(1)全国10電力会社の9月中間決算は、
(a)東京電力、関西電力など5社・・・・経常黒字
(b)中部を除く4社・・・・大きく赤字を圧縮
東電に至っては、前年同期の1,662億円の赤字から、まさかの1,416億円の黒字へ急回復した。
原発の再稼働がなければ経営が成り立たない、などという大合唱は嘘八百であることが判明した。
(2)電力10社の燃料費は、東日本大震災前には3.8兆円だったが、火力発電の増加で7兆円に膨らんだ。人件費削減といった自助努力だけでは立ち行かない・・・・と電力会社は言う。
しかし、この論理がいかに都合がいいものか、数字を観れば明らかだ。
<例>東電・・・・人件費を183億円削ったものの、電気料金値上げで1,770億円も収入が増えた。
各社の好決算は、昨年9月以降、次々と実施された電気料金の本格改定による値上げのおかげなのだ。
基本的に、この値上げが燃料費の増加分を穴埋めした形だ。東電の経営は原発事故の損害賠償などで大変なことになっているはずだが、こうした費用が決算に響かない制度になっているから、黒字になって当然なのだ。
逆に言えば、原発を動かしていなくても黒字になる。
では、なぜ電力会社は再稼働にこだわるか。廃炉にすると、原発の毎年の減価償却が一括償却になって債務超過に陥るからだ。総括原価方式のもとでは、原発が停止していても、維持費、減価償却費はすべて電気料金に含まれる。
要するに、電力会社が破綻しないための費用を国民が払っているのだ。
(3)このタイミングでの東電の黒字化は、単なる偶然ではない。そこには、明確な意図が巧妙に隠されている。
前政権は、政府が関与しないで東電に事故対応をやらせる道を選んだ。
安部政権は、これを批判し、見直そうとしている【菅義偉・官房長官、11月4日】。
除染、廃炉、汚染水対策に国費(税金)を投入し、国が積極的に関与する、という方針転換だ。
安倍晋三・首相が、9月、汚染水対策として国費470億円の投入をぶち上げたが、さらに踏み込んだ形だ。
(4)前政権が作った今の仕組みは、国が原子力損害賠償支援機構を通じて5兆円まで東電に貸し付け、何十年もかけて東電と電力業界に返済させる。東電を潰さず、政府も賠償責任を直接は負わない枠組みで、国民に税負担を求めない建前だった。
だが、この仕組みはもはや限界に達しつつある。
現時点で、対策費用は貸し付け上限の2倍の10兆円を超える見通しだ。
しかも、東電は、環境省が請求した除染費用の大半について支払いを拒否している。
(5)菅官房長官発言に先立って自民党復興加速化本部がまとめた提言は、次のようなものだ。
(a)すでに計画がある2兆円強の除染費用 → 東電が負担
(b)「追加発生」の除染費用 → 「公共事業」として国(民)が負担
(c)除去した汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設にかかる1兆~2兆円 → 国(民)が負担
東電が黒字を出す一方で、巨額の国費が投入されるのだ。
被害者である国民の税金を投入するのであれば、まずは東電を破綻処理(法的整備)し、東電の株主や貸し手である金融機関の責任も追及すべきだ。【伴英幸・NPO法人原子力資料情報室共同代表】
(6)責任論がウヤムヤのまま話が進んでいくのには、理由がある。
東電黒字化と、政府の国費投入決定は、一見矛盾する動きだが、内実は連動しえいるのだ。その目的はただ一つ。「東電を破綻させない」=「銀行の債権を守る」ことだ。
銀行がこれまでつぎ込んだ4兆円の出融資を守り、すべてを国民にツケ回すのだ。
タイミングは、12月に予定されている2,000億円の借り換えと、3,000億円の追加融資だ。
今回、政府が全面的にかかわることを表明したのは、銀行に対し、国がカネを入れるので絶対に大丈夫だ、と示すため。
東電や銀行の責任をウヤムヤにして、悪い部分はすべて国が引き受ける、という話だから、廃炉事業を切り離された東電【注】は健全な会社となり、銀行にとって最高のお客さんになる。
政府の姿勢は一貫している。
9月時点で、首相自ら染水対策をぶち上げたのは、10月にあった800億円の借り換えのタイミング。今回の東電の黒字決算も、12月の融資継続のためのシナリオに沿うものだ。
官邸も経産省も原子力規制委員会も、東電がいかにひどいかを叩きまくっている。それで、国民やマスコミから、国がもっと前面に出ないとダメだ、と押される形を演出した。実は、これで国民は4兆円損をする。「前政権が」と民主党のせいにするが、その仕組みは自民党も一緒になって作った。
(7)割りをくうのは、いつも国民だ。
これまで、原発が動いていなくても、電力は十分に足りている。
にもかかわらず、全国に50基ある原発の維持費は、電気料金に上乗せされ、家庭や企業が負担している。
その学は1.4兆円(2012年度)。この莫大な費用を考えても、、事故リスクy、ありがとうございます。住民に不安を強いてまで原発を続ける理由はない。
【注】東電は、フクイチの廃炉事業を「社内分社」の下で進めることを検討中。
□本田靖明・鈴木毅(編集部)「電力好決算のカラクリ 電力・政府・銀行「鉄のトライアングル」の思惑が透ける」(「AERA」2013年11月18日号)
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【参考】
「【原発】米国の原発の相次ぐ閉鎖 ~費用対効果~」
「【原発】新潟県でフクイチ事故検証開始 ~地震か津波か、全国に影響~」
「【原発】東電が隠す放射能拡散のリスク ~4号機核燃料の搬出~」
「【原発】秘密裡に銀行が進める債権保全策 ~東電と経産省~」
「【原発】ベトナム原発の建設調査に国税25億円」
「【原発】コントロール不能の汚染水漏れ ~6つの危機~」
「【原発】汚染された排気筒倒壊の危機 ~「アウターライズ地震」~」
「【食】偽装の背景 ~消費増税により偽装が拡大~」
「【原発】放射能と食の現在 ~福島産の魚、茨城産の栗~」
「【原発】除染道路の4割が効果なし ~福島県田村市~」
「【原発】新潟県知事「豹変」の陰に銀行圧力 ~柏崎刈羽原発~」
「【原発】【食】原子力問題と伝子組み換え(GM)問題の共通点 ~ムラ~」
「【原発】震度6でフクイチが崩壊する日 ~液状化~」
「【原発】東電による汚染と、東電の「汚染」 ~隠蔽体質~」
「【原発】太平洋に拡散する放射性物質 ~シミュレーション~」
「【原発】放射能の海で「おもてなし」 ~2020年東京五輪~」
「【原発】【食】魚への影響 ~過去・現在・未来~」
「【原発】銀行はボロ儲け ~汚染水に国費投入~」
「【原発】【食】関東の食材からセシウム ~安部首相的「安全」の実態~」
「【原発】最悪の事態を防いだ2つの幸運 ~失われた沃野と海~」
「【原発】汚染水を浄化できるか ~福島第一原発はどうなっているのか~」
「【原発】今、そこにある汚染水危機(3) ~次の震度6~」
「【原発】今、そこにある汚染水危機(2) ~汚染水は海で薄められるか~」
「【原発】今、そこにある汚染水危機(1) ~封じ込めは可能か~」
「【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~」
「【原発】廃炉費用を電気料金に上乗せ ~制度を変えた経産官僚は出世~」
「【原発】ウソだらけの汚染水「緊急」対策 ~安部首相の抽象論~」
「【原発】国の汚染水対策3つ ~「汚染水は海に流せ」?~」
「【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~」
「【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~」
「【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~」
「【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~」
「【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~」
「【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~」
「【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~」
「【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~」
「【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~」
「【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出」
(a)東京電力、関西電力など5社・・・・経常黒字
(b)中部を除く4社・・・・大きく赤字を圧縮
東電に至っては、前年同期の1,662億円の赤字から、まさかの1,416億円の黒字へ急回復した。
原発の再稼働がなければ経営が成り立たない、などという大合唱は嘘八百であることが判明した。
(2)電力10社の燃料費は、東日本大震災前には3.8兆円だったが、火力発電の増加で7兆円に膨らんだ。人件費削減といった自助努力だけでは立ち行かない・・・・と電力会社は言う。
しかし、この論理がいかに都合がいいものか、数字を観れば明らかだ。
<例>東電・・・・人件費を183億円削ったものの、電気料金値上げで1,770億円も収入が増えた。
各社の好決算は、昨年9月以降、次々と実施された電気料金の本格改定による値上げのおかげなのだ。
基本的に、この値上げが燃料費の増加分を穴埋めした形だ。東電の経営は原発事故の損害賠償などで大変なことになっているはずだが、こうした費用が決算に響かない制度になっているから、黒字になって当然なのだ。
逆に言えば、原発を動かしていなくても黒字になる。
では、なぜ電力会社は再稼働にこだわるか。廃炉にすると、原発の毎年の減価償却が一括償却になって債務超過に陥るからだ。総括原価方式のもとでは、原発が停止していても、維持費、減価償却費はすべて電気料金に含まれる。
要するに、電力会社が破綻しないための費用を国民が払っているのだ。
(3)このタイミングでの東電の黒字化は、単なる偶然ではない。そこには、明確な意図が巧妙に隠されている。
前政権は、政府が関与しないで東電に事故対応をやらせる道を選んだ。
安部政権は、これを批判し、見直そうとしている【菅義偉・官房長官、11月4日】。
除染、廃炉、汚染水対策に国費(税金)を投入し、国が積極的に関与する、という方針転換だ。
安倍晋三・首相が、9月、汚染水対策として国費470億円の投入をぶち上げたが、さらに踏み込んだ形だ。
(4)前政権が作った今の仕組みは、国が原子力損害賠償支援機構を通じて5兆円まで東電に貸し付け、何十年もかけて東電と電力業界に返済させる。東電を潰さず、政府も賠償責任を直接は負わない枠組みで、国民に税負担を求めない建前だった。
だが、この仕組みはもはや限界に達しつつある。
現時点で、対策費用は貸し付け上限の2倍の10兆円を超える見通しだ。
しかも、東電は、環境省が請求した除染費用の大半について支払いを拒否している。
(5)菅官房長官発言に先立って自民党復興加速化本部がまとめた提言は、次のようなものだ。
(a)すでに計画がある2兆円強の除染費用 → 東電が負担
(b)「追加発生」の除染費用 → 「公共事業」として国(民)が負担
(c)除去した汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設にかかる1兆~2兆円 → 国(民)が負担
東電が黒字を出す一方で、巨額の国費が投入されるのだ。
被害者である国民の税金を投入するのであれば、まずは東電を破綻処理(法的整備)し、東電の株主や貸し手である金融機関の責任も追及すべきだ。【伴英幸・NPO法人原子力資料情報室共同代表】
(6)責任論がウヤムヤのまま話が進んでいくのには、理由がある。
東電黒字化と、政府の国費投入決定は、一見矛盾する動きだが、内実は連動しえいるのだ。その目的はただ一つ。「東電を破綻させない」=「銀行の債権を守る」ことだ。
銀行がこれまでつぎ込んだ4兆円の出融資を守り、すべてを国民にツケ回すのだ。
タイミングは、12月に予定されている2,000億円の借り換えと、3,000億円の追加融資だ。
今回、政府が全面的にかかわることを表明したのは、銀行に対し、国がカネを入れるので絶対に大丈夫だ、と示すため。
東電や銀行の責任をウヤムヤにして、悪い部分はすべて国が引き受ける、という話だから、廃炉事業を切り離された東電【注】は健全な会社となり、銀行にとって最高のお客さんになる。
政府の姿勢は一貫している。
9月時点で、首相自ら染水対策をぶち上げたのは、10月にあった800億円の借り換えのタイミング。今回の東電の黒字決算も、12月の融資継続のためのシナリオに沿うものだ。
官邸も経産省も原子力規制委員会も、東電がいかにひどいかを叩きまくっている。それで、国民やマスコミから、国がもっと前面に出ないとダメだ、と押される形を演出した。実は、これで国民は4兆円損をする。「前政権が」と民主党のせいにするが、その仕組みは自民党も一緒になって作った。
(7)割りをくうのは、いつも国民だ。
これまで、原発が動いていなくても、電力は十分に足りている。
にもかかわらず、全国に50基ある原発の維持費は、電気料金に上乗せされ、家庭や企業が負担している。
その学は1.4兆円(2012年度)。この莫大な費用を考えても、、事故リスクy、ありがとうございます。住民に不安を強いてまで原発を続ける理由はない。
【注】東電は、フクイチの廃炉事業を「社内分社」の下で進めることを検討中。
□本田靖明・鈴木毅(編集部)「電力好決算のカラクリ 電力・政府・銀行「鉄のトライアングル」の思惑が透ける」(「AERA」2013年11月18日号)
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【参考】
「【原発】米国の原発の相次ぐ閉鎖 ~費用対効果~」
「【原発】新潟県でフクイチ事故検証開始 ~地震か津波か、全国に影響~」
「【原発】東電が隠す放射能拡散のリスク ~4号機核燃料の搬出~」
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「【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~」
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