今日も庭も近隣にも百日紅の咲きそろっている、
八月最後の土曜日、曇って涼しめな朝にまどろめば、
妻は深夜から幾度か不定期に腹の痛むと言うから、
産院に電話し、また陣痛タクシーなるサービスを呼び
府中にある産婦人科へお腹の子と三人で向かう。
家では長男虎之介と長女亜依が、彼/女らの母方の祖母と留守番。
タクシーはすぐに到着したため、急いでいつもの風呂敷バッグにあれこれ詰めた後
スニーカーを履くいとまもとれず、やっぱり夏の相棒たる下駄で出る。
8:25ころ産院に着き診察すると、すぐそこまで赤ちゃん来ていて
院長さん「家で産まれなくてよかったね」という。
まあ、行く行くはみなが自宅で安心出産できる
ライフスタイルへ世の中変わったらよかと思うが。
さて、そんなこんなで9:29にはスルリと安産。
頭が出ると、身体はスムーズに抜ける。
げんきに鳴き出して安堵。
螺旋状のへその緒がつづいている。
産まれた赤ちゃんに出逢ったときは、知らず、涙がこみ上げるところのあったものの
むしろ静かに坦々と見ていた私だったが
助産師さんから「臍の緒はお父さんに切ってもらいましょう」と
ハサミを手渡された。
個人的には、産まれてしばらくしてから切るほうがよいと
考えているが、よく泣いて肺呼吸へ移っているし
郷に従うわけで、ハサミを頂戴する。
それでも突然たる断絶は無情なので、ゆっくりと刃をすすめた。
同時に何本ものコードを切るごとく、しっかりした管である。
その後、残った緒を引くと、今度は胎盤がのるっと出てきた。
薄白き膜に覆われたて、中は赤い血管が縦横に集積された
スーパーコンピュータのごとき器官。
胎盤も風呂敷も、必要なときに形を表し、
目的を果たせばほどけ去るところが似ている。
現場に血生臭さは皆無で、きっと清浄な胎内環境だったろう。
女性ならむと聞きしかば、横山佳なみ(かなみ)たる名を
準備したれども、我が父は漢字とひらがな混ざらぬがよきと言うし
実際の顔(まるこい)見れば、佳なみでもない。そこで、
横山京果(きょうか)となむ名付ける。
生まれいでて間もなく乳を盛んに吸いはじめる様、
早食の父、多食の母親に似たるかも。
ともあれみな無事元氣にありて落ち着きつつも、
自宅で待機の幼な児の世話や弁当つくり、
ほぼ毎日の出張仕事に追われ、仙台からの義母が
泊まり掛けですけてくださっている。
我が子だからと特段区別はなく、親は子の所有主にあらざって
一時預かりに過ぎない。
みなと協力して社会で楽しく生きられるよう、
囲い込まず、自発するように見守ろう。
巣立ちの日まで。
| Trackback ( 0 )
|