漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「蚩シ」<おろかでみにくい> と「嗤シ」<わらう>「媸シ」

2024年08月30日 | 漢字の音符
  おろかでみにくい虫
 シ  虫部 chī

解字 金文第一字は「止シ+又(手)」+虫2匹。「止シ+又(手)」は寺ジ・シの古字で発音のシを表し、シという名の虫。第二字は「止シ(之の古字)+虫二匹」でシという虫。出典はネットの「漢典」だが金文の意味は不明。篆文は「土の上部が湾曲した形+虫」になった。後漢の[説文解字]は「蟲(むし)也(なり)。虫に従い之の聲(声)」とするだけで詳細な説明はない。現代字は上が「屮+」の蚩になった。意味は虫の意味から転じて後世になり、詩経の[衛風]では嗤(わら)う意味で使われている。元代の[六書正譌リクショセイカ]は「凡そ無知の者は皆みなを以(もっ)て之(この)名とす」とし、無知・おろかの意とする。また、みにくい・あなどる意味にも用いる。
意味 (1)虫の名。(2)おろか。いやしい。「蚩拙シセツ」(おろかでおとる)「蚩鄙シヒ」(蚩も鄙も、いやしい意)(3)みにくい。短小で醜い。(=媸)。「蚩妍シケン」(蚩は、みにくい、妍は美しい。美醜の意)(4)あなどる。ばかにする。「蚩眩シゲン」(ばかにしてだます)(4)わらう。(=嗤)(5)人名。「蚩尤シユウ」(神話上の民族のひとつである九黎レイの族長。黄帝と戦って敗れた)
覚え方 「屮(くさ)(いち)虫(むし)」で蚩(おろか)
は艸(くさ)のつで草が芽生えるかたち。

イメージ
 「おろかでみにくい」
(蚩・嗤・媸)
音の変化 シ:蚩・嗤・媸

おろかでみにくい
 シ・わらう  口部 chī
解字 「口(くち)+蚩(おろかでみにくい)」の会意形声。おろかでみにくいものをあざけりわらうこと。
意味 わらう(嗤う)。あざわらう。ばかにしてわらう。「嗤笑シショウ」(あざけり笑う)「嗤玩シガン」(あざわらってもてあそぶ)「嗤詆シテイ」(あざわらってそしる。詆はそしる意)
 シ・みにくい  女部 chī
解字 「女(おんな)+蚩(おろかでみにくい)」の会意形声。女がみにくい意。
意味 みにくい(媸い)。容貌がみにくい。「妍媸ケンシ」(容貌が美しいことと、醜いこと)「長幼妍媸チョウヨウケンシ」(姉は美しく妹は醜い)

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音符「妾ショウ」 と 「接セツ」「椄セツ」「霎ショウ」    

2024年08月28日 | 漢字の音符
  増補しました。
 ショウ・めかけ  女部

解字 甲骨文は「冠をかぶった女の姿。冠の形には高貴な存在であることを示す働きがあり、王や神の配偶者を指す用法が原義と考えられる。ただし、甲骨文字の段階ですでに奴隷身分の女性への転用が見られる」(甲骨文字辞典)とし、意味は、①王や神の配偶者、②奴隷身分の女性、とする。金文は甲骨第一字がほぼ継承され、篆文は後漢の[説文解字]は「辠ザイ(罪)有る女子。給事キュウジ(そば仕え)之(これ)を得て君於(に)接する者(もの)」とする。貴人につかえる女性、また正妻以外の夫人の意となった。現代字は「立+女」の妾となった。因みに龍の立も冠で、冠をつけた大蛇が龍リュウである。
意味 (1)正妻以外の夫人。めかけ(妾)。「妻妾サイショウ」(妻とめかけ)「妾腹ショウフク」(正妻以外の夫人の生んだ子)(2)高貴な人の身辺の世話をする女性。こしもと。侍女。「妾婦ショウフ」(侍女。遊女)(3)わらわ(妾)。女性がへりくだっていう自称。(4)女性の臣下の意。漢代に皇帝から印綬をさずかるとき、男性は「臣某シンボウ」といい、女性は「妾某ショウボウ」と言った。某は名前のみで姓は言わない。(阿部幸信「印綬が創った天下秩序」より)

イメージ  
 「貴人に仕える女性」
(妾)
 「形声字」(接・霎・椄)
音の変化  ショウ:妾・霎  セツ:接・椄  

形声字
 セツ・つぐ  扌部
解字 「扌(手)+妾(セツ)」 の形声。[説文解字]は「交(まじ)わる也(なり)。手に従い妾セツの聲(声)とする。また転じて、つぐ・つなぐ(接続)、ちかづく(接近)、まじわる(接待)、うける(接受)意で用いられる。
意味 (1)つぐ(接ぐ)。つづける。つなぐ。「接続セツゾク」「密接ミッセツ」(2)ちかづく。「接近セッキン」「接戦セッセン」(3)まじわる。「接待セッタイ」「面接メンセツ」「直接チョクセツ」「交接コウセツ」(交尾。性交)(4)うける。受け取る。「接収セッシュウ」「接受セツジュ」(受け取る)
 ショウ・ソウ  雨部
解字 「雨(雨雲)+妾(=接。まじわる)」 の会意形声。雨雲が地上とまじわり、通り雨が降ること。
意味 (1)通り雨。「霎雨ショウウ」(2)しばし。またたくま。「霎時ショウジ」(しばし)
 セツ・ショウ・つぐ  木部
解字 「木(き)+妾(=接。つぐ)」 の会意形声。花木や果樹の枝を他の木に椄ぐこと。漢検1級字であまり使用されず、通常は「接木」を使うことが多い。

農家が教える接ぎ木の方法」より
意味 (1)つぐ(椄ぐ)。つぎ木する。「椄木つぎき」(2)「椄槢セツシュウ」とは、かせ。二つの材木を接ぎ合わせて抜けないようにした刑罰具。
<紫色は常用漢字>

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音符 「氾ハン」 <ひろがる> と「犯ハン」「笵ハン」「范ハン」「範ハン」

2024年08月26日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ハン・ひろがる・あふれる   氵部 fán・fàn  


  上は氾ハン、下は夗エン
解字 「氵(水)+㔾(ハン)」の形声。㔾(ハン)という名の川である氾水ハンスイを表す。氾水は、最古の地理書とされる[山海経センガイキョウ](戦国時代から秦朝・漢代にかけて徐々に付加執筆されて成立)に記載されている川の名で、現在の山東省曹県の北を流れていたが、早くに埋もれてしまった川。川の意味から転じて、①川があふれる。水がひろがる。②汎ハン(あまねく)に通じ、ひろい・あまねく。そのほかに、③うかぶ。ただよう意味にもちいる。
意味 (1)ひろがる(氾がる)。あふれる(氾れる)。「氾濫ハンラン」(氾も濫も、水があふれる意。洪水になること)(2)ひろい。あまねく。「氾愛ハンアイ」(分け隔てなく愛する=汎愛)「氾愛兼利ハンアイケンリ」(わけへだてなく愛し広く利益をともにする。墨子ボクシ)「氾論ハンロン」(広く全体を論ずる)(3)うかぶ。ただよう。「氾氾ハンハン」(水に浮かびゆれるさま)(4)地名。「氾水ハンスイ」(川の名。山東省および河南省にあった川)(5)人名。「氾勝之ハンショウシ」(西漢期の農学者)
 ハン
解字 㔾ハンは、氾ハンの字では、発音「ハン」を表す音符として用いられているが、何をかたどっているか明らかでない。一方、同じ形となる夗エンは「タ(=月にく。からだ)+卩セツ⇒㔾(ひざまずく人)」 の会意で、人がひざまずいて身体をまげている形。この字形を見てから篆文の氾の㔾をよく見ると、人が腰を半分下ろした立ち姿のようにも見えるが定かでない。また、最初の使用が水名であることから、音符「㔾ハン」として位置付けることとしたい。
解字 人の姿に源流をもつ字形。その意味は不明。
意味 発音のハンを表す字として用いる。

イメージ 
 「ハンの音(形声字)」
(氾・犯・笵・范・範)
音の変化  ハン:氾・犯・笵・范・範

形声字
 ハン・おかす  犭部 fàn
解字 金文は「犭(いぬ)+㔾(ハン)」の形声。[説文解字注]は、「侵す也(なり)。犬に従い㔾ハンの聲(声)」とする。ここで犬は、人の悪者を犬に例えた言い方で、犯は法や道徳をおかす人、また、その行為をいう。
意味 おかす(犯す)。決められたのり(法・則)をおかす。「犯罪ハンザイ」(罪を犯す)「犯人ハンニン」「侵犯シンパン」(他の領土や権利をおかす)「共犯キョウハン

笵・范・範には鋳型の意味が共通にある
 以下に解字する笵・范・範は異体字の関係にあり、鋳型の意味が共通にある。意味が共通するので紛らわしいが、熟語は各文字で棲み分けられている。しかし「鎔笵ヨウハン」(鋳型)「范鎔ハンヨウ」などの類似語がある。
 ハン  竹部 fàn
解字 「竹(たけ)+氾(ハン)」の形声。[説文解字注]は「法也(なり)。竹に従う、竹は竹書(竹簡の書物)也(なり)。氾ハンの聲(声)。古法に竹刑有(り)」とする。竹刑の意味は不明だが、竹簡に書かれている「のり(法)」の意とする。また、笵には鋳造の型(いがた)の意味がある。
意味 (1)法制。模範。のり(法)。(2)かた。いがた。「同笵ドウハン」(おなじ鋳型で鋳造する)「同笵鏡ドウハンキョウ」(同じ型から造られた鏡)「鎔笵ヨウハン」(鋳型。鎔けた金属を流し込む型のこと) 
 ハン・ボン  艸くさ fàn
解字 「艸(くさ)+氾(ハン)」の形声。氾(ハン)という名の草をいうが具体的な名前はない。草冠をつけて姓を表す方法があり、范もその用法の字。ほかに地名。また、笵に通じ鋳型の意味がある。
意味 (1)姓のひとつ。「范増ハンゾウ」(楚の項羽の共謀臣)「范雍ハンヨウ」(北宋の功臣)(2)地名。「范陽ハンヨウ」(唐代の郡の名。今の河北省涿タク州市)(3)いがた。鋳造の型。「范鎔ハンヨウ」(金属を溶かし鋳型にいれる)「銭范センハン」(貨幣の銭の鋳型)

銭范https://sucai.redocn.com/dongwuzhiwu_7426195.html
 ハン・のり  竹部 fàn  
解字 「車(くるま)+笵の略体(いがた⇒かた)」で、車を作るとき車輪の曲線を示す基準の型をいう。車輪の大きさによりそれぞれの型があり、基本となる型であることから、てほん・きまり・のり、の意で用いられる。また、鋳型の意味もあり、その作業で元型を枠の中に置き、砂をいれて型取りすることから、範囲(元型を囲む)の意味がある。

車輪の製作(中国のネットから)
意味 (1)のり(範)。てほん。きまり。「模範モハン」(見習うべき手本)「規範キハン」(規も範も、のり・てほんの意)「範式ハンシキ」(のり。手本)「師範シハン」(てほん。指導する人)「範例ハンレイ」(模範となる例)(2)かた。いがた。(=笵)。「範囲ハンイ」(元型を枠で囲む。きまった区域)「広範コウハン」(広い範囲)「範ハンチュウ」(同じ種類のものが所属する部類・カテゴリーの訳語)

<紫色は常用漢字>

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音符「邕ヨウ」<やわらぐ・ふさぐ> と「雍ヨウ」「擁ヨウ」「壅ヨウ」「廱ヨウ」「癰ヨウ」「甕オウ」

2024年08月24日 | 漢字の音符
 難解な字形群です。何とかまとめてみました。
 ヨウ・やわらぐ・なごむ 邑部 yōng


 上は邕ヨウ、下は邑ユウ
 下の邑ユウは、「囗(かこい)+人のひざまずいた形)」の会意。囗は城壁をめぐらした形。これに人のひざまずいた形を合わせた邑ユウは、城壁の中に人々が住むまちを表す。また、一般の村里の意でも使われる。
 上の邕ヨウの金文は「邑+川」で、周囲を川(みず)で囲まれたまち・むらの意。篆文は川が邑の上につき、現代字は川⇒巛に変化した邕ヨウになった。意味は、①周囲を川や堀で囲まれたまち・むら。②(周囲を囲って)ふさぐ。③(周囲を囲まれて中にいる人は)やわらぐ。なごむ意がある。
意味 (1)四方を川に囲まれたまち・むら。(2)やわらぐ。仲よくする。「邕穆ヨウボク」(邕も穆も、やわらぐ意)「邕邕ヨウヨウ」(和らぐさま)(3)ふさぐ(邕ぐ)。周囲を水でふさぐ。

イメージ
 「川に囲まれた地域」

 意味(2)の「やわらぐ」雍・廱擁・甕
 意味(3)の「ふさぐ」
 「形声字」
音の変化 ヨウ:邕・雍・廱・擁・壅・癰  オウ:
 
やわらぐ・おだやか
雍[雝] ヨウ・やわらぐ 隹部 yōng

解字 甲骨文字第一字は「隹(とり)と四角形二つ」からなり、人口の池を配した祭祀施設を表す文字であり隹は池に鳥が集まった様子であろう」(甲骨文字辞典)とする。同書はさらに「第二字は隹の横に流れを表す水の略体をつけた形。意味は①施設名、②先王の名、など。後代には辟雍ヘキヨウとも称されている」とする。金文は甲骨文の水をはっきりと描き、四角形を〇二つに変えた(第二字は〇ひとつ)。意味は、水が池や沢となる安全なところに渡り鳥が飛来し産卵もできてやわらぐことで「和雍ワヨウ」の語がある。また、ふさぐ(=壅)意がある。篆文は雝で「隹(とり)+邕ヨウ(やわらぐ)」の会意形声。隷書(漢代)で形が大きく変わり、現代字の雍ヨウとなった。なごやか・おだやかの意であるが、同音の壅ヨウに通じ、ふさぐ意もある。
意味 (1)なごやか。おだやか。「雍和ヨウワ」(なごやか)「雍穆ヨウボク」(平和でおだやか。穆もなごやかの意)「雍容ヨウヨウ」(ゆったりとしている)(2)ふさぐ。(=壅ヨウ)「雍蔽ヨウヘイ」(隠蔽する)(3)地名。「雍州ヨウシュウ」(①古代中国の九州のひとつ、②日本の山城国(京都)の別称。「雍州府志ヨウシュウフシ」(山城国の地誌)(4)「辟雍ヘキヨウ」とは、古代中国の周代における大学。建築物のまわりを水で囲む「雍」の特徴がある。貴族の子弟が学ぶ場所として機能していた。
 ヨウ・ユ・やわらぐ  广部 yōng
解字 「广(やね)+雝(やわらぐ)」の会意形声。广(やね)の下で雝(やわらぐ)こと。
意味 (1)やわらぐ(らぐ)。「廱和ヨウワ」(やわらぎなごむ)「廱廱ヨウヨウ」(なごむ)(2)古くは同音の壅ヨウに通じ、ふさぐ・ふさがる意があった。
 ヨウ・いだく  扌部 yōng
解字  古い字体は「扌(手)+雝ヨウ(やわらぐ)」で、[説文解字]は「抱く也。手に従い雝の聲(声)」とし抱く意。現代字は「扌(手)+雍ヨウ(やわらぐ)」の会意形声。手でやわらぐ状態にすること、すなわち、手で抱きかかえること。 
意味 (1)いだく(擁く)。だきかかえる。「抱擁ホウヨウ」(だきあう。抱も擁も、だく意)(2)まもる。たすける。「擁護ヨウゴ」(かかえてまもる)「擁立ヨウリツ」(助けあって、おし立てる)
 オウ・かめ  瓦部 wèng
解字 「瓦(やきもの)+雍(=擁。だきかかえる)」の会意形声。抱きかかえる程の大きさの陶器のかめをいう。

仕込甕(甕作りメーカーのHPから)
意味 (1)かめ(甕)。もたい(甕)。液体をいれる容器。「甕天オウテン」(かめの中の天地。狭い世間)「醸甕ジョウオウ」(醸造用の甕)「酒甕シュオウ」(酒がめ)「水甕みずがめ」(2)[国]みか(甕)。酒をかもす大きなかめ。「甕原みかのはら」(京都府木津川市の旧加茂町北部の地名)

ふさぐ
 ヨウ・ユ・ふさぐ  土部 yōng
解字 「土(つち)+雍ヨウ(ふさぐ)」の形声。土でふさぐことを壅ヨウという。
意味 (1)ふさぐ(壅ぐ)。ふさがる。「壅遏ヨウアツ」(ふさぎとどめる。遏はとどめる意)「壅隔ヨウカク」(ふさぎへだてる)「壅塞ヨウソク」(壅も塞も、ふさぐ意)「壅閉ヨウヘイ」(ふさぎとざす)

形声字
 ヨウ・ユウ・はれもの  疒部 yōng
解字 「疒(やまい)+雝(ヨウ)」の形声。腫れ物ができる病を癰ヨウという。
意味 できもの。悪性のできもの。「癰腫ヨウシュ」(悪性のはれもの)「癰疽ヨウソ」(癰も疽も悪性のはれものの意)。
<紫色は常用漢字>

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音符「蚤ソウ」<のみ> と 「掻ソウ」「騒ソウ」

2024年08月22日 | 漢字の音符
 ソウ・のみ・はやい  虫部 zǎo            

解字 篆文は「又(手)に二点をいれて手指の爪を示した形(発音・ソウ)」+虫(むし)の形声。現代字の蚤は虫に噛まれて爪でかく形を表し、ノミの意。新字体で音符として用いられるときは、蚤 の二点がとれる。ソウ(早)に通じ、早い意でも使われる。
意味 (1)のみ(蚤)。人や動物の体表に寄生して血を吸う虫。「蚤の夫婦」(妻が夫より大柄な夫婦。ノミは雌のほうが雄より大きいことから)(2)はやい(蚤い)。つとに。「蚤寝晏起ソウシンアンキ」(夜はやく寝て朝おそく起きる。赤子や幼児のさま)「蚤起ソウキ」(早起き)「蚤歳ソウサイ」(=早歳。若いとき)

イメージ 
 「のみ」
(蚤)
  ノミに噛まれて「かく」(掻・騒)
音の変化  ソウ:蚤・掻・騒

かく
搔[掻] ソウ・かく  扌部 sāo
解字 本来の字体はで「扌(て)+蚤(かく)」の会意形声。蚤に噛まれて扌(手)で搔(か)くこと。現在は新字体に準じて二点を省く掻が一般的になっている。
意味 (1)かく(掻く)。「掻首ソウシュ」(頭をかく)「隔靴掻痒カッカソウヨウ」(靴を隔てて痒(かゆ)いところを掻く。思いどうりにいかないこと)「足掻(あが)く」(①馬などが前足で地面を掻く。②手足を動かしてもがく) (2)さわぐ。
 ソウ・さわぐ  馬部 sāo
解字 旧字はで「馬(うま)+蚤(かく)」の会意形声。馬が前足で土を掻くような動作でいら立つこと。転じて、さわぐ・さわがしい意となる。また、さわぎをうれえる意ともなる。新字体は騷⇒騒に変化。
意味 (1)さわぐ(騒ぐ)。さわがしい。ざわめく(騒めく)「喧騒ケンソウ」(やかましいこと)「騒動ソウドウ」「物騒ブッソウ」「騒擾ソウジョウ」(さわぎみだれる)(2)うれい(騒い)。うれえる。「離騒リソウ」(離は罹(かか)る、騒はうれい(憂い)。うれいにかかる意。楚の屈原の自伝的叙事詩のタイトル)

湖南省宜昌市にある屈原の像(中国のネットから)
(3)詩人。風流を解する人。(屈原の叙事詩『離騒リソウ』の文体を受けた詩を作る人の意)「騒客ソウカク」(詩人。風流人)「騒人ソウジン」(詩人。風流人)
「屈原クツゲン」とは(中国戦国時代の楚の政治家、詩人。秦の張儀の謀略を見抜き、踊らされようとする懐王を必死で諫めたが受け入れられず、楚の将来に絶望して5月5日の端午に汨羅江(べきらこう。湖南省の北東部を流れる川)に入水自殺した。後に彼を偲んで5月5日の端午に粽(ちまき)をつくり龍船競争(ボートレース)する習俗が生まれたとされる)
<紫色は常用漢字>

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音符「鷹オウ・ヨウ」 <たか> と 「応[應]オウ」「膺ヨウ」

2024年08月20日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 オウ・ヨウ・たか  鳥部 yīng

解字 金文は、手を挙げた人の胸元に隹スイ・とりが戻ってきた形。この隹はタカを表し短いタテ線は人が与える餌(えさ)と思われる。鷹匠は鷹を呼び戻すと餌を与えて手なずけている。鷹の原字。篆文は、「疒(やまいだれ)+人+隹+鳥」になったが、病だれは書き間違いと思われる。現代字で「广(やね)+イ(ひと)+隹(とり)+鳥(とり)」の鷹となった。現在の字形から解字すると、は屋根の下で人が隹(とり)を飼っている形となる。これがタカであるが、さらに鳥をつけてタカであることをはっきりさせたのが鷹である。

鷹と鷹匠(「ウィキペディア鷹」より)
意味 たか(鷹)。タカ科の鳥。曲がった鋭いくちばしと強い爪で小形の鳥獣を襲って食べる。古来から鷹狩りに使った。「鷹匠たかジョウ」(鷹を飼いならし鷹狩に従事する人)「鷹狩たかがり」(飼いならした鷹を放って小型の鳥獣を捕えさせる狩猟)「鷹揚オウヨウ」(鷹が飛揚するように悠然としていること。ゆったりと落ち着いていること)「鷹眼ヨウガン」(鷹の目。鋭い目つき)「鷹視狼歩ヨウシロウホ」(鷹の目つきと狼の歩き方。①残忍な人物のたとえ。②隙を与えない豪傑のたとえ)
 ヨウ・オウ  广部 yīng  
解字 鷹から鳥を取った字。鷹の異体字。鷹の字が形成される過程で篆文は广の代わりに疒(病だれ)が使われており、隷書(漢代)になって「+鳥」の鷹になった。したがっては隷書から分離した後起の字であり、正式な字として使われていない。ここでは、音符として使用する。
意味 (1)鷹の異体字。 (2)鷹を表す音符字。

イメージ
 「たか」
(鷹・応・膺)
音の変化  オウ:鷹・応  ヨウ:膺

たか
[應] オウ・こたえる  心部 yīng
解字 旧字は應で「心(こころ)+(鷹の異体字。たか)」の会意形声。鷹狩において、鷹匠と鷹はつねに一体となっており、鷹匠の要求を鷹は、受け入れ・したがい、獲物を捕獲することによって相手にこたえる意。この意味を心をつけて表した。新字体は、應から「イ+隹」を省略した形。
意味 (1)うけいれる。ききいれる。したがう。「応諾オウダク」「順応ジュンノウ」(2)こたえる(応える)。うけこたえる。「呼応コオウ」「応答オウトウ」(3)相手になる。「応対オウタイ」「応戦オウセン」(4)つりあいのとれた。「応分オウブン」「相応ソウオウ

形声字
 ヨウ・むね  月部にく yīng
解字 「月(からだ)+(ヨウ)」の形成。後漢の[説文解字]は「匈キョウ(=胸むね)也(なり)」とし、むね(膺)の意。転じて、胸で「うける」意ともなる。また明代の[正韻]は「當(あた)る也(なり)」とする。
意味 (1)むね(膺)。胸。心。「服膺フクヨウ」(むねに服する。心にとどめる)「拳拳服膺ケンケンフクヨウ」(心にとどめて忘れない。拳拳は、堅く握る意で 捧持するさま)「膺肺ヨウハイ」(胸中)(2)うける。受ける。「膺受ヨウジュ」(膺も受も、受ける意)「膺命ヨウメイ」(命を受ける)(3)あたる。うつ。「膺懲ヨウチョウ」(うちこらす) 

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自民党総裁選、若い立派な議員がまだいますよ!

2024年08月18日 | 日記

 岸田首相が8月14日、9月に予定の自民党総裁選に立候補しないと表明したのを受けて、後任を選ぶ来月の自民党総裁選挙は10人を超える名前が挙がっている。
 その中には若手の小泉進次郎氏、小林鷹之氏の名前も挙がっているが、若手といえばもう一人思い起こす議員がいる。最近、ユーチューブの堀江氏との対談「HORIE ONE」で見た平将明議員だ。この番組で初めて平将明氏を知ったが、弁舌さわやかデジタル知識も豊富で、自民党にこんな議員がいるのかと驚いた。
 小泉進次郎氏、小林鷹之氏の40歳代ではないが57歳の若手だ。こういう若い世代の政治家にもっと活躍してほしいと思い、特に自民党支持者でもない私だが、自民党がもっと若返ってほしい思いから動画をアップさせていただいた。

 

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音符「舜シュン」<すばやく動く> と 「瞬シュン」「蕣シュン」

2024年08月17日 | 漢字の音符
 シュン  舛部ます           


 上は舜、下は允イン
解字 舜は字形の変遷が複雑で、未だに統一された解釈がありませんが、ここに私見を述べさせていただきます。舜の楚簡第一字は「允イン+火+土」。允インは下の変遷図でも分かるように甲骨文字からあり、戦国期(楚)允インの形はほぼ一致する。允の意味は、「まことに・ほんとうに」だが、その特徴を示す指導者の姿を表している。そこに「火と土」が加わった舜の字形は何を表すのか。この字は伝説上の王である舜が土の上で炎に遭った危機を表している。
 ウィキペディア「舜」によると、舜は母を早くに亡くして、継母と連れ子と父と暮らしていたが、父親達は連れ子に後を継がせるために隙あらば舜を殺そうと狙っていた。舜はそんな父親に対しても孝を尽くしたので名声が高まり、伝説上の古代の王・堯ギョウの元にもうわさが届いた。堯は舜の人格を見極めるために、娘の娥皇と女英の2人を舜に降嫁させた。舜の影響によりこの娘達も非常に篤実となり、また舜の周りには自然と人が集まり、舜が居る所は3年で都会になるほどだった。
 焼き殺ろされようとした舜
 そんな中で舜の家族達は相変わらず舜を殺そうとしており、舜に屋根の修理を言いつけた後に下で火をたいて舜を焼き殺そうとした。舜は2つの傘を鳥の羽のようにして逃れた(以上、ウィキペディアより)。
 楚簡第二字は「人+炎+土」であり人(舜)が炎で焼かれる形を表している。篆文は「匚+炎(ほのお)+舛」の会意で、人⇒匚に変化し、舛は両足が反対方向を向く形だが、ここでは「舞」と同じく素早く足を動かす意。舜は炎(ほのお)から逃れる舜を表している。この字形は現在も中国でとしてあり、舜の本字として残っている。漢代の隷書は、匚の中が火の簡略化した形をへて、現代字は上部が「ノツ冖」に変化した舜となった。舜の字は素早い動きで炎を脱出する姿を描いている(これは私見です)。なお[説文解字]は舜を「草の名」としており、ムクゲにも当てる。(字形の出典は李学勤編「字源」の舜より)
帝舜
意味 (1)中国の伝説上の聖天子の名。五帝(黄帝・顓頊センギョク(暦法の発明)・帝嚳コク・堯ギョウ・舜シュン)のうちの一人。素早い動きで何度も危機をのがれた伝説をもつ。「舜帝シュンテイ」「舜禹シュンウ」(古代の聖王である舜と禹。舜が登用した者のなかに禹がいた。禹は治水を委ねられて洪水の対応にあたり,献身的な努力によって見事な成果をおさめた。そこで舜は禹に王位を譲ることを決めた)「舜典シュンテン」(書経の舜について書かれた編名)(2)むくげ(=蕣)。朝に咲き夕方にしぼむすばやい動きをする花。「舜華シュンカ

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 「すばやく動く」
(舜・瞬)
 「形声字」(蕣)
音の変化  シュン:舜・瞬・蕣

すばやく動く
 シュン・またたく  目部
解字 「目(め)+舜(すばやく動く)」 の会意形声。目のまぶたをすばやく動かす。
意味 (1)またたく(瞬く)。まばたく(瞬く)。しばたたく。まじろぐ。(2)瞬きをするくらいの短い間。「瞬間シュンカン」「瞬時シュンジ」「一瞬イッシュン
 シュン・むくげ  艸部
解字 「艸(草木)+舜(シュン)」 の形声。[説文解字]は「木堇モクキン朝に華、暮に落る者。艸に従いシュンの聲(声)」とする。朝にすばやく咲き、夕方にはしぼむ花をもつムクゲを指す。
意味 (1)むくげ(蕣)。槿(むくげ・キン)、木槿(むくげ・モクキン)とも書く。アオイ科の落葉低木。 庭木として広く植栽される。早朝に開花し夕方には萎んでしまう一日花である。「蕣華シュンカ」(むくげの華=舜華)「蕣英シュンエイ」(むくげの英はな」(2)[国]あさがお(蕣)。朝顔。
<紫色は常用漢字>

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音符「羽ウ」<はね>「栩ク」「詡ク」と「扇セン」<おうぎ>「煽セン」

2024年08月15日 | 漢字の音符
 ウ・は・はね  羽部             

解字 鳥の羽毛を二枚並べた形の象形。羽毛を意味するが、鳥や昆虫類のつばさの意味ともなる。旧字は羽と書いたが、新字体で羽となった。
意味 (1)はね(羽)。鳥のはね。「羽毛ウモウ」「羽根はね」(羽の根本)「羽衣はごろも」「羽音はおと」 (2)[国]鳥・兎を数えることば。「二羽にわ
参考 羽は部首「羽はね」になる。漢字の上下、または右辺に付き「はね」の意味を表す。常用漢字は6字。
 羽ウ・はね (部首)
 翁コウ・おきな(羽+音符「公コウ」)
 習シュウ・ならう(羽+白の会意)
 翔ショウ・かける(羽+音符「羊ヨウ」)
 翻ハン・ひるがえる(羽+音符「番バン」)
 翼ヨク・つばさ(羽+音符「異イ」)
 翌ヨク(羽+立の会意)
 
イメージ 
 「はね」
(羽・栩・詡)
音の変化  ウ:羽  ク:栩・詡

はね
 ク・くぬぎ  木部
解字 「木(き)+羽(はね)」の会意形声。羽のある昆虫がむらがる木。くぬぎの木は天蚕が育つ木であり、天蚕の作る繭(まゆ)を食い破って蛾が舞い飛ぶ木。
意味 (1)くぬぎ(栩)。櫟レキとも書く。クヌギの木には昔から天蚕が生育しており、現在の蚕が家で飼われる以前は、クヌギの葉を食べる天蚕のマユから糸を作っていた。 (2)「栩栩然ククゼン」とは、ふわふわするさま。羽のように自由で愉快なさま。 (3)[国]とち。トチノキ。「栩木とちぎ」(姓)
 ク・ほこる  言部
解字 「言(ことば)+羽(はね)」の会意形声。羽が生えたように言葉が出ること。
意味 ほこる(詡る)。大言する。誇大に言う。「詡詡クク(大言する。へつらい笑う)

    セン <おうぎ>
 セン・おうぎ・あおぐ  戸部            

解字 「戸(とびら)+羽(羽ばたく)」の会意。戸(とびら)が羽ばたくように開閉すること。もとは開閉する扉(とびら)の意。転じて、おうぎ(扇)。あおぐ道具。あおぐ意となった。最初はうちわ(団扇)を意味したが、平安時代に日本で折り畳み式の扇が発明され、中国へも伝わったことから、おうぎ(扇)を指す言葉になった。

扇子「扇子 歴史や種類」より)

各種のうちわ(団扇)
意味 (1)とびら。「門扇モンセン」(=扉)(2)あおいで風を起こし涼をとる道具。うちわ。「団扇うちわ」(2)おうぎ(扇)。折りたたみ式のうちわ。「扇子センス」「扇眼センガン」(扇のかなめ)「扇状地センジョウチ」(川が山地から平地に流れる所にできた扇状の地形)(3)あおぐ(扇ぐ)。「扇風機センプウキ」「扇動センドウ」(=煽動)「扇情センジョウ」(=煽情)

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 「うちわ・おうぎ」(扇・煽)
音の変化  セン:扇・煽

うちわ・おうぎ
 セン・あおる・あおり・おだてる  火部
解字 「火+扇(うちわ)」の会意形声。うちわで火をあおぐこと。あおる意のほか、転じてそそのかす意ともなる。常用漢字でないため「扇」で代用される熟語がある。
意味 (1)あおる(煽る)。そそのかす。「煽動センドウ」(=扇動)「煽情センジョウ」(=扇情) (2)あおり(煽り)。突風による激しい動き。物事の急激な変化。「事故の煽りを受ける」 (3)おだてる(煽てる)。ほめていい気にさせる。「煽惑センワク」(人をおだて惑わす)
<紫色は常用漢字>

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音符「勺シャク」<ひしゃく> と「杓シャク」「酌シャク」「妁シャク」「灼シャク」「芍シャク」「釣チョウ」「的テキ」「豹ヒョウ」「約ヤク」

2024年08月13日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 シャク  勹部

解字 金文はひしゃくの形の象形。スプーンで液体などを酌(く)んださまを描いている。篆文は全体がタテ形になり、隷書はその流れをうけて変化し、現代字は勹に丶をいれた勺になった。スプーンで液体の一部を酌んださまを描いている。杓の原字。なお、日本の表記では、常用漢字で勺になり、それ以外では杓のように勹の中が一になるものが多いが統一されていない。
意味 (1)ひしゃく。スプーン。 (2)わずかの量。(3)枡目の単位。一合(180cc)の十分の一。一勺は約18cc。「酒一合五勺を飲む」(4)[日本]土地面積の単位。1坪の百分の一。0.033㎡。

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 「ひしゃく」
(勺・杓・酌・妁)
  液体の一部分を汲むことから「一つを取り出す」(的・釣・灼・芍・豹)
 「形声字」(約・芍)
音の変化  シャク:勺・杓・酌・妁・灼・芍  テキ:的  チョウ:釣  ヒョウ:豹  ヤク:約

ひしゃく
 シャク・ヒョウ・ひしゃく・しゃく  木部

柄杓(曲げわっぱ柄杓

杓子(宮島杓子。右下は粥杓子)
解字 「木(き)+勺(ひしゃく)」の会意形声。木製のひしゃく。
意味 (1)ひしゃく(杓)。「柄杓 ヒシャク」とも書く。水や液体を汲む道具。「杓子シャクシ」(飯を盛ったり粥をすくう杓。しゃもじ)「杓子定規シャクシジョウギ」(杓子の柄を定規にする。自分の基準で他人を律する)(2)しゃくう(杓う)。すくう。
 シャク・くむ  酉部
解字 「酉(さけ)+勺(ひしゃく)」の会意形声。ひしゃくで酒をくむこと。
意味 (1)くむ(酌む)。酒をくむ。「晩酌バンシャク」「媒酌バイシャク」(結婚の仲立ちをする)(2)意をくむ。「参酌サンシャク」(意見を聞いて参考にする)「斟酌シンシャク」(意を酌んで処置する)(3)[国]酒を杯につぐこと「お酌シャク
 シャク  女部
解字 「女(おんな)+勺(=酌。意をくむ)」の会意形声。男女の意を酌んで結婚の仲立ちをする女。
意味 なこうど(仲人)。媒酌人。「媒妁バイシャク」(=媒酌)

一つを取り出す
 テキ・まと  白部
解字 「白(しろ)+勺(一つを取り出す)」の会意形声。一つ取り出して置いた白いもの。白くて目立つ弓の「まと」をいう。
意味 (1)まと(的)。めあて。ねらい。「目的モクテキ」「射的シャテキ」(2)あたる。たしか。あきらか。「的確テキカク」「的中テキチュウ」(3)英語の~ticの音訳字。「劇的ゲキテキ
 チョウ・つる  金部
解字 「金(つり針)+勺(一つを取り出す)」の会意形声。釣針で魚一匹を釣り上げること。
意味 (1)つる(釣る)。魚をつる。「釣果チョウカ」(釣りの成果)「釣人つりびと」「釣竿つりざお」「釣戸チョウコ」(魚釣りを職業とする家。またその人)「釣台チョウダイ」(①釣りをする小高い丘。②昔の名士が釣りをしたと伝えられる場所)(2)[国]つる。つるす。「釣鐘つりがね」(3)[国]つりせん。「釣銭つりせん
 シャク・やく  火部
解字 「火(ひ)+勺(一つを取り出す)」の会意形声。火を一か所に取り出して保つ意でお灸をいう。転じて、やく・あぶる、火が燃えてかがやく・あきらかの意となった。
意味 (1)やいと。お灸。「灼艾シャクガイ」(艾もぐさのお灸)(2)やく(灼く)。あぶる。「灼熱シャクネツ」(焼けつくように熱い)「灼骨シャッコツ」(骨を焼いてうらなう。=卜骨ボッコツ)(3)かがやく。あきらか。「灼然シャクゼン」(光り輝くさま)
 ヒョウ  豸部むじな
解字 「豸(けもの)+勺(一つを取り出す)」の会意。一つ一つが目立つ黒い斑点が体の表面にあるけもの。

アムールヒョウ(旭川動物園)
意味 ひょう(豹)。虎に似てやや小さく敏捷なネコ科の哺乳動物。黒く美しい斑点が特徴。「豹変ヒョウヘン」(態度や意見ががらりと変わること。豹の斑紋の毛が抜け変わって、その斑紋が鮮やかになることから)「豹紋ヒョウモン」「海豹あざらし

形声字
 ヤク・つづめる  糸部
解字 「糸(いと)+勺(シャク⇒ヤク)」の形声。糸を束ねることを約ヤクという。後漢の[説文解字]は「(まと)め束ねる也(なり)」とする。たばねる。まとめる。簡単にする。ちかう意に用いる。
意味 (1)しめくくる。たばねる。まとめる。つづめる(約める)。「要約ヨウヤク」「簡約カンヤク」(2)つづまやか(約やか)。つましい(約しい)。「倹約ケンヤク」「節約セツヤク」(3)ちかう。ちぎる。「約束ヤクソク」「誓約セイヤク」(4)おおよそ。ほぼ。「大約タイヤク」(5)[数学]整数でわりきる。「約分ヤクブン」(分数の分母と分子を公約数で割ること)「約数ヤクスウ
 シャク  艸部
解字 「艸(草)+勺(シャク)」の形声。勺(シャク)という名の草。芍薬シャクヤクに用いられる。
芍薬(「季節の花300」より)
意味 芍薬シャクヤクに使われる字。「芍薬シャクヤク」(ボタン科の多年草。初夏にボタンに似た大形で美しい花が咲く。根は、収斂・消炎・鎮痛・抗菌・止血・浄血などの作用があり生薬となる)
<紫色は常用漢字>

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