花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

「永遠の0(ゼロ)」

2010年08月27日 | わたくしごと、つまり個人的なこと
戦記物の本や映画はあまり好きではなかった。戦後民主教育を受けてきたせいか、戦争を賛美する物語に反発しておりました。
が、ここにベストセラーの本があることを知らされ、三度書店で見過ごしたあと意を決して求めた。なぜなら、600ページに及ぶ分厚い文庫本だったからです。しかし、読み始めて数日で読了でした。涙がにじむ程度で、号泣はなかった。自分が戦後世代だったからか・・・
          
「永遠の0(ゼロ)」百田尚樹著 講談社文庫
0(ゼロ)はゼロ式戦闘機のこと。そしてゼロ戦に乗って返らぬ人となった宮部久蔵の物語だ。
孫にあたる健太郎は、姉の依頼で宮部久蔵のことを調べ始める。今となっては80歳を過ぎた老人ばかり。そんなゼロ戦にかかわった人たちを訪ね聞く作業に取り掛かる。
はじめ長谷川氏に合う。宮部は卑怯者だった。臆病者で、なんとしても生きて帰りたい。生きて祖国に残した妻や子どもに合いたい。そう語る宮部をぼろくそにけなした。
自分が生まれる数年前。実感がわいてこないが、死というものと同居する信じられない世界があった。特攻隊として死に向かう気持ち、それがどんなものだったのかが、じっくりと描き出される。
そして、宮部久蔵という崇高な人物像が、徐々にあぶりだされる。
筆者の、若者を特攻に追いやった軍人の無責任さと、戦後その罪が追及されないまま今日に至った怒りは、現代の官僚機構に及ぶ。
最後に、物語りは意外な展開を見せる。
終盤近くでインタビューした元海軍上等飛行兵曹、ヤクザの景浦介山の行いは、特に印象深い。彼はライバル意識から宮部を恨み、殺してやりたいとまで思っていた、が・・・。
百田氏の運筆はさすが。こんな悲劇は二度と繰り返してはならないと思った。
人への思いを大切にして生きたいと感じた。