漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「酉ユウ」<酒つぼ> と 「酒シュ」「醜シュウ」

2019年09月16日 | 漢字の音符
    ユウ <元は酒つぼ>
 ユウ・とり  酉部

 酒つぼで長期熟成されている紹興酒
https://www.nomooo.jp/column/112256/

解字 酒つぼを描いた象形。中国の古代からの酒は黍(きび)や米を原料とする醸造酒であるが、日本の酒とことなり、上等な酒は酒つぼに入れて長期間熟成させる。このために用いるのが酒つぼである。写真は熟成されている紹興酒の酒つぼであるが、持ち運ぶため六つ目網みの籠で包んだり(手前)、その奥は、つぼ同士が当たる衝撃を和らげるため中央に縄を幾重にも巻いたりしている。酉の字形の模様はこうした酒つぼの状態を描いたのかもしれない。酉はさけの意も表し酒の原字。しかし甲骨文字の時代から仮借カシャ(当て字)して十二支の10番目の「とり」に当てられている。
意味 とり(酉)。十二支の第十位。方位は西、時刻は午後6時およびその前後1時間。動物はにわとりに当てる。「酉(とり)の市」(11月の酉の日に行なわれる鷲(おおとり)神社の市)
 
十二支(酉は西で8月「暮らし歳時記」より)②酉年の年賀状見本

参考 酉は部首「酉とり・とりへん・ひよみ(暦)のとり・さけのとり」になる。漢字の左辺について、酒・発酵の意味を表す。
常用漢字  14字
 コウ(酉+音符「孝コウ」)
 コク・むごい(酉+音符「告コク」)
 サク・す(「酉+音符「乍サ」」
 サン・すい(酉+音符「夋シュン」)  
 シャク・くむ(酉+音符「勺シャク」) 
 シュ・さけ( 氵+音符「酉ユウ」)
 シュウ・むくいる(酉+音符「州シュウ」)
 シュウ・みにくい(鬼+音符「酉=酒シュ」)  
 ジョウ・かもす(酉+音符「襄ジョウ」)   
 スイ・よう(酉+音符「卆(卒)ソツ」) 
 セイ・さめる(酉+音符「星セイ」) 
 チュウ(酉+音符「肘チュウの略」) 
 ハイ・ならぶ(酉+己の会意)        
 ラク(酉+音符「各カク」)
 
イメージ 
 「とり(仮借)」(酉)
 「さけ」(酒・醜)
音の変化  ユウ:酉  シュ:酒  シュウ:醜
さ け
 シュ・さけ・さか  酉部
 
熟成された酒つぼ6個が1箱に入った中国の洞蔵老酒(熟成酒)販売広告(中国のネットより)。傍らに酒つぼから直接、盃(さかずき)に酒を注ぐ写真が添えられている。

解字 甲骨文第1字は酒つぼから酒が注がれている形を三つの線で表している。第2字は注ぐ酒を4つの点で表している。大きな酒つぼから酒を注ぐことは無理であるが、小さな酒つぼから酒を器に注ぐことは現在でも行われている(上の写真)。酒は酉(酒つぼ)の中に入っているので酉が酒の意味を表している。金文第1字は酉の字で酒を表し、第2字は酉の中に点や線を付けて中に酒が入っていることを示している。篆文になり「氵(液体)+酉(さけ)」となり現在に続く。
酒の部首はなぜ氵(さんずい)でないのか?
 甲骨文から金文まで酒の意味は酉が表している。篆文から「氵(液体)+酉(さけ)」となったが、この字は意味を表す酉さけのとり(酒)にそれが液体(氵)である記号がついているだけで、氵は部首とはみなされない。なお、甲骨文字にも酒の字があるが、[甲骨文字辞典]によると、意味は酒でなく川の名前を表している。
意味 さけ(酒)。さけを飲む。さかもり(酒盛り)。「酒蔵さかぐら」「飲酒インシュ」「酒宴シュエン」「酒豪シュゴウ」(大ざけのみ)
 シュウ・みにくい・しこ  鬼部
解字 「鬼(おに)+酉(=酒。さけに酔った)」の会意形声。酒に酔った鬼。この字は酉部にする辞書もある。
意味 (1)みにくい(醜い)。けがらわしい。「醜悪シュウアク」(みにくい。見苦しい)「醜名シュウメイ」(悪い評判)「醜態シュウタイ」「醜聞シュウブン」 (2)にくむ。きらう。 (3)しこ(醜)。みにくいものをののしる語。「醜女しこめ」「醜男しこお」   
<紫色は常用漢字>

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