
佐藤優は、外務省のインテリジェンス業務の一環としてモサドとも交渉し、当時の長官エフライム・ハレヴィとも親交があったらしい【注1】。
そのハレヴィの回想録【注2】『モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」』が出たあたりから感じていることだが、イスラエルという国あるいはモサドは、内部で過去を検証しているのか、公開できる事実は公開することを恐れなくなったらしい。
内部告発【注3】を圧力をかけて出版を差し止めようとした頃とは変わったのか。
むろん、外部のジャーナリスト【注4】や歴史家【注5】によるモサド研究は数多い。
しかし、マイケル・バー=ゾウハーらによる本書は、イスラエルという国の内部から、そしてその国のインテリジェンス活動に関わった人が、モサドの活動の歴史となった部分を記しているのが本書だ。参考文献およびソースが非常に多い。ヘブライ語の文献はわざわざ英訳してある。
ミュンヘン事件とそれに対するモサドの活動についても、ノンフィクション【注6】と本書とを比較すると、やはり本書は歴史を描こうとしている、と思う。
【注1】「【読書余滴】佐藤優の、上司と部下の危険な関係」
【注2】エフライム・ハレヴィ(河野純治・訳)『モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」』(光文社、2007)
【注3】「書評:『モサド情報員の告白』」
【注4】「書評:『憂国のスパイ -イスラエル諜報機関モサド-』」
【注5】「【読書余滴】イスラエルのインテリジェンス・コミュニティ」 「書評:『モサド -暗躍と抗争の六十年史-』 ~インテリジェンスと国家~」
【注6】「書評:『標的は11人 -モサド暗殺チームの記録-』」
□マイケル・バー=ゾウハー/ニシム・ミシャル(上野元美・訳)『モサド・ファイル ~イスラエル最強スパイ列伝~』(早川書房、2013.1)
【参考】マイケル・バー=ゾウハーの著作
(村社伸・訳)『過去からの狙撃者』(:ハヤカワ文庫、1978)
(:田村義進・訳)『二度死んだ男』(:ハヤカワ文庫、1978)
(:田村義進・訳)『エニグマ奇襲指令』(:ハヤカワ文庫、1980)
(広瀬順弘・訳)『パンドラ抹殺文書』(:ハヤカワ文庫、1981。後に2006)
(広瀬順弘・訳)『ファントム謀略ルート』(:ハヤカワ文庫、1982)
(広瀬順弘・訳)『復讐のダブル・クロス』 (:ハヤカワ文庫、1983)
(広瀬順弘・訳)『真冬に来たスパイ』 (:ハヤカワ文庫、1986)
(広瀬順弘・訳)『無名戦士の神話』(:ハヤカワ文庫、1988)
(広瀬順弘・訳)『悪魔のスパイ』(:ハヤカワ文庫、1994)
(広瀬順弘・訳)『影の兄弟』(:ハヤカワ文庫、1998)
(横山啓明・訳)『ベルリン・コンスピラシー』(:ハヤカワ文庫、2010)
(水木光・訳)『ダッハウから来たスパイ』(:ハヤカワ文庫、1986)
(広瀬順弘・訳)『復讐者たち』(:ハヤカワ文庫、1989)
(横山啓明・訳)『ミュンヘン -オリンピック・テロ事件の黒幕を追え』(:ハヤカワ文庫、2006)
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