キンカンの木のあちこちに,クモがいます。いくつかの種類がいます。そこを訪れる昆虫が多いからです。葉の色に近い色でもしていれば,昆虫の目に付きにくいはず。油断している隙に,パッと襲いかかるともう逃げられません。
昆虫が襲われるのは自然の摂理なのですが,なかにはクモが捕らえられる例があります。そうそう目にするわけではありませんが,珍しい光景なので印象に残りました。わたしが葉を手に持って写しても,クモは平気でした。あくまで ここにいるぞと決意表明しているかのよう。状況を考えると,下の白いものが卵の入った卵のうなのでしょうか。そうだとすれば,卵を守る母親の意志が現れていることになります。
長い脚が,長い脚に完全にとらわれています。でも,ほんとうはこの母が脱皮して捨てようとしている殻なのかもしれません。でも,成体が脱皮するのかなあ。殻の脚にある棘が,葉はそっくりで気になるのです。もしそうなら,今回のわたしの解釈はまちがっていることになります。
大きいのが勝つに決まっているような場面です。
翌日見ると,同じところでじっとしていました。指をからだに触れても動じる気配はありません。これも子のため。堂々たる母の姿です。それで,口の辺りに持っている物体は前日の獲物の一部のようです。いったい,なぜ?
生まれたり,食べたり,卵を守ったり,……,そんないのちのドラマがゆたかに,途切れることなく続いてゆきます。いつも「ほほーっ!」とこころを揺さぶられます。