(1)参議院選挙における大きな争点は、アベノミクスの評価だ。
経済指標を見ると、成長率の高低で二つのグループに分けられる。
(a)2013年初めから16年初めまでの3年間の成長率が▲3.9%から+1.6%のグループ。ここには、実質国内総生産(GDP)、企業売上高、鉱工業生産指数、実質賃金、実質消費などが含まれる。
(b)この期間に2桁の成長率を示したグループ。ここには、企業の営業利益と株価が含まれる。
これら二つのグループの大きな乖離が、アベノミクスの性格を端的に表している。
(b)の著しい成長は、為替レートの変化によってもたらされた。円安によって、輸出企業の円建ての売上げや外国人旅行者が増大し、それによって利益が増加したのだ。その意味で、(b)はマネーに関連する分野だ。
(2)ここで注意すべきは、売上高の増加率と利益の増加率の間に大きな差があったことだ。すなわち、13年1~3月期から16年1~3月期の間に、企業売上高は1.6%しか増加しなかったのに対して、営業利益は26%も増えたのだ。
こうなったのは、売上高に対する利益の比率が低いからだ。よって、売上げが少し増加しただけで、利益は大きく変動したのだ。
利益は、本来は実体経済に関わる変数だが、もともと売上げに比べて変動しやすい変数であり、為替レートというマネタリーな条件が変わったため、高い伸びを示したのだ。
その上に株式投機が重なり、株価は大幅に上昇した(日経平均株価は、13年1月から16年1月までの間に約6割上昇)。
(3)以上のように、アベノミクスの本質は、マネーゲームだ。投機によって円安が進行し、それによって企業の利益が増加し、それが株価を上昇させた。その半面で、GDPや消費に代表される実体経済は停滞を続けたのだ。
アベノミクスの成功の象徴であるようにいわれる株価上昇は、このように、極めて脆弱な基礎の上に立つものだった。
マネーゲームであることは、上昇は顕著だが、下落も顕著であることを意味する。そして、実際にそのことが生じつつある。
世界経済の変化によって、為替レートが円高に動いており、利益増の条件が根底から崩されているのだ。円安に支えられてきた経済対策は、世界情勢の変化により、行き詰まりつつある。
□野口悠紀雄「アベノミクスの本質は為替と株の投機ゲーム ~「超」整理日記No.814~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月9日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【野口悠起雄】誰が負担するのか? ~マイナス金利のコスト~」
「【野口悠起雄】物価下落は実質賃金を上昇させる ~経済成長~」
「【経済】外国人投資家は株式から国債へ ~世界金融市場混乱(2)~」
「【経済】新年からの世界金融市場混乱の原因 ~「リスクオフ」~」
「【経済】軽減税率が突きつける諸問題(2) ~現存特例措置の見直し~」
「【経済】軽減税率が突きつける諸問題(1) ~現存特例措置~」
「【経済】企業の利益増加で賃金が減る ~理由と対策~」
「【経済】政策にみる安倍政権の思慮不足 ~「新しい3本の矢」~」
「【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(2) ~3つの疑問~」
「【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(1) ~経緯~」
「【経済】日本経済をドルの立場から再評価すると」
「【野口悠紀雄】マイナス成長から抜け出す手段 ~実質消費増大の方法~」
「【経済】今後、狙いと反対のことが起きる ~異次元緩和(2)~」
「【経済】期待を煽り資産価格のみを変化させた ~異次元緩和~」
「【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか(2) ~法人企業統計~」
「【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか ~GDP統計~」
「【経済】小企業や家計の赤字=大企業の利益 ~トリクルダウン(2)~」
「【経済】円安で小企業や家計は赤字 ~トリクルダウンはなぜ生じない?~」
「【経済】円安で貧乏になりゆく日本 ~スタグフレーション~」
「【政治】先の見通しを持たない新成長戦略 ~鎖国的政策~」
「【野口悠紀雄】仮想通貨が財政ファイナンスを阻止 ~経済政策と金融政策~」
「【野口悠紀雄】ビットコインが持つ経済価値はどの程度か?」
経済指標を見ると、成長率の高低で二つのグループに分けられる。
(a)2013年初めから16年初めまでの3年間の成長率が▲3.9%から+1.6%のグループ。ここには、実質国内総生産(GDP)、企業売上高、鉱工業生産指数、実質賃金、実質消費などが含まれる。
(b)この期間に2桁の成長率を示したグループ。ここには、企業の営業利益と株価が含まれる。
これら二つのグループの大きな乖離が、アベノミクスの性格を端的に表している。
(b)の著しい成長は、為替レートの変化によってもたらされた。円安によって、輸出企業の円建ての売上げや外国人旅行者が増大し、それによって利益が増加したのだ。その意味で、(b)はマネーに関連する分野だ。
(2)ここで注意すべきは、売上高の増加率と利益の増加率の間に大きな差があったことだ。すなわち、13年1~3月期から16年1~3月期の間に、企業売上高は1.6%しか増加しなかったのに対して、営業利益は26%も増えたのだ。
こうなったのは、売上高に対する利益の比率が低いからだ。よって、売上げが少し増加しただけで、利益は大きく変動したのだ。
利益は、本来は実体経済に関わる変数だが、もともと売上げに比べて変動しやすい変数であり、為替レートというマネタリーな条件が変わったため、高い伸びを示したのだ。
その上に株式投機が重なり、株価は大幅に上昇した(日経平均株価は、13年1月から16年1月までの間に約6割上昇)。
(3)以上のように、アベノミクスの本質は、マネーゲームだ。投機によって円安が進行し、それによって企業の利益が増加し、それが株価を上昇させた。その半面で、GDPや消費に代表される実体経済は停滞を続けたのだ。
アベノミクスの成功の象徴であるようにいわれる株価上昇は、このように、極めて脆弱な基礎の上に立つものだった。
マネーゲームであることは、上昇は顕著だが、下落も顕著であることを意味する。そして、実際にそのことが生じつつある。
世界経済の変化によって、為替レートが円高に動いており、利益増の条件が根底から崩されているのだ。円安に支えられてきた経済対策は、世界情勢の変化により、行き詰まりつつある。
□野口悠紀雄「アベノミクスの本質は為替と株の投機ゲーム ~「超」整理日記No.814~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月9日号)
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【参考】
「【野口悠起雄】誰が負担するのか? ~マイナス金利のコスト~」
「【野口悠起雄】物価下落は実質賃金を上昇させる ~経済成長~」
「【経済】外国人投資家は株式から国債へ ~世界金融市場混乱(2)~」
「【経済】新年からの世界金融市場混乱の原因 ~「リスクオフ」~」
「【経済】軽減税率が突きつける諸問題(2) ~現存特例措置の見直し~」
「【経済】軽減税率が突きつける諸問題(1) ~現存特例措置~」
「【経済】企業の利益増加で賃金が減る ~理由と対策~」
「【経済】政策にみる安倍政権の思慮不足 ~「新しい3本の矢」~」
「【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(2) ~3つの疑問~」
「【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(1) ~経緯~」
「【経済】日本経済をドルの立場から再評価すると」
「【野口悠紀雄】マイナス成長から抜け出す手段 ~実質消費増大の方法~」
「【経済】今後、狙いと反対のことが起きる ~異次元緩和(2)~」
「【経済】期待を煽り資産価格のみを変化させた ~異次元緩和~」
「【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか(2) ~法人企業統計~」
「【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか ~GDP統計~」
「【経済】小企業や家計の赤字=大企業の利益 ~トリクルダウン(2)~」
「【経済】円安で小企業や家計は赤字 ~トリクルダウンはなぜ生じない?~」
「【経済】円安で貧乏になりゆく日本 ~スタグフレーション~」
「【政治】先の見通しを持たない新成長戦略 ~鎖国的政策~」
「【野口悠紀雄】仮想通貨が財政ファイナンスを阻止 ~経済政策と金融政策~」
「【野口悠紀雄】ビットコインが持つ経済価値はどの程度か?」
ふざけてる!!!
ネットでは批判が多く見えるが、
全く足りない、大衆は景気が横ばいなので
悪くはないと思っているだけだ!!
一億総白痴化している、何とかしなければ、
頑張ってください。
以上です。