(1)原発は「安全」になったか
野田佳彦・首相は、5月17日、大飯原発再稼働すべき理由として「突然停電になった場合には、人工呼吸器に頼っている人の人命にもかかわる」うんぬんと御託を述べた。
この発言に、再稼働に突き進む原子力ムラの論理の誤りが典型的に表れている。
(a)電力安定供給と原発再稼働とは、次元の異なる問題だ。そして再稼働は、安全性を優先して議論されなければならない。3・11事故の取り返しのつなかい甚大な被害を前にして、安全性を軽視して再稼働を優先することは許されない。
(b)完全に信頼を失った原子力安全・保安院が即席ででっちあげた30項目の「安全基準」を信頼する人はきわめて少数だろう。事実、それは信頼に値しない。
①まだ事故の検証が終了していない。拙速にすぎる。
②地震・津波など狭い範囲の自然災害だけを想定した対策で、人為的ミスやテロ攻撃、飛行機の墜落など、想定すべきことが想定されていない。
③そもそも不十分な30項目の安全対策の中でも重要なベントフィルターや免震重要棟の設置、防潮堤の嵩上げなどが将来のこととされ、工事の計画さえ提出すればよい、とされている。その他は、すでに対策のすんでいる措置を挙げているにすぎない(茶番)。これで再稼働を急いで、福島と同様の災害が起きた場合、世界史上もっとも愚かな国として記録にとどめられるだろう。しかも、福島と違って免震重要棟が存在しないので、事故対応作業では福島以上の被曝を強いられることになる。
④放射性物質の放出を防げなかった場合が想定されていない。安全神話が崩壊した以上、原発を動かすにあたっては、事故を想定したうえで一般公衆に被曝させない措置をとっておくことが不可欠だ。
⑤放射性物質の放出も一般公衆の被曝も防げなかった場合の責任の所在と損害賠償の仕組みに係る対策が、まったく講じられていない。
(c)3・11から1年以上経ても、原発の安全性と事故対応について政府は何の手も打っていなかった、と言える。驚くべき無能さだ。
「学習する組織を発展させない欠陥」・・・・これは、福島原発事故を受けてスイス原子力安全検査局が公表した39項目の教訓の筆頭に掲げられた教訓だ。
(d)茶番に輪をかけたのが、学芸会政治だ。保安院の「安全基準」に対して、原発について全くの素人である野田首相、枝野経産相ら4大臣が「妥当」と判断し、大飯原発についても「安全基準に照らしておおむね妥当」と決めた。
この「政治的判断」は、国民の「常識」に照らして、全く妥当でない。
原子力の安全について専門的知識のない政治家が安全性を確認するなぞ、政治的知性の欠落の象徴だ。
本来ならば、原発の安全性については、原子力ムラとの利害関係がなくて、独立した立場から判断できる専門家に委託して検討させるべきだ。
(続く)
以上、飯田哲也(環境エネルギー政策研究所長)「破綻した原発再稼働の論理 ~反省なき原子力ムラの暴走をどう止めるか~」(「世界」2012年7月号)に拠る。
*
まだフクイチの事故が収束していないのに、政府は「再稼働」をよく口にできるものだ。
政府は、現地に経産省副大臣ないし政務官を常駐させる、としているが、副大臣なぞ何もできない。むしろ、副大臣のおもりをするために役人や電力会社から人を出さねばならないことになる。バカじゃなかろうか。
野田佳彦・首相いわく、「最終的には総理大臣である私の責任で判断する」。どう責任をとるのか。野田総理の責任で事故を防げるのか。
菅直人・前首相も、枝野幸男・前官房長官も責任をとっていない。
(a)フクイチの事故が収束し、(b)その原因を徹底的に検証し、(c)今後の対策と運用の見通しを立てて、はじめて再稼働を口にできる。
4号機の現状が5月26日にメディアに公開されたが、ああの映像からして事故が収束したとは到底見えないだろう。あれでも、用意周到に掃除し、周辺のガレキを片づけたうえで公開している。
事故発生2ヵ月程度の昨年の今ごろは、まだメディア側の知識も乏しく、東電が適当な説明をしても誤魔化すことができた。しかし、今ではマスコミや世論への誤魔化しは難しくなった。政府や本店にとて、これからどんどん厳しくなる。そんな状況で無理に再稼働しないほうがいい。
大飯原発に免震棟はない。万が一、事故が起きたときに周辺住民の安全をいかに守るか、明確な方針もない。しかも、放射性廃棄物の最終問題は何の見通しもないまま置き去りにされている。
以上、記事「ふざけるな!再稼働」(「週刊朝日」2012年月日号)の「福島原発 最高幹部の警告」に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓
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野田佳彦・首相は、5月17日、大飯原発再稼働すべき理由として「突然停電になった場合には、人工呼吸器に頼っている人の人命にもかかわる」うんぬんと御託を述べた。
この発言に、再稼働に突き進む原子力ムラの論理の誤りが典型的に表れている。
(a)電力安定供給と原発再稼働とは、次元の異なる問題だ。そして再稼働は、安全性を優先して議論されなければならない。3・11事故の取り返しのつなかい甚大な被害を前にして、安全性を軽視して再稼働を優先することは許されない。
(b)完全に信頼を失った原子力安全・保安院が即席ででっちあげた30項目の「安全基準」を信頼する人はきわめて少数だろう。事実、それは信頼に値しない。
①まだ事故の検証が終了していない。拙速にすぎる。
②地震・津波など狭い範囲の自然災害だけを想定した対策で、人為的ミスやテロ攻撃、飛行機の墜落など、想定すべきことが想定されていない。
③そもそも不十分な30項目の安全対策の中でも重要なベントフィルターや免震重要棟の設置、防潮堤の嵩上げなどが将来のこととされ、工事の計画さえ提出すればよい、とされている。その他は、すでに対策のすんでいる措置を挙げているにすぎない(茶番)。これで再稼働を急いで、福島と同様の災害が起きた場合、世界史上もっとも愚かな国として記録にとどめられるだろう。しかも、福島と違って免震重要棟が存在しないので、事故対応作業では福島以上の被曝を強いられることになる。
④放射性物質の放出を防げなかった場合が想定されていない。安全神話が崩壊した以上、原発を動かすにあたっては、事故を想定したうえで一般公衆に被曝させない措置をとっておくことが不可欠だ。
⑤放射性物質の放出も一般公衆の被曝も防げなかった場合の責任の所在と損害賠償の仕組みに係る対策が、まったく講じられていない。
(c)3・11から1年以上経ても、原発の安全性と事故対応について政府は何の手も打っていなかった、と言える。驚くべき無能さだ。
「学習する組織を発展させない欠陥」・・・・これは、福島原発事故を受けてスイス原子力安全検査局が公表した39項目の教訓の筆頭に掲げられた教訓だ。
(d)茶番に輪をかけたのが、学芸会政治だ。保安院の「安全基準」に対して、原発について全くの素人である野田首相、枝野経産相ら4大臣が「妥当」と判断し、大飯原発についても「安全基準に照らしておおむね妥当」と決めた。
この「政治的判断」は、国民の「常識」に照らして、全く妥当でない。
原子力の安全について専門的知識のない政治家が安全性を確認するなぞ、政治的知性の欠落の象徴だ。
本来ならば、原発の安全性については、原子力ムラとの利害関係がなくて、独立した立場から判断できる専門家に委託して検討させるべきだ。
(続く)
以上、飯田哲也(環境エネルギー政策研究所長)「破綻した原発再稼働の論理 ~反省なき原子力ムラの暴走をどう止めるか~」(「世界」2012年7月号)に拠る。
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まだフクイチの事故が収束していないのに、政府は「再稼働」をよく口にできるものだ。
政府は、現地に経産省副大臣ないし政務官を常駐させる、としているが、副大臣なぞ何もできない。むしろ、副大臣のおもりをするために役人や電力会社から人を出さねばならないことになる。バカじゃなかろうか。
野田佳彦・首相いわく、「最終的には総理大臣である私の責任で判断する」。どう責任をとるのか。野田総理の責任で事故を防げるのか。
菅直人・前首相も、枝野幸男・前官房長官も責任をとっていない。
(a)フクイチの事故が収束し、(b)その原因を徹底的に検証し、(c)今後の対策と運用の見通しを立てて、はじめて再稼働を口にできる。
4号機の現状が5月26日にメディアに公開されたが、ああの映像からして事故が収束したとは到底見えないだろう。あれでも、用意周到に掃除し、周辺のガレキを片づけたうえで公開している。
事故発生2ヵ月程度の昨年の今ごろは、まだメディア側の知識も乏しく、東電が適当な説明をしても誤魔化すことができた。しかし、今ではマスコミや世論への誤魔化しは難しくなった。政府や本店にとて、これからどんどん厳しくなる。そんな状況で無理に再稼働しないほうがいい。
大飯原発に免震棟はない。万が一、事故が起きたときに周辺住民の安全をいかに守るか、明確な方針もない。しかも、放射性廃棄物の最終問題は何の見通しもないまま置き去りにされている。
以上、記事「ふざけるな!再稼働」(「週刊朝日」2012年月日号)の「福島原発 最高幹部の警告」に拠る。
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