花の四日市スワマエ商店街

四日市の水谷仏具店です 譚

ぶらり四日市 その三十七 湊小路

2023年05月21日 | レモン色の町

四日市駅(現在のJR四日市駅)の北西部にあたるところに、“新丁”がある。新丁は江戸期から続く古い町で、昭和37年の戦後復興土地区画事業時に“新町”と改名された。

大正期の四日市駅付近

新丁といえば、湊座を正面に見て南に延びる“湊小路”を忘れてはならないと、岡野繁松先生が“旧四日市を語る 第17集”で書いてみえる。現在の本町通商店街北側の“みだや金物店”を北へ入ると“セントラル歯科クリニック”が建つ。このあたりに“湊座”(大正3年4月落慶)があり、そこへ行くまでの短い距離が市内一番の繁華街、湊小路であった。

湊小路 昭和3年

本町から北へ入ると右にカフェがあり、ウェイトレスというか女給というか、妙齢の女子が割烹前掛けをして立っていた。隣は写真屋、遊技場(コリントゲーム)、向かい側には散髪屋、バー、そしてバーと続き、飲み屋、飲み屋と並んでところ狭しとひしめき合っていた。二階は通しで広い食堂があった。

日が暮れると、すずらん灯の淡い光と、飲み屋から漏れる裸電球が小路を照らしていて、狭いながらも歓楽街の雰囲気を醸し出していた。

昭和25年 東宝劇場

芝居小屋の“湊座”の前には、何々の丞とか何々の助等の招き看板がかかり幟が並んでいた。入口で木戸札を買い、高い台の受付で渡して中へ入る。受付の人は“イラッシャィ”と云って、“ガシャッ”と大きな音でその木戸札を揃えて、20枚ほどになると入口へ戻していた。中へ入ると下足番が履物と下足板を変えてくれる。下足板には“いの七番”とか書いてあった。段を上って客席に入る。そこまでには階段があって二階へも行けるようになっていた。客席は畳敷きの四角い桝席になっていて、分厚い板で仕切られており、人はその上を通行した。休憩時になると売り子が煎餅・落花生・キャラメル等を売りまわり、湊座本館の左に建つお茶屋から茶子がお茶や煙草盆を早足で運んでいた。拍子木の合図で芝居が始まった。

湊座は両側に花道を持つ本格的な芝居小屋だと聞いていた。回り舞台になっていて、上映中でも次の準備が、金槌の音をさせて舞台の後ろで続けられていた。大正3年4月9日落慶の折には、関西歌舞伎一座が記念上演し、5月には川上定奴一座が公演している。時代は移り映画の普及と共に昭和17年“四日市東宝劇場”と改名されるが昭和20年空襲で焼失する。

昭和37年 四日市東宝劇場

しかし、翌昭和21年3月に再開、焼け跡の町の真ん中で実演や東宝映画を上映して、娯楽の少ない戦後の町に寄与していた。昭和38年10月、映画の衰退と共に長い歴史に幕を閉じた。

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5 コメント

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Unknown (伊勢生まれの下総人)
2023-05-21 18:36:45
四日市東宝って、弥生館とは関係はないんですか。🤔🤔🤔
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弥生館 (タケオです)
2023-05-22 09:55:53
弥生座は弥生館と改名 戦後 東宝作品の封切館となりました
繁華街は 諏訪駅や諏訪新道に移っていましたので 新町の四日市東宝劇場は 封切館の権利は取れなかったのかな? ・・・と思います
東宝劇場は入ったことがありません
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懐かしい・・・ (たいじゅ)
2023-05-22 15:20:02
母方の祖母がまだ健在で働いていた頃、祖母の住まい(借家だったと思う)がまさにこの新町内にあり小さい頃よく遊びに訪れました。地図で言うと線路沿い「川村座」北の三叉路の北西側の一角(東側)だったと思います。記憶の中にわずかに残る程度ですが、旅籠?遊郭?を思わせる不思議な家屋の作りだったことを思い出します。湊座が空襲で焼失したならば至近だった祖母の住まいだった場所も焼失したでしょう(祖母は戦後移り住んでいる)。とすれば、子供心に古く感じたあの家ですらまだ新しい昭和20年後築ということか・・・
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Unknown (伊勢生まれの下総人)
2023-05-22 18:37:23
記事の写真を見ると、看板に日活の「電光石火の男」。四日市東宝と名打ちながら、なんで日活の映画を?🤔🤔🤔❓
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川村座 (タケオです)
2023-05-23 12:41:45
たいじゅ様 川村座の北におばあさんの家があったのですね。空襲後の空撮をブログにアップいたします
下総人様 四日市東宝は 封切り後の映画を上映していたと思います 電光石火の男は 昭和37年ですから 当時の話題作品を格安で上映していました 併映の世界大戦争は東宝ですが 地元ロケの日活 話題作 もう一度ご覧ください お見逃しの方も是非!
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