と思うのですが,比べようのない話だと思うのです。経営母体の旭川市と大阪市の人口,人口密度を比べると,雲泥の差があります。

人口は33万9000人で全国72位(大阪市は269万1000人で全国2位)。人口密度は454人で全国381位(大阪市は1万1952人で全国5位)。以上のデータは昨年度の国勢調査値によるもので,全国790市の比較表から抜粋しました。

こんなわけですから,マスコミが報じるようなかたちで総来園者数で比較してみても,意味があるとはまったく思えません。むしろ,天王寺動物園の課題が浮いて見えてきます(ごめんなさい)。従前のやり方を単調に繰り返しているだけでは,さっぱりダメ(なんでしょうね)。

多くの動物たちを檻に入れて金網越しに覗く展示がこれまでの動物園だったのに対して,旭山動物園は展示する動物を絞り,動物そのものが生きている環境を大事にし,加えて見せ方を徹底して工夫しています。展示物はほとんどが手書きで,たっぷりと貼られています。飼育員の情熱が伝わってきます。こんなことを書いて他園には申し訳ありませんが,比類なき動物園としかいいようがありません。まあいってみれば,ふつうの動物園はデパート型,ここは個人商店型ぐらいの違いがあります。


「わたしたちのミュージアムも,そんな独自色を打ち出せるように奮闘しなくちゃ」とついつい感じて元気をいただきました。それにしても,なんと刺激的な! 以下,こころに残った展示をいくつかご紹介します。

チンパンジー館。アクリル製の窪みでくつろぐチンパンジーをすぐ脇から,というよりも肌に触れるぐらいの感覚で観察できます。

 
からだが迫ってきます。指の動きの一部始終が手に取るように飛び込んできます。子どもを抱いて,チンパンジーの親はすっかりご機嫌!


キリン館。広いスペースを行き来するキリン。下からも,キリンの目線の高さからも,観察できます。周りからぐるっと見ることができるのです。 


カバ館。アクリルを通して水中のカバの様子がおもしろいように見えます。水の中で糞をしても,常時水を浄化するシステムが確立しているので,大丈夫。観察者は,ぐるぐる回っているカバを待ち構えています。回って来る度に,驚きの声が挙がります。 


水槽の下からも見上げて観察できます。からだの下がよく見えます。観察者は思わず口を開けて見入ります。カバも気持ちよさそう! 

 


テナガザル館。窮屈な飼育舎とは打って変わった開放的な空間。飼育舎から逃げ出さないかなあと心配するほど,のびのびできそうなつくりです。 

 

 
園のチラシを見ると,表紙にはこんなことばが上品な大きさで書かれています。「伝えるのは,命」。この理念が一貫して伝わってきました。 

 


ジャコウアゲハ観察記(その353)

2016-06-08 | ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハは今,成虫が姿を消して,終齢幼虫や蛹の時期を迎えています。

アゲハの庭園で,これまでにないほどの蛹が見られます。ウマノズズクサを大量に食べた分,草だけでなく木の枝やトタン板にもいっぱい付いています。


細い蔓をうまく利用して前蛹になった個体があります。


このトタン板には10個体以上も付いています。ウマノスズクサからは比較的近いところにあるのですが,「よくもマア,ここまで歩いて来たものだなあ」と感心しきり。わたしたちの感覚でいえば,野を越え山を越え,谷を越えてついにここに至る,そんな感じです。いのちを繋ぐ営みにとって少々の障害など苦にならないようです。


一つひとつを見ると,脱いだ皮を付けたままの個体があります。


前蛹の個体もあります。


たくさんの個体がいると,成長段階にも差が出てきます。羽化する頃は,続々と変化が観察できるでしょう。なんだかわくわくしてきます。