盛岡の地ビール、ベアレンの特別工場見学会がありました。
このベアレンですが、銀河高原ビールにいたドイツ人マイスターのイヴォさんと木村さん・嶋田さんの3人で立ち上げたものです。よくある第三セクターではなく完全個人資本の地ビールです。
マイスター・イヴォの趣味に、クラシックのビール製造装置の収集というものがありまして、この趣味を生かして100年以上前の製造装置でビールを作っています。
地ビールという事で、イベントに力を入れています。春のイベント、夏のバーベキュー付きイベント、秋のオクトーバ・フェストと、もう少しあったような気もしますが、イベントが多い地ビールです。今回もその一環。新人研修もかねているようです。
実は社長の木村さん、木村窯業所の息子です。以前はここでレンガなどを焼いていたみたいですが、粘土の入手・燃料の高騰などでレンガ製造を止めてしまいました。残った工場が現在のベアレンの工場になっています。
なので敷地内には水道管の継ぎ手や鬼瓦などが見られます。この敷石にしているのはアーチレンガ。耐熱レンガかもしれません。
壁面は2種類のレンガで出来ています。下が遠野レンガ、上は忘れてしまいましたが、前沢だったような。
建物一階の内装は、木村レンガを焼いていた窯のレンガで出来ています。実は耐熱の高級品です。焼け色に時間を感じさせます。
さて工場見学会には60人ほど集まりました。工場には入りきらないという事で、二つに分けて見学会がはじまりました。
モルトの山。モルトは麦芽、つまり目を出す直前まで育てたものを、焙煎して発芽を止めたもの。産地は、ドイツ・イギリス・カナダのようです。
これをミルで粉砕します。どうもこの機械が一番古いようですが、大人数で説明を聞きそびれました。ギア式のクラッシャーミルでしょうか。後で見たモルトかすからすると、噛み砕くように粉砕しているようです。
砕いたモルトに水を入れて、手前の装置に入れて、説明は聞いていないのですが多分35度くらいで加温すると、麦芽に含まれている酵素とでんぷんが反応してブドウ糖と麦芽糖に変わります。日本では水飴の作り方です。まだこの作り方で、津軽辺りで水飴を作っていると思いました。
で反応が進んだら、奥のドーム型の装置に送って濾過します。濾過したものはまた手前の装置に戻って、加熱して酵素の働きを止めます。
奥にある装置には、撹拌の棒と、漉すための細かいパンチングの金網が見えます。この搾りかすを羊に食べさせ、8月のバーベキュー大会に提供したそうです。餌が違うせいか羊の臭みがなかったそうです。
実は産業廃棄物の問題でもあるので、エコといえます。
糖化の終わった麦汁があります。あとでいただいたのですが、甘くてちょっと青臭い独特の味です。中世ヨーロッパでは、母乳代わりに子供に与えていたと聞いています。ちょっと発酵のはじまったものも使っていたとも。
濾過器のエンブレム。ロットから19台目なのでしょうか。
窯の中には、スチームで加熱するためのパイプが入ってました。撹拌棒も入っていたような気がしますが、どうだったかな?全部銅製です。蒸気抜きのパイプが曲がって、傘みたいな物がついているのは、麦汁に蒸気が冷えて出来た水が混じらないようにしているためだそうです。
加熱した麦汁を冷やすための、巨大な皿。こうして冷やす方がいいらしいのだが、衛生上の問題があって現在使用していないと言う事。隣の人がホっとしていました。脇にあるのも冷却器。今は近代的な冷却器を使っているとの事。冷却して酵母を加えて発酵に進みます。
この巨大な皿をどうやって運んだのかと言えば、実は6分割出来るようだ。しかし特殊なねじだなぁ。
発酵室は立ち入り禁止。二酸化炭素濃度が高いので、危険なんだそうだ。どちらにしてもこの人数では入れない。醸造に関わる部分と他の部分と隔てるドアに、断熱材が貼付けてあった。全体手作り感がすごい。
ビン詰め行程の作業場の前に、よくある標語が。ヒヤリハットは見逃さず。うん、そうですね。
さて熟成行程。発酵が終わったものは冷蔵庫内の熟成タンクで熟成します。上面発酵は20日間、下面発酵は25日間熟成するそうです。そういえば上面発酵のほうが発酵日数が短かった。上面発酵は発酵や熟成が短い分作るのが難しいのだろうか。
酵母発見!記号の意味は解らないが、これがヒミツかと勘違いをしてしまいます。さっきの上面発酵は発酵時の泡に集まるタイプの酵母、伝統的な酵母です。下面発酵は酵母同士がくっつく癖のある酵母で、くっついて固まって底に沈んでしまいます。泡でこぼれない近代的な酵母ですが、発酵が遅いとは知らなかった。発酵が終わった物から酵母を取り出し、5回ほど繰り返し使うようだ。なんで5回かといえば、多分特定の酵母ばかりになってしまうからなのだろうと、考えています。
なお後で、この下面発酵の酵母を試食しましたが、苦かったです。味は上面発酵のほうが味がいいので、酵母入りビールは上面発酵で、下面発酵は酵母を濾過していると以前聞いていました。なおビン詰め後の、火入れのための巨大な加温機がありましたが、人が多く、写真を取り損ねてしまいました。
前の熟成タンクは、中古品。この写真のは新品だそうです。ベアレンも楽天でNo1になったりしていますので、生産のため追加投資しているようです。あと多品種ですからねえ、この会社。今年のゴールデンウイーク前に材木町よ市での出店と、春のイベントでこれらのタンクの2/3が無くなったといいます。タンクをみてつくづく、地元でここまで呑まれているのはすごい事です。
ズラっと並んだビン。頒布会向けのようです。
おや、打栓がうまくいっていない物や賞味期限切れの物が積まれています。社員向けですか。いい福利厚生です。社長にとっては困り者ですね。
頒布会向けのラベル。石割桜ですね。これは会に入っていないと呑めないもの。地元では出回っていません。念のためストロボなしで撮影。
最近出回っているオクトーバ・フェストビール。これが終わる頃ポーターが出てくるかな?
試飲が一杯と、モルト・ホップのお土産付きだったのですが用事があって試飲なし。とはいっても説明をしてくれた井上さんの手にあるフラスコ、熟成前のビールです。試飲が出来るというのでちょろっと呑んでみました。やはり味がバラバラでした。
会が終わって自宅に戻ると雨が降ってきました。そのあと虹が出ました。皆様おつかれさまでした。