日本の農業史で考え直さなければいけないのは、地主・小作関係がどうかだ。
江戸時代は過酷な搾取が行われたと言われているが、実態は単純ではない。まず領主としては農民が減る=年貢減収だった。なので一揆が起きた場合なんか要求を呑んで、そのかわり代表者たちを処罰した。武家とすれば全員処罰なのだがそうはいかない。農民も解っているので円形に署名して首謀者が解りにくくした。もちろん首謀者がいなくなるということは農村にとってリーダーを失う事だから痛い事だ。
しかし度々一揆が起きている事を江戸に知られてしまうと、今度は自分たちが怪しくなる。
岩手で三閉井一揆というのがあった。最初は普通の一揆だったが、2度目は集団で分家筋の隣藩に逃げてしまう。これまた和解するのだが、それでもまた集団で仙台藩に逃げ込む。1万人以上だ!仙台藩への移住を求めたが仙台藩でも困ってしまう。江戸にこの件は知られてしまい、当時の南部藩藩主と家老は隠居処分になった。
さて藩にとって農業を盛んにするためには農民が欲しかった。そこで何が起きるかと言えば、逃げてきた農民をかくまってしまうのだ。先の事件では人数が人数だったので、仙台藩でも受け入れられなかったと思うが、10人程度の移動はあったようだ。
そして藩主との間に立つ地主はどうだったかと言えば、上の要求と下からの突き上げでかなり苦労していた。それではと農業技術を勉強したのがこの階級。新しい品種や商品作物、農業技術が飛躍的に発展するのも江戸の元禄以降なのだ。藩主もそこを考えた場合にはとてもうまくいった。
地主階級が、巨大化するのもここからだ。ただ巨大化したのは上からの要求と下からの突き上げがあったのも理由だろう。上からは年貢の要求、可能なら増産による年貢の増加。下からは年収の増加。間にいる地主階級は資産を殖やして上下の緩衝として動くしか無い。ここのサジ加減がとても難しかったと思う。
江戸時代の地主は、労働者を束ね、福利厚生を当時として適切に管理し、増産を目指さなければ行けない。それでいながら年貢を増やさなければ行けない。
なお江戸時代に起きた天明の飢饉は、東北地方の藩主が増収を目標として晩稲の稲を植えさせた事が原因と言われている。平成4年の大凶作も、多収を目標として肥料を多く入れすぎた事と関連して人災とも言われている。
明治時代もこの流れであったと思う。ただ教育による識字率の増大と制度の違い、日本人は天皇の赤子であるという身分制度の変更があった。地主階級は多角経営に進む。以外と農民の力は強かったのではないかと思う。
私だけの考えと思うが、宮沢賢治はなぜ農業の最先端を勉強しようと思ったのだろうか。これを地主階級として小作農の苦しみをのぞくためとも言われているが、当時の宮沢家ならそれだけの理由では納得しないだろう。多分自分の小作へフィードバックする事を考えていたのではないか。逆に賢治もそこを考えていたのではないかと考えている。
さてまとめだ。日本の農業の問題点は法律から制度まで、古くなってしまっている事だ。まず農家は、言っては何だが地主がいた小作時代から抜け出せていない。国や農協に頼る状態から変わっていないのではないのか。小作から脱出できたが、農地経営をずっと出来ていなかったままで今日まできていなかったのではないか。
これを促進したのが、農地法と農業振興法ではなかったのか。食管制度での減反政策はあまやかしをしてはいないのか?
そこに農協が正しく協同組合として振る舞ってきたのか?小さい農協なら出来る事があったが、なぜ広域化しなければいけなかったのか?地域殖産をなぜできなかったのか?
政治もそうだ。自民党が相当甘やかしすぎた。民主党の農業者個別保証をバラマキ政策としているが、制度としてバラマキになっている現状は悲惨だ。農地法で絶対後継者がいなければ行けない田圃で耕作放棄が起きているのだ。
基本的に農業制度に関わる法律を、自立した農家のためにシステム丸ごと変更する法律が必要だ。手直しではもう難しい状態なのではないのか。
地域保全もそうだ。地域文化もそうだ。残すためにはドラスティックに変わらないといけない。文化を守るために隣の習慣を守る。限界集落になる前にそうしなければならなかったのだが、出来ないまま衰退している。
今回の震災では、法の部分が壊れている。農地法、農業振興法、都市計画法の垣根が無くなっている。農林水産庁内部でも支えていた個別の法律が完全に機能しなくなっている。復興のためにはこれを超えた法律が必要なのだ。総合計画になるからだ。
津波にあった地域はすべてそうだ。その上で福島問題もある。放射能汚染問題は今後30年以上続く。ここを安全・安心のためにどうするのかも難しい。除染は相当難しい。
しかしうまい制度を作れれば、今後モデルケースとして農業の発展につながる可能性がある。
一番難しいのは、緊急時だからといって省庁が一旦フリーハンドにしない事だ。法改正もそうだ。その画をかける自治体には権限が無い。ここが問題なのだ。
一刻も早い法改正を望む。
次が痛い話しなのだが、農地法を撤廃した方がいい。もう耕作放棄で終わった法律なのだ。株式会社の農業経営も、この法で難しくなっている。そもそもだ、農家ではないということでカネ出した人間に議決権が無い法律では、参加するのは難しい。
この後の被災地では、大規模施設園芸で雇用を吸収しながら、元農家には補助金なしの自作農でありながらこの事業に参加してもらう方向が考えられる。
農地委託などの制度をうまく使って、土地の集約もかかせない。
私は今回の震災と原発事故で、うまく行くと農家の共同体が作れるのではないかと思う。ただ順番として安全・安心のために除染が必要で、それを徐々に行わなければ行けない。このため雇用のために大規模施設園芸設備を作る。有機農業は当然だが低農薬は確実に約束する。当然除染した土地でだ。そこに輪作体系を取り込み安全・安心を実現した生産地を作る。その上で小規模農家のための農地を集約的に残す。除染区を増やしながら営農計画と合わせて意欲のある人を拾いだして行く。土地の権利を無視しているが、これは今後起きる住宅需要の急減で解る事だろう。
いまお金がないかもしれないが、農協に出資してもらおう。だからこその農協だ。
この設備を中心に加工も考える。加工する事で付加価値を作る事だ。しかし加工までうまくいっている大農産地でうまくいっている地域ほど経営者として最高の人物と、優秀な人物がいる事だ。失敗例は平等主義だ。問題は人が少ない事だ。また成功し続けられるとは限らない。責任を取る体勢が無いのも農業の世界だ。
そういった具合で人をつぶしてきた農政だが、この震災以降変わらなければ行けない。
基本は集約化だ。おとなりと喧嘩している状況でも、神様からお金が振ってくる状況ではない。
いまだれがこれに手を挙げるのか見ている。次の農業はそこからはじまる。
省庁がそれを邪魔しないように、政治が何とかなって欲しい。でもそれ以前に農家が団結して共同体をやってしまった方がいいと思う。とはいってもそれがいかに難しいかは解っている。
だから農協にがんばって欲しいのだが、もはや共同組合ではない。そうしてグルグルまわって沈没して行くのが日本の農政だ。まずこの輪廻を止めてもらいたいのだが、政治が止まっていた。
だれもが責任を取りたくなくて、それでいてお金が欲しいこの状況はどうなのか。
とりあえず農業関連の法整備の一元化を望む。
江戸時代は過酷な搾取が行われたと言われているが、実態は単純ではない。まず領主としては農民が減る=年貢減収だった。なので一揆が起きた場合なんか要求を呑んで、そのかわり代表者たちを処罰した。武家とすれば全員処罰なのだがそうはいかない。農民も解っているので円形に署名して首謀者が解りにくくした。もちろん首謀者がいなくなるということは農村にとってリーダーを失う事だから痛い事だ。
しかし度々一揆が起きている事を江戸に知られてしまうと、今度は自分たちが怪しくなる。
岩手で三閉井一揆というのがあった。最初は普通の一揆だったが、2度目は集団で分家筋の隣藩に逃げてしまう。これまた和解するのだが、それでもまた集団で仙台藩に逃げ込む。1万人以上だ!仙台藩への移住を求めたが仙台藩でも困ってしまう。江戸にこの件は知られてしまい、当時の南部藩藩主と家老は隠居処分になった。
さて藩にとって農業を盛んにするためには農民が欲しかった。そこで何が起きるかと言えば、逃げてきた農民をかくまってしまうのだ。先の事件では人数が人数だったので、仙台藩でも受け入れられなかったと思うが、10人程度の移動はあったようだ。
そして藩主との間に立つ地主はどうだったかと言えば、上の要求と下からの突き上げでかなり苦労していた。それではと農業技術を勉強したのがこの階級。新しい品種や商品作物、農業技術が飛躍的に発展するのも江戸の元禄以降なのだ。藩主もそこを考えた場合にはとてもうまくいった。
地主階級が、巨大化するのもここからだ。ただ巨大化したのは上からの要求と下からの突き上げがあったのも理由だろう。上からは年貢の要求、可能なら増産による年貢の増加。下からは年収の増加。間にいる地主階級は資産を殖やして上下の緩衝として動くしか無い。ここのサジ加減がとても難しかったと思う。
江戸時代の地主は、労働者を束ね、福利厚生を当時として適切に管理し、増産を目指さなければ行けない。それでいながら年貢を増やさなければ行けない。
なお江戸時代に起きた天明の飢饉は、東北地方の藩主が増収を目標として晩稲の稲を植えさせた事が原因と言われている。平成4年の大凶作も、多収を目標として肥料を多く入れすぎた事と関連して人災とも言われている。
明治時代もこの流れであったと思う。ただ教育による識字率の増大と制度の違い、日本人は天皇の赤子であるという身分制度の変更があった。地主階級は多角経営に進む。以外と農民の力は強かったのではないかと思う。
私だけの考えと思うが、宮沢賢治はなぜ農業の最先端を勉強しようと思ったのだろうか。これを地主階級として小作農の苦しみをのぞくためとも言われているが、当時の宮沢家ならそれだけの理由では納得しないだろう。多分自分の小作へフィードバックする事を考えていたのではないか。逆に賢治もそこを考えていたのではないかと考えている。
さてまとめだ。日本の農業の問題点は法律から制度まで、古くなってしまっている事だ。まず農家は、言っては何だが地主がいた小作時代から抜け出せていない。国や農協に頼る状態から変わっていないのではないのか。小作から脱出できたが、農地経営をずっと出来ていなかったままで今日まできていなかったのではないか。
これを促進したのが、農地法と農業振興法ではなかったのか。食管制度での減反政策はあまやかしをしてはいないのか?
そこに農協が正しく協同組合として振る舞ってきたのか?小さい農協なら出来る事があったが、なぜ広域化しなければいけなかったのか?地域殖産をなぜできなかったのか?
政治もそうだ。自民党が相当甘やかしすぎた。民主党の農業者個別保証をバラマキ政策としているが、制度としてバラマキになっている現状は悲惨だ。農地法で絶対後継者がいなければ行けない田圃で耕作放棄が起きているのだ。
基本的に農業制度に関わる法律を、自立した農家のためにシステム丸ごと変更する法律が必要だ。手直しではもう難しい状態なのではないのか。
地域保全もそうだ。地域文化もそうだ。残すためにはドラスティックに変わらないといけない。文化を守るために隣の習慣を守る。限界集落になる前にそうしなければならなかったのだが、出来ないまま衰退している。
今回の震災では、法の部分が壊れている。農地法、農業振興法、都市計画法の垣根が無くなっている。農林水産庁内部でも支えていた個別の法律が完全に機能しなくなっている。復興のためにはこれを超えた法律が必要なのだ。総合計画になるからだ。
津波にあった地域はすべてそうだ。その上で福島問題もある。放射能汚染問題は今後30年以上続く。ここを安全・安心のためにどうするのかも難しい。除染は相当難しい。
しかしうまい制度を作れれば、今後モデルケースとして農業の発展につながる可能性がある。
一番難しいのは、緊急時だからといって省庁が一旦フリーハンドにしない事だ。法改正もそうだ。その画をかける自治体には権限が無い。ここが問題なのだ。
一刻も早い法改正を望む。
次が痛い話しなのだが、農地法を撤廃した方がいい。もう耕作放棄で終わった法律なのだ。株式会社の農業経営も、この法で難しくなっている。そもそもだ、農家ではないということでカネ出した人間に議決権が無い法律では、参加するのは難しい。
この後の被災地では、大規模施設園芸で雇用を吸収しながら、元農家には補助金なしの自作農でありながらこの事業に参加してもらう方向が考えられる。
農地委託などの制度をうまく使って、土地の集約もかかせない。
私は今回の震災と原発事故で、うまく行くと農家の共同体が作れるのではないかと思う。ただ順番として安全・安心のために除染が必要で、それを徐々に行わなければ行けない。このため雇用のために大規模施設園芸設備を作る。有機農業は当然だが低農薬は確実に約束する。当然除染した土地でだ。そこに輪作体系を取り込み安全・安心を実現した生産地を作る。その上で小規模農家のための農地を集約的に残す。除染区を増やしながら営農計画と合わせて意欲のある人を拾いだして行く。土地の権利を無視しているが、これは今後起きる住宅需要の急減で解る事だろう。
いまお金がないかもしれないが、農協に出資してもらおう。だからこその農協だ。
この設備を中心に加工も考える。加工する事で付加価値を作る事だ。しかし加工までうまくいっている大農産地でうまくいっている地域ほど経営者として最高の人物と、優秀な人物がいる事だ。失敗例は平等主義だ。問題は人が少ない事だ。また成功し続けられるとは限らない。責任を取る体勢が無いのも農業の世界だ。
そういった具合で人をつぶしてきた農政だが、この震災以降変わらなければ行けない。
基本は集約化だ。おとなりと喧嘩している状況でも、神様からお金が振ってくる状況ではない。
いまだれがこれに手を挙げるのか見ている。次の農業はそこからはじまる。
省庁がそれを邪魔しないように、政治が何とかなって欲しい。でもそれ以前に農家が団結して共同体をやってしまった方がいいと思う。とはいってもそれがいかに難しいかは解っている。
だから農協にがんばって欲しいのだが、もはや共同組合ではない。そうしてグルグルまわって沈没して行くのが日本の農政だ。まずこの輪廻を止めてもらいたいのだが、政治が止まっていた。
だれもが責任を取りたくなくて、それでいてお金が欲しいこの状況はどうなのか。
とりあえず農業関連の法整備の一元化を望む。