語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>東京電力に関する経営・財務調査委員会 ~10月3日に報告書発表~

2011年09月29日 | 震災・原発事故
 東電「救済」にあたって、政府は交換条件を一つ突きつけた。「東京電力に関する経営・財務調査委員会」(5月24日設置)による実態調査に応じることだ。
 委員長は、下河辺和彦・弁護士/元産業再生機構社外取締役。委員は、松村敏弘・東大教授(発想電分離が持論)、葛西敬之・JR東海会長(国鉄の分割民営化を推進)ら。厳正な資産査定(デュー・デリジェンス)、甘い経費の見直し、売却可能な余剰資産やリストラしうる余地を見つけ出すのが仕事だ。「原子力損害賠償支援機構」(9月26日開所式)には、メンバーが運営委員に横滑りし、これまでの査定を参考に東電への国費による支援を決める。
 調査委は、9月20日までに会計士や弁護士ら150人を東電に送りこみ、帳簿や契約書を洗いだしてきた。

 東電の経費の驚くべき実態が明らかになってきた。
 すごく変なところにいっぱい使っています。いろんなところに毒が回っている。【報告を知る有識者】
 ブラックジャーナリスト、反共を旨とする出版社主宰者、有力政治家と親密な警備会社経営者・・・・。あらゆる魑魅魍魎が東電のおこぼれにあずかっていた。
 かつて産業再生機構には検事が出向し、圧力をかけてくる政治家ににらみを利かせた。原子力損害賠償支援機構にも公安から人をもらったほうがいい、との提案がある。

 東電は、独占事業であるにもかかわらず年間広告費300億円を費消している。人件費は高止まり、OBの年金も高水準だ。総括原価方式により、コストに組みこみ、電気料金に反映させているからだ。いくらでも経費を使えるし、資産は多くもっていたほうがよい。膨張圧力が加わる一方、非効率な経営慣行が温存される。発電・送電など工程ごとの収支管理ができていない(どんぶり勘定)。
 東証の上場基準を満たしていない。

 特別目的会社(SPC)まで含めれば、グループ会社は265社。調査委は、発電のコア事業と情報通信・サービス業などのノンコア事業に分け、後者は売却を求めている。が、東電は及び腰だ。
 東電幕藩体制における「外様」(<例>東北電力と共同出資の相馬共同火力発電)については、東電も売却におおむね異存はなさそうだ。しかし、「譜代」についてはノンコア事業で、しかも小規模でも(<例>訪問介護の東電パートナーズ)グズグズと抵抗する。調査委と東電の攻防のヤマは、親藩・譜代の20数社だ。
 不動産も同様に、神経戦が繰り広げられている。
 東電は、社員の賃金・賞与カット(540億円)、研究開発費の大幅削減(1,700億円)などで12年3月の経費を5,000億円削減する。さらに、不動産、子会社、有価証券の資産売却によって6,000億円を捻出する、と表明している。
 そのうち、東電が捻出に前向きなのは、不動産売却による1,000億円、株式売却による2,000億円、合計3,000億円だ。数兆円の賠償金額からすれば微々たるものだ。
 しかも東電は、15%程度の値上げが必要だ、と非公式に調査委に打診している。すなわち東電は、「原子力損害賠償支援機構」経由で国民の税金をあてにし、さらに電気料金で消費者の懐をあてにしているのだ。東電管内の住民には往復ビンタを張り、自社社員には高給、OBには高水準の年金を維持するわけだ。

 調査委では、発送電分離までやらないといけない、という気骨のある意見も出た。しかし、下河辺委員長は、早くも「民主党政権にはやる気がない」とこぼしている。断固たる小泉政権の庇護下では、産業再生機構はダイエーやカネボウを果断に処理した。さわれ、去年の雪、いま何処?【注】
 「原子力損害賠償支援機構」は、強烈なリストラや発送電分離をできる立場にあるのだが、電力改革は小泉政権時代の郵政改革なみの大仕事だ。
 海千山千の銀行は、民主党をなめきっている。
 東電のリストラなんてアリバイづくりにとどまるよ。民主党に発送電分離なんて力業はできっこない。このまま機構にぶら下げたまま、2年後の総選挙まで塩漬けだよ。【銀行常務】

 【注】枝野幸男・経済産業相が調査委の尽力に応えているかのように見える報道もある。
    記事「東電社員の給与「公務員並みに」 経産相が言及 原発賠償支援機構開所式で」(2011年9月26日13:11  日本経済新聞)・・・・ちなみに、東電の役員報酬は年平均3,200万円(11年3月期)、国家公務員の部長クラスは1,700万円だ。
    記事「経産相、電気料金設定「ゼロベースで議論」」(2011年9月28日11時20分 YOMIURI ONLINE)

 以上、大鹿靖明「東電 身内だけ守りたい」(「AERA」2011年10月3日号)に拠る。
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