どうでもいいこと

M野の日々と52文字以上

農業問題6

2011-09-01 20:10:25 | インポート
さて農業の世界は、あまりにも奥が深い。実際地面から30センチ下の世界は、つい最近までよくわからなかった。なのに成功している人がいる。しかも昔からいる。
こういった天才たちの特徴を考える。
1)とにかく見回る
とにかく畑や田んぼをよく見回る。暇さえあれば出かける。
2)記録魔である
ほんとうに記録する。自分の子供の写真より、作物の写真の方が多かったりする。天候や気温、撒いた肥料の量やタイミングは当然、作物の大きさなどもこまめに記録している。今ならパソコンは必需品。
3)凄まじい観察力
とにかく細かい変化に敏感。ちょっと弱ってるな~とか、そのちょっとが普通は解らない。よく土を触っただけで成分が解るとか、なめてみて判断するとか、触っただけで温度が解るとか、これらは観察力から演繹的に身に付いた物だろう。これをすごいと言っても、本人は解っていない。
4)新たらしもの好き
新しい品種がでたとか、新しい資材があるとかそういった情報があれば出来るだけ試してみようとする。好奇心おう盛な人が多い。なのでアイディアも豊富。とにかく試してみないと気が済まない。
5)マニアだ
そうとしか言いようが無い。自分の作っている野菜にとことんこだわる。熱心とも言えるが、他の事をやってもそうなってしまうので、性格としか言いようが無い。白菜農家で、病原菌の伝播を防ぐために畑が変わるたびにトラクターを徹底して洗っている人がいる。そして収穫後の残さを徹底的に取り除く。そして畑は暗渠になっている…。徹底しすぎて、めまいがする。この人趣味は牛。品評会で優勝している。
6)気象庁より正確
平成4年のコメの大凶作を当てた農家がいる。しかも肥料から管理まで適切に対応して収量を出している。
7)先読み
特に花卉農家ではこの能力は明暗を分ける。流行を当てるのだ。野菜農家でも同じ。なお英語が出来れば更によい。海外情報の収集は大切だ。花卉農家なんて本当にグローバル。代表は菊。挿し木で増やすが、その挿し穂を南アフリカから輸入したりしている。球根系はオランダから。新品種を自分で作ったら、当然海外に売り込まなくては行けない。ガンガン稼ごう!
8)長嶋茂雄
彼の言う事は誰も解らない。まねしても失敗する。どこがどう違うのか、違うという事しか解らない。でもこういった人がいて、彼を中心にうまく回って行けば産地として大きく成長出来るのだが、なかなかうまく行かない。

こういった人が成功している農家だ。さてこういった人が極端になるとどうなるか。
8)同じ所にいない
えっ!と思うかもしれない。これは本当。最適な場所を求めて移動する。必ずしも地味がいいとかそういった事ではない。大昔の話しだが、岩手の区界高原に突然現れて牧草地をまとめて借り受けて大根を作り始めた人がいた。そしたらその年は全国的に大根が凶作だった。彼の畑だけ豊作。で一山当ててその土地から去って行った。
また国営開発で大きな農地を借り受けた人がいた。契約では10年間は土地代がタダで10年以降は土地代を払わなければ行けない。彼は当然10年目にその土地を去った。その町は困り果てていたがすると突然また別な人が現れて、今度は有利な条件でその土地を借りてしまう。
ずるい!とか思うだろうが農業の真の奥深さがここにある。以外と農業で一攫千金はある。ドラマ「北の国から」でアズキ相場に失敗する農家の話しがあったが、現物を生産しながら先物でバクチを打って成功した人がいたのは確か。つまり不作が予想される年に、自分のうちではその対策を入念にして先物では高値を予想しながら安値で買う。本来のこの場合の先物の使い方は、先物はそこそこ高値で買ってリスクヘッジする物なのだが。
ここに書いたことの逆をやればダメ農家となる。が実際はそうでもない。特にコメはその傾向がある。コメは研究と機械化が進み、誰でも出来る傾向にある。特に平成4年の大凶作の時は、ダメ農家がいい結果を出したりしていた。これも奥深い事だ。
ただダメ農家の特徴があるとすれば、成功したら調子に乗る人だろう。また成功した人のマネばかりをする人だろう。よくある話しだ。
去年もうけたから今年は作付け面積を増やしたら相場が大暴落とか、隣の農家が成功したから同じ作物を作って失敗したとか。当然その隣の農家は別な物を作っている。
有機栽培の野菜はおいしいと言われているが、難易度の高い有機農業で成果を出す農家というのはこういった天才たちが多い。でも、彼らだったらどんな作り方でもうまい物が作れると思う。
その前に、彼らだったらどんな仕事でも一流になれるだろう。最高の経営者でもある。


農業問題5

2011-09-01 18:49:28 | インポート
さて有機農業をけなしているように思われるだろうが、あくまで間違った場合である。
現実的には、土壌に有機分を加えるのは正しい。保水性を高く保ち、多様な菌類を育てて病原菌を牽制する事も出来る。また将来的にリン酸肥料の供給源のリン鉱石が枯渇するとも言われている。このためにリン酸分の多い堆肥を使った循環型農業が増える事が望ましい。そして今まで経験で作られていた堆肥に科学的な検証が入る事で、より味の良くなる堆肥とか、植物を丈夫にする堆肥なんかも出来るようになるだろう。
ただ今現在の問題は、肥料としてのバランスだ。チッソ分の効きが悪いのをどうするのかが問題になっている。
堆肥作りのための小屋作りが義務づけられたときに、各地で議論が起きた。堆肥から出てくる水分を取り出して液体肥料に使うという考え方と、分離せずにそのまま発酵させて従来通りに使うという考え方だ。米農家だと後者の方がいいだろうし、トマトなどの果菜類の農家には前者がいいだろう。どう違うのかと言えば、最初に肥料を一杯入れた方が楽な農業形態と、生長にあわせて肥料を与えた方がいい農業との違いだ。有機農業と一言でいっても実は多様である。有機水耕栽培というのもある。この考え方では有機植物工場というのも将来あり得るだろう。多分もうあると思う。
最近では、バイオマスエネルギーとして発酵中に出るメタンとアンモニアを取り出すという考え方も出来ている。水分を分離させて液体肥料を作るプラントもあったと思う。設備費がかかるのが欠点だ。社会的な意義のためにある。
この場合発酵時に出るアンモニアを肥料として使えるので堆肥の欠点が補われるのだが、そうやって取り出したアンモニアと合成したアンモニアとどう違うの?という議論があって、そうやって取り出したアンモニアを使うと有機栽培ではないという意見もあるようだ。なんか枝葉にこだわりすぎているような気がするが、有機栽培の定義の難しさを表している。有機栽培の神様と言われている人の本の中に、石灰窒素の使用を勧めている所があるらしい。輪作体系の中に緑肥植物を栽培し、それを鋤込んで石灰窒素を撒いて腐熟を促進するのだが、石灰窒素は工業製品である。こうなってくると有機栽培という物がよくわからなくなってくる。
有機栽培の理想としては、少ない家畜と小規模な畑で、輪作体系と組み合わせて行う事だ。当初アメリカからはじまった運動だったと思う。羊を飼い、バイオ草刈り機として肥料製造機として、毛の生産も出来てという組み合わせだったと思う。輪作体系の中には混植といういろんな野菜を組み合わせて育てる形もある。中国の、豚とともにある農業も一時期注目された。
ただ規模には勝てない。特に畜産は規模が物をいう。これがあって堆肥の生産と農業が分離しているのが実情だ。
それでは正しい有機農業とはどういった物だろうか?実はロマンティックな物ではない。きわめて科学的に行う物だ。まず耕作地の土壌診断が必要だ。土壌中の肥料分を分析、堆肥中の肥料分を測定。この二つのデーターと、作物に必要な肥料分を計算し、堆肥の量を決定する。足りない要素は、それを補うための肥料の量を計算する。作物によっては、初めにドカンと入れた方がいい場合と、追肥が必要な場合がある。これも計画に入れる。追肥に使うのが油かすだとして、それが発酵済みの物かそうでないかで肥料をまく時期が変わる。肥料が効き始めるのにタイムラグがあるからだ。即効性のある有機液体肥料もあるが、高価だったりする。
天候もある。あまり雨の多い時期だと肥料分が流れやすいし、かといって水の無い季節に撒いても効果がない。この辺りがとても難しい。
出来れば輪作体系が欲しい。例えば麦を生産している畑で、麦を収穫した後菜の花を育てる。花が咲いた頃に鋤込んで緑肥にする、土壌中のチッソ分が多くなるのでその後にひまわりを育てる。するとひまわりの根と共生する菌が増える。このひまわりも鋤込んで麦をまく。するとその菌が麦の成長を助ける。
こういったシステムをどう作るのか、これが有機栽培の肝だと思う。


農業問題4

2011-09-01 17:37:22 | インポート
農業での最大の問題は流通だ。この事をいえば、やれ規格の問題とか長距離輸送の問題とか市場の問題とかになるが、話しは単純でない。
規格より、市場が重視しているのは安定供給だ。このため産地として認識されるほどの規模が必要になる。特に高品質を追求すると、どうしても収量が減るので規模で安定供給を補わなければならない。なのでその地域においしいトマト作りの名人が一人いたとしても、市場はその価値が解っていても扱いに躊躇する。
逆に産地になってしまうとそれはそれで問題がある。ダイコンやハクサイ・キャベツなどのように安定供給を政府が義務つけているものは大規模な産地があるが、連作障害に悩まされている。安定供給のために補助金も出ているが、これを受け取ると、理想的な輪作とか休耕とかが出来なくなる。また連作障害を防止する薬品の使用が禁止されて、産地は苦しくなっている。
更に検査の問題がある。現在農産物は残留農薬・硝酸体チッソ、最近では残留放射性物質の検査まで加わった。有機農業では土壌分析も必要になる。コストがかかるようになってきたのである。高品位の農産物では糖度保障があるので、その検査もある。これでは小さい農家はやってけない。
消費者の問題も大きい。やはり瑞々しい野菜の方が好まれる。このため葉ものには真空予冷という大型機械が使われている。葉ものを機械に入れると、冷却と脱気が行われる。これで植物の細胞が仮死状態になり、目覚めるまで瑞々しさを保てる。フツーの農家で導入出来るような機械ではない。
葉もの野菜を収穫した状態で(水洗いもせずに、この真空予冷もせず、冷蔵輸送も行わない)流通している地方がある。これを水洗いしてしばらく置くとシャキっとして植物って生きていると実感する。見た目は最悪なのだが、かなりおいしい。こういった流通形態は滅多に無い。
有機農業の問題点は先に述べたが、消費者にとってはイメージの問題である。水耕栽培の野菜と有機栽培の野菜とを食味検査したデーターがあったが、結果は変わらないというものだった。私ですら信じがたいものだった。違うデータでは植物工場で育てられた野菜は、病気や昆虫に対する物質を作らない分成長がよく味も良いという。無農薬はどうなのかという問題でもある。
間違った有機栽培の危険性を考えれば確かだろう。その昔、国内産の市販の有機栽培野菜ジュースから大量の硝酸体が検出された。幼児に飲ませると危険というレベルだった。比較のために中国産やアメリカ産のジュースも検査されたが、危険と言われている中国産が一番安全という結果になった。
イメージと言えば、朝取り野菜というものがある。これを正確に言えば、トマトなどの果実と根菜類は朝取りの方がうまい。葉ものはなんと夕方に収穫した方がうまい。理屈は簡単で、葉っぱで作られた栄養が、夜のうちに根や実に流れるからだ。葉ものははっぱにとどまっている夕方がうまいという事になる。ひょうたんから駒のような話しなのだが、かなり真面目な研究結果なのだ。実は農作業の省力化を研究してたらこんな結果になったという。農業で最大の労力は、収穫した後にある。水洗い・枯れた葉とかの整理・等級ごとの整理・計量・梱包・発送の一連の作業だ。夕方に収穫出来れば、夜のうちにこの作業を行い、最短の時間で朝一番の市場に出荷出来る。
なおこの研究機関で、ビニールハウスでは朝日がハウス内の急激な温度変化を生むので、植物にストレスがかかるというのもあった。朝日をさんさんと浴びたおいしい野菜のイメージとは違うのが面白かった。
採りたてがうまいというのも物によりけり。トマトが極端だろう。酸味が欲しい人はとりたてがいい。甘さとうまみが欲しい人は収穫後常温で一週間後がいい。誰もがまずいと思うのは、とれたてのカボチャ。収穫後一ヶ月から2ヶ月がうまい。まあ普通とりたてのカボチャは売られていないが。
こういったイメージはどこから来ているのかと言えば、食の保守性から来ていると思う。先に用例に出したしなびた野菜が流通している地域は、間違いなくそれだ。実際変わった野菜は売れない。


農業問題3

2011-09-01 16:30:21 | インポート
ヨーロッパで病原性大腸菌の騒ぎがあった。このとき真っ先に疑われたのは農産物だったが、この背景がなんなのか日本には伝わっていない。
実は有機農業で、日本とヨーロッパでは堆肥の作り方が違う。日本は完全発酵したものを使い、ヨーロッパでは半発酵、もしくは生堆肥を使う。完全発酵の場合、発酵熱で堆肥中の種や菌類が死滅してしまう。半発酵では菌類が残るので、大腸菌も生き残る。これが疑われた原因だろう。
さてそれではなぜヨーロッパでは半発酵の堆肥が使われているのかというと、肥料としての効率が高いからだ。特にチッソ分の効きが違う。完熟堆肥は、発酵の間にチッソ分がアンモニアとして揮発してしまうか、菌類に取り込まれ高分子として堆肥に残り、植物が簡単に利用出来ない形になってしまう。日本でも以前は生堆肥や半発酵が使われていたが、ヨーロッパの騒ぎのように衛生上の問題があって使われなくなった。特に寄生虫の問題は大きかったと思う。
有機農業はとても古い歴史を持った農業だが、実際地面の下で何が起きているのか、研究が進んだのは1990年以降だと思う。それまでは直感で行われていたフシが多く、弊害もあった。
多分初めに問題になったのは、北海道の釧路湿原の富栄養化だったと思う。本来湿原は栄養の乏しい所で、その中で限られた植物しか生き残れない所である。それが巨大に成長するようになり、本来はない植物が入り込むようになって原因が研究された。結果その上流部にある畑で、大量に堆肥が撒かれていたのが原因となった。この当時は、完熟堆肥は栄養分が低く、土作りのために大量に撒いてもいいという考え方だった。北海道道東部は酪農も盛んで、大量に出る堆肥を処理するために、撒いていたフシもある。更に栄養分を補うために化学肥料と併用していた。その堆肥の中の高分子化したチッソが嫌気性土壌細菌で分解し、硝酸体として地下水を汚染していたのだ。硝酸体は発がん性物質の疑いがあり、事は単純ではない。
こういった例が各地で報告されるようになって、飲料水への汚染まで危惧されるようになったため、堆肥を作る場所はコンクリートの床に屋根がつけられ、地下水を汚染しないように義務つけられた。
次に畑にまく場合のガイトラインとして10アールあたり2トンまでと決められた。学者によっても違うが、有機農業に切り替える初年度は4トンあたりが目安となっている。
問題なのは完熟堆肥はすぐに効くチッソ分が少ないのだ。おまけに2トンといえば凄まじい量に感じるが1平方メートルあたり2キロだ。正直な所撒いた気がしない。そこでついつい撒きすぎてしまう。
さてそうこうしているうちに、違う問題が持ち上がってきた。堆肥はチッソ分が少ない代わりにリン酸とカリウムが豊富に含まれている。長期間撒いているうちに、リン酸とカリウムが過剰になってきて土壌障害を起こすようになってきた。また土壌性の病気も多発するようになった。これまたここ10年間で解明されてきた事なのだが、リン酸過多で、病原菌やセン虫の胞子が活発化するのだ。更に特殊な現象も発見された。堆肥から出た硝酸体が土壌虫のミネラルと結合して、土壌バランスを壊してしまう事がある。
更にとれた野菜から大量の硝酸体が検出されて問題になる。
正直な所、有機農業は難しい。安全・安心を追求すると収量の低下や見栄えの低下を招くし、そこを甘く考えると環境問題も起きてしまう。真面目で熱心な農家ほど陥りやすい罠である。
そこをクリアーしている農家は、少ないがいる。天才である。