漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「庚コウ」<きねでつく>と「康コウ」

2020年01月12日 | 漢字の音符
  庚コウと康コウの解字をやり直しました。
 コウ・かのえ  广部 
      
解字 甲骨文は楽器の象形。下が開いた鐘の象形とするのが妥当であろう。意味は、十干の七番目、人名、祭祀名。[甲骨文字辞典]。金文は甲骨とほぼ同じ形。篆文[説文解字]は「キネのような形+両手」になり両手でキネを持ち(臼を)つく形になった。現代字は、途中の隷書(漢代)を経て「庚」へと大幅に変化した。意味は甲骨文字からある十干の七番目の「かのえ」のほか、とし・年齢の意味で用いられる。なお、篆文以降の形の変化が、意味の変化をともない、音符字である康の意味に影響を与えている。

十干の読み方(オンライン無料塾「ターンナップ」より)
意味 (1)かのえ(庚)。十干の七番目。「庚申コウシン」(かのえさる。十干と十二支とを組み合わせたものの第五七番目。また、それに当たる年、月、日など)「庚申待コウシンまち」(庚申の夜、寝ないで徹夜する習俗)「庚申塚コウシンづか」(路傍などに庚申さん[青面金剛]を祀ってある塚) (2)とし。年齢。「同庚ドウコウ」(おないどし)

    コウ <米をついてカラが飛び散る>
 コウ・やすい  广部 

解字 甲骨文は楽器の象形である庚に小点を加えた形で、楽器の音を表現した指示記号であろう。庚は発音も表す亦声(声符)の部分。意味は王の名として使用されている[甲骨文字辞典]。
 金文は甲骨とほぼ同じ形で、人名、宮の名、および和楽の意に用いられている。篆文は、[説文解字]にこの字がないが、穅コウ(=糠)の字があるので、ここから康を抜き出した。両手でキネのようなものを持ち、(臼を)ついている形と思われ、ついた米のカラが飛び散っているさまを点で表している。庚の字でも分かるように、篆文から脱穀の意味に変化したようである。隷書(漢代)から形が大きく変化し、現代字は康となったが、甲骨文字と見比べると同じ字とは思えないほどの変化である。意味は、やすらかの意で金文と同じであるが、解字としては「庚(キネでつく)+とびちるカラ」の会意形声で、脱穀または精米を表す形だが、転じて、お米が実り臼でついて食事ができて、生活がやすらかの意と解釈したい。
意味 (1)やすい(康い)。やすらか。「安康アンコウ」(安全でやすらか)「康楽コウラク」(やすらかにたのしむ)「小康ショウコウ」(しばしのやすらき) (2)じょうぶ。たっしゃ。「健康ケンコウ」 (3)太い道路。「康衢コウク」(康は五達した道路、衢は四達した道路で)都のちまた。大通りの意。

イメージ  
 「米をついてカラが飛び散る」
(康・糠)
 「同音代替」(慷)
 「コウの音」(鱇)
音の変化  コウ:康・糠・慷・鱇

米をついてカラが飛び散る
 コウ・ぬか  米部
解字 「米(こめ)+康(米をついてカラが飛び散る)」の会意形声。康がやすらかの意となったので、米をつけて本来の意味を表した。ここでのカラは玄米を搗いたカラ、すなわち米ヌカを意味する。
意味 (1)ぬか(糠)。玄米を精白するとき出る粉状のもの。「糠味噌ぬかみそ」(野菜などを漬けるため米糠に塩をまぜて発酵させたもの。) (2)ぬかのように細かいもの。「糠雨ぬかあめ」 (3)粗末な食べ物。「糟糠ソウコウ」(酒かすと米糠。粗末な食べ物)「糟糠の妻」(貧乏な時から苦労を共にしてきた妻)

同音代替
 コウ  忄部
解字 「忄(こころ)+康(コウ)」の形声。コウは亢コウ(たかぶる)に通じ、社会の不正義などに心がたかぶること。いきどおりなげく意に使う。正字(篆文)は忼コウで、慷は同音代替字。
意味 なげく。気がたかぶる。いきどおりなげく。「慷慨コウガイ」(いきどおりなげく)「悲憤慷慨ヒフンコウガイ

コウの音
<国字> こう  魚部
 鮟鱇(ウィキペディアより)
解字 「魚(さかな)+康(コウ)」の形声。コウという名の魚を表す国字。
意味 鮟鱇アンコウに用いられる字。鮟鱇とは海底にすむアンコウ科の海魚。体は平たく口は大きい。背びれに突起があり、これで小魚を誘引して呑みこむ。「あんこう」の語源は、口をあんぐり開けるから「あん口コウ」という説がある。日本語の「あんこう」という名の魚に、魚へんに安康をつけて表したもの。「鮟鱇形アンコウガタ」(鮟鱇のように太って腹の出ている力士。あんこ形)
<紫色は常用漢字>

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音符「系ケイ」<つなぐ・つながる>と「係ケイ」「孫ソン」「遜ソン」

2020年01月05日 | 漢字の音符
 ケイ・つなぐ  糸部

解字 甲骨文・金文は糸と糸を手でつなぐ形で、つなぐ意味を表す。篆文は糸を一つにし、手をノに簡略化した。現代字はその流れをくむ。
意味 (1)つなぐ。つながり。「系図ケイズ」「系統ケイトウ」「系列ケイレツ」「直系チョッケイ」 (2)血のつながり。「家系カケイ」「母系ボケイ」 (3)まとまりや組織。「体系タイケイ」「太陽系タイヨウケイ

イメージ 
 「つなぐ・つながる」
 (系・係・孫・遜)
音の変化  ケイ:系・係  ソン:孫・遜

つなぐ・つながる
 ケイ・かかる・かかり  イ部
解字 「イ(人)+系(つながる)」 の会意形声。人がいろんな事と関わりを持つこと。
意味 (1)かかる(係る)。かかわる。「関係カンケイ」「係争ケイソウ」(かかわり争う) (2)つなぐ。つながり。「係留ケイリュウ」(つなぎとめる)「係船ケイセン」 (3)かかり(係)。仕事の受け持ち。「係員かかりいん
 ソン・まご  子部
解字 「子+系(つながる)」 の会意。自分の子と血がつながっているまご。
意味 (1)まご(孫)。子の子。「曾孫ソウソン」(ひまご) (2)しそん。まご以下の血筋のもの。「子孫シソン」 (3)分かれ出たもの。 (4)[国]まご。自ら直接関わるのでなく関接的に行なうこと。「孫引まごびき」「孫請まごうけ」「孫の手」(手の届かない背中を掻く棒)
 ソン・へりくだる・ゆずる  辶部
解字 「辶(ゆく)+孫(まご)」の会意形声。本人から見ると、孫は二代目の子孫。孫から見ると二代上は祖父母になる。孫は祖父母を敬うので、辶(ゆく)を付けた遜は、敬う状態を表す。相手をうやまうことは、自分をへりくだることでもあり、遜はこの意味で用いられる。新指定の常用漢字のため二点しんにょう。一点しんにょうで書いても可。
意味 (1)へりくだる(遜る)。「謙遜ケンソン」「不遜フソン」(思い上がる) (2)ゆずる(遜る)。自分をあとまわしにして他人をすすめる。「遜位ソンイ」 (3)おとる。およばない。「遜色ソンショク」「遜色がない」(見劣りしない) (4)のがれる。逃げ去る。「遜遁ソントン
<紫色は常用漢字>

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