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映画『古都』 原作・川端康成
ノーベル文学賞作家川端康成が『失われゆく日本の美をとどめておきたい。 日本のふるさとを
訪ねるような小説が書いてみたい』との強い意図から、書いた同名の短編小説「古都」を映画化
した作品である。
かつて、私がまだ若かった頃、この小説「古都」を文庫本で買って読んだ。
随分昔のことだが、
作者の意図する、古き善き「古都」京都の美しい自然の中に、分けあって離れ離れに育った、双
子の姉妹が、祇園祭の夜,不思議な力によって魅かれ合い遭遇する。
全体に流麗な文体で、その行間に様々な想像を巡らしながら、一気に読み切ったものだが、何
故か美しい余韻の残る小説であったと今でも記憶している。
今日、何気なくリモコンで番組を探しをしていると、この「古都」が今、繰り返し放映されているこ
とを知り、久しぶりに小説「古都」の世界に浸ってみた。
(あらすじ)
古都京都の呉服問屋の一人娘・千重子は、両親の愛に育まれて育って来たが、「自分は捨て子
ではないか」という悩みをずっと抱えていた。(両親は他人(ひと)の噂を必死に打ち消すのだが)
5月のある日、千重子は友達と連れ立って緑美しい”北山杉”を見に出掛けて行く。・・・ そこで
杉の加工作業にいそしむ村娘の中に、自分とそっくりな娘を見掛ける。
その後、ある年の夏、「祇園祭」の夜に偶然見覚えのある娘と出会い、お互いに、生き写しと思
える程似ていることに驚き、じっと見詰め合う・・・「あんた、姉さんや、神さまのお引き合せどす」
と姉妹は再会(?)に涙する。 ~その娘は、あの「北山杉」の村娘で、名は苗子と言った。~
お互いの身の上を語り合い、姉妹であることを確かめ合う・・・しかし、お互い姉妹の絆によって
強く魅かれ合うのだが、苗子は「身分の違い」を自覚し迷惑を掛けまいと、千重子が再三訪ねて
来るように誘うのだが・・・・苗子は「たった一晩だけ千重子の家に行くことを決意し、雪の降る夜
、千重子の家を訪ねる。
夜が更けて、姉妹は一つの床に寝て幸福な姉妹のひと時を過ごした。
苗子は、これ以上千恵子に会うことは迷惑(捨て子が他人に知れる)になると、このたった一度の
訪問で、まだ薄暗く人気のない早朝、山の村へ帰って行った。・・・・・・
京都という古き伝統が残る地を舞台に、京の名所や年中行事を絡めて、美しい自然、姉妹の絆の
強さ、京言葉の、この上ない美しさを伝える、しっとりとした作品であった。
主演:山口百恵の、姉妹二役の演技が、物語に中に違和感なく自然に溶け込んでいて素晴らしか
った。
川端康成は、この小説の連載執筆を終え、睡眠薬の常用を止めようとし禁断症状で入院した際に
「古都:執筆中は、毎日書いている間も睡眠薬を飲み、「うつつないありさまで書いた」「私の異常な
所産である」と、語っていたそうである。
~貴方にとって、今日も良い一日であります様に~