語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】佐々淳行の、国会答弁のテクニック ~悪用のおそれ有り~

2011年09月29日 | 震災・原発事故
(1)衆議院はアメフト、参議院はピンポン
 (a)衆議院の委員会では、答弁の時間も委員の持ち時間に計上される。だから、アメリカン・フットボールのように、ボールを一旦抱えたら、なるべく長く走りまわるのがコツだ。
 <例1>佐々淳行は、1980年、予算委員会で、「ハワイ沖日米共同訓練、リムパック演習は違憲だ」と攻撃する不破哲三・委員(共産党)の質問に対し、「何ら違憲でない」という答弁を、時計を見ながら、5分30秒、えんえんと続けて、不破委員の持ち時間を潰した。爾来、10有余年、不破から佐々への質問は一度もなかった。

 (b)参議院の委員会では、答弁の間は時計の針は止まっている。だから、ポンと、簡単に答弁するのがコツだ。
 <例2>和田静夫・委員(社会党)は、20~30秒の質問で総理、外相、蔵相、その他の答弁を求め、トータルで4時間、質疑を続けたことがある。この「牛歩質問」に対しては、ポンと一言、「それは違います」と答え、政府委員の席に座るのだ。質問者は激高し、誠意がないとか、長々とあれこれ悪口雑言をわめく。8分はたちまち過ぎてしまう。

(2)総論には各論、各論には総論で答える
 (a)総論には各論で
 <例3>Q:「米軍基地の存在は周辺の治安を乱し、騒音などの公害を及ぼしている。米軍基地の早期返還を求めよ」
      A:「三沢基地などでは盆踊りに米軍家族が参加し、基地内のクリスマスには周辺住民が招待され、大変うまくいっております」

 (b)各論には総論で
 <例4>Q:「警察官がセクハラとはケシカラン」
     A:「22万5千人の真面目な警察官たちも泣いております」

 なお、「ネヴァ・セイ・ネヴァ」だ。「絶対ありません」とは、絶対言うな。

□佐々淳行『危機管理最前線』(文春文庫、2007)
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