皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

令和五年祈年祭にて

2023-03-26 23:37:32 |  久伊豆大雷神社

皿尾城公園の桜も咲き誇るなか、令和五年春季祈年祭を執り行いました。昨年の同時期はコロナ蔓延が続いており、行動制限の解除された春祭りとしてはほぼ三年ぶりとなります。

あいにくの桜雨となりましたが午前の自治会総会のあと、令和四年度の年番役員さんの奉仕のもと滞りなく祭典をが進行されました。自治会の役員と神社祭事年番は兼ねますので三月をもって役員さんが交代となります。ですので最後の祭事がこの春祭り、祈年祭となります。これまであまり気にかけておりませんでしたが、年番の最後の奉仕がこの祈年祭となり、同日に次年度に引き継がれています。すなわち祈りの祭事が引き継ぎにあたり、まさしく氏子の願い祈りと共に引き継がれていることにその意味合いに改めて思いを馳せています。新たな年度に向け新たな年番さんと共に祭事を継続していきたいと思います。

また今春は統一地方選挙の年で、ここ忍領においても首長選が行われます。五人の候補者が立候補しており、祭典の前に候補者のかたがご挨拶にいらっしゃいました。前副市長の石川たかみさんです。市の生涯学習課次長時代に郷土かるたや放課後こどもクラブの創設に関わっていらっしゃったことから、SNSにて何度かメッセージをいただいておりましたが、今回はじめて皿尾城にてお目にかかることができました。市街地のサーキット型商業施設の提案など直接政策をお聞きする機会となり、地区の方も興味深く聴いていらっしゃいました。

ここ最近の選挙において候補者のかたがここ皿尾城まで足をはこんでくださることが多くなりました。開発調整区域であることからやや政治との関わりが弱くなりがちですが、しっかりと政策を聞き意思表示をしていかなければならないと思います。

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令和四年 霜月花手水

2022-11-19 23:47:37 |  久伊豆大雷神社

行田市商工会と市の観光課が中心となって行われている、市内のイベント花手水。すっかり行田市の観光の中心的役割を果たしています。行田八幡神社、忍城を中心に毎月二週間花を刺し、毎月第一土曜日にライトアップイベントを行っています(希望の光)。十一月は第三週で、本日が年内最後のライトアップの日でした。
市街地から2キロ離れた小さな神社ではありますが、観光課から声がかかって当社も花手水を始めて一年以上が経ちました。

夏から秋にかけてマリーゴールド中心の手水でしたが、晩秋から初冬を迎え境内地内に咲く菊の花を挿しています。花を用意するのが大変という声を聞いたことがありますが、お陰さまで自然に任せた花花で、花手水を飾ることができています。

空気が澄んで晴れの日には西の秩父連峰の美しい山々を見ながら花を挿しています。
神域の尊厳と自然との調和、そして人がなす手水舎の華やかさ。
本格的な冬の到来の前に、もうしばらく花々の賑わいで癒されることができそうです。
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卯月の花手水

2022-04-20 21:15:48 |  久伊豆大雷神社

四月も二十日を過ぎ、天候もなかなか安定しない日が続いています。二十四節気の穀雨を迎え、桜のあとの暖かさから一転、雨で気温も下がっています。

ここに来て植え替えたキンセンカが花開き、水に差すときれいな花弁を広げてくれます。

社務所(自宅)にいると参拝の方とお会いすることができますので、声をお掛けして本殿に昇殿参拝していただくこともあります。本日もお二人御上がりいただきました。

花手水も自前の花だけを使っておりますので端境期でなくとも豪華なものはできませんが、工夫次第できれいに仕上がると嬉しいものです。

休耕田のタンポポ一色で仕上げた花手水です。
これからも気ままにそれでいて季節を感じられる花手水を続けていきたいですね。

たんぽぽの花言葉は「幸せ」「真心の愛」
ただし白い綿毛になると「別れ」を意味するそうです。
花ひとつとっても奥が深いようです。
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神社建築について②千木と鰹木

2022-04-04 20:37:59 |  久伊豆大雷神社

神社建築の特徴として屋根の装飾が挙げられる。
屋根の両側にV字状に伸びる二本の木を『千木』(ちぎ)、屋根の上に水平に置かれた丸太上の木を『鰹木』(かつおぎ)と呼びます

伊勢神宮に見られる神明造を見るとよくわかります。
千木、鰹木とも古代では皇族や豪族の住居にも用いられましたが、現在では神社建築にしか見られません。古代の建築様式を現在に伝える神社特有の形式です。
神社検定テキスト『神社のいろは』によれば
『千木』は古代において家屋をたてるため木材を左右より交差して結びとし、そのまま切り捨てなかったことに由来するとあります。またチギは『風木』という説もあって風除けのためのものではなかったとも考えられています。

同じく『鰹木』はもともと茅葺や檜皮葺などの吹屋根を抑えるために置かれた木で、形状が鰹節に似ていることから名が付きました。勝男木とも書きます。千木鰹木とも装飾的な理由から発展し、神社の神聖を象徴するものだとされています。

千木の先端を地面に水平に切ったもの(上向き)を内削ぎ、垂直に切ったものを外削ぎと言います。
神社豆知識などで取り上げられますが
千木が内削ぎで鰹木が偶数・・・女性神
千木が外削ぎで鰹木が奇数・・・男性神
と言いますが、必ずしもそうとは限らないそうです。
奈良時代以に形成された『神明造』『大社造』には千木鰹木ともに装飾として見られますが、以降形成された『住吉造』『春日造』『流造』などには千木しか見えないか、どちらの装飾もないことがほとんどです。

当社においては外の母屋は八幡造(流造)で千木も鰹木も見られませんが、内殿の本殿は久伊豆社、大雷社とも神明造で千木と鰹木の装飾が見られます。鰹木は奇数(三本)で千木は外削ぎですので男神。通説に沿った形で非常によく神社形式を伝えているようです。


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神用公用雑記はなぜ安政七年から記されたのか

2022-03-31 21:12:39 |  久伊豆大雷神社

延宝元年(1673)に記された当社の縁起はその後『新編武蔵風土記稿』に転記されるなど江戸期に残る当地区の歴史を伝える大きな役割を果たしたと考えられるが、その後江戸後期になって記された『神用公用雑記』が安政七年(申年)からの記録として残されている。1860年からのことで今から160年前のことである。祭祀のことや、境内地の神木の列記、太政官への届け出など神官としての記録と、年貢の取れ高や負担、村内の役割分担など村の統治にかかわることと併せて、神用公用雑記との誌名の通りの内容だと推察される。

記録は明治初頭まで続き、維新の混乱を過ぎてなお記されていたことがわかっている。

古文書故になかなか読み下すことも叶わず、日々過ぎてしまうが、疑問をもって読み解いてゆくと、少しづつその伝えようとしていたことが見えてくる。安政期といえば高校の歴史教科書で覚えたのは
『日米和親条約』(神奈川条約=安政元年)
『安政の大獄』(安政5年)
『桜田門外の変』(同六年)だろう
黒船来航から、江戸幕府崩壊へとつながる政変が立て続けに起こり、幕末維新へとつながる序章の時。
こうした不安定な幕末へ向かうその時に、なぜ急に神社の記録を残しだしたのか。関東の田舎地方の方が余裕があったのか、幕府の有力親藩としての記録を残したかったのか。そうではなかった。

昭和三十七年背編纂の『行田市史』下巻には江戸期の忍藩の様子が時系列的に記されている。安政期には二つの大きな災害があったことを伝えている。
 安政二年大地震(1855)
 江戸の城下での直下型地震で、江戸の被害は大きく死者四千六百を出し、一万四千の家屋がつぶれたと伝えている。但し忍領下では揺れはしたが大した被害は出ていない。
 安政六年大洪水(1859)
 この年の七月二十五日の大雨は前日から続き、午後四時に久下付近で荒川が決壊している。忍城下でも多くの床上浸水が生じ、数百件が流されるなど甚大な被害が出ている。特に米蔵が水につかり、在米が水浸しになったことが大きかったという。また八月に入っても大雨があり、二度目の洪水となった上に、流行病(コロリ=コレラ)が蔓延している。

こうした領内の惨状を、藩として把握し年貢米の減免、幕府からの借り入れの報告として挙げるため、各村々で陳情書として集めたものと考えられる。この水害に当たり忍藩は幕府から金五千両の借り入れをして凌いだという。
江戸後期の忍藩の様子を知る貴重な資料であり、今後さらに紐解きながら皿尾村の当時の様子を明らかにしていきたいと思う。
平成二十八年に出版された普及版『行田の歴史』には安政の大洪水の記述はなく、『伝兵衛長屋火事』と安政地震のことが併記されているが安政の洪水については触れられていない。歴史書も複数を読み比較することで見えてくるものがあるようだ。
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