6月14日(金)午前8時30分に産卵。その日の卵の様子は下写真。葉の表面に産み付けられたものです。かたちは球形,表面は薄い黄色です。
上の下写真をトリミングしてみると……。
葉との接触面は粘液で固定されていることがうかがえます。粘液はすでに固まっています。
6月16日(日)。午後8時30分。産卵後,ちょうど2日と12時間。
斑模様が浮き上がり,やや変色しかけている感じがします。右下に,黒っぽいものがほんのすこし見えます。推移は順調だと思われます。
6月14日(金)午前8時30分に産卵。その日の卵の様子は下写真。葉の表面に産み付けられたものです。かたちは球形,表面は薄い黄色です。
上の下写真をトリミングしてみると……。
葉との接触面は粘液で固定されていることがうかがえます。粘液はすでに固まっています。
6月16日(日)。午後8時30分。産卵後,ちょうど2日と12時間。
斑模様が浮き上がり,やや変色しかけている感じがします。右下に,黒っぽいものがほんのすこし見えます。推移は順調だと思われます。
6月4日(火)午後10時。孵化後8日と5時間が経過。葉で休んでいるところを撮りました。数日間,活動後は同じこの場所に戻って休むことになります。
6月5日(水)午後8時。孵化後9日と3時間が経過。下写真中の右の葉で誕生しました。木の葉を食べ尽くしていきそうです。食べると,また元の場所に移動して休みます。
6月6日(木)午前6時。孵化後9日と13時間が経過。前より食痕が大きくなりました。
見ていると,糞をしました。
6月7日(金)午前7時。孵化後10日と14時間が経過。小さいなりに風格の感じられる姿をしています。何齢なのか,調べないとわかりません。脱皮するのを見届けるのは不可能です。もっとも,日数からすると2齢あたりではないでしょうか。
『キアゲハ,ハナウドに産卵(孵化後 ~その10~)』の続き話をしましょう。
幼虫は尾端固定用の絹糸を出し終わると,からだの向きを上に変えました。そうして,尾端をこれらの糸にくっ付ける作業に入ったのです。
この過程は今回初めて納得できた点です。
支柱である竹に付けた糸は,けっして一箇所にきちんとまとまっているわけではなく,ある程度広がりをもって付いています。
幼虫は腹脚の一部と尾脚とをミットのようにポンポンと使いながら,糸を集めていきました。脚の中には筋肉質の器官が付いていて,それ出入りを繰り返しながら糸を集めていくといった感じです。
尾脚の動きに合わせるように,糸は一つにまとまっていくのです。見事に! 糸は脚に付くことはありません。ふしぎな光景です。
糸が一箇所にまとまってくると,幼虫は尾端をそこへ持って来て,何度かギュッと押しました。すると,接着効果が現れてくっ付いたのです。
ふしぎな,ふしぎな光景でした。
家でマイカーの洗車をしていると,ヨッさんが軽トラで通りかかられました。そしてわたしの姿を認めて,停車。手に牛乳パックを持って来られました。
中には,草とジャコウアゲハの幼虫が入っていました。自宅の食草が激減したので,幼虫を棲息地に持って行ってやるとのこと。そして,こうおっしゃいました。
「蛹から成虫が出てくるのはなにもふしぎでもないし,写真で見たこともある。しかし,幼虫が皮を脱いで,そこから蛹がにゅるにゅると出てくるのはスゴイと思う。この間,それを待っていたのに,ちょっとその場を離れたらもう蛹になっていた。残念な思いをした。皮をドロドロッと忍者のように脱いで,新しいものが出てくるとは想像以上の場面にちがいない」
ヨッさんは,それが夜間に行われるとばかり思っておられたようです。それで,わたしが「時刻を選ばないし,動きがはっきりして1時間程度で脱皮します。それはチョウやアゲハ一般についていえることです」と話すと,驚いておられました。ついで「徹夜してでも見る意欲・根気があるかどうか,そこの問題でもありますが」というと,「今のわたしにできるかいなあ」と笑っておられたのが印象的でした。
孵化,幼虫脱皮,蛹化,羽化,そうした変化には兆候が必ずあります。変化の流れを経験で蓄積していけば,ほとんど誤差なく,期待する場面を観察できます。そこにはいのちに関する法則性が存在するのです。
したがって,変化を敏く感じとることが観察眼の要になるでしょう。
蛹になる前に,幼虫は身の落下を防ぐため糸を紡ぎ出して,からだを固定しなくてはなりません。その姿はいくらでも,個体の数だけ簡単に観察できるのですが,口にある器官から糸そのものが出てくるのを見ようと思うと,これがなかなかたいへんなのです。
ルーぺ越しに,じっと観察していると,確かに出てきていると思われる瞬間を目撃できることがあります。しかし,それが長く続くわけでなく,ほんの瞬間なのです。それで,同じ動作を繰り返すので,だいたいの見当をつけておいて待ち構える必要があります。
下写真は糸を出している場面です。
これを近接撮影します。絹糸が出ている様子がうかがえます。
同じ場面を写した写真をトリミングしてみると……。
M字型の黒い部分が顎。ここで食草を噛みます。それより下に糸を紡ぎ出すとくべつな器官があって,そこから出ているのがよくわかります。
関心を向けていると,いつかは,ある程度実態が見え始めます。
からだの器官はすべて意味があって存在します。その意味を,カメラをとおして問いかけるのは実におもしろいものです。
6月14日(金)午後7時30分。植木鉢の側面に付いた前蛹を見ていると,どうやら蛹化の兆候らしい動きが見え始めました。例によって,筋肉の収縮・弛緩の反復です。動きそのものは小さいので,まだ蛹化までには時間がかかりそうです。
午後9時になると,動きが大きくなってきました。筋肉の反復は,1分間に12回を数えるようになりました。そして,これが1時間近く続きました。表皮の白い部分を見ると,蛹の黄色が透けて見えかけました。その間に蛹と皮との間に隙間ができて,脱皮の準備が整えられていくのです。
いよいよ皮を脱ぐ瞬間がやって来ました。体節を覆っていた皮が伸びて,凹凸がなくなっていきます。
間もなく,頭部近くが裂け,蛹がほんの少し見え始めました。
皮はどんどん尾端方向に送られていきます。
どんどん,どんどん,と。
皮が先まで到達すると同時に,蛹はからだをピンピンと揺り動かして皮を落とそうとしました。なんとか落とそうとする習性が備わっているのです。これはアゲハ・チョウ類に共通していえることです。
何度かやっているうちに,皮はうまく落ちていきました。このとき時刻は午後10時を指していました。皮を脱ぎ始めてからここまで3分。前蛹に変態の兆候が見えてから2時間半。
この場面は何度見ても,生命の神秘を感じます。
アゲハの幼虫を3個体飼っていたら,順次蛹化しました。
そのうち,わたしが直接蛹化場面を目撃したのは一例です。その一例が特異なのでご紹介しましょう。偶然こういう場面が生じたという例にあたります。
飼育箱の上蓋に,横向きにぶら下がった状態で前蛹になりました。ふつうの場合は,上下になるのですが,たまたまこんな方向になったのです。
前蛹になってから概ね24時間程度で蛹になることがわかっていますから,ときどき観察をしながら変化を見守りました。
やがて,大きな産気のようなうねりがやって来ました。蛹化直前だとはっきりわかりました。それで,カメラをセットして待ちました。すぐに脱皮が始まりました。まった円滑そのものです。
午前9時43分。
午前9時44分。1分経過。
午前9時45分。2分経過。
午前9時46分。3分経過。
午前9時47分。4分経過。 どんどん皮を尾の方向に送っていきます。
9時48分。5分経過。 脱いだ皮がからだと上蓋の間に挟まるかたちになりました。
午前9時49分。6分経過。蛹はなんとか落とそうともがいているように見えました。かなり時間を費やしました。ところが,一瞬にして,自分の尾が固定面から離れ落ちてしまったのです。動きが激し過ぎたのでしょう。
こうなると,からだは宙ぶらりんです。一方の脱がれた皮はぶら下がったまま。要するに,からだは帯糸だけで支えられている状態です。ふつうの3点支持が,2点支持姿勢に変わってしまったのです。まったく頼りなくなりました。
もっとも,2点の一方が切れてもまだ大丈夫。自然のしくみはうまくできています。いのちはできるだけ,精一杯守られるようにしくみが整っているのです。
5分にも満たないドラマでした。このドラマを,わたしはこころにくっきり刻み込みました。羽化をたのしみにしています。
6月11日(火)。『ジャコウアゲハ観察記(その230)』で取り上げた幼虫がいる植木鉢の話です。そこに篠竹を数本突き刺しています。もちろん,ウマノスズクサが巻き付くようにしているのです。そのうちの一本を見ると,先端に幼虫が付いています。前蛹になる直前でしょう。
6月12日(水)。朝,その幼虫が完全に前蛹に変わっていました。
夕方。前蛹が蛹に変態していました。変化直後で色が濃く,かたちがいかにも変態後間もないことを物語っているように思われました。
この個体は,我が家第一号になります。もう一つ前蛹期に入る個体が,別の植木鉢に付いています。
排泄場面を何度か取り上げました。すべての動物に共通したこの現象は,なんともおもしろいものです。口から腸を経ても肛門に至る一連の消化器官は,体内にあって体外とつながった器官です。いわば,体内“体外器官” なのです。体外から栄養分を摂取するのが腸というわけです。
幼虫の体形を思い浮かべると,食べたものがストーンと直線的に流れている様,そして,途中で消化されながらすこしずつかたちを変えている様が見えてきそうです。
生々しい排泄物には,葉の情報や消化のされ方が詰まっています。科学者はこれを分析して,からだの状況を推測することもやっているはずです。
たいていの排泄では,尾脚を軽く上げます。しかし,下写真の場合は例外的に上げませんでした。排泄が近づくと,なんだか肛門の辺りがそわそわっとした感じになります。観察者に緊張感が走る瞬間です。
「やっぱりだ。出てくるぞ」。そう思っていると,そのとおり,糞が見えかけます。
肛門が大きく開き始め,水分で湿った廃絶物が光ります。
ゆっくり押し出された排泄物は,完全にからだから離れ,一瞬にして落ちていきます。からだの大きさと,排泄物の大きさとを比べると,改めて“食べる” ことの重要性が迫ってきます。
はじめにお断りを一つ。書きたいことはヤマほどあります。今,その材料が50以上。それらを取捨選択して原稿にしていくのですが,一日に1,2題に絞っても,公開日を先送りしなくてはならない原稿がたまっている状況です。さらに,日々新たな材料が生まれ続けます。こんなわけで,時期外れの原稿をUPせざるを得ない場合,書いた原稿を没にせざるを得ない場合が続出します。
さらに,随想もどんどん先送りしている現状です。しごともしなくてはなりません。家の周りの環境整備もあります。畑仕事もあります。メインの竹紙作りができないのもずっと気になっています。そんな環境で,自然と適当に(あるときは集中して)向き合っていいます。
それぞれの一文を産み出す苦労は大したことはなくても,あれやこれやの忙しさのなかで気が抜けないことが多いものです。引き続き,ご愛読くださいますように。
瞬間を待っていて,映像にうまく収めるというのはいつも難しさを伴ないます。“いつ”が確定していないので,待つほかありません。手がかりになるのは,これまでの経験で蓄積した知見だけです。
写真のアゲハの卵では,そのチャンスを逃しました。
下写真は孵化を控えた卵です。中の様子がよくわかります。黒い頭部,それに規則正しく並んだ体節が透き通って確認できます。午後12時の撮影です。
3時間後の午前3時。たまたま目覚めて,確認に意味で撮影したのが下写真。空間が増えて,孵化がいよいよ近づいてきたことがわかります。わたしはあと3時間は大丈夫だろうと勝手な解釈をしてしまい,もう一度寝ました。
午前6時。起きて確認すると,もう誕生していました。体長が3mm程度の,かわいいかわいい幼虫です。それに,殻を全部食べ終わっていました。ということは,午前4時頃には孵化が始まった,つまりわたしが寝るとほとんど時を合わせたように幼虫が出始めたということです。
惜しいことをしました。でも,こういうことは何度も経験済みです。
油断大敵! とはいうものの,チャンスがいつかはまたやって来ると思えることが自然観察のよさでもあります。