漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「淵エン」<ふち>「盥カン」<たらい>「轡ヒ」<くつわ>

2015年04月09日 | 漢字の音符
     エン <ふち>
淵(渕) エン・ふち  氵部

解字 甲骨文第一字は四角い囲いの中に水の流れを配しており、岸に囲まれた深い沼や湖をさす。第二字は水流の一つが囲いから出ており、川の流れがよどんで深いところを指す。金文は、流れの深いところをH印で表し、さらに水流を横につけた字。篆文はその変化した形。川や沼・湖の水がよどんで深いところをいう。渕は異体字で、新字体に準じて使われる。
意味 (1)ふち(淵)。川・沼・湖などの水の深くたまったところ。「深淵シンエン」(①ふかいふち。②奥深いところ)(2)深いさま。「淵玄エンゲン」(物事が奥深いこと)「淵識エンシキ」(奥深い知識)「淵源エンゲン」(物事のよってきたる深いみなもと。根源)(3)浮かび上がることのできない境遇。「絶望の淵ふちに沈む」


    カン <器の水で手をあらう>
 カン・たらい  皿部

解字 甲骨文は、皿(うつわ)の中に上から手をいれている形、点二つが水を表しているので、器の水で手をあらう意。金文・篆文は、「上からの両手+水+皿(うつわ)」の会意。皿(うつわ)に中の水に両手を入れ、手を洗うかたち。現代字は、両手の向きが下からの手に変わった盥カンとなった。たらいで手をあらう意。また、たらいの意ともなる。
意味 (1)あらう。手をあらう。すすぐ。「盥洗カンセン」(盥は手をあらう、洗は足をあらう意。手足をあらうこと)「盥沐カンモク」(盥は手をあらう、沐は髪をあらう。手や髪をあらうこと)「盥漱カンソウ」(手を洗い口をすすぐ。漱は口をすすぐ意)(2)たらい(盥)。てあらいの略。手や顔を洗う器。「盥回(たらいまわ)し」(①足で盥をまわす芸。②次々と物事を他へ送りまわすこと)(3)[国]たらい(盥)。洗濯をする器。「盥舟たらいぶね


     ヒ <たづな・くつわ>
 ヒ・くつわ・たづな  糸部  

 轡(金属の丸い輪)と手綱
解字 甲骨文は「叀セン(糸つむぎの道具)+三本の糸(つな)」の会意。叀センは糸をつむぐ紡錘車の形を表した字。これを手で回して縒りをかけて糸をつむぐのが専センで、転じて、もっぱら・ひとり占めの意がある。叀センも、この意味を持っており、「叀セン+三本の糸(つな)」は、三本のつな(綱)を、一人占めして操ること。綱の先の馬が省かれており、三頭立ての馬車を手綱であやつる意となる。金文は叀センの上部が少し変化した形。篆文は「糸+車+口+糸」の形になった。「車+口」は、叀センの変化形で、もっぱら(一人で操る)意、轡は二頭立ての馬車の手綱を持って馬を御する意で、たずな(手綱)の意味になる。また、手綱と馬の口にくわえさせる金具である、くつわを含めて言う。日本では、くつわだけに用いる。現代字は糸車糸の下に口がついた轡になった。
覚え方 をひく馬のにかませ、その両側からのびる二本の糸が、(くつわ)
意味 (1)たずな(轡)。手綱とも書く。馬のくつわに結び付け手にもって馬をあつかうつな。また、たづなとくつわ。「馬轡バヒ」(馬のたづな)(2)[国]くつわ(轡)。馬の口にくわえさせる金具。また、轡をかたどった紋所の名。「轡(くつわ)をならべる」(馬の首を一線にならべる)「轡掛くつわがかり」(馬の口のさけめ。口のわき)「轡紋くつわもん」(轡をかたどった丸に十字の紋)(4)人の口にかませるもの。「猿轡さるぐつわ」(声をたてないように口にかませる布)(5)「轡虫くつわむし」とは、キリギリス科の昆虫。ガチャガチャという鳴き声が馬の轡(くつわ)が触れ合って出る音に似ていることからいう。

<参考>
 セン  ム部

解字 糸をつむぐ糸つむぎの道具をかたどった字。これに寸(て)を付けた字が専センになる。音符「専セン」を参照。
意味 (1)ひく。ひっかかる。(2)もっぱら。(=専)

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音符 「桑ソウ」 「薊ケイ」 「犀サイ」

2015年04月08日 | 漢字の音符
      ソウ <葉を手で摘む木・くわ>
 ソウ・くわ  木部

 桑の葉手摘図
解字 甲骨文は桑の葉の茂る形の象形。篆文では、蚕が食べる桑の葉三つを又(て)の形三つで表現し、下に木を添えた。桑の葉を手でつみとる木を意味する。日本では、桑の若木を根元から刈り取って蚕に与えるところが多いが、葉を手摘みして蚕に与えるのは、日本の一部地域で行われていたし、現在も中国雲南省にある。古くは桑の木に上り葉を手摘みしていた。
意味 くわ(桑)。クワ科の落葉高木。養蚕のため葉を蚕に与える。実は甘く食用となる。自然木の材は硬く工芸材料として使われる。「桑園ソウエン」「桑原くわばら」(桑の畑。落雷を避ける呪文)「扶桑フソウ」(中国で、東海の日の出にあるという神木。また、その地。日本の異称。)「桑田ソウデン変じて滄海ソウカイとなる」(予測できないほど、世の中の移り変わりが激しいこと。桑田が大海原に変わってしまう意から)


      ケイ <あざみ>
 ケイ・あざみ  艸部

 野あざみ
解字 「艸(くさ)+魚(さかな)+刂(かたな)」の会意。魚を刂(かたな)で二枚ないし三枚におろす(開く)と、トゲが連なったような骨がでてくるので、トゲの多い意。それに艸(くさ)のついた薊ケイは、葉にトゲの多い「あざみ」をいう。
意味 あざみ(薊)。キク科アザミ属の多年草。葉は大形で深い切れ込みがあり、トゲが多い。花は紅紫色。根は食用としたり煎じて漢方薬とする。別名は、刺草シソウ。「野薊のあざみ」(薊の一種。各地の原野に自生する)「大薊タイケイ」(あざみの根から作る生薬)


      サイ <さい>
 サイ・さい  牛部

解字 金文・篆文とも「尾(しっぽ)+牛(うし)」の会意。尾はここで獣の性交する部分を示す。獣の性交はオスがメスの尾の上に馬乗りになる。そこに牛のついた犀サイは、牛との交配で産まれた牛と似た動物の意。古代の人は、犀は牛の血をひく動物と考えていた。現代字は、尾の毛が、二|二、に変化している。
意味 (1)さい(犀)。サイ科の哺乳類。角は一本で固く、皮は厚くてかたい。「犀角サイカク」(犀の角。器物や薬用とする)「犀甲サイコウ」(犀の皮で作ったよろい)(2)(角が)堅くて鋭い。「犀利サイリ」(①武器が堅くて鋭利なこと。②頭の動きが鋭い)(3)地名。人名。「犀川さいがわ」(長野県や金沢市を流れる川)「室生犀星むろう-さいせい」(金沢生まれの詩人・小説家。抒情詩人として知られ、のち小説に転じた) (4)「木犀モクセイ」とは、モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。花に香気がある。名称の由来は樹皮が犀の皮に似ているからと云われる。別名は銀木犀ギンモクセイ。金木犀キンモクセイは変種で、花はオレンジ色で香りがつよい。

イメージ 「さい」(犀・遅[遲])
音の分布 サイ:犀  チ:遅
さい
[遲]チ・おくれる・おくらす・おそい  辶部
解字 旧字は「辶(ゆく)+犀サイ」の会意。犀がゆく意で、歩みの遅いサイに辶(ゆく)をつけ遅い意を表した。現代字は犀サイの尸以外の部分を羊に置き換えた字。
意味 (1)おそい(遅い)。のろい。にぶい。「遅遅チチ」「遅筆チヒツ」 (2)おくれる(遅れる)。間に合わない。「遅刻チコク」「遅延チエン」「遅配チハイ」 (3)(ゆっくりの意から)まつ。気長に待つ。「遅明チメイ」(夜明けをまつ頃。夜明け)「遅旦チタン」(日の出をまつ頃。夜明け)
覚え方 この(コノ⇒)ひつじ()ゆく()のが(おそ)い。
<紫色は常用漢字>

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音符「禹ウ」<古代の聖王>・「焉エン」<端正で美しい鳥>

2015年04月07日 | 漢字の音符
 ウ  禸部ぐうのあし

解字 二匹の虫をタテとヨコに組み合わせた形。オスとメスなので頭のかたちが異なる[字統]。金文第二字でタテの虫が頭の大きい蛇のような形になり、ヨコの虫が手のような形に変化し、篆文で現代字に通じる形ができた。虫は蛇とされるが竜とする説もある。もと水神としてまつられ、転じて、中国古代の聖王の名となった。
意味 (1)虫の名。(2)古代中国の夏王朝を開いた伝説上の王の名。「禹行舜趨ウコウシュンスウ」(見かけだけ禹のように歩き、舜のように走っても、聖人の徳は備えていない。うわべだけ聖人の真似をすること。舜は中国古代説話上の五帝の一人)「禹域ウイキ」(中国の別名。禹王が治めた国土の意から)「大禹ダイウ」(禹の敬称)

イメージ 「古代の聖王」の他、二匹の虫が交わるかたちから「むし」のイメージがある。
 「古代の聖王」(禹)
 「むし」(齲)
音の変化 ウ:禹・齲

むし
 ウ  歯部
解字 「歯の旧字(は)+禹(むし)」の会意形声。虫にかまれた歯。
意味 むしば(齲)。「齲歯ウシ・むしば」(虫歯)「齲痛ウツウ」(虫歯が痛い)


   エン <端正で美しい鳥>
 エン・いずくんぞ  灬部

解字 金文は「正(端正な・ととのった)+鳥(とり)」の会意。端正で美しい鳥の意。正の上に一がついているが異体字の正である。篆文は正と鳥が合わさった形となり、現代字は「正+鳥の下部」の焉エンとなった。本来の意味でなく、仮借カシャ(当て字)され、疑問・反語、句末の助字、指示代名詞、また、状態を表す語に用いる。
意味 (1)いずくんぞ(焉んぞ)。なんぞ。(2)これ。ここに。(3)状態を表す形容の語。「終焉シュウエン」(終わりの状態の意。①いまわ。死に臨むこと。②身の落ち着く所。隠居して晩年を送ること)「忽焉コツエン」(たちまち。にわかなさま。=忽然)「我不関焉ガフカンエン・われかんせずエン」(わたしには関係が無いよ、といった態度をとるさま)(5)揚子江と淮河に産する黄色い鳥[説文解字]

イメージ
 「仮借カシャ」
(焉)
 「端正でうつくしい」(嫣)
音の変化 エン:焉・嫣

端正でうつくしい
 エン  女部
解字 「女(おんな)+焉(端正でうつくしい)」の会意形声。端正で美しい女。
意味 (1)うつくしい。女性の体がすらりとうつくしいさま。「嫣麗エンレイ」(うつくしく、うるわしい)「嫣紅エンコウ」(うつくしい紅色)(2)あでやかにほほえむさま。「嫣然エンゼン」(あでやかににっこり笑うさま)

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音符「裔エイ」<衣架けに衣をかける>

2015年04月06日 | 漢字の音符
      エイ <衣架けに衣をかける>
 エイ・すそ・すえ  衣部

解字 「衣(ころも)+冏ケイ(穴のある台座)」の会意形声。冏ケイ(穴のある台座)とは、ここでは台座から棒が出た、衣をかけるための台(衣架け)のこと。衣を衣架けにかけると、丈の長い衣は裾(すそ)が下に着くことから裾の意。転じて、本人のすその下に、今後つらなる子孫・血つづきの意となる。立派な衣服は子孫に伝えられた。
 中国古代の衣架け
意味 (1)すそ(裔)。もすそ。衣のすそ。(2)すえ(裔)。子孫。血つづき。遠い血筋。「裔孫エイソン」(遠い末の子孫。子や孫より後の血筋)「末裔マツエイ」(血筋を伝える何代もあとの人)「後裔コウエイ」(子孫)(3)はて。辺境。「四裔シエイ」(国の四方のはて)「裔エイは夏を謀(はか)らず」(辺境の民は夏(中国)に謀叛ムホンしない。孔子家語・相魯)

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音符「毅キ」「侃カン」「諡シ」

2015年04月05日 | 漢字の音符
            キ <猪形の超獣>
 キ・つよい・たけし  殳部

解字 金文・篆文とも、「辛(かんむり)+豕(いのしし)+殳(投げやりを持つ)」の会意。辛シンは、取っ手のある大きな針や刃物の意で使われる字であるが、王や超越した力をもつ者がつける冠の変形字となることがある。例えば、商ショウの上部の立(辛の略体)は王冠を表し、商は王の宮殿を意味する(音符「商ショウ」を参照)。また、龍の字の立(音符「龍リュウ」を参照)は、金文と篆文で辛字形の冠飾りになっており、超越した力をもつ想像上の動物である龍を表す。そこで、「辛(かんむり)+豕(いのしし)」は、猪の形をした超越的な力をもつ獣を表す。
 そこに殳(投げやりを持つ形)がついた毅は、殳(投げやり)を持った相手に対し、猪形の超獣が、相手を睨みつけて毅然と立つかたち。つよい・力強くたつ意となる。現代字は、「立+豕+殳」(立と豕は、一部重複)からなる毅になった。
意味 つよい(毅い)。たけし(毅し)。力強く立つ。「毅然キゼン」(自分の信念をつらぬき物事に動じない)「弘毅コウキ」(度量が広く意志が強い)「剛毅ゴウキ」(すぐれて強い)


            カン <つよい>
 カン・つよい  イ部

解字 金文は、「人(ひと)+口(くち)+彡(おおい)」の会意。彡サンは飾りや模様をあらわす記号であるが、いくつも並んで模様をなすことから「たくさん」のイメージがある(音符「三・彡」を参照)。侃カンは、人が口から多くの言葉を発すること。人が多くの言葉を話すときは、①楽しくなごやかにおしゃべりする、②強い調子で議論する、の二つがある。金文の用法は①の楽しくなごやかの意で使われ、篆文以降は②のつよく議論する意が主流となった。字形は篆文から、彡⇒川となり、さらに現代字は川の変化した侃カンとなった。 
意味 (1)つよい(侃い)。つよく議論し主張する。強直なさま。「侃侃カンカン」(気性が強くひたむきなさま)「侃侃諤諤カンカンガクガク」(遠慮することなく強い調子で議論すること=侃諤カンガク)「侃直カンチョク」(持論をもち信念を曲げない) (2)やわらぎたのしむ。「侃爾カンジ」(なごやかだ。侃は、やわらぐ意、爾は状態を表す)


            シ <おくりな>
諡[謚] シ・おくりな  言部
解字 諡は、異体字の謚が変形した字とされる。謚は「言(ことば)+益(ます)」の会意。益エキは益の旧字で、追加する・ます意がある(音符「益エキ」を参照)。これに言がついた謚は、言葉を追加する意で、帝王や貴人の生前の功績をたたえて死後に名前をおくる(追加する)こと。諡は、謚が変形した字で、右辺の皿の上の「八一八」⇒兮ケイに変化した諡となった。
意味 おくりな(諡)。生前の功績をたたえて死者におくる名。「諡号シゴウ」(おくり名)
  
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音符 「胤イン」 「埒ラチ」「捋ラツ」

2015年04月04日 | 漢字の音符
       イン <子孫>
 イン・たね  月部にく

解字 獣の両足の間から子が産み落とされる形の象形[字統]。八は獣の両足、「幺(つながる)+月(からだ・にく)」はへその緒でつながって生まれ出てきた子を表している。人に移して子孫・血筋・跡継ぎの意を表す。
意味 (1)たね(胤)。血筋。子孫。「後胤コウイン」(子孫。末裔)「落胤ラクイン」(貴人が妻以外の女にひそかに生ませた子。おとしだね)(2)あとを継ぐ。「胤嗣インシ」(あととり)


      ラチ <かこい>
 ラチ・ラツ・かこい  土部

解字 「土(つち)+爫(上からの手)+寸(て)」の会意。「爫(上からの手)+寸(て)」は、上からの手と下の手で物を持つかたち。それに土のついた埒ラチは土を持って周囲に積み上げ、囲いをつくること。土の低い垣をいうが、土以外の垣にもいう。また、転じて、一定の範囲をいう。
意味 (1)かこい(埒)。低い垣根。内と外を分けるための垣。「馬埒バラツ」(馬場の垣根)「埒ラチが明く」(へだてていた垣根が開いて物事にかたがつく。はかどる)「埒ラチが明かない」(いつまでたっても物事がすすまない)(2)[国]一定の範囲。「埒外ラチガイ」(一定の範囲のそと)「埒内ラチナイ」(一定の範囲のうち)「不埒フラチ」(法の定めた範囲にはいらない⇒けしからぬ)「埒ラチもない」(①順序が立たない。②とりとめもない)「放埓ホウラツ」(①気ままにふるまう。②酒色にふけり素行がおさまらない)
※「埒が明く」「埒が明かない」は、意味からいうと「埒ラチ(かこい)が開く」だが、慣用で「明く」を使う。物事が明るい方向に動く意からと思われる。
 ラツ・つまむ・とる  扌部
解字 「扌(て)+爫(上からの手)+寸(て)」の会意。三つの指先で物をつまむ意。
意味 (1)つまむ(捋む)。とる(捋る)。指先で物をつまみとる。「捋取ラツシュ」(つまみ取る) (2)ひねる。「捋鬚ラツシュ」(ひげをひねる)

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音符「羌キョウ」<牧羊民> と「姜キョウ」

2015年04月03日 | 漢字の音符
   キョウ <牧羊民>
 キョウ・コウ  羊部

解字 甲骨文は羊の頭を持つ人のかたちで、牧羊民族の羌人をさす。金文から「羊+人」の羌になった。羌族は中国の最も古い少数民族のひとつ。現在の四川省の羌族自治県や、甘粛省・陝西省などに住み、伝統文化を保持している。
意味 えびす(羌)。中国西部に住んでいた民族の名。五胡のひとつ。現在、四川省・甘粛省・陝西省などに少数民族として続いている。「羌族キョウゾク」「羌笛キョウテキ」(羌族系の少数民族の使う笛)「羌鷲キョウシュウ」(オオワシ)


   キョウ <牧羊民の姓>
 キョウ  女部

解字 羌の下部を女にかえて、姜姓を示した字。同じく女偏の姫姓などとともに紀元前二千年以上前の母系氏族社会に起源をもつ姓。
意味 (1)姜姓。中国で最も古い姓氏の一つ。中国古代の伝説上の帝王・炎帝を始祖とする伝承をもつ。「姜維キョウイ」(三国時代蜀の将軍) (2)川の名。「姜水キョウスイ」(陝西省を流れる川。炎帝がこの川のほとりで生まれたという伝説をもつ) (3)「生姜しょうが」とは、ショウガ科の多年草。根は横に走り数個のかたまりとなり、黄色で辛味があり食用・香辛料とする。正式な名は「生ショウキョウ」で、キョウ(はじかみ。ショウガ)を同音の姜キョウに置き換えた字。日本では「生姜ショウキョウ」を、なまって「ショウガ」と発音した。「生姜焼き」(ショウガの汁を加えたタレをかけるか、タレに漬けた肉を焼いた料理)

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音符「梁リョウ」<両側をわたす> と「粱リョウ」「簗やな」

2015年04月03日 | 漢字の音符
 リョウ・はし・はり・やな  木部    

解字 篆文は「水(かわ)+刅 ソウ(両側)+木(き)」の会意。刅 ソウは、刀の両側に点をつけた字で、刃が刀の一方に切る部分がついている片刃に対し、両側に刃がある両刃の剣の意。ここでは、両側の意。梁は川の両側から木を架け渡した橋をいう。転じて、家の柱の上に架かる「はり」をいう。
 
意味 (1)はし(梁)。「橋梁キョウリョウ」(橋も梁も、はしの意。大きな橋)「高梁たかはし」(地名。岡山県西部の高梁川中流の市) (2)はり(梁)。うつばり(梁)。屋根の棟木(むなぎ)の下方に直角に架けて屋根をささえる横木。「棟梁トウリョウ」(棟むねと梁はり。大工のかしら。統率者)「梁塵リョウジン」(梁の上の塵ちり)「梁塵を動かす」(歌い方がうまくて梁の上の塵ちりも動かす意)「跳梁チョウリョウ」(梁を跳び越える。好き勝手にはねまわる) (3)やな(梁)。川を横切って柵をつくり、途中に口を開けて魚をとる装置。(=簗)。(4)中国の国名。

イメージ 
 「両側を渡す」
(梁・簗)
 「同音代替」(粱)
音の変化 リョウ:梁・粱  やな:簗

両側を渡す
<国字> やな  竹部
 
簗(精選版 日本国語大辞典)
解字 「竹(たけ)+梁(両側を渡す)」の会意形声。梁には両側を渡す意から、やなの意があり、これに竹をつけて竹製のやなを表した国字。
意味 やな(簗)。川に柵など設置して魚を誘導し、途中に開けた口に導いて簀(す)でとらえる装置。「簗漁やなリョウ」「下り簗やな」(川を下ってくる魚を捕える簗)

同音代替
 リョウ・ロウ・おおあわ   米部
解字 「米(穀物・こめ)+梁の略体(リョウ)」の形声。リョウは良リョウ(よい)に通じ、上質の穀物また米をいう。粱リョウと良リョウは、上古音・中古音ともlǐaŋで同音。
意味 (1)穀物の名。おおあわ(粱)。粒の大きな良質のアワ。(2)上質の穀物。上質の米。「粱肉リョウニク」(良質の穀物と肉。上等の食事)「粱米リョウベイ」(よい米)
 
高粱(「気ままな耕作日記」より)
(3)「高粱コウリョウ・コーリャン」とは、イネ科モロコシ属の一年草。中国東北部などで多く栽培されるモロコシの一種。コーリャンは中国の発音。実を食用・醸造用とする。「高粱酒コーリャンシュ」(高粱を原料とした蒸留酒)

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