倉は「くら」の形を表した象形文字の音符だが、「くら」のイメージで使われるのは艙のみで、残りはすべて、ソウの発音からくる形声字である。
倉 ソウ・ショウ・くら 人部ひとがしら cāng
解字 穀物などを納めておく「くら」の形の象形。甲骨文・金文は上にA字形の屋根があり、その下に戸を描く。一番下の口は、くらの土台である[甲骨文字小字典]。篆文と現代字は、戸の柱が口の横まで伸びたかたち。また、怱ソウ(あわただしい)に通じ、あわてる意もある。
意味 (1)くら(倉)。物を入れておく建物。「倉庫ソウコ」「船倉センソウ」「穀倉コクソウ」(穀物を納める倉)(2)にわかに。あわてる。「倉卒ソウソツ」(あわただしいこと)(3)あおい(=滄)。「倉海ソウカイ」
イメージ
「くら」(倉・艙)
「ソウの発音」(刱)
「形声字」(創・瘡・愴・槍・蒼・滄)
音の変化 ソウ:倉・艙・刱・創・瘡・愴・槍・蒼・滄
く ら
艙 ソウ 舟部 cāng
解字 「舟(ふね)+倉(くら)」 の会意形声。船の内部のくらになっている部分。船の中央部で貨物を積む所。
意味 ふなぐら。中央部の船室。「船艙センソウ」「艙底ソウテイ」(ふなぞこ)「艙間ソウカン」(船室)
ソウの発音
刱 ソウ・ショウ・はじめる 刀部 chuàng
解字 「井(わく)+刅ソウ(両刃の刀)」 の会意形声。井は井戸枠の形で、ここでは鋳物の型枠の意。型枠の注ぎ口に溶けた金属を流し込み、固まったら型枠をはずし刅ソウ(両刃刀)で鋳物砂を突き崩して中の鋳物を取り出すこと。新しい鋳物が出来上がるので、はじめる・つくる意となる。また、鋳物砂を突くので、傷つける意ともなる。
意味 (1)はじめる(刱める)。「刱業ソウギョウ」(事業を新しく始める)(2)つくる。「刱造ソウゾウ」(新たに造ること)(3)そこなう。きずつける。
※この字を同音の倉ソウに置き換えたのが創ソウである。
形声字
創 ソウ・つくる 刂部 chuàng・chuāng
解字 「刂(刀)+倉(ソウ)」 の形声。ソウは刱ソウ(はじめる・つくる・きずつける)に通じ、刱ソウの意味を同音の創ソウで表した。
意味 (1)はじめる(創める)。「創始ソウシ」「創業ソウギョウ」「創立ソウリツ」「創刊ソウカン」(2)つくる(創る)。つくりだす。「創造ソウゾウ」「独創ドクソウ」「創作ソウサク」(3)きず(創)。きずつける。「創傷ソウショウ」(きずつく)「創痕ソウコン」(きずあと)
瘡 ソウ・ショウ・かさ 疒部 chuāng
解字 「疒(やまい)+倉(ソウ=創。きず)」 の形声。傷を負うこと。および、傷あとの「かさ」をいう。また、かさのできる腫れものをいう。
意味 (1)きず。きりきず。「刀瘡トウソウ」(2)かさ(瘡)。くさ。はれもの。「瘡蓋かさぶた」「疱瘡ホウソウ」(天然痘の俗称=痘瘡トウソウ)
愴 ソウ・いたむ 忄部 chuàng
解字 「忄(こころ)+倉(ソウ=創。きず)」 の形声。心がきずつくこと。かなしむ・いたむ意となる。
意味 (1)かなしむ。いたむ(愴む)。「悲愴ヒソウ」(悲しみいたむ)「悲愴交響曲ヒソウコウキョウキョク」(チャイコフスキー作曲の交響曲)「愴然ソウゼン」(いたみかなしむさま)(2)いたましい。「凄愴セイソウ」(すさまじくいたましい)
槍 ソウ・やり 木部 qiāng
解字 「木(き)+倉(ソウ=創。きず)」 の形声。長い木の柄に「穂」と呼ばれる先の尖った刃を付け、突き刺して使用する長柄武器(ながえぶき)を槍ソウという。
槍の構造(「名古屋刀剣博物館・槍とは」)
意味 やり(槍)。長い柄の先に尖った刃のついた武器。「槍術ソウジュツ」「槍衾やりぶすま」(槍を前に突き出して隙間なくならぶ)「槍鉋やりがんな」(穂先が反った形の刃に柄をつけた槍に似た古代の鉋)
槍鉋やりがんな(「半布里工房「槍鉋」より)
搶 ソウ・ショウ・つく 扌部 qiāng・qiǎng・chēng
解字 「扌(て)+倉(ソウ=槍。やり)」の形声。槍を手でつくこと。また、槍を持ってさわぐこと。
意味 (1)つく(搶く)。つきあてる。「風を搶く」(風に逆らって進む)(2)あらそう。みだれる。奪い取る。「搶攘ソウジョウ」(さわぎみだれる)「搶奪ソウダツ」(うばいとる)「搶掠ソウリャク」(かすめとる)
蒼 ソウ・あおい 艸部 cāng
解字 「艸(くさ)+倉(ソウ)」の形声。[説文解字]は「艸(草)の色(いろ)也(なり)。艸(草)に従い倉ソウの聲(声)」とするが、[詩経・王風]は「悠悠たる蒼天ソウテン」と空の青さの意で用いており、深い青色を蒼ソウと言う。
意味 (1)あおい(蒼い)。あお(蒼)。こい青色。「蒼穹ソウキュウ」(あおぞら)「蒼白ソウハク」(顔色が青ざめて血色のわるいこと)(2)しげる。草木がしげる。「蒼蒼ソウソウ」(あおあおしている)「蒼茫ソウボウ」(青々とひろいさま)「蒼海ソウカイ」(=滄海)(3)草木があおあおと茂る意から、多くの人民にたとえる。「蒼氓ソウボウ」(人民。たみくさ。=蒼生)
滄 ソウ 氵部 cāng
解字 「氵(水)+倉(=蒼。あおい)」の形声。水や海のあおさをいう。
意味 あおい。あおうなばら。うみ。「滄海ソウカイ」(ひろびろとしたあおい海=蒼海)「滄海変じて桑田となる」(大海原が桑畑に変わる。時勢の大きな変遷のたとえ=滄桑ソウソウの変)
<紫色は常用漢字>
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倉 ソウ・ショウ・くら 人部ひとがしら cāng
解字 穀物などを納めておく「くら」の形の象形。甲骨文・金文は上にA字形の屋根があり、その下に戸を描く。一番下の口は、くらの土台である[甲骨文字小字典]。篆文と現代字は、戸の柱が口の横まで伸びたかたち。また、怱ソウ(あわただしい)に通じ、あわてる意もある。
意味 (1)くら(倉)。物を入れておく建物。「倉庫ソウコ」「船倉センソウ」「穀倉コクソウ」(穀物を納める倉)(2)にわかに。あわてる。「倉卒ソウソツ」(あわただしいこと)(3)あおい(=滄)。「倉海ソウカイ」
イメージ
「くら」(倉・艙)
「ソウの発音」(刱)
「形声字」(創・瘡・愴・槍・蒼・滄)
音の変化 ソウ:倉・艙・刱・創・瘡・愴・槍・蒼・滄
く ら
艙 ソウ 舟部 cāng
解字 「舟(ふね)+倉(くら)」 の会意形声。船の内部のくらになっている部分。船の中央部で貨物を積む所。
意味 ふなぐら。中央部の船室。「船艙センソウ」「艙底ソウテイ」(ふなぞこ)「艙間ソウカン」(船室)
ソウの発音
刱 ソウ・ショウ・はじめる 刀部 chuàng
解字 「井(わく)+刅ソウ(両刃の刀)」 の会意形声。井は井戸枠の形で、ここでは鋳物の型枠の意。型枠の注ぎ口に溶けた金属を流し込み、固まったら型枠をはずし刅ソウ(両刃刀)で鋳物砂を突き崩して中の鋳物を取り出すこと。新しい鋳物が出来上がるので、はじめる・つくる意となる。また、鋳物砂を突くので、傷つける意ともなる。
意味 (1)はじめる(刱める)。「刱業ソウギョウ」(事業を新しく始める)(2)つくる。「刱造ソウゾウ」(新たに造ること)(3)そこなう。きずつける。
※この字を同音の倉ソウに置き換えたのが創ソウである。
形声字
創 ソウ・つくる 刂部 chuàng・chuāng
解字 「刂(刀)+倉(ソウ)」 の形声。ソウは刱ソウ(はじめる・つくる・きずつける)に通じ、刱ソウの意味を同音の創ソウで表した。
意味 (1)はじめる(創める)。「創始ソウシ」「創業ソウギョウ」「創立ソウリツ」「創刊ソウカン」(2)つくる(創る)。つくりだす。「創造ソウゾウ」「独創ドクソウ」「創作ソウサク」(3)きず(創)。きずつける。「創傷ソウショウ」(きずつく)「創痕ソウコン」(きずあと)
瘡 ソウ・ショウ・かさ 疒部 chuāng
解字 「疒(やまい)+倉(ソウ=創。きず)」 の形声。傷を負うこと。および、傷あとの「かさ」をいう。また、かさのできる腫れものをいう。
意味 (1)きず。きりきず。「刀瘡トウソウ」(2)かさ(瘡)。くさ。はれもの。「瘡蓋かさぶた」「疱瘡ホウソウ」(天然痘の俗称=痘瘡トウソウ)
愴 ソウ・いたむ 忄部 chuàng
解字 「忄(こころ)+倉(ソウ=創。きず)」 の形声。心がきずつくこと。かなしむ・いたむ意となる。
意味 (1)かなしむ。いたむ(愴む)。「悲愴ヒソウ」(悲しみいたむ)「悲愴交響曲ヒソウコウキョウキョク」(チャイコフスキー作曲の交響曲)「愴然ソウゼン」(いたみかなしむさま)(2)いたましい。「凄愴セイソウ」(すさまじくいたましい)
槍 ソウ・やり 木部 qiāng
解字 「木(き)+倉(ソウ=創。きず)」 の形声。長い木の柄に「穂」と呼ばれる先の尖った刃を付け、突き刺して使用する長柄武器(ながえぶき)を槍ソウという。
槍の構造(「名古屋刀剣博物館・槍とは」)
意味 やり(槍)。長い柄の先に尖った刃のついた武器。「槍術ソウジュツ」「槍衾やりぶすま」(槍を前に突き出して隙間なくならぶ)「槍鉋やりがんな」(穂先が反った形の刃に柄をつけた槍に似た古代の鉋)
槍鉋やりがんな(「半布里工房「槍鉋」より)
搶 ソウ・ショウ・つく 扌部 qiāng・qiǎng・chēng
解字 「扌(て)+倉(ソウ=槍。やり)」の形声。槍を手でつくこと。また、槍を持ってさわぐこと。
意味 (1)つく(搶く)。つきあてる。「風を搶く」(風に逆らって進む)(2)あらそう。みだれる。奪い取る。「搶攘ソウジョウ」(さわぎみだれる)「搶奪ソウダツ」(うばいとる)「搶掠ソウリャク」(かすめとる)
蒼 ソウ・あおい 艸部 cāng
解字 「艸(くさ)+倉(ソウ)」の形声。[説文解字]は「艸(草)の色(いろ)也(なり)。艸(草)に従い倉ソウの聲(声)」とするが、[詩経・王風]は「悠悠たる蒼天ソウテン」と空の青さの意で用いており、深い青色を蒼ソウと言う。
意味 (1)あおい(蒼い)。あお(蒼)。こい青色。「蒼穹ソウキュウ」(あおぞら)「蒼白ソウハク」(顔色が青ざめて血色のわるいこと)(2)しげる。草木がしげる。「蒼蒼ソウソウ」(あおあおしている)「蒼茫ソウボウ」(青々とひろいさま)「蒼海ソウカイ」(=滄海)(3)草木があおあおと茂る意から、多くの人民にたとえる。「蒼氓ソウボウ」(人民。たみくさ。=蒼生)
滄 ソウ 氵部 cāng
解字 「氵(水)+倉(=蒼。あおい)」の形声。水や海のあおさをいう。
意味 あおい。あおうなばら。うみ。「滄海ソウカイ」(ひろびろとしたあおい海=蒼海)「滄海変じて桑田となる」(大海原が桑畑に変わる。時勢の大きな変遷のたとえ=滄桑ソウソウの変)
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