皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は ものをこそ思へ

2021-04-18 21:03:27 | いろはにほへと

長からむ 心も知らず 黒髪の

乱れて今朝は ものをこそ思へ 

  待賢門院堀川

小倉百人一首の八十番目の歌は恋の歌

此の髪のように長く愛して行きますというあなたの御心が、その言葉の通りになるか私にはわかりません。お逢いして別れた朝の黒髪が乱れているように、私の心ももの思いに沈むばかりです。

平安時代長く豊かな黒髪は官女の条件とされ、美人の証とされました。恋や情事の象徴として多くの歌に記されています。

というのが多くの現代解説にあります。果たしてそれだけの歌であったのでしょうか。

小倉百人一首の選者藤原定家は、その選定に際し百首すべての歌を合わせて一大情緒を表しているそうです。この八十番目の歌は後半の崩れ行く世の中を憂う歌としての意味合いがあり、色恋とはまた別の更に深い意味合いを持つ歌だというのです。

 長からむ 心も知らず黒髪の

 乱れて今朝はものをこそ思へ

 作者である待賢門院堀河という女性は、藤原彰子に仕えた官女でありその待賢門院彰子は崇徳天皇の母親に当たります。時の摂政関白太政大臣であった藤原忠通は藤原家安泰を図るため崇徳天皇を強引に退位させ、代わりに近衛天皇を即位させます。

 其の後、「待賢門院が侍女の堀川を使って近衛天皇を呪詛している」との噂が宮中を流れます。堀川は源顕仲の娘に当たりその顕仲は神祇伯。高等神官に当たります。崇徳院を消し去りたい政治勢力による根も葉もない誹謗中傷です。要するにあらぬ噂をたて相手勢力を攻撃し、自己の勢力の正当性を作り上げていたのです。

待賢門院の時代においてはその政治の権力者が天皇の外戚となって、天皇の人事にまで影響を及ぼした時代です。

待賢門院はそうした中で出家を決めます。宮中から出家の道をたどることはすなわちこの世における死を意味しました。現世の人間としていったん死に、仏門に帰依することで生まれ変わるのです。

仕えていた待賢門院が出家すると迷わず堀川も髪を下ろしたのです。その現世での儀式が剃髪、髪を下ろすということです。

長からむ 心も知らず黒髪の

乱れて今朝は ものをこそ思へ

どんな気持ちで待賢門院堀川はこの歌を詠んだのか。其の句の文脈を読むことと、作者の生涯や当時の時代背景を読み込むこととは深みが違う。

そんなことを教えてくれます。

新学期が始まり、多くの高校では百人一首を暗唱する課題が出されています。私自身も高校一年時、国語の課題で百人一首を覚えました。

三十年以上が経ち、改めて一つ一つの句に向き合いその深さを知りながら、時の流れを感じています。

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第十五候 虹始見

2021-04-17 21:49:21 | 生活

 

清明末候に当たる虹始見(にじはじめてあらわる)。

春雷をともなうにわか雨がやみ、雲間から漏れる柔らかな光の中に虹が浮かび上がる頃。

虹は太陽の光が空気中の水滴に反射してできるもので、水滴が大きいほど色が鮮やかに見えるといいます。

 春の虹は夏に比べすぐに消えてしまいますが、その淡くはかない様子が一層記憶に残るものです。

古来より中国では虹を大きな蛇とみる考えがあり、虹が虫偏であるのはそのためです。

見渡せば各地に鮮やかな春の花々が咲き誇る頃でもあり、生命の息吹があふれています。

このころには毎年鯉のぼりを出して子供の成長を祝います。

街路樹として人気のあるハナミズキの花も咲いています。

1912年に当時の東京市長がワシントンに桜を寄贈し、その返礼として三年後の1915年日本に初めて贈られたといいます。

薄紅色の可愛い君のね

果てない夢がちゃんと終わりますように

君と好きな人が百年続きますように

ハナミズキの花言葉は

『返礼』『永続』

100年先も淡く美しい花を咲かせてほしいと願います。

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伸びゆく星宮小学校

2021-04-13 14:39:00 | 日記



朝靄はれて緑の大地
雲は遥かに秩父の峰が
今日も皆の夢を呼ぶ
明るく学ぼう心を合わせ
伸びゆく星宮小学校


長男の小学校卒業にあたり、さまざまな想いが駆け巡ります。長女と3年違いになりますので、都合9年間の小学校生活でした。


6年前の入学式でね写真です。雪が降る桜の景色の中、震える様な寒さでした。




五つの森に歴史の誇り
緑豊かな希望の星が
今も皆の夢を呼ぶ
正しく学ぼう肩組合せ
伸びゆく星宮小学校






小学校自体は今年度を以って閉校し、来年度から忍小学校へと編入されます。開校130周年記念事業の際、こんな日が来るとは思いませんでした。市街化調整区域の田圃の真ん中に立つ小規模学校です。問題に積極的に取り組んでいれば、違った結果になったかもしれませんが、現実に、人口は限りなく減少傾向です。今回の学校統合を機に、更に自分たちの住む地域の将来に向けて、真摯に考え、行動してかなければならないと思います。


明治期に設立された星宮村は熊谷市との分割を経て行田市に編入され、字名にはその名を残すことはありません。歴史を伝え、これからの地域の在り方を自分たちの力で作り上げなければなりません。それが私たち小学校卒業生の使命です。

夕べの窓に未来の誓い
道を教える希望の星が
明日も皆の夢を呼ぶ
仲良く学ぼう力を合わせ
伸びゆく星宮小学校
人として限りなく成長し、自ら学び続ける。
そうした伝統を繋いでいきたいと思います。










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仕事とは

2021-04-07 21:50:48 | 先人の教えに導かれ

明日は高校の入学式。下の子の中学入学式も重なり忙しい年度始めとなる。新たな環境の中でどんな生活が待っているのか期待と不安の交差する時だろう。

 薄れゆく自分自身の学生時代の入学式の記憶。特に大学入学に当たっては学ぶというより一刻も早く働きたいと思っていた。机の上で学ぶことから自由になりたかったのだろう。仕事に対する自分なりの価値観もあまりなかった。ただある程度好きなことをして稼ぐ。そんな気持ちでいたように思う。

好きなことは趣味でやればいい。

仕事っていうのはお金をもらってやることだからそれはお金を払う人に対して責任を取らなきゃいけない。

こっちが好きか嫌いかなんてどうでもいい

向こうがお金を払ったことに対して責任をとれるか

そういうことがちゃんとできているというプライドが持てるか

そこだけでいいと僕は思う。

ここでいう僕とは 林修氏。

誇りをもって生きる。仕事に対して、生き方そのものに対して。

10年後、20年後彼らがこうした気持ちでをもって自立してくれたらと思う。

 

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五節気 清明

2021-04-06 23:01:10 | 生活

 春の暖かな日差しを受け、天地万物が清らかで生き生きする頃。「清浄明潔」を略した節気を清明と呼ぶ。

雨水のころに芽を出し始めた植物の種類が判別できるほどに伸びてくるころだという。

 中国では、古くからこの季節に先祖の墓参りや野に出て春の青草を満喫する「踏青」を行う風習があるという。

中国の五行説によれば春は青 夏は赤 秋は白 冬は黒

「青春」とはそこから生まれた言葉で、まさに清明のような活力みなぎる時期を人生の春に例えている。

 

 数年前まではこのころに桜が満開を迎え、入学式にまさしく花を添えるのが常であったが、ここ数年来記録的に桜の開花が早まっていて、すでに清明のころにはすっかり葉桜の様相を呈している。

菜の花は相変わらず満開で美しい黄色い絨毯を広げている。土手には蓬が生えていて、草餅に用いるのに摘む人の姿が見られる。

蓬のことを餅草と呼び、春に摘んだよもぎは、邪気を払うとされて「魔除け草」とも称される。

桜と入れ替わるように花水木が美しい季節。

花水木は大正十四年(1912)当時の東京市長がワシントンへ桜を寄贈したことの返礼として三年後に贈られたという。

ハナミズキといえば同名の楽曲が有名で、

「君と好きな人が百年続きますように」というフレーズで多くの人の心の琴線に触れている。

また「四季の歌」においては「春を愛する人は心清き人すみれの花のような僕の友達」とうたわれる。

多くの花が咲き誇る、春の季節を堪能している。

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