(1)日本の最上位0.1%の年収は3,300万円以上(米国1億5,000万円以上)だから、日本には「スーパーリッチ」はかなり少ない。日本では格差が深刻ではない、というわけではなく、米国・欧州の格差とは異なるということだ。【注1】【注2】
(2)日本型格差の特徴の一つが不動産所有格差だ。都市部の資産価値のある持ち家の有無で格差ができる。・・・・先進国では第二次世界大戦後に資産に占める住宅の割合が大きく増えている。ピケティの指摘は、日本の格差問題にも合致する部分がある。
(a)持ち家があり、余裕のある家庭なら、子どもを塾に通わせて十分な教育を受けさせ、有名大学に入れられる。彼らの正社員率は高く、将来的には不動産も引き継げる。ある程度の資産を持ち、ほどほど何とかなる層が国民の6割近く。しかも、中流の人たちへの課税は国際的に見ても高くない。大企業の社員は中流、というよりそれ以上の所得階層に属する。中堅企業の正社員にも下流の②はいない。
(b)他の4割は、親に持ち家がなく、収入も少ない。子どもも不安定な職に就いて収入が低い。親が老いれば扶養の義務があり、家賃を払う一方で、相続する資産はない。
(3)結婚も格差拡大の一因となりつつある。かつてに比べ、似たような学歴・職業同士の結婚が増えている。夫の収入が非常に高いとか、中流以上のダブルインカムという経済力のある家計。
(4)学習意欲や習慣を大きく左右する家庭内の文化資本。金と環境の両面で恵まれた子どもと、そうでない子どもの間で教育格差が広がりやすい。子どもの頃から別の育てられ方、別の教育ルートを歩むことが一般的になってしまうと、中流と下流はお互いの生活や思考が想像もできないという状態になってしまいかねない。
(5)(3)や(4)は、日本社会における大きな分裂・分断の危機だ。このような想像力が欠如した状況で再分配政策を行うのは非常に困難だ。
(6)米国のように1%対99%なら、選挙で変えられる。しかし、60%対40%の戦いは絶望的だ。
(7)ピケティは、欧州で中間層が没落すると指摘している。日本ではむしろ、かつての「総中流」から分かれた6割の「中流」と、4割の「下流」が分断され、それが社会的対立を惹起する方向へ進む可能性が高い。
【注1】日本でも格差が広がっている。国税庁による民間給与実態調査(2013年度)でも、前年度比で年収100万円以下の給与所得者が7%増え、2,500万円以上の階層は40%増えている。【「第3章」の森永卓郎(経済アナリスト)「膨大な作業で格差拡大を証明 日本も深刻な拡大」】
【注2】確かに日本のジニ係数は戦後徐々に下がっていき、1970年代をボトムに上がりつつあった。しかし、その要因は高齢化や単身世帯の増加であり、格差拡大の結果とは必ずしも言えない。【「第3章」の大竹文雄(大阪大学副学長・教授)「日本の格差は他国よりまし 格差感広がる裏に株価上昇」】
□「週刊ダイヤモンド」2015年2月14日号の「特集1 そうだったのか! ピケティ『21世紀の資本』」の「第3章 もっと知りたいピケティ」のうち「日本の格差」の飯田泰之(明治大学教授)「日本の格差を決める持ち家 社会は6対4で分断される」
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【参考】
「【ピケティ】池上彰の3ポイントで解説 ~ そうだったのか!『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】アベノミクス批判 ~金融緩和・消費税~」
「【ピケティ】シンプルで明快な主張 ~文学と経済学との関係~」
「【ピケティ】格差は止めなければ止まらない ~政治的無為への警告~」
「【ピケティ】総特集号(「現代思想」2015年1月増刊号)の目次」
「【ピケティ】『21世紀の資本』詳細目次」
「【ピケティ】に対するインタビュー ~失われた平等を求めて~」
「【ピケティ】勲章拒否の警告 ~再構築される「世襲的資本主義」~」
「【佐藤優】【ピケティ】はマルクスとは異質な発想 ~『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】『21世紀の資本』に係る書評の幾つか」
「【ピケティ】は21世紀のマルクスか ~ピケティ現象を読み解く~」
「【ピケティ】資本主義の今後の見通し ~トマ・ピケティ(3)~」
「【ピケティ】現代経済学を刷新する巨大なインパクト ~トマ・ピケティ(2)~」
「【ピケティ】分析の特徴と主な考え ~トマ・ピケティ『21世紀の資本』~」
「【経済】累進資産課税が格差を解決する ~アベノミクス批判~」
「【経済】格差が広がると経済が成長しない ~株主資本主義の危険~」
「【経済】なぜ格差は拡大するか ~富の分配の歴史~」
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(2)日本型格差の特徴の一つが不動産所有格差だ。都市部の資産価値のある持ち家の有無で格差ができる。・・・・先進国では第二次世界大戦後に資産に占める住宅の割合が大きく増えている。ピケティの指摘は、日本の格差問題にも合致する部分がある。
(a)持ち家があり、余裕のある家庭なら、子どもを塾に通わせて十分な教育を受けさせ、有名大学に入れられる。彼らの正社員率は高く、将来的には不動産も引き継げる。ある程度の資産を持ち、ほどほど何とかなる層が国民の6割近く。しかも、中流の人たちへの課税は国際的に見ても高くない。大企業の社員は中流、というよりそれ以上の所得階層に属する。中堅企業の正社員にも下流の②はいない。
(b)他の4割は、親に持ち家がなく、収入も少ない。子どもも不安定な職に就いて収入が低い。親が老いれば扶養の義務があり、家賃を払う一方で、相続する資産はない。
(3)結婚も格差拡大の一因となりつつある。かつてに比べ、似たような学歴・職業同士の結婚が増えている。夫の収入が非常に高いとか、中流以上のダブルインカムという経済力のある家計。
(4)学習意欲や習慣を大きく左右する家庭内の文化資本。金と環境の両面で恵まれた子どもと、そうでない子どもの間で教育格差が広がりやすい。子どもの頃から別の育てられ方、別の教育ルートを歩むことが一般的になってしまうと、中流と下流はお互いの生活や思考が想像もできないという状態になってしまいかねない。
(5)(3)や(4)は、日本社会における大きな分裂・分断の危機だ。このような想像力が欠如した状況で再分配政策を行うのは非常に困難だ。
(6)米国のように1%対99%なら、選挙で変えられる。しかし、60%対40%の戦いは絶望的だ。
(7)ピケティは、欧州で中間層が没落すると指摘している。日本ではむしろ、かつての「総中流」から分かれた6割の「中流」と、4割の「下流」が分断され、それが社会的対立を惹起する方向へ進む可能性が高い。
【注1】日本でも格差が広がっている。国税庁による民間給与実態調査(2013年度)でも、前年度比で年収100万円以下の給与所得者が7%増え、2,500万円以上の階層は40%増えている。【「第3章」の森永卓郎(経済アナリスト)「膨大な作業で格差拡大を証明 日本も深刻な拡大」】
【注2】確かに日本のジニ係数は戦後徐々に下がっていき、1970年代をボトムに上がりつつあった。しかし、その要因は高齢化や単身世帯の増加であり、格差拡大の結果とは必ずしも言えない。【「第3章」の大竹文雄(大阪大学副学長・教授)「日本の格差は他国よりまし 格差感広がる裏に株価上昇」】
□「週刊ダイヤモンド」2015年2月14日号の「特集1 そうだったのか! ピケティ『21世紀の資本』」の「第3章 もっと知りたいピケティ」のうち「日本の格差」の飯田泰之(明治大学教授)「日本の格差を決める持ち家 社会は6対4で分断される」
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【参考】
「【ピケティ】池上彰の3ポイントで解説 ~ そうだったのか!『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】アベノミクス批判 ~金融緩和・消費税~」
「【ピケティ】シンプルで明快な主張 ~文学と経済学との関係~」
「【ピケティ】格差は止めなければ止まらない ~政治的無為への警告~」
「【ピケティ】総特集号(「現代思想」2015年1月増刊号)の目次」
「【ピケティ】『21世紀の資本』詳細目次」
「【ピケティ】に対するインタビュー ~失われた平等を求めて~」
「【ピケティ】勲章拒否の警告 ~再構築される「世襲的資本主義」~」
「【佐藤優】【ピケティ】はマルクスとは異質な発想 ~『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】『21世紀の資本』に係る書評の幾つか」
「【ピケティ】は21世紀のマルクスか ~ピケティ現象を読み解く~」
「【ピケティ】資本主義の今後の見通し ~トマ・ピケティ(3)~」
「【ピケティ】現代経済学を刷新する巨大なインパクト ~トマ・ピケティ(2)~」
「【ピケティ】分析の特徴と主な考え ~トマ・ピケティ『21世紀の資本』~」
「【経済】累進資産課税が格差を解決する ~アベノミクス批判~」
「【経済】格差が広がると経済が成長しない ~株主資本主義の危険~」
「【経済】なぜ格差は拡大するか ~富の分配の歴史~」
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