漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「續ゾク・ショク」 <やりとりが続く> と 「読ドク」

2022年07月29日 | 漢字の音符
 トウを追加しました。
[續] ゾク・ショク・つづく・つづける  糸部  

解字 続の右辺の売ショク・トク・イクは<参考>で解字しているように、篆文で「坴リクの上部(つづく)+囧ケイ(窓)+貝(財貨)」の会意。坴の上部は、(家々が)「つづく」意となる。(音符「坴リク」を参照)。これに、「囧(窓)+貝(貨幣)」がついた売は、窓をとおして貨幣と物のやりとりがつづくこと。これに糸へんがついた続は、とぎれずに糸がつづく意となる。なお、旧字は、坴の上部⇒士、囧(窓)⇒四に変化したになった。そして、新字体の音符となるとき売に置きかえて、続となっている。売ショク・トク・イクは、単独で使われることはないが、売買の「売バイ」と同じ形である。しかし、もとの字が異なり、同体異義の字である。(下欄の「売バイ」を参照)
意味 つづく(続く)。つづける(続ける)。つながる。「連続レンゾク」「続出ゾクシュツ」「継続ケイゾク」「持続ジゾク

イメージ 貨幣と物のやりとりが続く意から、「やりとりがつづく」「金品で物とかえる」イメージがある。
 「やりとりがつづく」続・瀆・黷・読・牘・覿・竇
 「金品で物とかえる」贖・犢
音の変化  ショク:  ゾク:続  テキ:覿  トウ:  トク:瀆・黷・牘・犢  ドク:読

(やりとりが)つづく
瀆(涜) トク・みぞ・けがす  氵部
解字 「氵(水)+の右辺(つづく)」の会意形声。水が続く意で水路をいう。また、トク(けがす)に通じ、けがす意となる。
意味 (1)みぞ(瀆)。どぶ。耕地に用水をとおす水路。 (2)けがす(瀆す)。けがれる。「冒瀆ボウトク」(神聖なものを、おかしてけがす)「瀆職トクショク」(職をけがす。公務員が賄賂などをもらうこと)
 トク・ドク  黒部   
解字 「黒の旧字(くろい)+の略体(みぞ)」の会意形声。みぞが黒く汚れること。
意味 けがす(黷す)。けがれる(黷れる)。不正をする。「冒黷ボウトク」(=冒瀆)
 ドク・トク・トウ・よむ  言部
解字 旧字はで、「言(言葉)+の右辺(つづく)」の会意形声。言葉がつづくこと。声を出して読む意となる。新字体は右辺⇒売に変化した読になる。
意味 (1)よむ(読む)。「読書ドクショ」「読者ドクシャ」 (2)声を出して読む。「朗読ロウドク」 (3)意味をよみとる。「解読カイドク」(読み解く)「黙読モクドク」 (4)文章の区切り。「句読点クトウテン」(文中の切れ目に打つ点)
 トク・ふだ  片部  
解字 「片(いたきれ)+の右辺(よむ)」の会意形声。読む文書が書かれた板片をいう。
意味 ふだ(牘)。文字が書かれた木の札。また、文書。「簡牘カントク」(竹簡や木簡にかかれた文書)「尺牘セキトク」(一尺四方の木札に書かれた文書。書状・文書)
覿 テキ  見部
解字 「見(みる)+𧶠(やりとりがつづく)」の会意形声。やりとりがつづく場に姿を現し、見ること。この字のイメージとして高位の者(天子など)がやりとりの現場に姿を現し、その場の人々に会う・まみえる意が強い。
意味 (1)みる。あう。まみえる。「覿テキケン」(面謁する)「覿テキメン」(①まのあたり。目のまえ。②結果・効果などがすぐ現れる)「天罰覿テンバツテキメン」(天罰が即座に下る。悪意の報いは直ちにわが身にはね返る) (2)しめす。「覿テキブ」(武を示す)「覿テキケイ」(刑を示す)
 トウ・トク・あな・あなぐら  穴部
解字 「穴(よこあな・あな)+𧶠(やりとりがつづく⇒出入りがつづく)」の会意形声。出入りする穴のようなくぐり戸。また、円形または方形の穴蔵をいう。
意味 (1)くぐり戸。「閨ケイトウ」(小さなくぐり戸)「篳門閨ヒツモンケイトウ」(粗末な竹の門とくぐり戸。貧しい家のこと) (2)あな()。あなぐら。物を出し入れする穴蔵。「トウコウ」(あなぐら) (3)姓のひとつ。「トウコウ」(後漢の桓帝の皇后)

金品で物とかえる  
 ショク・あがなう  貝部
解字 「貝(財貨)+𧶠(金品で物とかえる)」の会意形声。𧶠は金品で物とかえる意。これにさらに貝をつけ、金品で通常の物の他、身のけがれや罪まで買い取る意となる。したがって、この字には貝が二つある。
意味 (1)あがなう(う)。罪をつぐなう。罪を免れるため金品を出す。「あがもの」(身のけがれや災難を代わりに負わせて水に流す祓えの道具)「ショクザイ」(①刑に服する代わりに、金品を出して罪を許されること。②キリストが十字架にかかり人々の罪をあがなったこと)「ショクケイ」(金銭を出して刑罰をのがれる)(2)買い求める。お金で物を求める。
 トク・こうし  牛部
解字 「牛(うし)+𧶠(金品で物とかえる)」の会意形声。牛を金品で買うこと。牛を育てるため子牛を買う意味で、子牛の意となる。
意味 こうし(犢)。「トクカク」(子牛のつの)「トクシャ」(子牛にひかせる車。牛車)「舐シトク」(親牛が子牛をなめる)

<参考>
[賣] バイ・うる・うれる  士部            

解字 篆文は、「出(でる)+買(かう)」の会意形声。買ったものを出す、すなわち売ること。旧字で「士+買」に変化し、さらに新字体で「売」に変わった。
意味 うる(売る)。あきなう。ひろめる。「売却バイキャク」「商売ショウバイ」「売名バイメイ
音符「貝バイ」へ
<紫色は常用漢字>

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音符「圭ケイ」<すっきりとかたちがよい>「鮭さけ」「奎ケイ」「桂かつら」「閨ケイ」「硅ケイ」「罫ケイ」「蛙かえる」「鞋アイ」「佳カ」「卦カ」「街まち」

2022年07月26日 | 漢字の音符
  ケイを追加しました。
 ケイ・たま  土部
 西安戦国紋玉圭

解字 玉圭ギョクケイの形の象形。玉圭とは古代中国の玉器の一つ。長方形板状で先はとがり、天子が諸侯を封じた際にしるしとして与えた。天子・諸侯が儀式を行うときに手に持った。その規格は厳格な等級と制限があり、諸侯の身分や権力により分かれていた。圭は、土が二つ重なったように見えるが、玉を紐で貫きとおした形である甲骨文の玉から変形したかたちと思われる。
意味 (1)たま(圭)。ぎょく。角のある玉。上が尖り下が方形の玉。古代の諸侯が身分の証として天子から受けた玉。「圭玉ケイギョク」「圭璋ケイショウ」(儀式用の貴重な玉器) (2)かど。「圭角ケイカク」(圭のとがった先。また、突出した才能や性格) (3)日どけいの柱。「土圭ドケイ」(日時計の柱)

イメージ   
  圭の形から「角のある玉器」(圭・珪)
 「すっきりと形がよい」(佳・娃・袿・鮭・鞋・奎・桂・閨)
 「かどだつ」(畦・街・恚)
 「形声字」(硅・挂・卦・掛・罫・蛙・窪)
音の変化  ケイ:圭・珪・袿・鮭・奎・桂・閨・挂・硅・畦・罫  ア:蛙  アイ:娃・鞋  イ:恚  カ:佳・卦・掛  ガイ:街  ワ:窪

角のある玉器
 ケイ・たま  王部
解字 「王(玉)+圭(角のある玉器)」の会意形声。圭はもともと玉圭の意。王(玉)をつけて意味を明確にした字。
意味 (1)たま(珪)。圭の意味(1)と同じ。 (2)非金属元素のひとつ。元素記号Si。「珪素ケイソ=硅素)」「珪酸ケイサン=硅酸」(珪素と酸素と水素の化合物)

すっきりと形がよい
 カ・よい  イ部
解字 「人(ひと)+圭(すっきりと形がよい)」 の会意形声。人が美しく善良なさま。人以外にも用いる。 
意味 (1)よい(佳い)。美しい。「佳人カジン」「佳麗カレイ」(佳も麗も、美しい意) (2)すぐれている。「佳作カサク」 (3)めでたい。「佳日カジツ」「佳節カセツ
 アイ・ワ  女部
解字 「女(おんな)+圭(=佳。美しい)」の形声。美しい女。
意味 (1)うつくしい。みめよい。 (2)美人。「宮娃キュウアイ」(宮女) (3)(発音のワが、赤ちゃんの泣き声に通じることから)赤ん坊。「娃娃ワワ」(①赤ん坊。②人形)
 ケイ・うちかけ  衤部

小袿こうちぎ(「山川 日本史小辞典 改訂新版」より)
解字 「衤(ころも)+圭(かたちがよい)」の会意形声。かたちのよい衣服の意で、女性が礼服の上から掛けるように着る衣服。礼服の上から羽織るので「うちかけ(打ち掛け)」という。
意味 (1)うちかけ(袿)。女性が礼服の上につける衣服の一種。「袿装ケイショウ」(2)衣服の袖。長く垂れた袖。(3)[国]うちぎ(袿)。貴族の女性が私邸で着用する羽織る上着。「小袿こうちぎ」(4)男性が直衣(のうし)・狩衣の下に着た衣服。
 ケイ・カイ・さけ  魚部
解字 「魚(さかな)+圭(かたちがよい)」の形声。かたちのよい魚。日本でサケに当てた。中国の古書ではもと、ふぐ、また魚の料理の意。現在は中国でもサケの意で用いる。
意味 (1)さけ(鮭)。サケ科のサケ・ベニザケ・マスなどの総称。体は紡錘形。秋に産卵のため川にのぼる。「新巻鮭あらまきざけ」(甘塩の鮭を、わら縄で巻いたもの)(2)魚の料理。さかな(肴)。
 アイ・カイ・ケイ・くつ  革部
麻線鞋(あさのせんがい)
解字 「革(かわ)+圭(かたちがよい)」の会意形声。圭玉のように先がとがり、形のよい革のくつ。
意味 くつ(鞋)。短靴。くるぶし以下の短いくつ。「草鞋わらじ」(わらで編んだ履物)「鞋底アイテイ」(くつの底)「鞋韈アイベツ」(くつと、くつした)「線鞋センガイ」(上部を麻の細紐などで編んだくつ)「繍線鞋ぬいのせんがい」(爪先に刺繍飾りのある女性用の浅靴)
 ケイ・また  大部
解字 「大(大の字形のひと)+圭(かたちがよい)」の会意形声。大の字形の下に圭をつけ、圭玉のように先がとがり下に開く、ひとの股(また)をいう。また、星宿(星座)の28宿の一つである「奎宿ケイシュク」をさす。奎宿は16星からなり鞋(くつ)に似た細長い六角形で、上部が人の股を開いた形なので奎を当てたとされる。奎宿は、天の府庫(財物・文書などを入れておく蔵)の意味があり、多吉とされた。
奎宿(上部が人の股(また)にあたる部分。
https://new.qq.com/omn/20191014/20191014A0QPXX00.html
 日本では「とかきぼし」というが、これは奎宿のうち横に並ぶ星を「とかき」(斗桝とますに山盛りに入れた米を平らにならす棒)に見立て、隣接するペガススの四辺形を斗桝に見立てて、「とかきぼし(斗掻き星)」と名付けた。
意味 (1)また(奎)。またぐら。「奎蹄ケイテイ」(股間とひづめ)(2)星座の名。「奎宿ケイシュク」(中国の28星宿のひとつ。日本で、とかきぼし。)(3)(奎宿が「天の府庫」の意から)文運を掌握する。文章をつかさどる。「奎画ケイカク」(天子の筆・墨跡)「奎章ケイショウ」(①宸翰。天子の直筆。②すぐれた書や文章)「奎運ケイウン」(文運)「奎文ケイブン」(学問)
 ケイ・かつら  木部
解字 「木(き)+圭(かたちがよい)」の形声。形のよい木。また、佳人(美人)のイメージから香気をはなつ木をいう。
意味 (1)香気をはなつ木。①肉桂ニッケイなどの高木の総称。樹皮は芳香があり、香料とする。「桂皮ケイヒ」(肉桂の樹皮。香辛料・健胃薬とする。ニッキ・シナモン)②モクセイ(木犀)科の小高木。秋に香気をはなつ小花を開く。「金桂キンカ」(キンモクセイ)「銀桂ギンカ」(ギンモクセイ)(2)中国で月に生えているという伝説上の木。「月桂樹ゲッケイジュ」(①月に生えている樹。②地中海地方原産のクスノキ科の常緑高木。葉及び実は、香水や料理の香辛料とする。この枝葉を輪にした冠が月桂冠)(3)[国]かつら(桂)。カツラ科の高木。日本特産。
 ケイ・ねや  門部
解字 「門(もん)+圭(かたちがよい)」の会意形声。[説文解字]は「特立の門。上圓(円)下方、圭に似たる有り」とし、上は円く下は方形の門で、圭に似ているアーチ型の門としている。宮殿の門を闈と言うのに対し、この小さなものを閨ケイと言った。後宮(皇后・妃および奉仕する女官の住む殿舎)の夫人の居室に設けられることが多く、のちに夫人の部屋の意味ともなった。
意味 (1)宮中の小門。「閨門ケイモン」(2)ねや(閨)。女性の部屋。寝室。「閨中ケイチュウ」「閨房ケイボウ」(3)女性。妻。「閨秀ケイシュウ」(学問や才能のすぐれた女性)「閨怨ケイエン」(夫と離れている妻のなげき)「閨閥ケイバツ」(妻の親戚の勢力)

角だつ
 ケイ・あぜ  田部
解字 「田(耕地)+圭(かどだつ)」の会意形声。耕地を区切る角立ったあぜ。
意味 (1)あぜ(畦)。耕地のくぎり。「畦道あぜみち」(2)うね(畦)。作物を植えたり種をまくため、土を平行に盛り上げたところ。
 ガイ・カイ・まち  行部
解字 「行(通じている)+圭(=畦ケイ。区切りの道)」の会意形声。街は、土地を区画する道が縦横に通じているまち(街)。
意味 まち(街)。まちすじ。まちなか。ちまた。「街頭ガイトウ」「街道カイドウ」「街路ガイロ」「花街カガイ・はなまち
 イ・ケイ・いかる  心部
解字 「心(こころ)+圭(かどだつ)」の会意形声。心がかどだつこと。いかる意となる。
意味 いかる(恚る)。[和訓]ふつく(恚く)。心をかどだてる。「恚恨イコン」(いかりうらむ)「恚怒イド」(いかる)「恚憤イフン」(ぷりぷりする)

形声字
 ケイ  石部
解字 「石(鉱物)+圭(ケイ)」の形声。ケイという名の鉱物。ケイ酸をいう。
意味 非金属元素のひとつ。元素記号Si。「硅素ケイソ」「硅酸ケイサン」(珪素と酸素と水素の化合物)
 ケイ・カイ かける  扌部
解字 「扌(手)+圭(ケイ)」の形声。ケイは系ケイ(つながる)に通じ、手で、あるものとつなげるための動作(かける・ひっかける)を表わす。
意味 かける(挂ける)。ひっかける。かかる。(=掛)。「挂冠カイカン・ケイカン」(冠を挂ける。衣冠を脱いで職を去ること。=掛冠)
 カ・カイ・ケ  ト部
解字 「卜(うらない)+圭(=挂。ひっかける)」の会意形声。卜(うらない)の筮竹ゼイチク(竹の細い棒)50本を手指でひっかけ、占うことを思い浮かべながら何本か取り出すこと。とりだした本数から8本ずつ取ってゆき、最後に残った8本以下の数で卦(うらかた。占いの結果)が出る。
意味 うらかた(占形)。占いのしるし。易で吉凶を判断するもととなるもの。「卦兆カチョウ」(占いに現れた兆し)「八卦ハッケ」(占いの結果が現れる8つの形。転じて、占い)「卦体ケタイ」(うらないの結果)「卦体ケッタイ」(奇妙な。変な。関西でもちいる方言)「卦筮カゼイ」(易の占い)
 カ・カイ・かける・かかる・かかり  扌部
解字 「扌(て)+卦(占いの動作)」の会意形声。占いの筮竹ゼイチクを指に掛けて分ける動作を扌(手)をつけて表した。占いの特殊用語であったが、日本では挂ケイ・カイ(かける・ひっかける)と通用し、この意味で使われる。さらに、日本的な使い方も多い。なお、現代中国では使われていない(挂ケイ・カイの異体字となっている)。
意味 (1)かける(掛ける)。かかる(掛かる)。つりさげる。「掛軸かけじく」(2)[国]かける(掛ける)。かかわる。掛け算をする。腰を掛ける。「掛詞かけことば」(3)かかり(掛)。かかわる。「出納掛スイトウがかり」(4)[国]かけ(掛け)。金銭の支払いをあとでする売買。「掛売(かけう)り」
 ケイ・カイ  罒部
解字 「罒(=网モウ。あみの目)+卦(うらないの結果)」の会意形声。占いの結果を方形網目のマスに記すこと。この網目はタテヨコの線の交差で、碁盤などの縦横の線をいう。日本では文字を書くために引いた線や、ノートの線をいう。
意味 (1)方形の網眼。格子状の線。将棋や囲碁の盤にある方眼。「棋罫キケイ」( 将棋や囲碁盤の方眼線)
日本の罫紙
(2)[国]文字をまっすぐ書くために引いたノートの線。「罫線ケイセン」(文字の行間などに引く線)「罫紙ケイシ」(線をひいた紙)
 ア・ワ・かえる  虫部
解字 「虫(小動物)+圭(ア・ワ)」の形声。アーアー・ワーワーとやかましく鳴くカエル。
意味 かえる(蛙)。「蛙声アセイ」(蛙の鳴き声)「井蛙セイア」(井戸の中の蛙)
 ワ・ア・くぼむ  穴部
解字 「穴(あな)+氵(水)+圭(ワ)」の形声。水がわくくぼんだ穴をいい、圭(ワ)は発音をあらわす。
意味 (1)しみず。清いみず。また、たまり水。(2)くぼむ(窪む)。へこむ。くぼみ。「窪田くぼた」(くぼんだ所にある田。⇔上田あげた)「窪下ワカ」(くぼんでひくい。窪んだ場所)「窪隆ワリュウ」(くぼみともりあがり。盛衰)
<紫色は常用漢字>

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音符「尚ショウ」<台座に二つの供物がのる>と「賞ショウ」「償ショウ」「常ジョウ」「堂ドウ」「党トウ」「当トウ」

2022年07月23日 | 漢字の音符
 ショウ・ジョウ・なお 小部

解字 金文は、「冂形(つくえ・台座)+一印の供物が二つのっているさま+口(祭祀用の器)」の会意。机または台座の上に供物を供え下に祭祀用の器を置いたさまで、祭祀の様子を表している。篆文から、机上の二つの供物⇒小に変化し、さらに新字体は旧字の尙⇒尚となった。意味は、祭祀の対象を「たっとぶ・あがめる」、転義として「たかい」「くわえる」ひさしい」などの意がある。「なお」の意は仮借カシャ(当て字)である。
意味 (1)とうとぶ(尚ぶ)。たっとぶ(尚ぶ)。あがめる。「尚武ショウブ」(武をたっとぶ)「尚賢ショウケン」(賢人をたっとぶ)「尚古ショウコ」(古(いにしえ)をとうとぶ)(2)たかい。上品である。「高尚コウシュウ」「尚志ショウシ」(志をたかくする)(3)くわえる(尚える)。そえる。上に重ねる。「仁を好む者は以って之(これ)に尚(くわ)える無し」(論語)(4)ひさしい(尚しい)。ふるい。「尚書ショウショ」(上代の書物。書経の別名)(5)「なお(尚)。かつ。やはり。「尚早ショウソウ」(なお早すぎる)「尚更なおさら

イメージ 
 祭祀の対象が「とうとい」(尚・堂・瞠・嘗)
 意味(2)の「たかい」(敞・廠)
 台座上に供物をのせる事から「上にのる・のせる」(賞・償・当・蟷・掌・趟・躺)
 「形声字」(常・党・裳・棠)
音の変化  ショウ:尚・敞・廠・嘗・賞・償・掌・裳  ジョウ:常  トウ:当・党・蟷・趟・躺・棠  ドウ:堂・瞠

とうとい
 ドウ  土部
解字 「土(土壇)+尚(とうとい)」の会意形声。土は土壇、堂は土壇のうえに築いた、とうとい神仏を祀る建物をいう。転じて、大きな建物などを指す。
意味 (1)神や仏をまつった建物。「御堂ミドウ」(仏像を安置したお堂)「金堂コンドウ」(本尊を安置する仏堂。堂内を金色にすることから)「経堂キョウドウ」 (2)大きな御殿。「殿堂デンドウ」「講堂コウドウ」 (3)立派なようす。「堂々」 (4)他人の母の敬称。「母堂ボドウ
 ドウ・みはる  目部
解字 「目(め)+堂(立派な御殿)」の会意形声。立派な御殿を目を大きく開けてみること。
意味 みはる(瞠る)。目を見張る。みつめる。「瞠目ドウモク」(目を見張る)
 ショウ・ジョウ・かつて・なめる  口部
解字 「旨(うまい)+尚(とうとい)」の会意形声。とうとい方(神)が味わうこと。
意味 (1)新しく収穫した穀物を神に供え味わっていただく祭り。「神嘗祭かんなめさい」(新穀を神に奉る伊勢神宮の祭り)「新嘗祭にいなめさい」(天皇が新穀を神にすすめ、またこれを食する祭り)「大嘗祭ダイジョウサイ」(天皇が即位の後、初めて行う新嘗祭) (2)なめる(嘗める)。あじわう。「嘗胆ショウタン」(苦い胆をなめること)「臥薪嘗胆ガシンショウタン」(目的を果たすため苦労を重ねること。臥薪は薪の上に寝る) (3)こころみる。ためす。「嘗試ショウシ」(ためしてみる) (4)<仮借カシャの用法> かつて(嘗て)。

たかい
 ショウ  攵部
解字 「攵(うつ)+尙(たかい)」の会意形声。堂などを造るため周辺の土地を平らにしてよくたたいて固め、周りより一段と高くしたひろい所をいう。
意味 たかい。土地が高く平ら。ひろい。見晴らしがいい。「敞閑ショウカン」(広々としてしずか)「広敞コウショウ」(ひろい)「高敞コウショウ」(たかくてひろい)
廠[厰] ショウ  广部
解字 「广(やね)+敞(たかくひろい)」の会意声。高くひろい土地に建つ大きな建物。壁のない広間や土間になった建物。厰は異体字。
意味 (1)おおや。ひろい建物。「工廠コウショウ」(工場。仕事場)「廠舎ショウシャ」(四方に囲いのない屋根だけある建物。特に軍隊が演習などで泊まる兵舎をいう) (2)うまや。馬を集めて飼う建物。「馬廠バショウ」(うまや)

上にのる・のせる
 ショウ・ほめる  貝部
解字 「貝(財貨)+尚(のせる)」の会意形声。財貨をのせてほうびとすること。
意味 (1)ほうび。たまもの。「賞状ショウジョウ」「賞金ショウキン」 (2)ほめる(賞める)。「賞賛ショウサン」「賞味ショウミ」(ほめて味わう) (3)めでる。「観賞カンショウ
 ショウ・つぐなう  イ部
解字 「イ(人)+賞(財貨をのせる)」の会意形声。人に財貨をのせて、つぐないをすること。
意味 つぐなう(償う)。あがなう。むくいる。「弁償ベンショウ」「賠償バイショウ」「償還ショウカン」(借りたものを返す)「償却ショウキャク」(つぐない返す)
[當] トウ・あたる・あてる  ツ部
解字 旧字は當で「田(土地)+尚(のせる)」の会意形声。田畑の売買をする際、その土地の値打ちに相当するもの(金額など)をのせること。相当する(当てる)意が原義。新字体は略字による。
意味 (1)あたる(当たる)。あてる(当てる)。「相当ソウトウ」 (2)わりあてる。「当番トウバン」 (3)あたりまえ。「当然トウゼン」 (4)この・その。「当面トウメン
 トウ  虫部
解字 「虫(むし)+當(当たる。向かい合う)」の会意形声。向かい合って当たってゆく虫でカマキリをいう。
意味 蟷螂トウロウに使われる字。蟷螂とはカマキリのこと。螂ロウは郎(若者)に通じる。蟷螂は、向かい合って当たってゆく若者に虫をつけ、勇気ある若者が虫になった形。螳螂トウロウとも書く。「蟷螂の斧おの」(中国の故事。斉国王の荘公が馬車で出かけると、道に一匹のカマキリがいて、逃げださず前足をふりあげて馬車に向かってきた。荘公はその勇気を賞して、わざわざ車の向きを変えさせたという。)
 ショウ・たなごころ  手部
解字 「手(て)+尚(上にのせる)」の会意形声。物をのせる手の部分である手のひらをいう。
意味 (1)てのひら。たなごころ(掌)。「掌中ショウチュウ」(手のひらの中)「合掌ガショウ」(手のひらを合わせる) (2)つかさどる。「掌握ショウアク」(掌中に握る)
 トウ  走部
解字 「走(足の動作)+尚(上にのせる)」の会意形声。足を上にあげ、こおどりすること。また、動作の回数を表す。
意味 (1)こおどりする。おどる。「趟泥歩トウデイホ」(泥水のなかをおどるように歩く。中国武術の型の一つ) (2)動作の回数を表す。「一趟イットウ」(一回)
 トウ  身部
解字 「身(からだ)+尚(上にのせる)」の会意形声。身体をベッドの上にのせて横たえること。
意味 (1)横になる。ねる。「躺椅トウイ」(寝椅子)「躺平トウヘイ」(身体をベットの上によこたえる。寝そべる。)「躺平主義トウへイシュギ」(寝そべり主義。最低限の生活に満足し寝そべって暮らす。現代中国の若者にみられる現象。躺平族とも)(2)死ぬ。

形声字
 ジョウ・つね・とこ  巾部
解字 「巾(ぬの)+尚(ジョウ)」の形声。ジョウという名の布で、古代(周代)の長さの単位で一丈六尺(16尺=3.6m。周代の1尺は22.5㎝)を常ジョウといった。一方、尋ジンは8尺(1.8m。周代の1尺は22.5㎝)をいうため、尋常というと8尺とその倍の16尺のことで、決まった長さの意。ここから常も一字で「いつもの・ふつう」の意味になった。
意味 (1)長さの単位。周代の尺度で16尺(3.6m)「尋常ジンジョウ」(尋は8尺、常は16尺。決まった長さ。普通。なみ。あたりまえ)「尋常小学校」(初等普通教育を施した旧制の小学校の名称。明治19~昭和16) (2)いつも。つね(常)。「常食ジョウショク」「常駐ジョウチュウ」 (3)ふつう。「通常ツウジョウ」「常温ジョウオン」 (4)いつまでも続く。とこ(常)。「常夏とこなつ」「常(とこ)しえ」
 ショウ・も  衣部
解字 「衣(ころも)+尚(=常の略体)」の会意形声。常の字の巾⇒衣に変えた異体字。長い衣の意だが、特に下の裾(すそ)が長い袴(はかま。腰から下にまとう衣)のたぐいを言う。
意味 (1)も(裳)。もすそ。したばかま。下半身にまとう衣服。「衣裳イショウ」(衣はここで上半身に着るものの意、裳は下半身に着るもの。すなわち衣服全体をいう)「裳階もこし」(仏塔、城郭などで、軒下の壁面に付いた庇状構造物。本来の屋根の下にもう一重屋根をかけたかたち) (2)「裳裳ショウショウ」(りっぱでさかんなさま。美しいさま)
[黨] トウ  儿部
解字 「儿(ひと)+尚(=常の略体)」の会意形声。常につながりのある人のなかま。旧字は黨で、「黒の旧字(すすで黒ずんだかまど)+尚(=常の略体)」の会意形声。炊事や飲食をともにする常につながりのある仲間の意。(辞典により説明がことなるため覚えるための解字です)
意味 (1)なかま。ともがら。「徒党トトウ」 (2)政治的な団体。「政党セイトウ」 (3)むらざと。むら。「郷党キョウトウ」(同郷の人々)
儻 トウ・すぐれる  イ部
解字 「イ(ひと)+黨(トウ)」の形声。すぐれている人を儻トウという。[説文解字]は「倜儻テキトウ(才能才気にすぐれる)也(なり)。人に従い黨トウの聲(声)」とする。

 トウ・ドウ  木部
解字 「木(き)+尚(トウ)」の形声。トウという名の木。バラ科ナシ属の落葉高木に当てる。
意味 (1)やまなし。からなし。こりんご。バラ科ナシ属の落葉高木。「甘棠カントウ」(ヤマナシあるいは小リンゴの類の木)「甘棠の愛」(周王朝の名臣・召伯が領地を巡察する際に、甘棠の木の下に座って住民の訴えや訴訟事を裁いた故事から、人民の善政に対する思慕が深いこと)「棠蔭トウイン」(①ヤマナシの木陰。②召伯の故事から、裁定すること) (2)「海棠カイドウ」とは、バラ科リンゴ属の落葉低木。薄紅色のきれいな花をつける。
<紫色は常用漢字>

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音符「熒ケイ」<かがり火がもえる>と「営エイ」「栄エイ」「蛍ケイ」「労ロウ」

2022年07月20日 | 漢字の音符
 塋エイ、犖ラクを追加しました。
 ケイ・エイ  火部

解字 金文は、たいまつを交差させた形で、庭燎テイリョウ(かがり火)の象形。火のあかりを意味する。この字は篆文以降、「𤇾(火+火+冖)」に変化して上部につく冠になり、「かがり火がもえる」「ひかる」イメージで音符となったため、新たに「火」をつけた熒が篆文から誕生した。
意味 (1)ともしびの光。ひかる。「熒熒ケイケイ」(ひかりかがやく)(2)あきらか。(3)「熒惑ケイコク」とは火星をいう。光度の変化や逆行が激しいことから、大接近は災いの前兆と考えられた。

イメージ 
 「かがり火がもえる」
(熒・営・塋・労・撈・犖・癆)
  かがり火が「光る」(蛍・瑩)
  かがり火がもえて「ひかりかがやく」(栄・鶯)
音の変化  ケイ:熒・蛍  エイ:栄・営・塋・瑩  オウ:鶯  ラク:犖  ロウ:労・撈・癆

かがり火がもえる
 エイ・いとなむ  ツ部
解字 旧字は營で「呂(屋根が連なる)+熒の略体(かがり火が燃える)」の会意形声。周囲にかがり火をめぐらせ内に屋根がつらなる軍の陣屋をいう。また、軍の陣営がするさまざまな行為をいう。のち、軍のみでなく、仕事をする・務める意となった。新字体は、營⇒営に変化。
意味 (1)とりで。陣屋。「陣営ジンエイ」「兵営ヘイエイ」(2)いとなむ(営む)。つくる。こしらえる。「運営ウンエイ」「造営ゾウエイ」(3)いとなみ(営み)。はかる。「営利エイリ」「営業エイギョウ
 エイ・はか  土部
解字 「土(つち)+熒の略体(かがり火がもえる・ともしび)」の会意形声。 身分の高い王族の墓は土を盛り上げた墳丘墓とすることが多く、埋葬する所に至る墓道がつくられた。 隧道スイドウは現在ではトンネルの意だが、もとは、阝 (おか・陵墓)の中心に通じる斜めに掘り下げた墓道をいった。墓道は暗いのでかがり火の灯を用いたので「はか」の意味となる。
意味 (1)はか(塋)。「塋域エイイキ」(墓地)「塋壟エイロウ」(墓地)「冢塋チョウエイ」(冢は、つかの意)「墳塋フンエイ」(墳墓)「塋記エイキ」(墓誌)
 ロウ・ねぎらう  力部  
解字 この字の成り立ちについては字形の変遷が複雑で不明な点が多い。現在も系統だった解字はなされていない。そこで現在の字形から私見として解字してみたい。旧字は勞で「力(ちから)+熒の略体(かがり火がもえる)」の会意。かがり火が燃える夜間に力を出して仕事をすること。ほねのおれるつらい仕事をいう。その結果、つかれる意味ともなる。新字体は、勞⇒労に変化。
意味 (1)ほねおる。ほねおり。汗を流して働く。「労働ロウドウ」「労役ロウエキ」「労作ロウサク」 (2)つかれる。体や心の疲れ。「疲労ヒロウ」 (3)なやむ。「苦労クロウ」 (4)ねぎらう(労う)。ほねおりを慰める。労を感謝する。「慰労イロウ
 ロウ  扌部
解字 「扌(手)+勞(ほねおれる)」の会意形声。手をつかってほねおれる労働をすること。とくに魚をとる長い網をすくいあげることをいう。
意味 とる。すくいとる。「漁撈ギョロウ」(魚をすくいとる=漁労)
 ラク・まだらうし  牛部
解字 「牛(うし)+勞の略体ロウ⇒ラク(ほねおる。汗をながして働く)」の会意形声。労役にはげむ牛の意。[説文解字]は「駁(まだら)牛なり」といい、まだら牛をいう。
意味 (1)まだらうし(犖)。毛の色がまだらの牛。 (2)すぐれる。まさる。「犖然ラクゼン」(すぐれるさま)「卓犖タクラク」(卓も犖も、すぐれる意) (3)「犖犖ラクラク」とは、明らかなさま。すぐれるさま。
 ロウ  疒部
解字 「疒(やまい)+勞(ほねおれる)」の会意形声。過労によりやせ衰える病気。
意味 (1)やせおとろえる。「癆怯ロウキョウ」(やせおとろえる)(2)結核の俗称。「癆咳ロウガイ」(肺結核の古称)「肺癆ハイロウ」(肺結核)

ひかる
 ケイ・ほたる  虫部
解字 旧字は螢で「虫(むし)+熒の略体(光る)」の会意形声。お尻が光る虫でホタルの意。新字体は、螢⇒蛍に変化。
意味 ほたる(蛍)。「蛍光ケイコウ」「蛍雪ケイセツ」(蛍の光と雪明かりで書を読む)「蛍石ほたるいし」(光が当たると蛍のように光る石)
 エイ・ヨウ・あきらか  玉部
解字 「玉(たま)+熒の略体(光る)」の会意形声。玉の光を言う。転じて、玉の美しいいろ・つや。および、光を通す玉から、あきらかの意となる。
意味 (1)玉の美しい色。つや。「瑩浄エイジョウ」(つやがあって清らか)「瑩沢エイタク」(つややか。瑩も沢も、つやの意) (2)あきらか(瑩らか)。「瑩明エイメイ」(あきらか)「瑩徹エイテツ」(すきとおって明らか)「晶瑩玲瓏ショウエイレイロウ」(透き通っていて、宝石のように美しいこと) (3)(つやが出るよう)みがく。「瑩磨エイマ

ひかりかがやく
 エイ・さかえる・はえ・はえる  木部
解字 旧字は榮で「木(き)+熒の略体(ひかりかがやく)」の会意形声。ひかりかがやくような木で、花が咲き誇る見事な木をいう。転じて、勢いが盛んな・さかえる意となる。新字体は、榮 ⇒ 栄に変化。
意味 (1)さかえる(栄える)。はえる(栄える)。「繁栄ハンエイ」「栄耀エイヨウ」(栄えかがやくこと) (2)はえ(栄え)。ほまれ。「栄冠エイカン」「栄誉エイヨ」 (3)花がさく。草木がさかんに茂る。「栄華エイガ」(時めきさかえる。華が咲き誇る)「栄枯エイコ」(草木の茂ることと枯れること」「栄華秀英エイカシュウエイ」(草木の花の総称)
 オウ・うぐいす  鳥部   
解字 「鳥(とり)+榮の略体(木いっぱいに花が咲く)」の会意形声。春に木いっぱいに花が咲くと飛んでくる鳥。春告鳥。花見鳥。なお、中国では、コウライウグイス(黄鶯)をいう。
意味 うぐいす(鶯)。山地にすみ春の初め花が咲きだすと里に来て美しい声で鳴く鳥。春告鳥。花見鳥。「鶯語オウゴ」(うぐいすの鳴き声)「鶯舌オウゼツ」(うぐいすの声)「鶯遷オウセン」(うぐいすが谷間を出て高い木に移る。昇進・転居した人を祝う言葉)「黄鶯コウオウ」(コウライウグイス。全体に黄色をしている。朝鮮半島・中国に分布。中国で鶯はコウライウグイスをさすので、緑陰に鶯の黄色が映える内容の詩が多い)
<紫色は常用漢字>

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「武ブ」<戈(ほこ)をもって進む> と「賦フ」

2022年07月17日 | 漢字の音符
    武 ブ <戈(ほこ)をもって進む>
 ブ・ム  止部         

解字 「戈(ほこ)+止(あし)」の会意。止は、止まる意でなく甲骨文字でわかるように足の形。武は、武器である戈を持って足で進むさま。戈のノの部分は、現代字では上部の一になっている。部首は進む意である止。
意味 (1)たけだけしい。いさましい。「武勇ブユウ」 (2)いくさ。兵器。「武術ブジュツ」「武器ブキ」 (3)もののふ。軍人。「武者ムシャ」「武官ブカン

イメージ 
 「武器を持って進む」(武・賦・斌・贇) 
 「形声字」(鵡・錻)
音の変化  ブ:武・錻  フ:賦  ム:鵡  ヒン:斌  イン:贇

武器を持って進む
 フ  貝部
解字 「貝(財貨)+武(武器を持って進む)」の会意形声。武器を持って進み財貨をむりにとりたてること。
意味 (1)とりたてる。みつぎ。ねんぐ。「賦課フカ」(割り当てて負担させる)「月賦ゲップ」(月ごとに払う) (2)人民を徴発して使役する。「賦役フエキ」 (3)上から与える。さずける。「天賦テンプ」(生まれつき。天性)「賦与フヨ」(配り与えられた) (4)わりあてる。各句に韻を割り当てて作る詩文。「賦詠フエイ」(詩歌をつくり詠むこと)「賦詩フシ」(詩をつくる)
 ヒン  文部
解字 「文(ぶん)+武(ぶ)」 の会意。文と武が兼ねそろうさま。また、外面の美しさと内面の実質がともに備わるさま。[漢字源]
意味 (1)うつくしい。外面の美しさと内面の実質がともに備わるさま。=彬ヒン。「斌斌ヒンピン」(文質そなわるさま)「文質斌斌ブンシツヒンピン」「斌蔚ヒンウツ」(文彩のさかんなさま。文雅なようす) (2)姓の一つ。
 イン  貝部
解字 「貝(財貨)+斌(うつくしい)」の会意形声。斌ヒンは、外面の美しさと内面の実質がともに備わり、うつくしいさま。そこに貝(財貨)をつけて、斌(うつくしい)の意味をさらに強調した字。発音はヒン⇒インに変化。
意味 (1)均整がとれて美しい。容貌がうつくしい。立派である。主に人名に用いられる。「宇文贇ウブン・イン」(北周の第4代皇帝・宣帝の名) (2)[日本]名乗り[よし]。「宗贇むねよし」「耿贇あきよし

形声字
 ム・ブ  鳥部
解字 「鳥(とり)+武(ム)」の形声。ムという名の鳥。鸚鵡オウムに使われる字。
意味 鸚鵡オウムはオウム科の鳥。人の言葉や他の動物の鳴き声をよくまねる鳥として知られる。 ※「鸚オウ」は、音符「嬰エイ を参照のこと。
<国字> ブ  金部
解字 「金(金属)+武(ブ)」の形声。ブがつく金属であるブリキにあてた国字。
意味 ブリキ(錻力)。オランダ語 blik のあて字。錫(すず)をメッキした薄い鉄板。
<紫色は常用漢字>

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音符「矢シ」<や> と 「疾シツ」「嫉シツ」「雉チ」

2022年07月15日 | 漢字の音符
 嫉シツの解字を改めました。
 シ・や  矢部          

解字 甲骨文字は矢の象形で、上部は矢じり(矢の先端のとがった部分)、下部は矢羽を表している。金文は矢羽の上部に肥点がついた形。篆文はかなり変形し、現代字はさらに変化した矢になった。この字形は甲骨文字のおもかげを留めていないが、しいて言えば、上部の𠂉が矢じり、下部の𠆢が矢羽になる。矢は誓いをするときに用いるので、ちかう意もある。
意味 (1)や(矢)。「矢立やたて」「矢面やおもて」「矢鏃やじり」 (2)ちかう。「矢言シゲン
参考 矢は部首「矢や」となる。漢字の左辺について矢の意味を表す。
常用漢字 4字
 シ・や(部首) 
 チ・しる(「矢+口」の会意)
 タン・みじかい(矢+音符「豆トウ」)
 キョウ・ためる(矢+音符「喬キョウ」)
常用漢字以外
 ク・さしがね(「矢+音符「巨キョ」)
 ワイ・ひくい(女+音符「委イ」)など

イメージ 
 「矢」
(矢・疾・嫉・雉)  
 「形声字」(薙)
音の変化  シ:矢  シツ:疾・嫉  チ:雉  テイ:薙


 シツ・やまい・はやい  疒部          

解字 甲骨文字と金文は、大の形の人の脇に矢が刺さっている形で、矢の攻撃で傷を負う意。篆文は、「疒(やまい)+矢(や)」の会意形声となり、矢傷のほか、矢のように速く進む急性や流行性の病気の意。また、矢の意から、はやい意味もある。矢傷を受けて相手をにくむ意ともなる。
意味 (1)やまい(疾)。やましい(疾しい)。急性・流行性の病。「疾病シッペイ」(疾も病も、やまいの意)「疾疫シツエキ」(はやりやまい) (2)はやい(疾い)。「疾走シッソウ」「疾雨シツウ」(激しくふる雨)「疾風シップウ」 (3)にくむ。「疾視シッシ」(にくしみの目で見る)
 シツ・ねたむ・そねむ  女部
解字 篆文の[説文解字]は、正字が「イ(人)+疾(意味(3)の、にくむ)」のシツで、人が相手をにくむ意。また、ねたむ・そねむ意ともなる。「女(おんな)+疾(にくむ)」の嫉シツは別の同字(或体)として収録されていたが、後にこの字が一般的に用いられるようになった。人々は、「ねたむ・そねむ意は女偏のほうが合う」と思ったのであろう。
意味 ねたむ(嫉む)。そねむ(嫉む)。にくむ。「嫉妬シット」(うらやみねたむ)「嫉視シッシ」(ねたましく思って見る)
 チ・ジ・きじ  隹部   

解字 「隹(とり)+矢(や)」の会意形声。甲骨文の第1字はキジを下から矢で射る形。第2字は矢に糸をつけた「いぐるみ」という矢とキジを描き、キジを矢の糸にからませて獲る形。いずれも矢を用いて捕るキジを表す。金文以後は、矢と隹を並列に描く。
意味 きじ(雉)。キジ科の鳥。山地から平地にかけての山林・農地などに棲む留鳥。歩くことが多く、飛んでも距離は短い。「雉子きじ」「雉兎チト」(きじとうさぎ。また、それらを捕える猟師)

形声字
 テイ・チ・なぐ  艸部
解字 「艸(くさ)+雉(テイ)」の形声。テイは剃テイ(そる)に通じ、草をそるように刈ること。
意味 (1)なぐ(薙ぐ)。なぎる。草を刈る。刃物などで横に切り払う。「薙刀なぎなた」(反った長い刃をつけた長柄の武器)「草薙くさなぎの剣つるぎ」(日本武尊が東征の折、草を薙ぎ払った剣。三種の神器の一つ) (2)そる。髪の毛をそり落とす。「薙髪テイハツ・チハツ=剃髪」
<紫色は常用漢字>

<参考音符>
知チと智チ

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漢字の由来 参考文献を教えて下さい (くみ)

2022年07月12日 | 漢字の音符
 「漢字の由来についてとてもわかり易かったので、どの参考文献を使っているか教えていただきたいです。宜しくおねがいします。」(2018年5月17日の「特殊化した部首」へのコメント。2022.7.4投稿)

 コメントありがとうございます。漢字の由来といいますと「字源」になると思います。私が読んだ本のなかで、分かりやすかったのは以下の本です。
加藤道理『字源物語 漢字が語る人間の文化』(明治書院 平成11年)
加藤道理『続 字源物語』(明治書院 平成13年)
 甲骨文字や金文および篆文テンブンの基本的な文字の字形を示したうえで分かりやすく解説しており、漢字の由来を知るうえで参考となる本です。お近くの図書館にもあると思いますので、一度ご覧ください。

 次にご参考までに私の字源研究方法と参考文献をお知らせします。
私の字源研究方法
 漢字は大きく分けると、(1)基本となる核文字(音符ともいいます)と、(2)そこに部首がついた複合文字から成り立っていると考えます。核となる文字は、6,500字収録の山本康喬編『漢字音符字典』で、900字前後とされています。私のやり方は、(1)の核文字(音符)を古代文字まで遡って成り立ちを探り、基本的意味を把握したうえで、『漢字音符字典』で音符がどんな形で部首と結びついて複合文字が成立しているか確認します。そして特定の音符と部首の結合によって何故この文字が成立したかを探るものです。

具体的には以下の段階を踏んでゆきます。
(1)漢字の古い字形の変遷をたどる。
 漢字の由来を解き明かすには、元の漢字(特に音符)がどんな形をしていたかを知る必要があります。というのも現在の漢字である楷書体は、発生当初の漢字と異なった形をしているものが多いからです。
 私が漢字の古い形に興味を持つようになった十数年前は、城南山人編『古代文字辞典 甲骨・金文編』(マール社 2002年刊)を用いて調べていました。この本は春秋戦国時代の小篆も一緒に付いていたので便利でした。

 しかし、最近はネット上に充実した内容のサイトがあり、これらを使うと短時間で簡単に調べられるようになりました。主なサイトは以下の二つです。
①「漢典」  https:// www.zdic.net
 中国語(簡体字)のサイトです。検索窓に調べる漢字1字を入れて検索し、出た画面で「字源字形」の項目をクリックすると、古文字の変遷が一覧できます。
 検索窓への漢字入力は日本語入力で可能です。説明は簡体字ですが、字形だけを知るのであれば十分利用できます。

②「漢字古今字資料庫」  https:// xiaoxue.iis.sinica.edu.tw/ccdb
 繁体字のサイト(台湾)です。検索窓の字形欄に調べる漢字1字をいれて検索し、出た画面でさらに「字形演変」をクリックすると、古文字の変遷が一覧できます。漢字入力は日本語入力で可能です。説明は繁体字です。

③以上二つのサイトでは漢代以降の隷書レイショと楷書の変遷が十分に網羅されていませんので『新書道字典』(二玄社)で補っています。書道字典はたくさんありますが、字形変遷だけでしたら、大部の字典は必要ありません。なお『角川書道字典』は、非常に充実していますが、収録文字が白黒逆になっています。つまり、拓本そのままの字体です。この字体が好みの方はいいと思いますが、出典の文字も白黒逆ですので読みにくいところもあります。

(2)古い字形を解釈する。
 ここからが大問題です。古い字形は専門家の解釈を参考にしないと解けません。日本で字形の由来を研究した白川静氏(1910~2006)は『字統』(平凡社)で、中国最古の字源字典である『説文解字』を引用しつつ、甲骨文や金文研究の成果を加え、多くの文字に独自の見解を付け加えました。『常用字解』(平凡社)はその常用漢字版です。また、藤堂明保氏(1915~1985)は『学研 漢和大字典』で漢字の上古音(東周~秦漢代)を復元し、発音の類似から字源を分析し、大きな成果をあげました。『漢字源』(学研プラス)は、その後継書です。
 しかし、白川静氏の説は由来を呪術的側面に結び付けすぎる傾向があること、藤堂明保氏の説は発音を重視しすぎて個々の字形についての考察が弱いこと、などが指摘されています。

 私も白川・藤堂両氏の著作から多くを学びましたが、2011年に刊行された落合淳思氏の『甲骨文字小字典』(筑摩書房)を読んで、甲骨文字を字源とする解釈が、現代字まで通じるものが非常に多いことに感銘をうけました。その後、2016年に落合氏は甲骨文字のほとんどを収録した『甲骨文字辞典』(朋友書店)を刊行しましたので、以後はこちらを使用しています。
 また、落合氏は今年(2022年3月)小学校六年生までのすべての教育漢字1026字を字形史として表示した『漢字字形史字典 教育漢字対応版』(東方書店)を出版しました。この本も参考文献として利用しています。

 そのほか『角川 新字源』(角川書店)は、2017年に改訂新版を発行し、さらに充実した内容となりました。字源の説明は簡潔にして要領を得ています。しかし深い説明はしていません。字源だけでなく複合文字が会意文字か形声文字を判断するときの参考にも大いに役立てています。

 中国の本では、谷衍奎著『漢字源流字典』(華夏出版社 2003年)が、各文字ごとに古文字の変遷を掲載し、簡潔で適切な字源解説をしており参考になります。ただし、簡体字ですので、その読解力が必要となります。

  以上、私の個人的な方法を述べさせていただきました。参考になれば幸いです。
ご質問のある方や、このほかの参考文献を使っておられる方は、コメント欄に投稿ください。








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音符 「侖リン」 <きちんと整った> 「倫リン」 「輪リン」 「論ロン」

2022年07月09日 | 漢字の音符
 リン・ロン  人部

解字 「亼シュウ(あつまる)+冊サツ(木簡・竹簡)」の会意。紐で結んだ木簡や竹簡(冊)をまるく巻き合わせた形。ひとつのまとまった内容のある巻物を表し、順序次第のある一連のものをいう。順序だてて一連をなし、きちんとそろったさまを表す。
意味 (1)順序だてる。すじ道をたてる。 (2)まるい。まとまる。 (3)おもう。

イメージ 
 「きちんと整った」
(侖・倫・論・綸・崙)
  巻いた形から「まるく整った」(輪・淪)
音の変化  リン:侖・倫・綸・輪・淪  ロン:崙・論

きちんと整った
 リン・みち  イ部
解字 「イ(人)+侖(きちんと整った)」の会意形声。人と人とのきちんと整った関係。
意味 (1)みち(倫)。人のふみ守るべき道。「人倫ジンリン」(人と人との秩序関係。人としての道)「倫理リンリ」(道徳の規範となる原理) (2)なかま。ともがら。たぐい。「倫類リンルイ」 (3)順序。等級。しな。「倫次リンジ」(長幼の順序)
 ロン  言部
解字 「言(ことば)+侖(きちんと整った)」の会意形声。すじ道を整理して言うこと。
意味 (1)あげつらう(論う)。物事の道理を説く。ろんずる。言い合う。「論争ロンソウ」「討論トウロン」「議論ギロン」 (2)すじ道をたてた話や文章。「論文ロンブン」「理論リロン
 リン・いと  糸部
解字 「糸(いと)+侖(きちんと整った)」の会意形声。精錬した生糸を何本もきちんとより合わせた太い絹糸をいう。また「王言は糸の如し、其の出ずるや綸の如し」[礼記ライキ 緇衣シイ]とあり、天子の言葉・治める意となる。
意味 (1)いと(綸)。釣り糸。絃楽器の糸。 (2)つかさどる。おさめる(治)。「経綸ケイリン」(国家を治め整える) (3)天子の言葉。「綸言リンゲン」「綸旨リンジ」(天皇が出した文書) (4)[国]絹織物の一種。「綸子リンズ」(精錬した生糸で模様を織りだした絹織物)
 ロン  山部
解字 「山(やま)+侖(整う)」の会意形声。整った山容をした山。
意味 「崑崙コンロン」(中国西方の山系)に使われる字。崑は山が群がってつづく意、崙は整った山容をした山。崑崙は、山々がつらなり山容が整っている山。中国の西にある聖地の山で、天上と地上をつなぐ中継地と考えられた。「崑崙山脈」(チベットとウイグル自治区の境を東西に走る山脈)

まるく整った
 リン・わ  車部
解字 「車(くるま)+侖(まるく整う)」の会意形声。中心の軸から整然と出た輻フク(スポーク)によってきちんと整った円いかたちをしている車のわ。
意味 (1)わ(輪)。車のわ。また、車。「車輪シャリン」 (2)わのようなまるいもの。「年輪ネンリン」 (3)物の外まわり。「外輪ガイリン」「輪郭リンカク」 (4)まわる。「輪番リンバン
 リン・しずむ  氵部
解字 「氵(みず)+侖(まるく整う=輪。わ)」の会意形声。水上に一点から輪のようにひろがるさざ波の意。物が水に沈むとき水上に波紋がひろがることから、しずむ意となる。
意味 (1)さざ波。小さい波。「淪漪リンイ」(淪も漪も、さざなみの意) (2)しずむ(淪む)。おちぶれる。「淪没リンボツ」(水中に落ちてしずむ。おちぶれる)「淪滅リンメツ」(しずんで滅びる)「淪喪リンソウ」(滅亡)
<紫色は常用漢字>
コメント (2)
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音符「水スイ」<流れる水> と 「尿ニョウ」「氷ヒョウ」

2022年07月03日 | 漢字の音符
  水スイは音符にならず、主に部首「水みず」と「氵(さんずい)」となって活躍します。ここでは、水の会意字と水の部首をあわせて紹介します。
 スイ・みず  水部

解字 水の流れる形の象形で、みずの意を表わす。水は部首となり、偏になるときは「さんずい」の形をとる。また、「みず」の意で会意文字となる。
意味 (1)みず(水)。「流水リュウスイ」 (2)五行のひとつ。「水曜スイヨウ」「水星スイセイ」 (3)[国]みず(水)。邪魔。さそい。「水をさす」「水をむける」
参考 水は部首「水みず」になる。水や液体の意味を表す。しかし、ほとんどが氵のかたちになるので、水の部首は非常に少ない。
常用漢字
 スイ・みず(部首)  6字
 エイ・ながい(水を含む会意)
 ヒョウ・こおり(水を含む会意)
 セン・いずみ(水を含む会意)
 タイ・やすらか(水を含む会意)
 キュウ・もとめる(下部が水に似た形)
 水部の5字は、字形に水が含まれているため便宜的に水部に属している。これらの字形から水を分離することはできない(泉は岩の間から流れる水の象形が結果的に「白+水」になったので分離できない)。なお、永エイ・泉セン・求キュウは音符となる。
常用漢字以外
 漿ショウ(水+音符「將ショウ」)
 ※この字は水と音符に分解できる。数少ない本来の水の部首に含まれる字である。
 
イメージ  
 「みず」
(水・尿・衍) 
 「その他」(氷)
音の変化 スイ:水  ニョウ:尿  ヒョウ:氷  エン:衍  

みず 
尿 ニョウ  尸部
    
解字 篆文は 「尾(動物の尾)+水」 の会意。動物の尾から出る水の意で、小便のこと。現代字は、尾⇒尸になった。部首は尸部。
意味 ゆばり。いばり。小便。「排尿ハイニョウ」「泌尿ヒニョウ」(尿を分泌すること)
 エン・はびこる  行部
解字 「行(ゆく)+氵(水)」の会意。行コウは十字路の形で、ここでは街路の意。衍は街路に水が溢れることをいう。あふれる・はびこる・ひろがる意となる。
意味 (1)はびこる(衍る)。あふれる。「蔓衍マンエン」(はびこる=蔓延) (2)ひろげる。ひろがる。「敷衍フエン」(のべひろげる。意義を広くおしひろげて説明する) (3)余分な。余り。「衍字エンジ」(誤って入った不要な字)「衍文エンブン」(誤って書きいれられた文)

その他
 ヒョウ・こおり  水部
    
解字 金文・篆文は 「水+冫(こおる)」 の会意形声。凍った水の意。現在の字体は、冫を一点に略して水の左上に付けた。冰は氷の異体字。成り立ちから冫ヒョウは音符で、部首は水となる。氷は本来、音符「冫ヒョウ」に分類される字であるが、字体が水を含むので重出した。
意味 (1)こおり。こおる(氷る)。「氷河ヒョウガ」「結氷ケッヒョウ」 (2)こおりのように。「氷解ヒョウカイ」 

水は偏ヘン(漢字の左辺)になるときは「氵(さんずい)」の形をとり、部首となる。 氵(さんずい)は特殊化された部首のため、音符をあぶりだしてくれます。氵(さんずい)の右辺は音符です。
部首「氵(さんずい)」
常用漢字  112字
 イン・みだら(氵+音符「㸒イン」)
 エイ・およぐ(氵+音符「永エイ」)
 エキ(氵+音符「夜エキ」)
 沿エン・そう(氵+音符「㕣エン」)
 エン(氵+音符「寅イン」)
 オ・よごす(氵+音符「于ウの変形」)
 温[溫]オン・あたたかい(氵+音符「𥁕オン)
 カ・かわ(氵+音符「可カ)
 カ・うず(氵+音符「咼カ」)
 カイ・うみ(氵+音符「毎マイ」)
 カイ・つぶれる(氵+音符「貴キ」)
 ガイ・はて(氵+音符「厓ガイ」)
 カツ・いきる(氵+音符「舌カツ」)
 渇[渴]カツ・かわく(氵+音符「曷カツ」)
 カツ・すべる(氵+音符「骨コツ」)
 カン・あせ(氵+音符「干カン」)
 カン(氵+音符「𦰩カン」)
 キ(氵+音符「气キ」)
 ギョ・リョウ・あさる(氵+音符「魚ギョ」)
 キョウ(氵+音符「兄ケイ」)
 キュウ・なく(氵+音符「立リツ」)
 渓[溪]ケイ(氵+音符「奚ケイ」)
 ゲキ・はげしい(氵+音符「敫ゲキ」)
 ケツ・きめる(氵+音符「夬ケツ」)
 ケツ・いさぎよい(氵+音符「絜ケツ)
 ゲン・へる(氵+音符「咸カン」)
 ゲン・みなもと(氵+音符「原ゲン」)
 コ・みずうみ(氵+音符「胡コ」)
 コウ・みなと(氵+音符「巷コウ」)
 コウ・え(氵+音符「工コウ」)
 コウ・みぞ(氵+音符「冓コウ」)
 コウ(氵+音符「共キョウ」)
 コン・まじる(氵+音符「昆コン」)
 サ・すな(氵+音符「少ショウ」)
 サイ・すむ(氵+音符「斉サイ」)
 シ・つける(氵+音符「責セキ」)
 ジ・チ・おさめる(氵+音符「台ジ・チ」)
 ジ・しげる(氵+音符「茲ジ」)
 シツ・うるし(氵+音符「桼シツ」)
 湿[濕]シツ・しめる(氵+音符「㬎シツ」 )
 ジュウ・しる(氵+音符「十ジュウ」)
 渋[澁]ジュウ・しぶい(氵+音符「歮ジュウ」)
 シュク・よい(氵+音符「叔シュク」)
 ジュン(氵+音符「隼ジュン」)
 ジュン・うるおう(氵+音符「閏ジュン」)
 ショウ・ぬま(氵+音符「召ショウ」)
 ショウ・わたる(氵+音符「歩ホ」)
 ショウ・きえる(氵+音符「肖ショウ」)
 ジョウ・きよい(氵+音符「争ソウ」)
 シン・つ(氵+音符「聿シン」)
 シン・ふかい(氵+音符「罙シン」)
 シン・ひたす(氵+音符「侵の略」)
 セイ・きよい(氵+音符「青セイ」)
 セキ・かた(氵+音符「舄セキ」)
 浅[淺]セン・あさい(氵+音符「戔セン」)
 セン・あらう(氵+音符「先セン」)
 潜[潛]セン・ひそむ(氵+音符「朁セン」)
 ゼン・ようやく(氵+音符「斬ザン」)
 ソク・はかる(氵+音符「則ソク」)
 タ・よなげる(氵+音符「太タイ」)
 タイ・とどこおる(氵+音符「帯タイ」)
 タク・すすぐ(氵+音符「翟テキ」)
 沢[澤]タク・さわ(氵+音符「睪タク」)
 ダク・にごる(氵+音符「蜀ショク」)
 タン・あわい(氵+音符「炎エン」)
 チ・いけ(氵+音符「也ヤ」)
 チュウ・おき(氵+音符「中チュウ」)
 チュウ・そそぐ(氵+音符「主シュ」)
 チョウ・しお(氵+音符「朝チョウ)
 チョウ・すむ(氵+音符「登ト」)
 チン・しずむ(氵+音符「冘チン」)
 デイ・どろ(氵+音符「尼二」)
 テキ・しずく(氵+音符「啇テキ」)
 デキ・おぼれる(氵+音符「弱ジャク」)
 テン・そえる(氵+音符「忝テン」)
 ドウ・ほら(氵+音符「同ドウ」)
 ト・わたる(氵+音符「度ド」)
 トウ・ゆ(氵+音符「昜ヨウ)
 ノウ・こい(氵+音符「農ノウ」)
 ハ・なみ(氵+音符「皮ハ」)
 ハ・わかれる(氵+音符「𠂢ハ」)
 ハク・とまる(氵+音符「白ハク」)
 バク(氵+音符「莫バク」)
 ハン(氵+音符「㔾ハン」)
 ハン(氵+音符「凡ハン」)
 ヒ(氵+音符「必ヒツ」)
 ヒョウ・ただよう(氵+音符「票ヒョウ)
 浜[濱]ヒン・はま(氵+音符「賓ヒン」)
 フ・うく(氵+音符「孚フ」)
 フツ・わく(氵+音符「弗フツ」)
 ホ・うら(氵+音符「甫ホ」)
 ホウ・のり(氵+音符「去キョ」)
 ホウ・あわ(氵+音符「包ホウ」)
 没[沒]ボツ(氵+音符[沒ボツの略体・殳])
 満[滿]マン・みちる(氵+音符「㒼マン」)
 マン(氵+音符「曼マン」)
 メツ・ほろびる(氵+音符「烕メツ」)
 ユ・あぶら(氵+音符「由ユウ」)
 ユウ・わく(氵+音符「勇ユウ」)
 ヨウ(氵+音符「羊ヨウ」)
 ヨウ・とける(氵+音符「容ヨウ」)
 ヨク・そそぐ(氵+音符「夭ヨウ」)
 ヨク・あびる(氵+音符「谷コク」)
 ライ・せ(氵+音符「頼ライ」)
 ラン・みだりに(氵+音符「監カン」)
 リュウ・ながれる(氵+音符「㐬リュウ」)
 リョウ・すずしい(氵+音符「京キョウ」)
 ルイ・なみだ(氵+音符「戻レイ」)
 ロウ・なみ(氵+音符「良リョウ」)
 ロウ・たき(氵+音符「竜リュウ」)
 ロウ・もれる(氵+音符「屚ロウ」)
 湾[灣]ワン(氵+音符「彎ワン」) 以上

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音符「族ゾク」 と 「鏃ゾク」「蔟ゾク」「簇ソウ」「嗾ソウ」

2022年07月01日 | 漢字の音符
 嗾ソウを追加しました。
 ゾク・やから  方部

解字 「旗の略体(はた)+矢(や)」の会意。甲骨文の第1字は矢を二本描き、旗の下にたくさん矢をならべた形。旗は軍旗であり矢を携える軍隊を意味する[甲骨文字辞典]。甲骨第二字の矢1本の形が受け継がれ現代の族となっている。金文でも軍隊の意味で用いられた[簡明金文詞典]。
 澁谷由里著『<軍>の中国史』によると「周代においては、武器をみずから持参して兵役につくのが原則であり、貴族のみの義務であった。従軍が特権階級の尊敬されるべき任務であり権利ですらあったという現象は「くに」の規模が小さい古代においては、おそらく普遍的に見られるもの」としており、古代の軍隊とは社会的な特権を持っている血族(親族)からなる武装集団であった。春秋戦国期には「復我邦族」(我われ邦族ホウゾク[故郷の親族]に復[かえ]らん)[小雅・黄鳥]のように血族の意味の用例があらわれ、同じ血族の人々、身内の意味が主流になった。族は「同じようなものが多くあつまる」イメージがある。
意味 (1)やから(族)。みうち。血つづき。「家族カゾク」「親族シンゾク」 (2)家柄。血統上の身分。「王族オウゾク」「豪族ゴウゾク」「貴族キゾク」 (3)なかま。同類。「民族ミンゾク」「語族ゴゾク」「カミナリ族」 (4)矢じり。(=鏃)

イメージ  
 「あつまる」(族・蔟・簇・嗾)   
 旗のもとに「あつまった矢」(鏃)
音の変化  ゾク:族・蔟・鏃  ソウ:簇・嗾

あつまる
 ゾク・ソウ・まぶし  艸部
解字 「艸(くさ)+族(あつまる)」の会意形声。蚕が繭まゆをつくるとき、群がり集まる草製の巣。ワラなどで人が作る。また、草が群がり生えること。
 まぶし(さいたま市立博物館展示)
意味 (1)まぶし(蔟)。蚕が群がってまゆを作る藁などで作った巣。「蚕蔟サンゾク」(まぶし)「上蔟ジョウゾク」(成長した蚕を蔟に移すこと) (2)あつまる。むらがる。
 ソウ・ゾク・むらがる  竹部
解字 「竹+族(あつまる)」の会意形声。竹がむらがり生えるさま。
意味 (1)むらがる(簇がる)。あつまる。「簇生ソウセイ・ゾクセイ」(むらがり生ずる)「簇簇ソウソウ」(むらがり集まるさま) (2)ささだけ。小さい竹。
 ソウ・ス  口部
解字 「口(くち)+族(あつまる)」の会意形声。大勢が集まり、口々にけしかけること。
意味 (1)そそのかす(嗾す)。せきたてる。けしかける。「使嗾シソウ」(けしかける)「指嗾シソウ」(指図してそそのかす)

あつまった矢
 ゾク・ソク・やじり  金部
解字 「金(金属)+族(あつまった矢)」の会意形声。あつまった矢のうち、金属でできている先端部分の「やじり」をいう。やじりは古く石製や骨製だったため、金がついた鏃は篆文からできた字。
意味 やじり(鏃)。矢の先のとがった部分。矢の根。「石鏃セキゾク」(石のやじり)「鉄鏃テツゾク」(鉄製の鏃)
<紫色は常用漢字>

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※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




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