(承前)
(3)本音は「再稼働か、倒産か」
(a)再稼働なき電力安定供給は可能だ。
だが、原発に固執しつづける電力会社は、「再稼働か、停電か」と踏み絵を迫っている。実のところ、彼らは内心で「再稼働か、倒産か」と呟いているのだ。再稼働問題の本質は、電力会社の経営問題なのだ。
金子勝・慶應義塾大学教授の分析によれば、このまま原発停止が続けば、来春には電力会社(沖縄電力を除く)は軒並み債務超過に陥る。すなわち、倒産する可能性が高い。
(b)政府のとるべき措置
関西電力を始めとする電力会社(東電を除く)が深い危機感を抱いていることは疑いもなく事実だ。
本来であれば、政府はなし崩し的に原発を停止するのではなく、
①政治的判断として1~2年原発を停止させるモラトリアムを設定し、そのうえで、
②既存の原子炉の安全性確認やエネルギー政策に係る国民的議論を徹底して行い、
③その間の燃料費増加などの電力会社の負担増について(交付国債などの形で)政府がいったん立て替える。
・・・・といった措置を採るべきだった。こうした措置を採っていれば、「原発倒産」の悪夢に憑かれた電力会社が再稼働と電力料金値上げへ突っ走る状況にはならなかっただろう。
(c)電力会社の経営危機は、いくつかの原発が稼働したところで、いずれ現実となる。その際、今の東電のような悪しき国有化は避けなければならない。
今からでも、東電は破綻させ、損害賠償と事故処理は政府が責任を引き取る形にすべきだ。
損害賠償支援機構は、現在の枠組み(機構が後ろに回る)ではなく、機構そのものが損害賠償することとして、民営化を前提とした新生東電を新設会社でつくり、発送電分離を進めつつ資産を売却し、売却利益が出るならばそれも損害賠償に使えばよい。
(d)上記の枠組みは、遠からず経営危機を迎える他の電力会社についても通用する。発送電部分と電力会社の持ち株会社に切り分けるホールディングカンパニー方式にしたうえで、10の送電会社と国営東京送電の合併によって「日本送電」をつくることを検討すべきだ。
こうした方向性は、すでに現実の中から立ち現れている。今夏の中西日本6社間による電力融通は、安定供給のためには従来のような「電力幕藩体制」では不利であることを示している。
電力融通は、来るべき発送電分離のISO(independent system operator 独立系統運用機関)の原型として、安定供給体制を構築していく第一歩となろう。
DSMの概念が入ったことと併せ、発送電分離後の事実上のオペレーションが始まっている、と言える。
(続く)
以上、飯田哲也(環境エネルギー研究所長)「破綻した原発再稼働の論理 ~反省なき原子力ムラの暴走をどう止めるか~」(「世界」2012年7月号)に拠る。
*
(a)追い詰められた関電は、原発再稼働を電気需要のせいだと言い訳できなくなり、「再稼働は電気需要の問題とは別」だと述べた。
(b)停電と再稼働がからまないにも拘わらず、再稼働を求め続ける理由は、原発の不良債権化だ。再稼働せず、脱原発すれば原発は資産から負債になる。企業会計上、債務超過に陥る。それは困るので、再稼働して時間を稼ぎ、その間に利益を上げて引当金を積み、債務超過にならないようにしよう、というわけだ。
(c)しかし、国民の命と単なる「時間稼ぎ」が比較になるか。それならば、企業会計に例外を設けたほうが、まだマシだ。しかも、今の政策のままでは、負債の増加が避けられない。これまで、再処理して使うという偽装シナリオによって、使用済み核燃料=「負債」を「資産」扱いにして、有害物質を資産計上してきた。そのために動かさなくても維持費だけで毎年1,100億円かかる六ヶ所村再処理工場や、同じく200億円以上かかる高速増殖炉「もんじゅ」を資産計上させてきた。
(d)原発を止める総発電コストが上がるのは、火力発電の燃料代のせいではなく、再処理工場や「もんじゅ」の維持費のためだ。
以上、田中優(未来バンク事業組合理事長)「偽装計画停電をくいとめよう」(「世界」2012年7月号)に拠る。
*
東京電力の家庭料金値上げを検証する政府委員会(6月12日夜開催)で、原発関連費として年間400億円以上が計上されていることが明らかになった。この費用は、現在運転を停止している福島第一原発の5号機、6号機、福島第二原発の4基の計6基に関わる。
(a)会計上必要な減価償却費として、今後3年間、平均で年間414億円。
(b)原子炉を100度以下に維持する「冷温停止」状態を維持する運営費に年間486億。
合計900億円が盛り込まれている。
以上、記事「【東電】電気料金原価に原発の関連費400億円を計上! ネットユーザーからは不満の声「払いたくない」「ひどい」など」【楽天ニュース】に拠る。
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(3)本音は「再稼働か、倒産か」
(a)再稼働なき電力安定供給は可能だ。
だが、原発に固執しつづける電力会社は、「再稼働か、停電か」と踏み絵を迫っている。実のところ、彼らは内心で「再稼働か、倒産か」と呟いているのだ。再稼働問題の本質は、電力会社の経営問題なのだ。
金子勝・慶應義塾大学教授の分析によれば、このまま原発停止が続けば、来春には電力会社(沖縄電力を除く)は軒並み債務超過に陥る。すなわち、倒産する可能性が高い。
(b)政府のとるべき措置
関西電力を始めとする電力会社(東電を除く)が深い危機感を抱いていることは疑いもなく事実だ。
本来であれば、政府はなし崩し的に原発を停止するのではなく、
①政治的判断として1~2年原発を停止させるモラトリアムを設定し、そのうえで、
②既存の原子炉の安全性確認やエネルギー政策に係る国民的議論を徹底して行い、
③その間の燃料費増加などの電力会社の負担増について(交付国債などの形で)政府がいったん立て替える。
・・・・といった措置を採るべきだった。こうした措置を採っていれば、「原発倒産」の悪夢に憑かれた電力会社が再稼働と電力料金値上げへ突っ走る状況にはならなかっただろう。
(c)電力会社の経営危機は、いくつかの原発が稼働したところで、いずれ現実となる。その際、今の東電のような悪しき国有化は避けなければならない。
今からでも、東電は破綻させ、損害賠償と事故処理は政府が責任を引き取る形にすべきだ。
損害賠償支援機構は、現在の枠組み(機構が後ろに回る)ではなく、機構そのものが損害賠償することとして、民営化を前提とした新生東電を新設会社でつくり、発送電分離を進めつつ資産を売却し、売却利益が出るならばそれも損害賠償に使えばよい。
(d)上記の枠組みは、遠からず経営危機を迎える他の電力会社についても通用する。発送電部分と電力会社の持ち株会社に切り分けるホールディングカンパニー方式にしたうえで、10の送電会社と国営東京送電の合併によって「日本送電」をつくることを検討すべきだ。
こうした方向性は、すでに現実の中から立ち現れている。今夏の中西日本6社間による電力融通は、安定供給のためには従来のような「電力幕藩体制」では不利であることを示している。
電力融通は、来るべき発送電分離のISO(independent system operator 独立系統運用機関)の原型として、安定供給体制を構築していく第一歩となろう。
DSMの概念が入ったことと併せ、発送電分離後の事実上のオペレーションが始まっている、と言える。
(続く)
以上、飯田哲也(環境エネルギー研究所長)「破綻した原発再稼働の論理 ~反省なき原子力ムラの暴走をどう止めるか~」(「世界」2012年7月号)に拠る。
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(a)追い詰められた関電は、原発再稼働を電気需要のせいだと言い訳できなくなり、「再稼働は電気需要の問題とは別」だと述べた。
(b)停電と再稼働がからまないにも拘わらず、再稼働を求め続ける理由は、原発の不良債権化だ。再稼働せず、脱原発すれば原発は資産から負債になる。企業会計上、債務超過に陥る。それは困るので、再稼働して時間を稼ぎ、その間に利益を上げて引当金を積み、債務超過にならないようにしよう、というわけだ。
(c)しかし、国民の命と単なる「時間稼ぎ」が比較になるか。それならば、企業会計に例外を設けたほうが、まだマシだ。しかも、今の政策のままでは、負債の増加が避けられない。これまで、再処理して使うという偽装シナリオによって、使用済み核燃料=「負債」を「資産」扱いにして、有害物質を資産計上してきた。そのために動かさなくても維持費だけで毎年1,100億円かかる六ヶ所村再処理工場や、同じく200億円以上かかる高速増殖炉「もんじゅ」を資産計上させてきた。
(d)原発を止める総発電コストが上がるのは、火力発電の燃料代のせいではなく、再処理工場や「もんじゅ」の維持費のためだ。
以上、田中優(未来バンク事業組合理事長)「偽装計画停電をくいとめよう」(「世界」2012年7月号)に拠る。
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東京電力の家庭料金値上げを検証する政府委員会(6月12日夜開催)で、原発関連費として年間400億円以上が計上されていることが明らかになった。この費用は、現在運転を停止している福島第一原発の5号機、6号機、福島第二原発の4基の計6基に関わる。
(a)会計上必要な減価償却費として、今後3年間、平均で年間414億円。
(b)原子炉を100度以下に維持する「冷温停止」状態を維持する運営費に年間486億。
合計900億円が盛り込まれている。
以上、記事「【東電】電気料金原価に原発の関連費400億円を計上! ネットユーザーからは不満の声「払いたくない」「ひどい」など」【楽天ニュース】に拠る。
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