こんばんは、へちま細太郎です。
誕生日の日、ぼくはおとうさんとディズニーランドに行くために朝早く家を出ました。 でもおとうさんは、
「細太郎、あのな、ディズニーランドに行く前によりたいところがあるんだけど、いいか?」
と、聞いてきました。
「テニスコートじゃなければいいよ」
と、即座に答えました。
「おまえなあ、頼むからテニスはいやだ、なんて言わないでくれよ、中学生になったら部活に入らなきゃ行けないときに、少しでも経験のある方がいいだろ」
「テニスじゃなくたっていいじゃないか~」
ぼくは面白くありません。
「細太郎の将来の夢は何だ?」
「テニスの選手じゃないことは確か」
「ほそたろぉ~」
おとうさん、目がうるうる。
「おまえは、いつからそんな憎たらしいガキになったんだよぉ~」
あ~、うっとおしいなあ。
「じゃあ、ぼく、藤川先生の養子になって、殿様になろうかな」
「何っ」
おとうさんは急ブレーキをふんで、車をとめちゃった。
「おねがいだあ、あいつのこどもにだけはなってくれるなあ」
あ~、一生やってろ、くそおやじ。 ぼくは、はぁとため息をひとつつきました。
その時です。
ぼくじゃない誰かの気持ちが、急にぼくの心の中に入り込んできました。
「あ」
ぼくは、ぼくじゃない誰かもぼくと同じようにため息をついているのを感じたんです。 胸の奥がじーんとなりました。
誰?誰なの?