へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

Shall we dance?

2007-03-25 22:30:44 | へちま細太郎
こんばんは、へちま細太郎です。

テレビで、ナンチャンと杉本彩が出ていたダンスの世界選手権を見ました。
「ダンスなのに、“試合”っていうんだ」
ぼくは、杉本彩の華麗なダンスを見ながら疑問を口にしました。
「スポーツなんだよね、一応」
藤川先生が答えてくれました。
「スポーツなの?だって、日本の能とか日本舞踊の場合は違うじゃない」
「確かにな、でもどっちも体力を使うからスポーツともいえるし、優雅でもあるから芸術的ともいえる、まあ、見る方も踊る方も楽しければいいんだよ」
藤川先生の言うことは、わかりやすくていいです。でも、
「なんで渋滞してんの?」
どうして、あんなせまいところで、大勢のペアがひしめき合って踊るんだろうね。
「知らねえなあ、実際わけわかんねえよな、やってる方の身にもなってみろってんだよな、危なくてしゃあねえ」
「え?
ぼくたちは、いっせいに藤川先生を見ました。
「なんだ、おめえ、今、なんて言った?」
おとうさんはおどろいています。
「あ?俺、できっから一応」
「えええっ
あぜん…。
「ドイツに留学してる時、つきあってたイギリス人の彼女に教えてもらって、競技会にも出た」
ひえええ、中学高校とヤンキーだった、この藤川先生が、ダンス?
てか、イギリス人とつきあってた?
「そんなに驚くなよ。結構面白かったぞ、細太郎、どうだやってみる?」
「やだっ
ぼくは即座に返事をしました。
「なんで?」
「だって、ナンチャンじゃない方の男の人みたいな、変なかっこしたり腰振ったりするの、いやだ」
「無理もない」
おとうさんが、うんうんとうなずきました。
「俺だっていやだ」
藤川先生は、
「ま、好きずきだからね、じゃ、能はどうだ?」
「のう?能もできるの?」
「こっちの方が年季入ってる、ガキのころからやってるからな」
藤川先生、すごい、ただのヤンキーじゃなかったんだ。
ぼく、ますます尊敬しちゃう。
「たしなみだ」
お殿様だもんね。
「私、やろうかしら、ダンス」
突然、おばあちゃんが突拍子もないことを言い出しました。
「い?
「体力には自信あるし、楽しそうだし」
おばあちゃん、ポーズをとりました。その様子を見ていたおじいちゃんが、
「おりゃあ、やだよ~
と、いやあな顔をしました。
「だあれがあんたとやるって言ったのよ、こっちがおことわりよ
おばあちゃん、つんとしました。
「ダンス教室探そうっと」
おばあちゃんはパソコンの前に座ると、インターネットを使いはじめました。とても楽しそうな背中でした。
それに対して、おじいちゃんはおもしろくなさそうです。
「女は年食ってからが、味があるってことかあ」
藤川先生が妙なことを言いました。
「うかうかすると、男がおいておかれるぞ」
おじいちゃんの後ろ姿は、心なしかさびしそうでした。
Shall we dance?
おじいちゃんも、踊ってみれば?
コメント
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