【ピケティ】討論会「格差・税制・経済成長 『21世紀の資本』の射程を問う」
トマ・ピケティ・パリ経済学校教授は、2015年1月29日から3泊4日、来日した。4日間の滞在中、会見【注】や講演などを4本、取材15本、サイン会1本というハードスケジュールをこなした。その一つに以下の討論会がある。
(1)討論会「格差・税制・経済成長 『21世紀の資本』の射程を問う」
主催:(公財)日仏会館と日仏会館フランス事務所
期日:1月30日(金)【注】
場所:東京・日仏会館
(2)ピケティ教授が語るところによれば、
・米国は1920年代よりも現在の方が、富の集中が高い水準で上位4%の人に集中している。
・1980年代に、「日本やドイツに抜かれるのではないか」という危機感を持ったレーガン政権が富裕層への所得税率を下げるなどしたことから格差が拡大してきた。
・レーガン政権の選択は正しくなかった。あまりに不平等だとイノベーション(革新)に役立たない。
・欧州でも経済格差は拡大しているが、米国ほどではない。
・日本の格差は米国と欧州の中間ぐらいである。
・資産の世襲の割合は、米国より日本や欧州の方が高い。
(3)橘木俊詔・京都大学名誉教授(経済学)も、
・先進国で貧困率が一番高いのは17%の米国だ。
・日本は世界で2番目の貧困大国だ。15%の人が貧困にあえいでいる不平等な国だ。
(4)ピケティ教授はさらに語る。
・格差はお金だけでなく、アイデンティティも失わせる。
・格差拡大に対する解決策は、さまざまな形の再分配があるが、累進課税の強化を推す。
(5)橘木名誉教授→ピケティ教授との質疑応答
【橘木】日本は福祉を家庭に押し付けてきたが、今後は北欧のような福祉国家をめざして消費税率を25~30%にしていくべきだと思うか?
【ピケティ】消費税率を上げることには反対だ。日本の税制については、高齢者と若い人の世代間のリバランス(再均衡)をすることが大切だ。若い世代は相続資産がなければ、労働所得はわずかで賃金は上がらないまま、財産形成をすることができない。
(6)日本では、ピケティ教授がアベノミクスを評価しているのか否かという議論がある。
竹信三恵子・ジャーナリスト/『ピケティ入門』(週刊金曜日、2014)の著者によれば、
・安倍晋三・首相やアベノミクス支持者は、ピケティが経済成長を否定しないことで評価されたと強弁している。
・しかし、ピケティの主張の重点は成長ではなく、成長の成果を再分配する仕組みの強化だ。
・安倍首相らの、焦点ずらしの曲解による世論誘導は不誠実だ。
(7)『21世紀の資本』では、世界的に広がる経済格差を解消するため、富裕層の資産に対して国境を越えた「世界的累進課税」の導入を提案している。
この提案に対して、安倍首相は1月28日、参議院本会議で「導入に当たって執行面で難しい」と答弁した。
(1)の討論会でも、会場から「世界的累進課税」の導入は「実現可能だと思うか」と質問があった。
これに対し、ピケティ教授は「実現可能だ」と言い切った。「不動産には財産税がかけられているが、なぜ金融資産にはかけられないのか。税金は数百年以上前に導入されたが、当時の資産は不動産だった。それを変えてこなかった」と、世界的に金融の透明性を高めていく必要性を語った。
【注】例えば、1月31日に日本記者クラブ(東京都千代田区)で会見が行われた。
□赤岩友香「「世界的累進資産課税は可能」(「週刊金曜日」2015年2月6日号)
↓クリック、プリーズ。↓
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【参考】
「【ピケティ】をめぐる経済学論争 ~米英で沸騰中~」
「【ピケティ】格差を決める持ち家、社会は6対4で分断 ~日本~」
「【ピケティ】池上彰の3ポイントで解説 ~ そうだったのか!『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】アベノミクス批判 ~金融緩和・消費税~」
「【ピケティ】シンプルで明快な主張 ~『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】格差は止めなければ止まらない ~政治的無為への警告~」
「【ピケティ】総特集号(「現代思想」2015年1月増刊号)の目次」
「【ピケティ】『21世紀の資本』詳細目次」
「【ピケティ】に対するインタビュー ~失われた平等を求めて~」
「【ピケティ】勲章拒否の警告 ~再構築される「世襲的資本主義」~」
「【佐藤優】【ピケティ】はマルクスとは異質な発想 ~『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】『21世紀の資本』に係る書評の幾つか」
「【ピケティ】は21世紀のマルクスか ~ピケティ現象を読み解く~」
「【ピケティ】資本主義の今後の見通し ~トマ・ピケティ(3)~」
「【ピケティ】現代経済学を刷新する巨大なインパクト ~トマ・ピケティ(2)~」
「【ピケティ】分析の特徴と主な考え ~トマ・ピケティ『21世紀の資本』~」
「【経済】累進資産課税が格差を解決する ~アベノミクス批判~」
「【経済】格差が広がると経済が成長しない ~株主資本主義の危険~」
「【経済】なぜ格差は拡大するか ~富の分配の歴史~」
トマ・ピケティ・パリ経済学校教授は、2015年1月29日から3泊4日、来日した。4日間の滞在中、会見【注】や講演などを4本、取材15本、サイン会1本というハードスケジュールをこなした。その一つに以下の討論会がある。
(1)討論会「格差・税制・経済成長 『21世紀の資本』の射程を問う」
主催:(公財)日仏会館と日仏会館フランス事務所
期日:1月30日(金)【注】
場所:東京・日仏会館
(2)ピケティ教授が語るところによれば、
・米国は1920年代よりも現在の方が、富の集中が高い水準で上位4%の人に集中している。
・1980年代に、「日本やドイツに抜かれるのではないか」という危機感を持ったレーガン政権が富裕層への所得税率を下げるなどしたことから格差が拡大してきた。
・レーガン政権の選択は正しくなかった。あまりに不平等だとイノベーション(革新)に役立たない。
・欧州でも経済格差は拡大しているが、米国ほどではない。
・日本の格差は米国と欧州の中間ぐらいである。
・資産の世襲の割合は、米国より日本や欧州の方が高い。
(3)橘木俊詔・京都大学名誉教授(経済学)も、
・先進国で貧困率が一番高いのは17%の米国だ。
・日本は世界で2番目の貧困大国だ。15%の人が貧困にあえいでいる不平等な国だ。
(4)ピケティ教授はさらに語る。
・格差はお金だけでなく、アイデンティティも失わせる。
・格差拡大に対する解決策は、さまざまな形の再分配があるが、累進課税の強化を推す。
(5)橘木名誉教授→ピケティ教授との質疑応答
【橘木】日本は福祉を家庭に押し付けてきたが、今後は北欧のような福祉国家をめざして消費税率を25~30%にしていくべきだと思うか?
【ピケティ】消費税率を上げることには反対だ。日本の税制については、高齢者と若い人の世代間のリバランス(再均衡)をすることが大切だ。若い世代は相続資産がなければ、労働所得はわずかで賃金は上がらないまま、財産形成をすることができない。
(6)日本では、ピケティ教授がアベノミクスを評価しているのか否かという議論がある。
竹信三恵子・ジャーナリスト/『ピケティ入門』(週刊金曜日、2014)の著者によれば、
・安倍晋三・首相やアベノミクス支持者は、ピケティが経済成長を否定しないことで評価されたと強弁している。
・しかし、ピケティの主張の重点は成長ではなく、成長の成果を再分配する仕組みの強化だ。
・安倍首相らの、焦点ずらしの曲解による世論誘導は不誠実だ。
(7)『21世紀の資本』では、世界的に広がる経済格差を解消するため、富裕層の資産に対して国境を越えた「世界的累進課税」の導入を提案している。
この提案に対して、安倍首相は1月28日、参議院本会議で「導入に当たって執行面で難しい」と答弁した。
(1)の討論会でも、会場から「世界的累進課税」の導入は「実現可能だと思うか」と質問があった。
これに対し、ピケティ教授は「実現可能だ」と言い切った。「不動産には財産税がかけられているが、なぜ金融資産にはかけられないのか。税金は数百年以上前に導入されたが、当時の資産は不動産だった。それを変えてこなかった」と、世界的に金融の透明性を高めていく必要性を語った。
【注】例えば、1月31日に日本記者クラブ(東京都千代田区)で会見が行われた。
□赤岩友香「「世界的累進資産課税は可能」(「週刊金曜日」2015年2月6日号)
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【参考】
「【ピケティ】をめぐる経済学論争 ~米英で沸騰中~」
「【ピケティ】格差を決める持ち家、社会は6対4で分断 ~日本~」
「【ピケティ】池上彰の3ポイントで解説 ~ そうだったのか!『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】アベノミクス批判 ~金融緩和・消費税~」
「【ピケティ】シンプルで明快な主張 ~『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】格差は止めなければ止まらない ~政治的無為への警告~」
「【ピケティ】総特集号(「現代思想」2015年1月増刊号)の目次」
「【ピケティ】『21世紀の資本』詳細目次」
「【ピケティ】に対するインタビュー ~失われた平等を求めて~」
「【ピケティ】勲章拒否の警告 ~再構築される「世襲的資本主義」~」
「【佐藤優】【ピケティ】はマルクスとは異質な発想 ~『21世紀の資本』~」
「【ピケティ】『21世紀の資本』に係る書評の幾つか」
「【ピケティ】は21世紀のマルクスか ~ピケティ現象を読み解く~」
「【ピケティ】資本主義の今後の見通し ~トマ・ピケティ(3)~」
「【ピケティ】現代経済学を刷新する巨大なインパクト ~トマ・ピケティ(2)~」
「【ピケティ】分析の特徴と主な考え ~トマ・ピケティ『21世紀の資本』~」
「【経済】累進資産課税が格差を解決する ~アベノミクス批判~」
「【経済】格差が広がると経済が成長しない ~株主資本主義の危険~」
「【経済】なぜ格差は拡大するか ~富の分配の歴史~」