(承前)
(4)原発官僚というレミングの群
(a)経産省、経産省原子力安全・保安院などに群がる原発官僚は、安全性を無視したまま原発再稼働に向けて突き進むレミングの群と化している。
(b)世論は、今や当面の再稼働すら反対する。即時脱原発につながる世論が多数となっている。政府への信頼が地に堕ち、原発を安全に稼働させる資格も能力も政府および電力会社にないことを人々は見抜いている。
(c)経産省官僚のレミング化現象は、菅政権時代から見られた。経産省官僚の当初の目論みでは、もっとも危険な浜岡原発を停止させる一方、玄海原発を皮切りに再稼働を粛々と実現する段取りだった。しかし、住民説明会のやらせ、佐賀県知事の失態、その他の自ら撒いた種によって頓挫し、ストレステストの実施が決まって再稼働はさらに遠のいた。以来、今日に至るまで、枚挙に暇のないほどのレミング的振る舞いが続けられてきた。こうした動きには、3・11の事態を招いたことへの反省が決定的に欠如している。
(d)自ら責任をとるモラルもなく、これまでのありかたを反省する知的能力もない官僚の群に対しては、政治が手を入れて責任をとらせるべきだ。経産省王国を官僚自治のまま任せていることが、エネルギー政策が前に動かない最大の原因だ。
(e)斑目春樹・原子力安全委員会委員長、近藤駿介・原子力安全委員会委員長も責任をとっていない。誰も責任を取らなくていいのなら、レミング官僚はこれまでの政策と秩序のまま進んでいくことに躊躇しないだろう。消費増税、八ッ場ダムなども含め、レミング官僚が民主党政権を使い捨てにしようと考えていることは疑いない。支持率が下がり続ける政権末期の今、取れるものは取っておこうとしているのだ。
(f)政治的知性を欠く政治家とレミング官僚のカップリングによる暴走を止めなければ、再び破滅的事態が起こる。
(続く)
以上、飯田哲也(環境エネルギー研究所長)「破綻した原発再稼働の論理 ~反省なき原子力ムラの暴走をどう止めるか~」(「世界」2012年7月号)に拠る。
*
5月30日の「4大臣会合」で大飯原発再稼働が事実上決まった一方、原子力規制庁設置法案の審議も急ピッチで進んでいる。この動きの中で、崩壊すると信じられていた原子力安全神話と原子力ムラがゾンビのように蘇りつるあることがハッキリしてきた。
2月に国会提出後、ずっと店晒しになっていたが、法案の審議開始後、わずか十数時間の審議で参考人も呼ばずに衆議院を通るらしい。
その決定的要因になっているのが、国会の事故調査委員会(黒川清・委員長)の存在だ。国会事故調は6月中に報告書をまとめる予定だが、原子力ムラから見るとかなり厳しい内容になることが分かってきた。わけても、新らたに作られる原子力規制庁は真に独立した規制機関(完全に国際基準に合致)にすべきだと強く提案する見込みだ。
・全職員の出身省庁への「完全ノーリターン」ルールの設定
・民間人職員も原子力ムラの企業への再就職禁止
・外国人を含めて真に能力があり独立して安全規制を実施できる職員のみ採用
などの抜本的改革を迫られる。そんなことになったら、今審議している規制庁案は全く不十分になるのは必至だ。真の安全規制が実施され、日本の原発は一つも動かせなくなる。
そこで、報告書が出るまでに何としても法案を通してしまいたい、という原子力ムラの意向を受けて、民自の守旧派、さらに公明党まで入って修正が協議されている。
これを支えるのは、もちろん経産官僚だ。彼らの狙いは、原子力安全・保安院の大半の職員を平行異動させた形だけの原子力規制庁を作ることだ。その後、短期間で「新たな」安全基準を作り、「新」規制機関による「新」基準に基づいた「完璧」な安全審査というお墨付きを与えて、原発全基再稼働に突き進もう、という企みだ。
規制庁設置法案の国会通過から10日前後で出る報告書に何の意味があるか。国会議員自ら作った組織=国会事故調の存在意義を否定する国会は、自らの存在意義も否定している。
以上、古賀茂明「「規制庁法案」急進展の舞台裏 ~官々愕々 第21回~」(「週刊現代」2012年6月16日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓
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(4)原発官僚というレミングの群
(a)経産省、経産省原子力安全・保安院などに群がる原発官僚は、安全性を無視したまま原発再稼働に向けて突き進むレミングの群と化している。
(b)世論は、今や当面の再稼働すら反対する。即時脱原発につながる世論が多数となっている。政府への信頼が地に堕ち、原発を安全に稼働させる資格も能力も政府および電力会社にないことを人々は見抜いている。
(c)経産省官僚のレミング化現象は、菅政権時代から見られた。経産省官僚の当初の目論みでは、もっとも危険な浜岡原発を停止させる一方、玄海原発を皮切りに再稼働を粛々と実現する段取りだった。しかし、住民説明会のやらせ、佐賀県知事の失態、その他の自ら撒いた種によって頓挫し、ストレステストの実施が決まって再稼働はさらに遠のいた。以来、今日に至るまで、枚挙に暇のないほどのレミング的振る舞いが続けられてきた。こうした動きには、3・11の事態を招いたことへの反省が決定的に欠如している。
(d)自ら責任をとるモラルもなく、これまでのありかたを反省する知的能力もない官僚の群に対しては、政治が手を入れて責任をとらせるべきだ。経産省王国を官僚自治のまま任せていることが、エネルギー政策が前に動かない最大の原因だ。
(e)斑目春樹・原子力安全委員会委員長、近藤駿介・原子力安全委員会委員長も責任をとっていない。誰も責任を取らなくていいのなら、レミング官僚はこれまでの政策と秩序のまま進んでいくことに躊躇しないだろう。消費増税、八ッ場ダムなども含め、レミング官僚が民主党政権を使い捨てにしようと考えていることは疑いない。支持率が下がり続ける政権末期の今、取れるものは取っておこうとしているのだ。
(f)政治的知性を欠く政治家とレミング官僚のカップリングによる暴走を止めなければ、再び破滅的事態が起こる。
(続く)
以上、飯田哲也(環境エネルギー研究所長)「破綻した原発再稼働の論理 ~反省なき原子力ムラの暴走をどう止めるか~」(「世界」2012年7月号)に拠る。
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5月30日の「4大臣会合」で大飯原発再稼働が事実上決まった一方、原子力規制庁設置法案の審議も急ピッチで進んでいる。この動きの中で、崩壊すると信じられていた原子力安全神話と原子力ムラがゾンビのように蘇りつるあることがハッキリしてきた。
2月に国会提出後、ずっと店晒しになっていたが、法案の審議開始後、わずか十数時間の審議で参考人も呼ばずに衆議院を通るらしい。
その決定的要因になっているのが、国会の事故調査委員会(黒川清・委員長)の存在だ。国会事故調は6月中に報告書をまとめる予定だが、原子力ムラから見るとかなり厳しい内容になることが分かってきた。わけても、新らたに作られる原子力規制庁は真に独立した規制機関(完全に国際基準に合致)にすべきだと強く提案する見込みだ。
・全職員の出身省庁への「完全ノーリターン」ルールの設定
・民間人職員も原子力ムラの企業への再就職禁止
・外国人を含めて真に能力があり独立して安全規制を実施できる職員のみ採用
などの抜本的改革を迫られる。そんなことになったら、今審議している規制庁案は全く不十分になるのは必至だ。真の安全規制が実施され、日本の原発は一つも動かせなくなる。
そこで、報告書が出るまでに何としても法案を通してしまいたい、という原子力ムラの意向を受けて、民自の守旧派、さらに公明党まで入って修正が協議されている。
これを支えるのは、もちろん経産官僚だ。彼らの狙いは、原子力安全・保安院の大半の職員を平行異動させた形だけの原子力規制庁を作ることだ。その後、短期間で「新たな」安全基準を作り、「新」規制機関による「新」基準に基づいた「完璧」な安全審査というお墨付きを与えて、原発全基再稼働に突き進もう、という企みだ。
規制庁設置法案の国会通過から10日前後で出る報告書に何の意味があるか。国会議員自ら作った組織=国会事故調の存在意義を否定する国会は、自らの存在意義も否定している。
以上、古賀茂明「「規制庁法案」急進展の舞台裏 ~官々愕々 第21回~」(「週刊現代」2012年6月16日号)に拠る。
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