危険な斜面 (文春文庫)松本 清張文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
♪「危険な斜面」松本清張著 文春文庫
友人から借りた文庫本だ。松本清張の初期のころの短編集。
う~ん、読んでいて懐かしい昭和30年代の匂いがする。
昔付き合っていた女が、今の勤務先の会長の妾となっていた。何とかその伝を利用して出世したい男の転げ落ちる人生。(「危険な斜面」)
療養所を無理して退院してきた夫のために派遣看護婦を雇うが、その夫と優秀な看護婦の態度が怪しく、妻は悶々と悩む。(「二階」)
東京に出稼ぎに来ていて思わず犯した強盗殺人。妻と子供のいる東北の某都市に舞い戻るか?地元のベテラン刑事と若手刑事が犯人の自宅で張り込みを行うが、犯人は地元の海に投身自殺する。その前に張り込みを潜り抜け、妻と会っていた?(「失敗」)
人生の行き詰まりに疲れ、会社の金を横領して心中のために恋人と逃避行する男。旅先で、なに不自由なく旅行する富裕層の中年カップルと出会い、心中を思い止まるが・・・。(拐帯行」)
いずれも人生のどん詰まりに追い込まれた一般庶民の葛藤や思い込み、それとはそ相反する現実などをピックアップした松本清張ならではの短編集。
最終話の「投影」が、せめても主人公の明るい未来を暗示し、少し救われた。
松本清張って、長編ももちろん読み応えがあって面白いんだけど、短編が結構いいんだよね。
清張との出会いは、実家の親父の本棚に並んでいたカッパブックス(懐かしい!?)の「黒の画集」だ。
この短編集を高校生の頃に読んで、すっかり「清張ワールド」に魅了されたものだ。
「黒い画集」は、そのうち読み直して感想を述べようと思います。
(高校生の感動が蘇るか?)
昭和30年代の雰囲気は、僕らぐらいまでの年代の者はちゃんと記憶している。
なんとも懐かしく、かつ良き時代だったような気がする。