花の四日市スワマエ商店街

四日市の水谷仏具店です 譚

「東京暮色」の撮影現場

2011年10月22日 | 諏訪商店街振興組合のこと
小津監督が、どれほど構図にこだわって撮影を進めていたのかを知るエピソードが、佐藤忠男著「小津安二郎の芸術」朝日選書にある。

小津は、撮影にあたっては、すべてのショットを自分でカメラのファインダーを覗いて細心の注意をはらいながらつくりあげていった。
篠田正浩監督は「東京暮色」の撮影のときに、助監督として小津の下で働いたことがある。
ある場面の撮影のとき、小津は、畳の上に1枚の座布団を敷くことを命じた。その座布団は誰が座るためにそこに置かれたのか、見当がつかなかった。
そこで彼は「小津先生、あの座布団はなんのためにそこにあるのですか?」と質問した。小津は「分からないか、じゃカメラを覗かせてやろう」と言って、篠田にカメラのファインダーを覗かせた。そして「何が見える?」と聞いた。
篠田は「そこにあるものしか見えません」と答えた。
すると小津は言った「畳だよ。畳のへりの線がいっぱいにひろがっているだろう」
小津にとっては、畳のへりの線が画面の中を広く交錯して見えるのが目ざわりで仕方がなかったのである。
小津の映画の空間は、一見、きわめて自然なもののようにつくられていながら、じつはこのような仕方で独特の美意識によって現実から再構成されていたのだった。
      原節子
      笠智衆
暗い映画との評判が高い?「東京暮色」(昭和32年4月30日公開)に、それと思われるシーンがありました。ただ、そこにあるのは、1枚の使われない座布団ではなく、炬燵にこどもが寝かせてあります。畳の中央に居座った子供の布団は、どう見ても邪魔です。(そして、子供が中に入ってる様子はありません)このシーンではないかも知れないのですが、確かに、畳のせんは隠されているようです。
コメント
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