花の四日市スワマエ商店街

四日市の水谷仏具店です 譚

小津安二郎「秋日和」

2011年10月18日 | 諏訪商店街振興組合のこと
10月28日午後6時30分公開の“小津安二郎再発見”は“秋日和”です。
この映画は昭和35年11月に公開されました。この頃は年1本の製作ペースで、冬になると野田高梧と蓼科の別荘に籠りシナリオの作成に取り組みました。そして、春から夏にかけてクランクインし、秋に完成の運びとなりました。昭和33年“彼岸花”、34年“お早よう”と“浮草物語”のリメイク、昭和35年“秋日和”と続きます。
昭和35年は、新安保闘争があった年で、7月に岸内閣から池田内閣に変わっています。10月には浅沼社会党委員長が暴漢に襲撃される事件もあり、不穏な社会情勢でした。
そんな情勢を無視するかのように小津監督は“秋日和”を完成させました。ごく平穏な日常の繰り返しが何よりも大切なこと。そこからちょっとしたさざ波が起こり人生は変化して行く。そして変化が終わったとき、人は人生の終焉を迎える。小津さんの言葉を思い出します「何でもないものも二度と現れない故にこの世のものは限りなく尊い」

学生の頃、話題になっていたマドンナ(原節子)が未亡人になっているのをいいことに、三人の紳士たち(佐分利信・中村伸郎・北竜二)が娘(司葉子)と一緒くたにして結婚の世話をやきます。ちょっとエッチな会話がユーモラスで楽しく、お馴染みの料亭のお上女将(高橋とよ)をひやかしたりもしています。

話の成り行きから、一人身の北竜二を原節子とくっつけようとしたり、娘の司葉子に佐田啓二を紹介したりして、社会的に地位のある紳士たちは、まったく楽しんでいるようです。こういったおせっかいを焼く人が、現代では少なくなりました。

中に立って調整役の寿司屋の娘、岡田茉莉子は、サイレンとサイレント時代の小津作品に出ていた俳優、岡田時彦の娘で、ユーモラスな演技は父親譲りだと決め付けた小津監督の指導によるものです。
この作品でも、壁掛けの絵画や食器などの調度品、小紋柄のふすまや縞柄の着物、チェックの服やテーブルクロス、それとなく?掛けられた縦縞のタオルなど、小津監督の構図の完成度を目指す勢いは絶好調です。
今回も、嫁ぐ幸せを娘に託して晩年の寂しさをひとり噛みしめるところで、この作品は終わります。

原節子は昭和28年作られた“東京物語”以来の久々の出演で(訂正 昭和32年“東京暮色”で有馬稲子の姉役として出演していました)、娘を嫁がせる母親を演じています。“東京物語”と昭和24年の“晩春”、昭和26年の“麦秋”の三作品を原節子は紀子役で出ていることから、紀子三部作と呼ばれています。今回の“小津安二郎再発見”では、来年の1月と2月、3月に続けて上映いたします。お楽しみに。
追記
岩下志麻がちょろっと出ています。2年後、秋刀魚の味に出演 このときはまだ ウブそのものです