漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「攴(攵)ボク」<たたく・うつ> と「牧ボク」「枚マイ」

2014年05月23日 | 漢字の音符
攴[攵] ボク  攴部ぼくづくり         

解字 甲骨文字でわかるように、手に棒や木の小枝を持って、たたくさまの象形。たたく・うつ意を表す。単独で用いられることなく、部首専用字となっている。攴が正字だが、楷書ではほとんど「攵」に変わる。具体的に「どうたたく」かは、攵に対する字によって異なる。例えば、牧ボクの場合はムチであり、枚マイの場合はオノである。ところで、攵の音符としてここに収録した枚と牧は、左辺の木・牛がどちらも部首となる字で、枚は木へん、牧は牛へん。部首以外の共通点は「攵」。それがこの二字が、ここに収録された理由である。しかし、牧は発音がボクだから、紛れもなく音符を引き継いだ字。枚マイは音を引き継がないので会意となる。
意味 (1)うつ。たたく。 (2)むちうつ。 (3)撃つ。
参考 攴は部首「攴ぼくづくり」になる。漢字の右辺(旁)に付いて、たたく意を表す。この部首は現在、ほとんどが攵に変化しているので非常に少ない。主な字は敲コウ・たたく(攴+音符「高コウ」)、および、旧字の敍ジョ(攴+音符「余ヨ」)=叙、の2字。
攴は漢字の右辺に置かれたとき、ほとんどが攵に変化し、部首「攵のぶん・ぼくづくり」となり、たたく・うつ意味を表す。常用漢字で16字、約14,600字を収録する『新漢語林』では72字が収録されている。主な字は以下のとおり。
 コウ(攵+音符「工コウ」)・カイ(攵+音符「己キ」)
 ホウ(攵+音符「方ホウ」)・セイ(攵+音符「正セイ」)
 ハイ(攵+音符「貝バイ」)・キュウ(攵+音符「求キュウ」)
 ビン(攵+音符「毎マイ」)・コ(攵+音符「古コ」)
 テキ(攵+音符「啇テキ」)など。
 また、攵部に属する会意文字である、カン・サン・ケイ・スウ、は音符となる。

イメージ 
 「うつ・たたく」
(牧・枚)
音の変化  ボク:牧  マイ:枚

うつ・たたく
 ボク・まき  牛部
解字 「牛(うし)+攵(むちでうつ)」の会意形声。手にむちを持って牛を放し飼 いすること。
意味 (1)家畜を飼う。「牧畜ボクチク」「放牧ホウボク」「遊牧ユウボク」 (2)まき(牧)。まきば。家畜を放牧するところ。「牧場ボクジョウ・まきば」「牧人ボクジン」「牧童ボクドウ」(カウボーイ)
 マイ・ひら  木部
解字 「木(き)+攵(斧で打つ)」の会意。攵はここで手斧(ちょうな)で打つ意となる。手斧で木を打ち、削り取った薄い木片を枚という[字統]。ここから薄いものを一枚ずつ数える意となった。
意味 (1)うすく平らなものを数える語。ひら(枚)。「一枚ひとひら・いちマイ」 (2)数える。ひとつひとつ数える。「枚挙マイキョ」「大枚タイマイ」(多くのお金) (3)地名。「枚方市ひらかたシ」(大阪府の淀川左岸の市)
<紫色は常用漢字>

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音符「ナ サ」 <ひだりて> と 「左サ」「佐サ」

2014年05月17日 | 漢字の音符
 サ    

解字 古代文字は左手の象形。三本指の左手を本人から見た形に描く。甲骨文から篆文まで、ほぼ同じ形で使われていたが、楷書になって姿を消した。その字形は、左(ひだり)の字に残っている。なお、右手の楷書は又ヨウであるが、右の字で、「ナ+口」に変化しており、左「ナ+工」の「ナ」と同形になってしまった。
意味 ひだりて。


    サ <工具をもった左の手>
 サ・ひだり  工部

解字 甲骨文は左手の象形。金文以降は「ナ(左手)+工(工具)」の会意形声。工具(ノミ)を持つ手を描いて左(ひだり)を表した。また、左手に工具をもち右手の働きを「たすける」意もある。
意味 (1)ひだり。「左折サセツ」 (2)たすける。ささえる。「証左ショウサ」(あかし。証拠をささえるもの) (3)右と比べて下の地位。「左遷サセン」 (4)進歩的な考え。「左派サハ」「左翼サヨク」 (5)[国]酒のみ。「左党サトウ

イメージ  
 「ひだり」
(左) 
 左手に工具をもち右手の働きを「たすける」(佐)
音の変化  サ:左・佐

たすける
 サ・すけ  イ部
解字 「イ(人)+左(たすける)」 の会意形声。たすける人。補佐する人の意。
意味 (1)たすける。「補佐ホサ」「佐幕サバク」(江戸幕府の将軍をたすける) (2)すけ(佐)。長をたすける。昔の官名。次官。軍隊の階級。「佐官サカン」(将の下の階級。将をたすける)
<紫色は常用漢字>

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音符「巟コウ」<あれた地> と 「荒コウ」「慌コウ」

2014年05月09日 | 漢字の音符
 コウ  巛部    

解字 「川(かわ)+亡(ない)」の会意。川に水がないこと。水のない川原の形。洪水でときどき水が出るが普段は荒れ果てた川原をいう。土地があれている意となる。
意味 あれる。(=荒)。およぶ。いたる。

イメージ  
 「あれた地」
(荒・慌)
音の変化  コウ:荒・慌

あれた地
 コウ・あらい・あれる・あらす  艸部
解字 「艸(くさ)+巟(あれた地)」の会意形声で、雑草がしげりあれた土地。
意味 (1)あれる(荒れる)。あらい(荒い)。あれはてた。「荒涼コウリョウ」(あれはててものさびしい) (2)あれはてた土地。「荒地あれち」「荒域コウイキ」 (3)あらす(荒らす)。「車上荒(シャジョウあら)し」(駐車してある車から金品を盗むこと)「なわばりを荒す」(4)すさむ。乱れる。ふける。「荒淫コウイン」(情欲にふける) (5)でたらめ。「荒言コウゲン」「荒唐無稽コウトウムケイ」(でたらめでとりとめない)
 コウ・あわてる・あわただしい  忄部
解字 「忄(心)+荒(あれる)」 の会意形声。心の動きがはげしくなり(荒れる)落ち着かない意から、あわただしい・あわてる意となる。
意味 あわてる(慌てる)。あわただしい(慌ただしい)。「恐慌キョウコウ」(恐れ慌てる。パニック)「慌忙コウボウ」(慌ただしく忙しい)
<紫色は常用漢字>


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