【問題】
01. 国や地方公共団体が無償で国公有地を宗教的施設の敷地として提供する行為は、一般に、宗教的施設を設置する宗教団体等への便宜供与として憲法89条との抵触が問題となる行為であるといわなければならない。
02. 一般的に宗教的施設としての性格を有する施設でも、同時に歴史的・文化財的な保護の対象となったり、観光資源、国際親善、地域の親睦の場としての意義を有する等、文化的・社会的な価値に着目して国公有地に設置されている場合もあり得る。
03. 明治初期以来、国等に一定の社寺領を上知させて官有地に編入し、または寄附で受け入れる等の施策が広く採用されたこともあり、国公有地が無償で社寺等の敷地として供される事例が多数発生しており、これが解消されないまま残存している例もある。
04. 神社を管理する氏子集団が宗教的行事等の実施を主目的とする宗教団体であり、寄附を集めて神社の祭事をしている場合、憲法89条の宗教上の組織もしくは団体に該当するものと解される。
【解答】
01. ○: 最判平22.01.20(砂川政教分離訴訟)理由第2 1
(略)国又は地方公共団体が国公有地を無償で宗教的施設の敷地としての用に供する行為は、一般的には、当該宗教的施設を設置する宗教団体等に対する便宜の供与として、憲法89条との抵触が問題となる行為であるといわなければならない。(略)
02. ○: 最判平22.01.20(砂川政教分離訴訟)理由第2 1
(略)一般的には宗教的施設としての性格を有する施設であっても、同時に歴史的、文化財的な建造物として保護の対象となるものであったり、観光資源、国際親善、地域の親睦の場などといった他の意義を有していたりすることも少なくなく、それらの文化的あるいは社会的な価値や意義に着目して当該施設が国公有地に設置されている場合もあり得よう。(略)
03. ○: 最判平22.01.20(砂川政教分離訴訟)理由第2 1
(略)我が国においては、明治初期以来、一定の社寺領を国等に上知させ、官有地に編入し、又は寄附により受け入れるなどの施策が広く採られたこともあって、国公有地が無償で社寺等の敷地として供される事例が多数生じた。
このような事例については、戦後、国有地につき「社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律」が公布され、公有地についても同法と同様に譲与等の処分をすべきものとする内務文部次官通牒が発出された上、これらによる譲与の申請期間が経過した後も、譲与、売払い、貸付け等の措置が講じられてきたが、それにもかかわらず、現在に至っても、なおそのような措置を講ずることができないまま社寺等の敷地となっている国公有地が相当数残存していることがうかがわれるところである。(略)
04. ○: 最判平22.01.20(砂川政教分離訴訟)理由第2 2(2)
(略)この氏子集団は、宗教的行事等を行うことを主たる目的としている宗教団体であって、寄附を集めて本件神社の祭事を行っており、憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」に当たるものと解される。(略)
【参考】
砂川政教分離訴訟 - Wikipedia