はいよ、けんちゃんだ。。。
チャリが盗まれたのは、1回だけじゃない。。。でも、必ず返ってくる。
持ち主孝行な愛車だ。
タコ壺保健室の匿名希望の東山先生は、持っていた担架をドサッと床に降ろすと、いきなりぶら下がっているギョロ目のカブに、パンチを食らわした。
「たいがいにせいや、いつかシバくぞこらあ」
と、もう一発食らわして、
「ああ、せいせいした」
とのたまわった。
「ひええ」
毎度のことながら、阪神ファンの彼女には驚かされっぱなしだ。
「ああ、いたの」
ああ、いたのって・・・。
匿名希望の東山先生は、何事もなかったように俺に目をとめると、
「めずらしいですね、もしかしてのぶちゃんのことかな?」
と、担架をしまいながら聞いてきた。
「いやあ、何か、情報はないかと思って」
「ないよ」
「へ?」
「へ?って、あるわけないじゃないの。あの朴念仁が保健室にくると思う?」
そらそうだ。でも、
「なんか、耳にしてない?生徒たち・・・バスケ部員とか、なんかうわさしてなかったかあ」
と、食い下がった。
「そうだねえ」
匿名希望の東山先生は、椅子に座りしばらく考えこむと、
「やっぱりないわ」
と、あっさりと答えた。
「言葉のはしはしに、なんかちょっとくらいは、ヒントになりそうなこと、言ってませんでした?」
「あったら真っ先に報告してるでしょうが。けんちゃんこそ、身近にいて何にも気がつかなかったの?他人に聞く前に、自分の脳みそにきいてごらんて」
もっともなご意見です。
「さてっと・・・」
彼女はうなだれている俺の用事は済んだとばかりに立ち上がって、ベッドの一番奥に向った。そして、思いっきり掛け布団をひっぺがすと、
「こらっ、いつまでしょぼくれているの」
と、ベッドに丸まって寝ている人物を怒鳴りつけた。
俺は、生徒かと思い、彼女のあとを追ってベッドに近づくと、そこには・・・、
「うるさい、あんたは親じゃないからそんな冷たいことが言えるんだ」
と、あの白い男がさめざめと泣きながら掛け布団を引き寄せているところだった。
こ・・・こいつ・・・また・・・細太郎ともめたんかあ。。。
。
あほらしいから、明日へ続く。。。