法務問題集

法務問題集

憲法 > 国民 > 社会権 > 労働三権

2011-07-25 00:00:00 | 憲法 > 国民の権利・義務等
【問題】
01. 勤労者は、憲法上、団結権を有する。

02. 勤労者は、憲法上、団体交渉権を有する。

03. 勤労者は、憲法上、団体行動権を有する。

04. 公務員は、勤労者に該当しない。

05. 労働基本権は勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであり、それ自体が目的ではないため、国民全体の共同利益の見地からの制約を受ける。

【解答】
01. ○: 憲法28条

02. ○: 憲法28条

03. ○: 憲法28条

04. ×: 最判昭41.10.26(全逓東京中郵事件)理由一
(略)、国家公務員やを地方公務員も、憲法28条にいう勤労者にほかならない以上、原則的には、その保障を受けるべきものと解される。(略)

05. ○: 最判昭48.04.25(全農林警職法事件)理由一
(略)労働基本権は、右のように、勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであって、それ自体が目的とされる絶対的なものではないから、おのずから勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からする制約を免れないものであり、このことは、憲法13条の規定の趣旨に徴しても疑いのないところである。(略)

【参考】
労働三権 - Wikipedia
全逓東京中郵事件 - Wikipedia
全農林警職法事件 - Wikipedia

憲法 > 国民 > 社会権 > 教育を受ける権利 > 家永教科書裁判

2011-07-24 00:00:00 | 憲法 > 国民の権利・義務等
【問題】
01. 教育の中立や公正、教育水準の確保などの実現の必要性、教科書という特殊な形態での発行の禁止に過ぎないという制限の程度などを考慮すると、ここでの表現の自由の制限は合理的で必要止むを得ない限度のものというべきである。

02. 教科書の目的は学術研究の結果の発表ではなく、検定制度は一定の場合に教科書の形態での研究結果の発表を制限するに過ぎないので、学問の自由を保障した憲法23条の規定に違反しない。

03. 行政処分には憲法31条による法定手続きの保障が及ぶと解すべき場合があるにしても、行政手続きは行政目的に応じて多種多様なので、行政処分の相手方に告知や弁解、防御の機会を常に必ず与える必要はなく、教科書検定の手続きは憲法31条に違反しない。

04. 教科書検定の審査や判断は申請図書の内容が学問的に正確か、中立・公正か、教科の目標などを達成する上で適切か、児童や生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの観点からなされる学術的・教育的な専門技術的判断なので、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられる。

【解答】
01. ○: 最判平05.03.16(家永教科書裁判)理由二3
(略)本件検定についてみるのに、
 (一) 前記のとおり、普通教育の場においては、教育の中立・公正、一定水準の確保等の要請があり、これを実現するためには、これらの観点に照らして不適切と認められる図書の教科書としての発行、使用等を禁止する必要があること、
 (二) その制限も、右の観点からして不適切と認められる内容を含む図書のみを、教科書という特殊な形態において発行を禁ずるものにすぎないこと
などを考慮すると、本件検定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであって、憲法21条1項の規定に違反するものではない。(略)

02. ○: 最判平05.03.16(家永教科書裁判)理由三
 教科書は、…(略)…、学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、本件検定は、申請図書に記述された研究結果が、たとい執筆者が正当と信ずるものであったとしても、いまだ学界において支持を得ていなかったり、あるいは当該学校、当該教科、当該科目、当該学年の児童、生徒の教育として取り上げるにふさわしい内容と認められないときなど旧検定基準の各条件に違反する場合に、教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎない。
 このような本件検定が学問の自由を保障した憲法23条の規定に違反しないことは、当裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである。(略)

03. ○: 最判平05.03.16(家永教科書裁判)理由五3
(略)行政処分については、憲法31条による法定手続の保障が及ぶと解すべき場合があるにしても、それぞれの行政目的に応じて多種多様であるから、常に必ず行政処分の相手方に告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を必要とするものではない。(略)

04. ○: 最判平05.03.16(家永教科書裁判)理由七2
(略)本件検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。(略)

【参考】
家永教科書裁判 - Wikipedia

憲法 > 国民 > 社会権 > 教育を受ける権利 > 旭川学テ事件

2011-07-23 00:00:00 | 憲法 > 国民の権利・義務等
【問題】
01. 教育を受ける権利の背後には、子供は学習要求を充足するための教育を自身に施すことを大人一般に要求する権利を有する、との観念がある。

02. 国は、教育内容を決定する権能を有する。

03. 普通教育で児童生徒の教育に当たる教師には、完全な教授の自由が保障されている。

04. 国は広く適切な教育政策を樹立・実施すべき者として、また、子供自身の利益を擁護して子供の成長への社会公共の利益と関心に応えるため、必要・相当な範囲で教育内容についてもこれを決定する権能を有する。

【解答】
01. ○: 最判昭51.05.21(旭川学テ事件)理由四2(一)
(略)この規定(憲法26条)の背後には、…(略)…、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられる。(略)

02. ○: 最判昭51.05.21(旭川学テ事件)要旨2
(略)国は、…(略)…、子どもの教育内容を決定する権能を有する。

03. ×: 最判昭51.05.21(旭川学テ事件)理由四2(二)
(略)普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されないところといわなければならない。(略)

04. ○: 最判昭51.05.21(旭川学テ事件)理由四2(三)
(略)国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、また、しうる者として、憲法上は、あるいは子ども自身の利益の擁護のため、あるいは子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有するものと解さざるをえず、(略)

【参考】
旭川学テ事件 - Wikipedia

憲法 > 国民 > 社会権 > 教育を受ける権利

2011-07-22 00:00:00 | 憲法 > 国民の権利・義務等
【問題】
01. 国民は、その能力に応じて教育を等しく受ける権利を有する。

02. 国は、普通教育を受けさせる義務を負う。

03. 義務教育は、無償とする。

04. 義務教育の授業料は、無償の範囲に含まれる。

05. 義務教育の教科書の費用は、無償の範囲に含まれる。

【解答】
01. ○: 憲法26条1項

02. ×: 憲法26条2項前段
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。

03. ○: 憲法26条2項後段

04. ○: 最判昭39.02.26(義務教育教科書費国庫負担請求事件)理由
(略)憲法26条2項後段の「義務教育は、これを無償とする。」という意義は、国が義務教育を提供するにつき有償としないこと、換言すれば、子女の保護者に対しその子女に普通教育を受けさせるにつき、その対価を徴収しないことを定めたものであり、教育提供に対する対価とは授業料を意味するものと認められるから、同条項の無償とは授業料不徴収の意味と解するのが相当である。(略)

05. ×: 最判昭39.02.26(義務教育教科書費国庫負担請求事件)理由
(略)憲法の義務教育は無償とするとの規定は、授業料のほかに、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものと解することはできない。(略)

【参考】
教育を受ける権利 - Wikipedia
義務教育教科書費国庫負担請求事件 - Wikipedia

憲法 > 国民 > 社会権 > 生存権

2011-07-21 00:00:00 | 憲法 > 国民の権利・義務等
【問題】
01. 全国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

02. 憲法25条1項は、個々の国民に具体的権利を直接賦与したものである。

03. 憲法25条1項の「健康で文化的な生活」は、極めて抽象的な概念である。

04. 憲法25条1項の「最低限度の生活」は、ある程度明確に確定できる。

05. 憲法25条1項の「健康で文化的な最低限度の生活」の具体的内容は、その時々における文化の発達の程度や経済的・社会的条件、一般的な国民の生活の状況等との相関関係で判断されるべきものである。

06. 現になされている生活保護の減額措置をする場合、裁判所は減額措置の妥当性や手続きの適正さを通常の自由権の制約と同様に厳格に審査すべきである。

07. 国はすべての生活部面について、社会福祉や社会保障、公衆衛生の向上や増進に努めなければならない。

08. 行政府が現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなど憲法や生保法の趣旨や目的に反して法律で与えられた裁量権の限界を越えた場合や裁量権を濫用した場合、違法な行為として司法審査の対象となり得る。

09. 憲法25条2項は、社会的立法や社会的施設の創造や拡充に努力すべきことを責務として宣言したものであると解すべきである。

10. 憲法25条の規定の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられている。

11. 特別の条約がない限り、国は政治的判断で社会保障上の施策での在留外国人の処遇を決定できる。

12. 国は限られた財源の下で福祉的給付をするため、在留外国人より自国民を優先的に扱うことも許される。

13. 障害福祉年金支給対象者から在留外国人を除外することは、立法府の裁量の範囲に属する。

【解答】
01. ○: 憲法25条1項

02. ×: 最判昭23.09.29(食管法違反事件)要旨
憲法第25条第1項は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国家の責務として宣言したものである。すなわち国民は、国民一般に対して概括的にかかる責務を負担しこれを国政上の任務としたのであるけれども、個々の国民に対して具体的にかかる義務を有するものではない。(略)

03. ○: 最判昭57.07.07(堀木訴訟)理由二
(略)「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であって、(略)

04. ×: 最判昭57.07.07(堀木訴訟)理由二
(略)「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であって、(略)

05. ○: 最判昭57.07.07(堀木訴訟)理由二
(略)、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民の生活の状況等との相関関係において判断されるべきものであるとともに、(略)

06. ×: 最判平24.02.28(老齢加算廃止訴訟)理由第2 1(2)
(略)保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。(略)

07. ○: 憲法25条2項

08. ○: 最判昭42.05.24(朝日訴訟)理由一
(略)現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬがれない。(略)

09. ○: 最判昭57.07.07(堀木訴訟)理由二
(略)この規定が、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものであること(略)は、すでに当裁判所の判例とするところである。(略)

10. ○: 最判昭57.07.07(堀木訴訟)理由二
(略)憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、(略)

11. ○: 最判平01.03.02(塩見訴訟)理由三
(略)社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、(略)

12. ○: 最判平01.03.02(塩見訴訟)理由三
(略)その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。(略)

13. ○: 最判平01.03.02(塩見訴訟)理由三
(略)法81条1項の障害福祉年金の支給対象者から在留外国人を除外することは、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである。(略)

【参考】
生存権 - Wikipedia
朝日訴訟 - Wikipedia
堀木訴訟 - Wikipedia
塩見訴訟 - Wikipedia