曽 [曾] ソ・ゾ・ソウ・ゾウ・かつて 日部
蒸し器 こしき(甑)による調理
左は簡易かまどに釜をのせ、その上にせいろ(蒸籠)を二つ重ねた蒸し器(ウィキペディアより)。右は土製のせいろの底に簀子を置いて、水をいれた甕かめの上にのせ米などを蒸す形。<高坂丘陵ねっと>より。現在は、せいろ(蒸し器)の部分を甑(こしき)というが、本来のこしきの字体は蒸し器と下の甕と含んでいる。
解字 金文は、「八(ゆげ)+田(むしき)+曰(水を入れた釜かま:古代では甕かめ)」を組み合わせた形。上に蒸し器を、下に水を入れた釜を重ねて置き、湯気のたちのぼる形で、穀物をふかす甑ソウ(こしき)の象形。甑の原字。層をなして重なる意を示す。篆文以降の字は、この字形が変形したもの。新字体は、旧字の曾⇒曽へ変化する。「かつて」「すなわち」など、かさなる意以外は仮借カシャ(当て字)の用法である。曽を音符に含む字は、「かさなる」イメージを持つ。
意味 (1)かつて(曽て)。これまで。「未曽有ミゾウ」(いまだかつてない) (2)すなわち。 (3)かさなり。血のつながりの三代前。「曽祖父ソウソフ」(ひいおじいさん)「曽孫ソウソン・ひまご」(孫のこども)
イメージ
「かさなる」(曽・層・増・憎・贈・噌)
本来の意味の「こしき」(甑)
「ソウの音」(僧)
音の変化 ソウ:曽・層・甑・僧 ゾウ:増・憎・贈 ソ:噌
かさなる
層 ソウ 尸部
解字 旧字は層で「尸(やね)+曾(かさねる)」の会意形声。上へ上へと屋根を重ねた家の意でかさなること。新字体は層に変化。
意味 (1)かさなる。かさなり。「高層建築コウソウケンチク」「層雲ソウウン」「断層ダンソウ」 (2)人々や社会の区分。「階層カイソウ」「読者層ドクシャソウ」
増 ゾウ・ます・ふえる・ふやす 土部
解字 旧字は增で「土(つち)+曾(上にかさなる)」の会意形声。土を上にかさねて増やすこと。で新字体は増に変化。
意味 ふえる(増える)。ふやす(増やす)。ます(増す)。多くなる。「増加ゾウカ」「増強ゾウキョウ」「二割増(ま)し」
憎 ゾウ・にくむ・にくい・にくらしい・にくしみ 忄部
解字 旧字は憎で「忄(こころ)+曾(かさなる)」の会意形声。相手に対するいやな感じが幾重にも重なること。で新字体は憎に変化。
意味 にくむ(憎む)。にくい(憎い)。「憎悪ゾウオ」「愛憎アイゾウ」「憎まれ口」
贈 ゾウ・ソウ・おくる 貝部
解字 旧字は贈で「貝(財貨)+曾(かさねる)」の会意形声。財貨を相手に持って行き、かさねあげること。新字体は贈に変化。
意味 おくる(贈る)。金品などを人におくる。「贈答ゾウトウ」「贈与ゾウヨ」「寄贈キゾウ・キソウ」「贈賄ゾウワイ」(賄賂を贈る)
噌 ソ 口部
解字 「口(くち)+曾(かさなる)」の会意形声。口から出る声がかさなり、かまびすしいこと。日本では、みそ(味噌)の「そ」の発音に当てる。
意味 (1)かまびすしい。 (2)[国]「味噌みそ」に使われる字。味噌とは大豆を原料として発酵させた調味料。「みそ」の語源は、奈良時代の文献に「未醤」(みしょう:まだ豆の粒が残っている醤ひしおの意味)と呼ばれた食品の発音が変化したとされる。「味噌汁みそしる」「味噌桶みそおけ」「手前味噌てまえみそ」(自分の味噌を自慢する)
こしき
甑 ソウ・こしき 瓦部
解字 「瓦(やきもの)+曾(こしき)」の会意形声。曾は、こしきを象った字で、もともと、こしきの意。かつて・かさなる等の意に使われたので、瓦をつけて本来の意味を表す。
意味 こしき(甑)。蒸し器。米などを蒸す瓦製の器。形は円く底に蒸気を通す複数の穴があり、その上に簀子(すのこ)を敷いて米などを入れ、下から水をいれた別の容器を沸騰させて蒸し上げる。現在は「蒸籠せいろう・せいろ」や金属製の蒸し器が用いられる。「甑中ソウチュウ塵チリを生ず」(甑の中に塵がたまる。甑で飯を長いあいだ蒸すことが出来ないほど貧乏なこと=甑塵ソウジン)「甑島こしきしま」(鹿児島県薩摩川内市に属する島。有人島3島と多数の小規模な無人島からなる)
ソウの音
僧 ソウ イ部
解字 旧字は僧で「イ(人)+曾(ソウ)」 の形声。ソウは梵語sam-gha(僧伽=仏門に入って修行する人々)のsamの当て字。また、「イ(人)+曾(かさねる)」で、寺での修行を経て徳が重なった人と解字することもできる。新字体は僧に変化。
意味 仏の道理をおさめる人。僧侶。「僧院ソウイン」「僧正ソウジョウ」(僧の階級のひとつ。大僧正の次の階級)「僧兵ソウヘイ」(寺院の私兵)「雛僧スウソウ」(おさない僧。小僧)
<紫色は常用漢字>
<参考音符>
会[會] カイ・エ・あう 人部
解字 甑(こしき:蒸し器=曾)にフタをした形の象形。調理をするとき、こしきにフタをあわせることから「あう」、釜からこしき・フタまで揃っていることから、あつまる意を持つ。旧字の會は、曽(こしきの原字)の旧字・曾から八をとり亼(ふた)をつけた形になっている。新字体で、會⇒会に簡略化される。
意味 (1)あう(会う)。であう。「会見カイケン」 (2)あつまる。「会議カイギ」「会合カイゴウ」 (3)心にかなう「会得エトク」 (4)とき・おり「機会キカイ」
イメージ
「あう」(会)
釜からフタまで「よせあわせる」(絵・膾・鱠・檜)
「同音代替」(獪)
音の変化 カイ:会・絵・膾・鱠・檜・獪
音符「会カイ」を参照
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
蒸し器 こしき(甑)による調理
左は簡易かまどに釜をのせ、その上にせいろ(蒸籠)を二つ重ねた蒸し器(ウィキペディアより)。右は土製のせいろの底に簀子を置いて、水をいれた甕かめの上にのせ米などを蒸す形。<高坂丘陵ねっと>より。現在は、せいろ(蒸し器)の部分を甑(こしき)というが、本来のこしきの字体は蒸し器と下の甕と含んでいる。
解字 金文は、「八(ゆげ)+田(むしき)+曰(水を入れた釜かま:古代では甕かめ)」を組み合わせた形。上に蒸し器を、下に水を入れた釜を重ねて置き、湯気のたちのぼる形で、穀物をふかす甑ソウ(こしき)の象形。甑の原字。層をなして重なる意を示す。篆文以降の字は、この字形が変形したもの。新字体は、旧字の曾⇒曽へ変化する。「かつて」「すなわち」など、かさなる意以外は仮借カシャ(当て字)の用法である。曽を音符に含む字は、「かさなる」イメージを持つ。
意味 (1)かつて(曽て)。これまで。「未曽有ミゾウ」(いまだかつてない) (2)すなわち。 (3)かさなり。血のつながりの三代前。「曽祖父ソウソフ」(ひいおじいさん)「曽孫ソウソン・ひまご」(孫のこども)
イメージ
「かさなる」(曽・層・増・憎・贈・噌)
本来の意味の「こしき」(甑)
「ソウの音」(僧)
音の変化 ソウ:曽・層・甑・僧 ゾウ:増・憎・贈 ソ:噌
かさなる
層 ソウ 尸部
解字 旧字は層で「尸(やね)+曾(かさねる)」の会意形声。上へ上へと屋根を重ねた家の意でかさなること。新字体は層に変化。
意味 (1)かさなる。かさなり。「高層建築コウソウケンチク」「層雲ソウウン」「断層ダンソウ」 (2)人々や社会の区分。「階層カイソウ」「読者層ドクシャソウ」
増 ゾウ・ます・ふえる・ふやす 土部
解字 旧字は增で「土(つち)+曾(上にかさなる)」の会意形声。土を上にかさねて増やすこと。で新字体は増に変化。
意味 ふえる(増える)。ふやす(増やす)。ます(増す)。多くなる。「増加ゾウカ」「増強ゾウキョウ」「二割増(ま)し」
憎 ゾウ・にくむ・にくい・にくらしい・にくしみ 忄部
解字 旧字は憎で「忄(こころ)+曾(かさなる)」の会意形声。相手に対するいやな感じが幾重にも重なること。で新字体は憎に変化。
意味 にくむ(憎む)。にくい(憎い)。「憎悪ゾウオ」「愛憎アイゾウ」「憎まれ口」
贈 ゾウ・ソウ・おくる 貝部
解字 旧字は贈で「貝(財貨)+曾(かさねる)」の会意形声。財貨を相手に持って行き、かさねあげること。新字体は贈に変化。
意味 おくる(贈る)。金品などを人におくる。「贈答ゾウトウ」「贈与ゾウヨ」「寄贈キゾウ・キソウ」「贈賄ゾウワイ」(賄賂を贈る)
噌 ソ 口部
解字 「口(くち)+曾(かさなる)」の会意形声。口から出る声がかさなり、かまびすしいこと。日本では、みそ(味噌)の「そ」の発音に当てる。
意味 (1)かまびすしい。 (2)[国]「味噌みそ」に使われる字。味噌とは大豆を原料として発酵させた調味料。「みそ」の語源は、奈良時代の文献に「未醤」(みしょう:まだ豆の粒が残っている醤ひしおの意味)と呼ばれた食品の発音が変化したとされる。「味噌汁みそしる」「味噌桶みそおけ」「手前味噌てまえみそ」(自分の味噌を自慢する)
こしき
甑 ソウ・こしき 瓦部
解字 「瓦(やきもの)+曾(こしき)」の会意形声。曾は、こしきを象った字で、もともと、こしきの意。かつて・かさなる等の意に使われたので、瓦をつけて本来の意味を表す。
意味 こしき(甑)。蒸し器。米などを蒸す瓦製の器。形は円く底に蒸気を通す複数の穴があり、その上に簀子(すのこ)を敷いて米などを入れ、下から水をいれた別の容器を沸騰させて蒸し上げる。現在は「蒸籠せいろう・せいろ」や金属製の蒸し器が用いられる。「甑中ソウチュウ塵チリを生ず」(甑の中に塵がたまる。甑で飯を長いあいだ蒸すことが出来ないほど貧乏なこと=甑塵ソウジン)「甑島こしきしま」(鹿児島県薩摩川内市に属する島。有人島3島と多数の小規模な無人島からなる)
ソウの音
僧 ソウ イ部
解字 旧字は僧で「イ(人)+曾(ソウ)」 の形声。ソウは梵語sam-gha(僧伽=仏門に入って修行する人々)のsamの当て字。また、「イ(人)+曾(かさねる)」で、寺での修行を経て徳が重なった人と解字することもできる。新字体は僧に変化。
意味 仏の道理をおさめる人。僧侶。「僧院ソウイン」「僧正ソウジョウ」(僧の階級のひとつ。大僧正の次の階級)「僧兵ソウヘイ」(寺院の私兵)「雛僧スウソウ」(おさない僧。小僧)
<紫色は常用漢字>
<参考音符>
会[會] カイ・エ・あう 人部
解字 甑(こしき:蒸し器=曾)にフタをした形の象形。調理をするとき、こしきにフタをあわせることから「あう」、釜からこしき・フタまで揃っていることから、あつまる意を持つ。旧字の會は、曽(こしきの原字)の旧字・曾から八をとり亼(ふた)をつけた形になっている。新字体で、會⇒会に簡略化される。
意味 (1)あう(会う)。であう。「会見カイケン」 (2)あつまる。「会議カイギ」「会合カイゴウ」 (3)心にかなう「会得エトク」 (4)とき・おり「機会キカイ」
イメージ
「あう」(会)
釜からフタまで「よせあわせる」(絵・膾・鱠・檜)
「同音代替」(獪)
音の変化 カイ:会・絵・膾・鱠・檜・獪
音符「会カイ」を参照
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