なぜ「さいとう」には色々な漢字があるの? 追加しました。
斉[齊]セイ・サイ・ととのえる・ひとしい 斉部

解字 甲骨文は四角いうちわのような形が3つ並んだかたち。意味は地名だが、字源には諸説ある。金文は中央の四角が大きくなり三つとも下線が長く伸びた形で、意味は人名・国名。篆文にいたり、中央の上が亠(なべぶた)になり左右のうちわ形が横の二線で固定された。隷書(漢代)にいたり左右のうちわ形の外側が伸びて旧字で上部が「亠+刀+Y+氏の横線がない形」になった。この字形の解字を[説文解字]は「禾麥(むぎ)が穗を吐き上(うえ)平也(なり)」とし麦の穂が実った形とするが、この解字は疑問。白川静[字統]は、「髪の上に三本の髪飾りを挿して立てた形。祭祀に奉仕する婦人の髪飾りで、きちんとそろう・ととのう意味を表わす」とするが、斎サイの字には当てはまる。字源は確定できないが、いずれにしても、そろう・ととのう、という音符義がある。新字体に用いられるとき、旧字の齊 ⇒ 斉に簡略化される。
意味 (1)そろう(斉う)。そろえる。「斉唱セイショウ」(そろって唱える。そろって歌う) (2)ととのえる(斉える)。ととのう。「斉一セイイツ」(ととのいそろう) (3)ひとしい(斉しい)。「斉民セイミン」(①一般の人民。②民を平等にすること) (4)ものいみする(=斎)。「斉舎サイシャ」(ものいみする小屋) (5)国の名。「斉サイ」(①戦国七雄のひとつ。今の山東省の一帯。②山東省の別称)
イメージ
斉の意味(1)の「そろう・そろえる」(斉・儕・擠・薺)
意味(2)「ととのえる」(剤・斎・齏・霽)
意味(3)の「ひとしい」(臍)
「その他」(済)
音の変化 セイ:斉・擠・薺・臍・齏・霽 サイ:済・斎・儕 ザイ:剤
そろう・そろえる
儕 サイ・セイ・ともがら イ部
解字 「イ(ひと)+齊(そろう)」の会意形声。人がそろう意で、なかま・ともがらの意。
意味 (1)ともがら(儕)。同列の仲間。ともだち。「儕輩サイハイ」(同輩)「儕類サイルイ・セイルイ」(同輩)「吾儕わがセイ」(わたしたち) (2)ともに。いっしょに。「儕居サイキョ」
擠 セイ・サイ・おす 扌部
解字 「扌(て)+齊(=儕の略体:ともがら)」の会意形声。仲間・ともがらが手で押し合うこと。
意味 (1)おす(擠す)。おしあう。「擁擠ヨウセイ」(おしあいへしあいする。混雑する) (2)おしのける。おとす。「排擠ハイセイ」(おしだす)「擠抑セイヨク」(おしのけておさえつける)「擠陥セイカン」(人を罪におとしいれる)
薺 セイ・ザイ・なずな 艸部

なずな(ブログ「風に吹かれて」より)
解字 「艸(草)+齊(そろう)」の会意形声。なずなは、別名ペンペン草、シャミセン草というが、これは花が咲いたあと次々に三味線のバチの形の実ができるからで、この実が次々と花穂の下にそろってならぶナズナ。
意味 なずな(薺)。ナズナとは、アブラナ科ナズナ属の越年草。花穂の先で咲いた花は、三味線のバチ形の実になる。先端で次々と花穂がのびるので、実が下方にきれいにそろって並ぶ。田畑や荒れ地、道端など至るところに生える。「薺なずな打つ」(七草粥をつくる時、まな板に薺をふくむ7種の菜を載せ、囃子言葉を唱えながら包丁の背で打ち大きな音をひびかせること)
齎 セイ・シ・もたらす 貝部
解字 「貝(財貨)+齊(そろえる・そろう)」の会意形声。財貨がそろうこと。財貨・たからの意と、財貨がもたらされる意となる。
意味 (1)もたらす(齎す)。もたらされる(齎される)。持ってゆく。持ってくる。「齎酒セイシュ」(酒を持参する)「齎貨セイカ」(財貨をもたらす) (2)たから。財貨。「齎財シザイ」(財産)
ととのえる
剤[劑]ザイ・セイ 刂部
解字 旧字は劑で「刂(刀)+齊(ととのえる)」の会意形声。もと、漢方薬の材料とする草の根や木の皮を刀で切りそろえて調合すること。新字体は剤に変化。
意味 (1)ととのえる。調合する。まぜる。「配剤ハイザイ」(①適切に配分すること。②薬の配合)「溶剤ヨウザイ」(物質を溶かすのに用いる液体) (2)調合した薬。「錠剤ジョウザイ」「薬剤ヤクザイ」「調剤チョウザイ」(薬剤を調合すること)
斎[齋]サイ・いつく 斉部

解字 金文から楚簡まで、四角いうちわのような形が3つ並んだかたちの下に「示(神にささげる物をおく台)」をつけている。白川静[字統]は、「髪の上に三本の髪飾りを挿して立てた形。祭祀に奉仕する婦人の髪飾りで、下に「示」をつけて祭卓の前に奉仕する斎女の意を示す」とする。篆文で両側のうちわ形(白川説の髪飾り)の線が下に伸びて旧字で齋となった。この字は齊の略体に示を加えた形で神の前で心身をととのえる意。意味は①神につかえる、②神祭りのために心身を清める意。齋が正字だが、日本では簡略化された斎が、新字体として常用漢字となっている。
なぜ「さいとう」には色々な漢字があるの? チコちゃんに叱られる

齋は、齋宮サイグウ(伊勢神宮に奉仕した皇女の住む宮)の齋で、その頭かしらだった藤原姓の人が齋藤と名乗ったのが最初。藤原氏の勢力が増すにつれて齋藤姓も増えていった。令和5年の戸籍をもとにした調査で齋の字は59種類(萩本勝紀氏調査)あり、その理由は明治8年に公布された「平民苗字必称義務令」で、すべての国民が苗字を名乗らなければならなくなったから。萩本氏によると、苗字を登録する方法は非常に簡単で苗字を書いた紙を役所に提出するだけ。ところが当時の庶民は漢字の読み書きが苦手で、さらに苗字で呼び合う習慣も無かったので提出される書類はかなり間違いが多かった。役所は多種多様な間違った齋をそのまま受け付けたので、多様な齋の字が登録された。(23年5月26日放送のNHK「チコちゃんに叱られる」より)
意味 (1)ものいみ。心身を清める。「斎戒沐浴サイカイモクヨク」(行動を慎み、身を洗い清める) (2)いつく(斎く)。いつき(斎)。神につかえる。「斎串いぐし」(麻・麻苧などをかけて神に供える榊や笹。もとは、木の枝や薄い板・細い角材を串状につくったもの。 神を招くときの依代で、神への供物、また災いを除ける祓いの道具などとして用いられた。玉串。)「奉斎ホウサイ」(神仏を慎んでまつる。身を清めてまつる)「斎場サイジョウ」(神をまつる為に清められた場所) (3)へや。「書斎ショサイ」(心身を清め書物に向かい、また書き物をする部屋)
齏 セイ・サイ・なます 斉部
解字 「韭(にら。細い)+齊(ととのえる)」の会意形声。野菜を細く切りそろえて味をつけ、ととのえたあえものをいう。
意味 (1)なます(齏)。あえる。膾カイとも書く。「羹(あつもの)に懲りて齏(なます)を吹く」「齏物あえもの」 (2)塩漬けの野菜。「齏塩セイエン」(塩漬けの野菜料理。粗末な食事)
霽 セイ・サイ・はれる 雨部
解字 「雨(あめ)+齊(ととのう)」の会意形声。雨が止んで天気がととのうこと。雨後に晴れる意となる。
意味 (1)はれる(霽れる)。雨があがる。雲や霧がはれる。「霽月セイゲツ」(雨後の月)「霽日セイジツ」(晴れた日) (2)怒りがとける。おさまる。「霽威セイイ」(機嫌をなおす)
ひとしい
臍 セイ・サイ・へそ 月部にく
解字 「月(からだ)+齊(ひとしい)」の会意形声。身体の中央にあるへそ。へそから身体の左右の各部分への長さは等しい。
意味 へそ(臍)。ほぞ(臍)。「臍下丹田セイカタンデン」(へその下の丹田とよばれる下腹部。ここに力をこめると健康と勇気を得るという)「臍帯サイタイ」(へそのお=臍の緒。胎盤と胎児をつないでいるもの)「臍帯血サイタイケツ」(臍の緒を通じて母親の胎盤から胎児に送られる血。赤ちゃんが生まれた後は捨てられていたが、造血細胞が含まれることがわかり、白血病などの患者への移植医療に広く用いられる)
その他
済[濟]サイ・すむ・すます 氵部
解字 旧字は濟で「氵(川)+齊(サイ)」の形声。サイという名の川をいう。新字体は済に変化。済水(さいすい)は、中国河南省済源市の西北に源を発し、古くは他の大河と交わらず海に流れており、江水(揚子江)、河水(黄河)、淮水ワイスイとともに「華夏四瀆シトク」(瀆は水源を発して直接海に注ぐ川)と称された。済水の水源地は、済源市の済瀆廟サイトクビョウである。黄河が流れを変えた為、今日の黄河下流は当時の済水の河道である(ウィキペディアを参照した)。のち、この川を「わたる」「船でわたる」意味ができ、さらに船で渡るため人々が助かる意から、たすかる・すくう意ができた。中国の古典で「経世済民ケイセイサイミン」とは、世の中を経(おさ)めて民を済(すく)う意。明治の日本で「経世済民」を短くした経済がeconomyの翻訳語に当てられて意味が変化した。また、日本で済を「済(す)む」という訓にしたため、決済などの意味が派生した。
意味 (1)川の名。「済水サイスイ」(中国河南省済源市区西北に源を発し黄河に注ぐ川) (2)すくう(済う)。たすける。「救済キュウサイ」「済世サイセイ」(世の中を困難からすくう)「共済キョウサイ」(共にすくう)「済民サイミン」 (3)すむ(済む)。「決済ケッサイ」(売買取引を済ませる) (4)なす。なしとげる。「済美セイビ・サイビ」(美徳をなしとげる) (5)「経済ケイザイ」(economyの翻訳語。社会が生産活動を調整するシステム、及びその活動) (6)[参考]中国の用法の一例。「同舟共済ドウシユウキョウサイ」(同じ船に乗って一緒に川を渡る)
<紫色は常用漢字>
斉[齊]セイ・サイ・ととのえる・ひとしい 斉部

解字 甲骨文は四角いうちわのような形が3つ並んだかたち。意味は地名だが、字源には諸説ある。金文は中央の四角が大きくなり三つとも下線が長く伸びた形で、意味は人名・国名。篆文にいたり、中央の上が亠(なべぶた)になり左右のうちわ形が横の二線で固定された。隷書(漢代)にいたり左右のうちわ形の外側が伸びて旧字で上部が「亠+刀+Y+氏の横線がない形」になった。この字形の解字を[説文解字]は「禾麥(むぎ)が穗を吐き上(うえ)平也(なり)」とし麦の穂が実った形とするが、この解字は疑問。白川静[字統]は、「髪の上に三本の髪飾りを挿して立てた形。祭祀に奉仕する婦人の髪飾りで、きちんとそろう・ととのう意味を表わす」とするが、斎サイの字には当てはまる。字源は確定できないが、いずれにしても、そろう・ととのう、という音符義がある。新字体に用いられるとき、旧字の齊 ⇒ 斉に簡略化される。
意味 (1)そろう(斉う)。そろえる。「斉唱セイショウ」(そろって唱える。そろって歌う) (2)ととのえる(斉える)。ととのう。「斉一セイイツ」(ととのいそろう) (3)ひとしい(斉しい)。「斉民セイミン」(①一般の人民。②民を平等にすること) (4)ものいみする(=斎)。「斉舎サイシャ」(ものいみする小屋) (5)国の名。「斉サイ」(①戦国七雄のひとつ。今の山東省の一帯。②山東省の別称)
イメージ
斉の意味(1)の「そろう・そろえる」(斉・儕・擠・薺)
意味(2)「ととのえる」(剤・斎・齏・霽)
意味(3)の「ひとしい」(臍)
「その他」(済)
音の変化 セイ:斉・擠・薺・臍・齏・霽 サイ:済・斎・儕 ザイ:剤
そろう・そろえる
儕 サイ・セイ・ともがら イ部
解字 「イ(ひと)+齊(そろう)」の会意形声。人がそろう意で、なかま・ともがらの意。
意味 (1)ともがら(儕)。同列の仲間。ともだち。「儕輩サイハイ」(同輩)「儕類サイルイ・セイルイ」(同輩)「吾儕わがセイ」(わたしたち) (2)ともに。いっしょに。「儕居サイキョ」
擠 セイ・サイ・おす 扌部
解字 「扌(て)+齊(=儕の略体:ともがら)」の会意形声。仲間・ともがらが手で押し合うこと。
意味 (1)おす(擠す)。おしあう。「擁擠ヨウセイ」(おしあいへしあいする。混雑する) (2)おしのける。おとす。「排擠ハイセイ」(おしだす)「擠抑セイヨク」(おしのけておさえつける)「擠陥セイカン」(人を罪におとしいれる)
薺 セイ・ザイ・なずな 艸部

なずな(ブログ「風に吹かれて」より)
解字 「艸(草)+齊(そろう)」の会意形声。なずなは、別名ペンペン草、シャミセン草というが、これは花が咲いたあと次々に三味線のバチの形の実ができるからで、この実が次々と花穂の下にそろってならぶナズナ。
意味 なずな(薺)。ナズナとは、アブラナ科ナズナ属の越年草。花穂の先で咲いた花は、三味線のバチ形の実になる。先端で次々と花穂がのびるので、実が下方にきれいにそろって並ぶ。田畑や荒れ地、道端など至るところに生える。「薺なずな打つ」(七草粥をつくる時、まな板に薺をふくむ7種の菜を載せ、囃子言葉を唱えながら包丁の背で打ち大きな音をひびかせること)
齎 セイ・シ・もたらす 貝部
解字 「貝(財貨)+齊(そろえる・そろう)」の会意形声。財貨がそろうこと。財貨・たからの意と、財貨がもたらされる意となる。
意味 (1)もたらす(齎す)。もたらされる(齎される)。持ってゆく。持ってくる。「齎酒セイシュ」(酒を持参する)「齎貨セイカ」(財貨をもたらす) (2)たから。財貨。「齎財シザイ」(財産)
ととのえる
剤[劑]ザイ・セイ 刂部
解字 旧字は劑で「刂(刀)+齊(ととのえる)」の会意形声。もと、漢方薬の材料とする草の根や木の皮を刀で切りそろえて調合すること。新字体は剤に変化。
意味 (1)ととのえる。調合する。まぜる。「配剤ハイザイ」(①適切に配分すること。②薬の配合)「溶剤ヨウザイ」(物質を溶かすのに用いる液体) (2)調合した薬。「錠剤ジョウザイ」「薬剤ヤクザイ」「調剤チョウザイ」(薬剤を調合すること)
斎[齋]サイ・いつく 斉部

解字 金文から楚簡まで、四角いうちわのような形が3つ並んだかたちの下に「示(神にささげる物をおく台)」をつけている。白川静[字統]は、「髪の上に三本の髪飾りを挿して立てた形。祭祀に奉仕する婦人の髪飾りで、下に「示」をつけて祭卓の前に奉仕する斎女の意を示す」とする。篆文で両側のうちわ形(白川説の髪飾り)の線が下に伸びて旧字で齋となった。この字は齊の略体に示を加えた形で神の前で心身をととのえる意。意味は①神につかえる、②神祭りのために心身を清める意。齋が正字だが、日本では簡略化された斎が、新字体として常用漢字となっている。
なぜ「さいとう」には色々な漢字があるの? チコちゃんに叱られる

齋は、齋宮サイグウ(伊勢神宮に奉仕した皇女の住む宮)の齋で、その頭かしらだった藤原姓の人が齋藤と名乗ったのが最初。藤原氏の勢力が増すにつれて齋藤姓も増えていった。令和5年の戸籍をもとにした調査で齋の字は59種類(萩本勝紀氏調査)あり、その理由は明治8年に公布された「平民苗字必称義務令」で、すべての国民が苗字を名乗らなければならなくなったから。萩本氏によると、苗字を登録する方法は非常に簡単で苗字を書いた紙を役所に提出するだけ。ところが当時の庶民は漢字の読み書きが苦手で、さらに苗字で呼び合う習慣も無かったので提出される書類はかなり間違いが多かった。役所は多種多様な間違った齋をそのまま受け付けたので、多様な齋の字が登録された。(23年5月26日放送のNHK「チコちゃんに叱られる」より)
意味 (1)ものいみ。心身を清める。「斎戒沐浴サイカイモクヨク」(行動を慎み、身を洗い清める) (2)いつく(斎く)。いつき(斎)。神につかえる。「斎串いぐし」(麻・麻苧などをかけて神に供える榊や笹。もとは、木の枝や薄い板・細い角材を串状につくったもの。 神を招くときの依代で、神への供物、また災いを除ける祓いの道具などとして用いられた。玉串。)「奉斎ホウサイ」(神仏を慎んでまつる。身を清めてまつる)「斎場サイジョウ」(神をまつる為に清められた場所) (3)へや。「書斎ショサイ」(心身を清め書物に向かい、また書き物をする部屋)
齏 セイ・サイ・なます 斉部
解字 「韭(にら。細い)+齊(ととのえる)」の会意形声。野菜を細く切りそろえて味をつけ、ととのえたあえものをいう。
意味 (1)なます(齏)。あえる。膾カイとも書く。「羹(あつもの)に懲りて齏(なます)を吹く」「齏物あえもの」 (2)塩漬けの野菜。「齏塩セイエン」(塩漬けの野菜料理。粗末な食事)
霽 セイ・サイ・はれる 雨部
解字 「雨(あめ)+齊(ととのう)」の会意形声。雨が止んで天気がととのうこと。雨後に晴れる意となる。
意味 (1)はれる(霽れる)。雨があがる。雲や霧がはれる。「霽月セイゲツ」(雨後の月)「霽日セイジツ」(晴れた日) (2)怒りがとける。おさまる。「霽威セイイ」(機嫌をなおす)
ひとしい
臍 セイ・サイ・へそ 月部にく
解字 「月(からだ)+齊(ひとしい)」の会意形声。身体の中央にあるへそ。へそから身体の左右の各部分への長さは等しい。
意味 へそ(臍)。ほぞ(臍)。「臍下丹田セイカタンデン」(へその下の丹田とよばれる下腹部。ここに力をこめると健康と勇気を得るという)「臍帯サイタイ」(へそのお=臍の緒。胎盤と胎児をつないでいるもの)「臍帯血サイタイケツ」(臍の緒を通じて母親の胎盤から胎児に送られる血。赤ちゃんが生まれた後は捨てられていたが、造血細胞が含まれることがわかり、白血病などの患者への移植医療に広く用いられる)
その他
済[濟]サイ・すむ・すます 氵部
解字 旧字は濟で「氵(川)+齊(サイ)」の形声。サイという名の川をいう。新字体は済に変化。済水(さいすい)は、中国河南省済源市の西北に源を発し、古くは他の大河と交わらず海に流れており、江水(揚子江)、河水(黄河)、淮水ワイスイとともに「華夏四瀆シトク」(瀆は水源を発して直接海に注ぐ川)と称された。済水の水源地は、済源市の済瀆廟サイトクビョウである。黄河が流れを変えた為、今日の黄河下流は当時の済水の河道である(ウィキペディアを参照した)。のち、この川を「わたる」「船でわたる」意味ができ、さらに船で渡るため人々が助かる意から、たすかる・すくう意ができた。中国の古典で「経世済民ケイセイサイミン」とは、世の中を経(おさ)めて民を済(すく)う意。明治の日本で「経世済民」を短くした経済がeconomyの翻訳語に当てられて意味が変化した。また、日本で済を「済(す)む」という訓にしたため、決済などの意味が派生した。
意味 (1)川の名。「済水サイスイ」(中国河南省済源市区西北に源を発し黄河に注ぐ川) (2)すくう(済う)。たすける。「救済キュウサイ」「済世サイセイ」(世の中を困難からすくう)「共済キョウサイ」(共にすくう)「済民サイミン」 (3)すむ(済む)。「決済ケッサイ」(売買取引を済ませる) (4)なす。なしとげる。「済美セイビ・サイビ」(美徳をなしとげる) (5)「経済ケイザイ」(economyの翻訳語。社会が生産活動を調整するシステム、及びその活動) (6)[参考]中国の用法の一例。「同舟共済ドウシユウキョウサイ」(同じ船に乗って一緒に川を渡る)
<紫色は常用漢字>