漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「示ジ」<神の心が示される> と 「視シ」「祁キ」

2014年02月24日 | 漢字の音符
 ジ・シ・しめす  示部          

解字 甲骨文はT字形の祭卓の上に供え物をのせた形の象形。神を祭るとき、その上に供え物をのせた祭卓の形で、神霊がそこに降下し、そこに神の心がしめされるので、しめす意となる。篆文以降、下部にハがついた示になった。示は部首となり、偏になるとき新字体でネの形で用いられる。
意味 しめす(示す)。さししめす。おしえる。「示威ジイ」(威力を示す)「示現ジゲン」(示し表わす。この世に現れる)「示唆シサ」(それとなく示す)「示談ジダン」(話し合って解決する)

イメージ  
 「しめす・しめされる」
(示・視・祁)
音の変化  ジ:示  シ:視  キ:祁

しめす・しめされる
 シ・みる  見部
解字 旧字は視で「見(みる)+示(しめされる)」の会意形声。示される方に目をむけて見ること。新字体は示⇒ネに変化。
意味 (1)みる(視る)。じっと見る。「視線シセン」「凝視ギョウシ」「視力シリョク」 (2)みなす。~とみる。「軽視ケイシ」「敵視テキシ」「重大視ジュウダイシ
※見は、目に見える・見ること。視は、気をつけてよく見ること。
 キ  阝部おおざと
解字 「阝(さと)+示(神の心がしめされる)」の形声。神の心がしめされる里の意で、地名に使われる字。また、神の心があらわれることから、さかん・おおいにの意でも使われる。
意味 (1)さかん。おおいに。「祁祁キキ」(さかんに)「祁寒キカン」(たいへん寒い) (2)地名。「祁山キザン」(中国・甘粛省にある山。諸葛孔明が魏と戦った古戦場)
<紫色は常用漢字>

参考 示は部首「示しめす・しめすへん」になる。漢字の左辺(偏)や下部に付いて、神に関する意を表す。
「示しめす」
 示ジ・しめす(部首) 4字
 禁キン・(示+音符「林リン」)
 祭サイ(示を含む会意)
 票ヒョウ(示を含む会意)
  なお、禁キン・祭サイ・票ヒョウ、はさらに音符となる。

示偏は新字体で「ネしめすへん」となる
常用漢字 11字
 祈キ・いのる(ネ+音符「斤キン」)
 祉シ・さいわい(ネ+音符「止シ」)
 祖ソ・おや(ネ+音符「且ソ」)
 神シン・かみ(ネ+音符「申シン」)
 祥ショウ・さいわい(ネ+音符「羊ヨウ」)
 禅ゼン・ゆずる(ネ+音符「単タン」)
 禍カ・わざわい(ネ+音符「咼カ」)
 福フク・さいわい(ネ+音符「畐フク」)
 祝シュク・いわう(ネ+兄の会意)
 社シャ・やしろ(ネ+土の会意)
 礼レイ・のり(ネ+乚の会意)

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音符「亟キョク」<きわまる> と「極キョク」「殛キョク」

2014年02月13日 | 漢字の音符
 キョク・キ・すみやか・しばしば  二部

解字 篆文・現代字は、「二+人+口+又(手)」の会意。二は上下のあいだが狭い空間、そこに人を押し入れて、その前に口を、後ろから手(又)を加えて、口で罵りながら打ち懲らしめる意。金文は、打つ形の攴ボクになっている。古代の刑罰の方法であり、刑死を意味する「歹(しぬ)+亟」からなる殛キョクの原文である。亟は、死にいたるきわめて重い刑罰であることから「きわまる」意をもつが、仮借カシャ(当て字)され、すみやかの意に使われる。きわまる意は木へんを付けた極が受け持つ。
意味 (1)すみやか(亟やか)。はやい。「亟行キョクコウ」(急いで行く)「亟務キョクム」(急いでやる仕事) (2)しばしば(亟)。

イメージ 
 「仮借」
 (亟)
 「きわまる」 (極・殛)
音の変化  キョク:亟・極・殛

きわまる
 キョク・ゴク・きわめる・きわまる・きわみ  木部
解字 「木+亟(きわまる)」 の会意形声。木は、ここでは広く場所や状態を意味する。きわまった所や状態。
意味 (1)きわまる(極まる)。つきる(尽)。おわる。なくなる。「終極シュウキョク」(物事の終わり) (2)きわみ(極み)。きわめる(極める)。物事の最高・最上・最終。「極限キョクゲン」「北極ホッキョク」「極致キョクチ」「極上ゴクジョウ」 (3)きわめて。「極端キョクタン」「極刑キョクケイ」「極楽ゴクラク」 (4)根本。「太極タイキョク
 キョク・ころす  歹部
解字 「歹(しぬ)+亟(きわまる)」 の会意形声。罰がきわまり死ぬこと。
意味 ころす(殛す)。罰 して殺す。「殛死キョクシ」「殛誅キョクチュウ」(死罪にする)
<紫色は常用漢字>

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音符「开ケイ」<①首かせ ②鋳型の外枠>と「刑ケイ」「形ケイ」「型ケイ」

2014年02月12日 | 漢字の音符
 ケイ             

解字 开ケイは独立してある字ではない。ここにあげた金文・篆文の字体は、刑・型・形の字から开の部分を抜き出したものである。それによると、金文は「井」のかたち、篆文は「丼・幵」のかたちをしている。原字のかたちをよく示すのは金文である。[字統]によると、井は①首かせ、②鋳型の外枠、の2種の意味をもつという。首かせは、井の真ん中に頭をいれたのであろう。鋳型の外枠は、鋳込みをする型を固定する外側の井型の枠を示していると思われる。いずれも楷書で开に変化した。ちなみに开の字は、現代中国で「開」の簡体字として使われている。この开も簡体字を使っている。(なぜか太字になってしまい、見にくいがご了承ください)

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 「首かせ」
(刑・荊)
 「鋳型の外枠」(型・形)
音の変化  ケイ:刑・荊・型・形

首かせ
 ケイ・しおき  刂部
解字 「刂(刀)+开(首かせ)」 の会意形声。人を首かせにはめ、刀で罰すること。
意味 しおき・おきて・罰する。「処刑ショケイ」「刑場ケイジョウ」「刑罰ケイバツ
 ケイ・いばら  艸部
解字 「艸(草木)+刑(しおき)」 の会意形声。しおきに使う木のむちの意で、むち及びむちの材料となる木をさす。また、棘キョク・茨とともに、とげのある低木の総称として使われ、現在ではこの意味が主流になっている。
意味 (1)にんじんぼく。クマツヅラ科の落葉低木で、昔、罪人をたたく杖やムチの材料とした。 (2)むち。 (3)いばら(荊)。うばら。とげのある低木の総称。「荊棘ケイキョク」(荊も棘も、いばらの意)「荊冠ケイカン」(いばらの冠。受難のたとえ) (4)国および州の名。「荊州ケイシュウ」(中国古代九州の一つ)「荊楚ケイソ」(楚の国のこと)

鋳型の外枠
 ケイ・かた  土部
解字 「土+刂(刀状のもの)+开(鋳型の外枠)」 の会意形声。土で作った鋳型の外枠のこと。刂(刀)は、鋳型の内側を整形するために使う。
意味 (1)かた(型)。いがた。もとになる形。「鋳型いがた」(溶かした金属を注いで鋳物のかたちをつくるための型)「原型ゲンケイ」「型紙かたがみ」 (2)模範となるもの。てほん。「典型テンケイ」 (3)基本の動作(柔道・能楽など)「型が決まる」
 ケイ・ギョウ・かた・かたち  彡部
解字 「彡(模様)+开(=型)」 の会意形声。型で作られたものに模様や色どりをつけたもの。型は、いがた。形は、型から抜いたもの。
意味 (1)かた(形)。かたち(形)。「図形ズケイ」「人形ニンギョウ」 (2)ありさま。すがた。「形勢ケイセイ」 (3)あらわれる。あらわす。「造形ゾウケイ
<紫色は常用漢字>

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音符「毄ゲキ・ケイ」<打ち当る> と「撃ゲキ」・「繋ケイ」

2014年02月10日 | 漢字の音符
 ゲキ・ケキ・ケイ  殳部 
車軸の突き出た車     

解字 「車+口+殳」 の会意。「車+口」 は車の車軸の端のふくらみを表し、殳は、うつ意。毄は車軸の端が他の車の同じ部分と打ち当ること。車の通行が多くて混み合うところで、よく起こった。また、わざと当てて遊びとして楽しんだという。車同士が「打ち当る」、「接触する」イメージがある。車の下の「口⇒凵」になった𣪠は略字。
意味 うつ。

イメージ 
 「打ち当る」
(撃) 
 「接触する」(繋)
音の変化  ゲキ:撃  ケイ:繋

打ち当る
[擊] ゲキ・うつ  手部   

旧字は 「手(て)+毄の略字(打ち当る)」 の会意形声。手で打ち当てる、即ち手でたたいたり打つこと。また攻める意となり、のち、銃弾をうつ意ともなる。新字体は旧字の「車+凵(𣪠)」⇒車に変化した撃。
意味 (1)うつ(撃つ)。たたく。なぐる。「打撃ダケキ」「撃退ゲキタイ」(うち払う) (2)敵を攻める。「攻撃コウゲキ」「出撃シュツゲキ」 (3)弾丸をうち放つ。「射撃シャゲキ」「撃墜ゲキツイ」 (4)ふれる。目にふれる。「目撃モクゲキ

接触する
 ケイ・つなぐ・つながる・かかる  糸部
解字 本字はで 「糸(いと)+毄の略字(接触する)」 の会意形声。接触したものを糸でつないだ形。新字体に準じ「車+凵」⇒車に変化した繋が通用している。
意味 (1)つなぐ(繋ぐ)。つながる(繋がる)。「繋泊ケイハク」(船を繋いで停泊する。=係泊)「繋囚ケイシュウ」(繋がれて囚人となる) (2)かかる(繋る)。かける。つるす。
<紫色は常用漢字>

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