けんちゃんだ。
薬師丸ひろ子が大好き。
片山教授がベッドの下から抱えて取り出したのは、赤いふたの大きな瓶だった。
中身は梅と琥珀色の液体。
ははあん、さては匿名希望の東山先生は、タコ壺保健室で楽しい飲み物を製造していたに違いない。
「僕はねえ、何でもお見通しなんだよ」
片山教授は、知らん顔をしている彼女の返事や思惑など気にせず、座高計に座ると、
「君と桜井が何をしとるか、知らないとでも思っているのか」
と言い、白いやつに向かって、
「気がきかんやつだな。コップに氷を入れて人数分もってこい」
と、図々しく指図した。
「何で俺が」
白いやつはブツクサ文句を言いつつも、立ち上がって冷蔵庫に向かった。
匿名希望の東山先生は、開き直ったのか、
「申し訳ないんですが、アルコールは入ってませんから」
と、反論した。
「そんなことはわかってる。桜井が大学の園芸学部から梅を盗みどりしているのは、ようく知っている。大学在学中からの常習犯だからな。どうせ、言いだしっぺは、桜井だろうが」
桜井というのは、ここの大学の卒業生で片山教授の教え子で、さらにここの高校の教員になっている。白いやつが高校に現れると、真っ先に蹴飛ばしに行くらしい。ついでに言うなら、俺の中学の後輩だ。
片山教授が言うことを、さもありなん、と聞いた。
「どれ、出来具合いはどうかな?」
と片山教授は、白いやつからコップとひしゃく(があるってことは確信犯だな)を使い、琥珀色の液体をコップに入れ、氷の音をからからさせながらくるくると回した。一口飲むと、
「よ~くできとる、あとからアルコールをぶち込んだから心配してたんだが…」
「え?」
匿名希望の東山先生は、真っ赤になって怒り、
「何してくれとんじゃっいつか淀川に沈めたるから、覚えとれやっ」
と、怒鳴りつけた。
おお、こわっ。
と、思ったので明日へ続かしていただきます。
PS 。この話はフィクションです 。思い当たるブログや養護教諭、色の白い事務職員等とは、まったくではないですが、一切関係はありません。
・・・。