シベリアとは羊羹または小豆のあんこをカステラに挟み込んだ洋菓子の事で私の勤めるスーパーでも毎日品揃えしている。写真はヤマザキパンの商品で三角シベリア。常温販売だが冷やすと一層美味しく食べられる。
全国的な商品と思っていたが主に関東中部地方の商品で近畿より先ではあまりなじみがないという。四角く切ったものもれば、サンドウィッチ状に三角のものもある。
昭和初期に生まれたとされているが発祥については不明確のようだ。羊羹をシベリアの永久凍土に見立てた説、日露戦争に従事していた菓子職人が考案した説など、さまざまあるという。冷蔵庫の無い時代、冷たい食感と涼しげな名前が好まれて、子供の食べたい菓子一位であったという。明治から大正にかけてどこのパン屋でも製造していたようである。
2013年宮崎駿作品映画「風立ちぬ」の中でシベリアが登場し「懐かしい菓子」として再度注目を集めたことがある。
私にとってこのシベリアの菓子は父との思い出の一つ。六十代後半に病気を患い、闘病していたころ好んでこのシベリアを食べていた。昔気質で気難しい父が、病に押され気弱になったことをよく覚えている。私の仕事に対してもいつまでそんなことを続けるのか苦言を呈していたのがこのころからは何も言わなくなっていた。恐らく自分の先を見越していたのだろう。食も細くなり煙草も控え、こうした甘いものを食べるようになった。病院の見舞いに母がいつも用意していたことを鮮明に覚えている。
先日父の十回忌を迎えた。神道で言えば十年祭。日々忙しく姉に連絡した以外に花を手向けただけであった。
不義理をわびながら父の好んだ洋菓子を遺影の前に供え、ささやかに在りし日のことを偲んだ。