(承前)
(6)(5)までに述べた状況は、米国経済と対照的だ。
米国の実質GDPは、13年から15年の期間に4.9%も増加している。このように、米国の実体的な経済活動は拡大している。
それは、情報通信分野における新しい技術の導入によって支えられている。
国民の豊かさを表すドル表示の1人当たりGDPは、日本の場合、13年から15年の期間に15.7%も下落した。それに対して、米国は6.1%も増加した。
米国の株価は、13年初めから16年初めの間に2割上昇した。株価の上昇は、将来の技術進歩に対する期待を反映したものであり、必ずしもマネーゲームとは言えない。株価上昇率は、どの時点をとるかでかなり変わるが、重要なのは、日本は米国より実質GDPの伸びにおいてはるかに低いにもかかわらず、株価上昇率が高いことだ。
(7)経済政策においても、米国と日本は対照的だ。
米国は、現在、金利の引き上げを模索している。これは、マネーゲームを助長する金融緩和状態から脱出するために必要なことだ。世界経済が不安定であることから、金利引き上げのスケジュールは当初よりは遅れているものの、その方向は堅持している。
それに対して、日本の場合には、マイナス金利という異常な事態に突入している。この状態が続けば、日銀の国債購入に深刻な障害が発生するだろう。
こうした状況を改善するため、成長戦略が必要だ、との意見が多い。
しかし、政府が主導する成長戦略が有効かどうかは、大いに疑問だ。特定分野に対して補助策が取られる結果、経済の新陳代謝(本来進むべきなのだ)が遅れる可能性が高い。
新しい技術の導入や、産業構造改革は、政府の主導ではなく、市場の競争で実現するものだ。事実、米国には政府の成長戦略はない。
市場メカニズムを有効に働かせるための規制緩和こそ重要だ。
□野口悠紀雄「アベノミクスの本質は為替と株の投機ゲーム ~「超」整理日記No.814~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月9日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【野口悠起雄】期待への働きかけは効果なし ~アベノミクスの本質(2)~」
「【野口悠起雄】為替と株の投機ゲーム ~アベノミクスの本質(1)~」
「【野口悠起雄】誰が負担するのか? ~マイナス金利のコスト~」
「【野口悠起雄】物価下落は実質賃金を上昇させる ~経済成長~」
「【経済】外国人投資家は株式から国債へ ~世界金融市場混乱(2)~」
「【経済】新年からの世界金融市場混乱の原因 ~「リスクオフ」~」
「【経済】軽減税率が突きつける諸問題(2) ~現存特例措置の見直し~」
「【経済】軽減税率が突きつける諸問題(1) ~現存特例措置~」
「【経済】企業の利益増加で賃金が減る ~理由と対策~」
「【経済】政策にみる安倍政権の思慮不足 ~「新しい3本の矢」~」
「【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(2) ~3つの疑問~」
「【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(1) ~経緯~」
「【経済】日本経済をドルの立場から再評価すると」
「【野口悠紀雄】マイナス成長から抜け出す手段 ~実質消費増大の方法~」
「【経済】今後、狙いと反対のことが起きる ~異次元緩和(2)~」
「【経済】期待を煽り資産価格のみを変化させた ~異次元緩和~」
「【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか(2) ~法人企業統計~」
「【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか ~GDP統計~」
「【経済】小企業や家計の赤字=大企業の利益 ~トリクルダウン(2)~」
「【経済】円安で小企業や家計は赤字 ~トリクルダウンはなぜ生じない?~」
「【経済】円安で貧乏になりゆく日本 ~スタグフレーション~」
「【政治】先の見通しを持たない新成長戦略 ~鎖国的政策~」
「【野口悠紀雄】仮想通貨が財政ファイナンスを阻止 ~経済政策と金融政策~」
「【野口悠紀雄】ビットコインが持つ経済価値はどの程度か?」
(6)(5)までに述べた状況は、米国経済と対照的だ。
米国の実質GDPは、13年から15年の期間に4.9%も増加している。このように、米国の実体的な経済活動は拡大している。
それは、情報通信分野における新しい技術の導入によって支えられている。
国民の豊かさを表すドル表示の1人当たりGDPは、日本の場合、13年から15年の期間に15.7%も下落した。それに対して、米国は6.1%も増加した。
米国の株価は、13年初めから16年初めの間に2割上昇した。株価の上昇は、将来の技術進歩に対する期待を反映したものであり、必ずしもマネーゲームとは言えない。株価上昇率は、どの時点をとるかでかなり変わるが、重要なのは、日本は米国より実質GDPの伸びにおいてはるかに低いにもかかわらず、株価上昇率が高いことだ。
(7)経済政策においても、米国と日本は対照的だ。
米国は、現在、金利の引き上げを模索している。これは、マネーゲームを助長する金融緩和状態から脱出するために必要なことだ。世界経済が不安定であることから、金利引き上げのスケジュールは当初よりは遅れているものの、その方向は堅持している。
それに対して、日本の場合には、マイナス金利という異常な事態に突入している。この状態が続けば、日銀の国債購入に深刻な障害が発生するだろう。
こうした状況を改善するため、成長戦略が必要だ、との意見が多い。
しかし、政府が主導する成長戦略が有効かどうかは、大いに疑問だ。特定分野に対して補助策が取られる結果、経済の新陳代謝(本来進むべきなのだ)が遅れる可能性が高い。
新しい技術の導入や、産業構造改革は、政府の主導ではなく、市場の競争で実現するものだ。事実、米国には政府の成長戦略はない。
市場メカニズムを有効に働かせるための規制緩和こそ重要だ。
□野口悠紀雄「アベノミクスの本質は為替と株の投機ゲーム ~「超」整理日記No.814~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月9日号)
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【参考】
「【野口悠起雄】期待への働きかけは効果なし ~アベノミクスの本質(2)~」
「【野口悠起雄】為替と株の投機ゲーム ~アベノミクスの本質(1)~」
「【野口悠起雄】誰が負担するのか? ~マイナス金利のコスト~」
「【野口悠起雄】物価下落は実質賃金を上昇させる ~経済成長~」
「【経済】外国人投資家は株式から国債へ ~世界金融市場混乱(2)~」
「【経済】新年からの世界金融市場混乱の原因 ~「リスクオフ」~」
「【経済】軽減税率が突きつける諸問題(2) ~現存特例措置の見直し~」
「【経済】軽減税率が突きつける諸問題(1) ~現存特例措置~」
「【経済】企業の利益増加で賃金が減る ~理由と対策~」
「【経済】政策にみる安倍政権の思慮不足 ~「新しい3本の矢」~」
「【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(2) ~3つの疑問~」
「【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(1) ~経緯~」
「【経済】日本経済をドルの立場から再評価すると」
「【野口悠紀雄】マイナス成長から抜け出す手段 ~実質消費増大の方法~」
「【経済】今後、狙いと反対のことが起きる ~異次元緩和(2)~」
「【経済】期待を煽り資産価格のみを変化させた ~異次元緩和~」
「【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか(2) ~法人企業統計~」
「【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか ~GDP統計~」
「【経済】小企業や家計の赤字=大企業の利益 ~トリクルダウン(2)~」
「【経済】円安で小企業や家計は赤字 ~トリクルダウンはなぜ生じない?~」
「【経済】円安で貧乏になりゆく日本 ~スタグフレーション~」
「【政治】先の見通しを持たない新成長戦略 ~鎖国的政策~」
「【野口悠紀雄】仮想通貨が財政ファイナンスを阻止 ~経済政策と金融政策~」
「【野口悠紀雄】ビットコインが持つ経済価値はどの程度か?」