漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「爪ソウ」 <つめ> と 「抓ソウ」「笊ソウ」「覓ベキ」

2019年01月15日 | 漢字の音符
 ソウ・つめ・つま  爪部  
  鷹の爪
解字 金文は三本指の手の先にツメのでている形の象形。鳥獣あるいは人のツメを描いている。篆文は三本指の手を下に向けた形に変化し、指の先のツメも消えたが、意味は鳥獣や人のツメを表す。現代字の爪は篆文を引き継いだかたち。
意味 つめ(爪)。手足のつめ。つめの形をしたもの。「爪先つまさき」「爪弾(つまはじ)き」「琴爪キンソウ」(琴をひくときに指先にはめるつめ)
参考 爪は部首「爪つめ」になり爪の意を表す。この部首に属する主な漢字は爬しかない。爬ハ・かく は、「爪(つめ)+巴(つける)」の会意形声で、爪をつけてかく意。

イメージ 
 「つめ」
(爪) 
 鳥獣が獲物をつかまえようと「つめをひらく」(抓・笊)
 つめが付いている「て」(覓)
音の変化  ソウ:爪・抓・笊  ベキ:覓

つめをひらく
 ソウ・つまむ・つねる・つむ  扌部
解字 「扌(手)+爪(つめをひらく)」の会意形声。手の爪をひらいて物をつかむこと。
意味 (1)つまむ(抓む)。つむ(抓む)。つかむ。つかまえる。「抓入つみれ」(抓みいれの転。つまんで入れる)「抓賊ソウゾク」(賊を捕らえる) (2)つねる(抓る)。「ほおを抓る」 (3)かく。ひっかく。
 ソウ・ざる  竹部
解字 「竹(たけ)+爪(つめをひらく)」の会意形声。爪をひらいた形に編んだ竹のかご。
意味 (1)ざる(笊)。竹で編んだざる。「笊籬いかき」(竹のざる)「笊笥ソウケ」(竹のざる) (2)す。ざるの形をした鳥の巣。

つめが付いている「て」
 ベキ・もとめる  見部     

解字 金文は「見(みる)+横むきの爪(て)」の会意。てをかざし見て、探し求めること。篆文は[説文解字]に未収録。現代字は、爪が上に付いた覓になった。
意味 もとめる(覓める)。さがしもとめる。「覓索ベキサク」(さがす)「覓句ベキク」(苦吟する)「覓得ベキトク」(もとめて得る)「覓路ベキロ」(路をもとめる)「騎驢覓驢キロベキロ」(ロバに乗ってロバをもとめる。 身近にあるものをわざわざ他にもとめるおろかさ。驢は、ロバ)
<紫色は常用漢字>


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音符 「眔トウ」 <目から涙をながす> と 「鰥カン」

2019年01月12日 | 漢字の音符
 トウ  目部

解字 甲骨文字は目の下に水滴を表す小点を加えており涙を表した文字。仮借して並列を表す助辞[および]などに用いられる[甲骨文字辞典]。金文から「目+水に似た形」になったが、助辞や人名で用いられた。篆文から本来の涙をながす意で用いられる。
意味 (1)なみだ・みおくる (2)およぶ。および。

イメージ  涙をながす(眔・鰥・褱)
音の変化 トウ:眔  カイ(会意):褱  カン(会意):鰥

涙をながす
 カン  魚部
解字 「魚(さかな)+眔(涙をながす)」の会意。同音の鰔カン・鳡カンに通じ、コイ科の淡水魚である大魚のハクレン・ボウウオをいう。『孔叢子』(年代不詳)には「衛人、河に釣り鰥魚カンギョを得たり。其の大なること車に盈(み)つ」とあり。車いっぱいになるほどの大魚だとされる。
 また、鰥は魚が涙をながす形であることから、捕獲された大魚(オス)が群れに戻れずに涙をながすと考え、人に移して「結婚できない男」また「妻を失った老いた男」の意味で使われる。
意味 (1)大魚の名。ハクレン。ボウウオ。「魴鰥ホウカン」(魴ホウという魚を釣りの餌にしたが、見向きもしない大魚の鰥カン) (2)やもお(鰥)。妻のない男。また妻をなくした老いた男。男やもめ。「鰥寡カンカ」(男やもめと女やもめ)「鰥寡孤独カンカコドク」「鰥夫カンフ・やもお=鰥民カンミン」「鰥居カンキョ」(妻を失って一人暮らしする)」
 カイ  衣部
解字 「衣(ころも)+眔(涙を流す)」の会意。衣は上下に分かれている。死者の衣の襟(えり)もとに涙をたれる形。別れを惜しむ意で死者との儀礼を意味する。褱を音符に含む字は、「別れを惜しむ」イメージがある。
意味 なつかしい(=懐)。
参考 音符「褱カイ」へ。 

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