木槿(ムクゲ)の花は、夏の青空と強い日差しが良く似合う花である。
暑さなんかものともせずに、涼しい顔して咲いている。(韓国の国花)
芙蓉によく似た花ではあるが、芙蓉が「酔芙蓉」等呼ばれる様にと、頬を
ほろ酔い加減に、ほんのりと朱に染めた花姿から、たおやかな女性を連
想させるが、このムクゲの花は、鋭い男性的な感じさえするのだが。・・・
槿(ムクゲ)は朝に花開き、夕には萎む一日花で儚い花でもある。
島根県奥出雲町の故郷民話に、こんな話が語り継がれているそうな・・・
昔あったげな。
あるところに山子が三人おって、毎朝、旦那さんの家の門を通るとき、一番初めの豊吉という山子は、
「ああ、おら、旦那さんの食わっしゃるような膳で、旦那さんの食わっしゃるようなご馳走を食うてみりゃいいと思う」と言う。次の格という山子は、
「おら、お式膳に白金いっぱいもらやあええと思う」と言う。三人目の元という者は、
「おら、ここの嬢さんの婿になりゃええと思う」と言う。
そのうち旦那さんがそれを聞いて尋ねられたげな。
「豊吉、格、元、わりゃ三人、毎朝、家の門を通りさいすりゃ、なんだいかんだい言うておるが、何言うて通りゃ。まず豊吉、わりゃ何て言うて通った」
「へえ」
「へえじゃ分からん。言いてみい」
「いや、他じゃございませんが、旦那さんの食わっしゃるような膳で、旦那さんの食わっしゃるようなご馳走を食うてみりゃいいになあ、と言いましてございます」
それから、旦那さんはすぐ女中さんに、
「はや、わしが膳にわしがいつも食うようなご馳走を、この豊吉に食わせてやれ」。 そこで女中がそうしてやると、旦那さんは今度は番頭さんに、
「格には式膳に白金をいっぱいやってごせ」と言ってそうしてやりました。最後に元に向かって、
「元、わりゃどげ言いて通って」といくら聞かれても、「へえ」としか言わんげで、他の二人が銭をもらったり、ご馳走をよばれたりしてしまっても、叱られると思って言わんげで、旦那さんは、
「何だい、言いてみい。他の者はみんな言ったのに、おまえ一人言わんがな。言われんことはないけん言え」あまり言われるので、元も「おら、嬢さんの婿になってみればいい、と言いましてございます」と言いました。すると旦那さんは、
「はあ、そげか。ほんならここへ、いま嬢がいい着物を着て出て和歌(うた)を詠むけん、それを詠み返してみい」と言われました。 それで待っていたら、いい着物を着て簪(かんざし)挿して、嬢さんが出られ、
「天より高いところに咲く花は」と言われたので、
「落ちれば谷のムクゲ(木槿)となる」と元は答えました。旦那さんは喜んで、「ああ、こうこそ、うちの婿だ」言われて、元は望み通りにそこの婿になりました。
それで、同じ望みを持つのなら大きな望みを持つものだと。 ~こっぽし~ (出典: 出雲かんべの里ホームページ)
この民話は「同じ望みを持つのなら大きな望みを持つものだと。」と、子供
達に教え。
お嬢さんとのかけ合いで、「天より高く咲く花も 落ちれば谷の木槿かな」と
掛けあっている。
こうして、先人達は、将来を担う子供達に期待を込めて、人の道を示してく
れているのである。
~今日も良い一日を~
「ザ・ローズ」~ベッド・ミドラー