(1)行政経験のまったくないアウトサイダーのドナルド・トランプ氏が、オバマ大統領の国務長官も務めたヒラリー・クリントン氏を破った。
選挙戦が始まった当初は、いずれ姿を消す泡沫候補だとトランプ氏は思われていた。トランプ氏の発言は、メディアからは「暴言」だと厳しい批判を浴びていた。しかも、批判を浴びていながら、彼は「暴言」を繰り返した。
「メキシコからの不法移民を阻止するために、メキシコとの国境に万里の長城のような壁をつくる」
「イスラム教徒の入国を一切認めない」
(2)米国は日本や韓国、ドイツなどに多くの軍人を駐留させていて、そのために莫大な費用がかかっている。それらの費用を各国に負担させる。各国がそれを拒めば、駐留軍を全面的に引き揚げるとも言った。
米国は第二次世界大戦後、世界の警察の役割を演じてきた。ソ連を中心にした東側との激しい対立、つまり東西冷戦の時代には、米国は西側陣営を守る役割を果たし続け、ソ連が崩壊して冷戦が終わると、世界各地の民族紛争を抑えるなど、警察官の役割を果たしてきた。
だが、アフガン戦争、そして特にイラク戦争は誤りだと世界から非難され、米国国内でも批判が高まって、そのため、イラク戦争に反対したオバマが、黒人として初の大統領に就いた。
(3)オバマ大統領は、「世界の警察をやめる」と宣言した。
しかし、トランプ氏に言わせると、シリアやイラクの内乱にも、ウクライナ問題にも介入して、中国、北朝鮮にも対抗するために日本や韓国、そしてフィリピンにも軍隊を派遣している。つまり、「世界の警察」をやめていないし、そのために莫大な費用を費やし、少なからぬ軍人の生命も失われている。だから、本当に「世界の警察」をやめて、米国の利益第一主義に徹する、というのだ。
従来のあり方を徹底的に変える、ということだ。
(4)トランプ氏の大統領当選は、根底にイギリスのEU離脱と酷似した要素があった。
欧州は二度の世界大戦で戦場となり、おびただしい数の市民が犠牲になった。こうした戦争を一切なくするため欧州を一つの国のようにするという理想が、EUの形成につながった。どの国に行くのもビザは不要とし、貿易に対する関税もなくした。さらに、豊かな国が貧しい者を援助することになった。
だが、そのせいで、貧しい東欧の国の人びとが100万人以上もイギリスにやってきて、結果として仕事を奪った。しかも、他国のために金を出さなければならない。
これに我慢できなくなった英国人たちが、EU離脱に票を投じたのだ。追い詰められた英国人たちは、理想を追うゆとりをなくしたのである。
(5)米国人たちの多くも、大きな格差の上にいる階層、つまりエスタブリッシュメントたちが言い立てるグローバリズムに強い反感を持っていた。だから、その一員であるヒラリー・クリントン氏に反発し、従来のあり方を徹底的に変えて米国の利益第一主義にするというトランプ氏に票を投じたのだ。
米国のマスメディアもいわばエスタブリッシュメントの一員だからクリントン氏に同調したが、エスタブリッシュメントに反発する多くの国民に裏切られたわけだ。
□田原総一朗「トランプ勝利と英EU離脱を生んだ「追い詰められた国民」 ~ギロン堂 そこが聞きたい! 895回~」(週刊朝日 2016年11月25日号)
↓クリック、プリーズ。↓
選挙戦が始まった当初は、いずれ姿を消す泡沫候補だとトランプ氏は思われていた。トランプ氏の発言は、メディアからは「暴言」だと厳しい批判を浴びていた。しかも、批判を浴びていながら、彼は「暴言」を繰り返した。
「メキシコからの不法移民を阻止するために、メキシコとの国境に万里の長城のような壁をつくる」
「イスラム教徒の入国を一切認めない」
(2)米国は日本や韓国、ドイツなどに多くの軍人を駐留させていて、そのために莫大な費用がかかっている。それらの費用を各国に負担させる。各国がそれを拒めば、駐留軍を全面的に引き揚げるとも言った。
米国は第二次世界大戦後、世界の警察の役割を演じてきた。ソ連を中心にした東側との激しい対立、つまり東西冷戦の時代には、米国は西側陣営を守る役割を果たし続け、ソ連が崩壊して冷戦が終わると、世界各地の民族紛争を抑えるなど、警察官の役割を果たしてきた。
だが、アフガン戦争、そして特にイラク戦争は誤りだと世界から非難され、米国国内でも批判が高まって、そのため、イラク戦争に反対したオバマが、黒人として初の大統領に就いた。
(3)オバマ大統領は、「世界の警察をやめる」と宣言した。
しかし、トランプ氏に言わせると、シリアやイラクの内乱にも、ウクライナ問題にも介入して、中国、北朝鮮にも対抗するために日本や韓国、そしてフィリピンにも軍隊を派遣している。つまり、「世界の警察」をやめていないし、そのために莫大な費用を費やし、少なからぬ軍人の生命も失われている。だから、本当に「世界の警察」をやめて、米国の利益第一主義に徹する、というのだ。
従来のあり方を徹底的に変える、ということだ。
(4)トランプ氏の大統領当選は、根底にイギリスのEU離脱と酷似した要素があった。
欧州は二度の世界大戦で戦場となり、おびただしい数の市民が犠牲になった。こうした戦争を一切なくするため欧州を一つの国のようにするという理想が、EUの形成につながった。どの国に行くのもビザは不要とし、貿易に対する関税もなくした。さらに、豊かな国が貧しい者を援助することになった。
だが、そのせいで、貧しい東欧の国の人びとが100万人以上もイギリスにやってきて、結果として仕事を奪った。しかも、他国のために金を出さなければならない。
これに我慢できなくなった英国人たちが、EU離脱に票を投じたのだ。追い詰められた英国人たちは、理想を追うゆとりをなくしたのである。
(5)米国人たちの多くも、大きな格差の上にいる階層、つまりエスタブリッシュメントたちが言い立てるグローバリズムに強い反感を持っていた。だから、その一員であるヒラリー・クリントン氏に反発し、従来のあり方を徹底的に変えて米国の利益第一主義にするというトランプ氏に票を投じたのだ。
米国のマスメディアもいわばエスタブリッシュメントの一員だからクリントン氏に同調したが、エスタブリッシュメントに反発する多くの国民に裏切られたわけだ。
□田原総一朗「トランプ勝利と英EU離脱を生んだ「追い詰められた国民」 ~ギロン堂 そこが聞きたい! 895回~」(週刊朝日 2016年11月25日号)
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裏切ってきたのはエスタブリッシュメントの方で、この言い方じゃあ、国民が悪いみたいんなんだけど、何だか変んでしょ?
「エスタブリッシュメント」には既得権益者という言葉だけではなくて、利益を独り占めしているとか上層部だけで分け合っている、という言葉を付け加える必要が有るんじゃないかなァ、、。だってトリクルダウンなんてことは起きないわけでね。稼いだ奴らは、絶対にそれを手放さないよね。
まァ、田原総一朗もエスタブリッシュメントの一員だから、しょうがないか(笑)