福岡市にロープウエーは必要なのか。高島市長が自分の夢だと言って、突然、公約に掲げた「ロープウエー構想」に波紋が広がっている。12月議会最終日に、箱崎ふ頭の埋め立てとロープウエー導入に対し、共産党などから慎重な検討を求める決議案が出された。決議案は、自民、公明、みらい、維新、自民新(高島市長親衛隊)などの反対により否決されたが、ロープウエーに関しては、与党自民党からも疑問の声が上がっている。
ロープウエー構想が表面化したのは、昨年12月5日の高島市長政治資金パーティーでのこと。高島市長は海外での実例を交え、博多駅から大博通り、ウォーターフロント(WF)地区を経由し、北天神の須崎公園付近までを結ぶ「福岡スカイウェイ構想」を提示した。しかし、この構想。実は、福岡市が15年にWF地区の再整備案を民間事業者から公募した際、JR九州から提案されたものである。そこのところは封印し、さも自分が考案したように「自分の夢」だと言うところに、この人の浅はかさがある。
それはさておき、自民党は、箱崎ふ頭の埋め立ては必要だとする一方で、ロープウエーについては苦言を呈した。どうやら自民党の所属議員のところにも多くの市民から反対意見が届いているようで、中でも問題になっているのが、高島市長が自ら立ち上げた有識者研究会で、WF地区の交通手段について検討している最中に、いきなりロープウエー導入を公約に掲げたこと。さすがにこれには、自民党からも苦言が出た。決議案には反対したが、導入に100%賛成しているわけではないと言いたかったのだろう。一方、野党会派である市民クラブなどは、必要性や採算性などの情報があまりに少なく、議論はこれからというスタンスで、慎重な検討を求める決議案に賛成している。
そもそも、なぜ新交通システムが必要なのか。ここが一番大事なところだが、市は、クルーズ船外国人観光客などの増加を見込み、今月、1000億円とも言われるWF地区の再整備計画を発表した。市の試算によると、将来的には1日約16万人の観光客がWF周辺を行き来する。そのため1時間当たり片道最大2000人~1400人を運べる新交通システムが必要になるという。しかし、それを裏付ける資料は出していない。そこで、観光庁が先月、公表した訪日外国人消費動向調査の結果を見てみた。すると博多港から入国した観光客はすべて中国人。内訳は個人5%、団体ツアー客95%、交通手段は100%貸し切りバスとなっている。目的は第1位が買い物、第2位が飲食。行先は第1位がコスモス薬品などのドラッグストアー、第2位がコンビニとなっている。さて、ドラッグストアーで買い物をするために、ロープーウエーに乗る外国人観光客がどれほどいるだろうか。
というわけで、今後、議会でどのような議論がなされるのか、しっかり見ていかないといけない。議会で反対されたら、また再議ということになるかもしれない。(高島市長ならやりかねない)ちなみに、先の市長選出口調査では、63%の市民がロープーウエーは必要ないと答えている。福岡市は、良識ある市民の意見を聞くことを忘れてはならないだろう。市民生活に直結する問題は置き去りにして、不要不急のものに400億円もの血税を使おうとしているのだから。
大博通りは風の通り道 ここにロープウエー、、(写真手前が博多駅、中央が大博通り 写真:西日本新聞より)
大博通り(紫色)に平行して走る警固断層南東部(赤表示) 地震が起きたら、、(国土地理院活断層地図より)
地盤は軟弱な砂地(ルーペ印) ちなみに陥没事故現場はすぐそば(産総研地質図より)
自民党と高島市長との微妙な関係が見え隠れする (12月20日西日本新聞朝刊より)
《関連記事》
・3期目の置き土産となるか?実現に向けて進む高島市長の夢・ロープウエー(前) (NETIB-NEWS 2018.12.15)
・3期目の置き土産となるか?実現に向けて進む高島市長の夢・ロープウエー(後) (NETIB-NEWS 2018.12.16)
《関連資料》
・ロープウェイなどのウォーターフロント地区の公共交通アクセス強化の検討に関する決議案