章 ショウ・あや・しるし 立部

解字 金文第一・二字は刃物の形である辛シンの先に丸い田形のふくらみが付く。このふくらみについて[字統]は、入れ墨の針である辛の針先の部分に墨だまりのある形としている。しかし金文で章は、玉(貴石)に模様のついた礼器である璋ショウの意味で使っていることから、入れ墨の針でなく、貴石に模様をきざむ刃物であると考えられる。では、この田形のふくらみは何か。私は刃物を手で持つための柄のふくらみと考えたい。印章を彫る刀は現在でも使う人によって籐などを巻いて太くしていることが多い。田形の部分は刃物を手で握って扱いやすくするための「ふくらみ」と解釈したい。写真の印章用彫刻刀は刃の根もとに革を巻いて滑り止めにしている。
印章の彫刻刀
篆文(秦)第一字は金文をほぼ引き継ぐが田の下が十になった。第二字の[説文解字]は田⇒日に変化した。しかし、隷書(漢)は上が立になったが下は相変わらず田のままで、篆文の形を保っている。これは楷書になっても同じであるが、第二字で下部が「早」になって立と分離した章が使われるようになり現在に至っている。こうした字形史をみると章の字は刃先の田が最後までキーポイントとなっている。
意味は、貴石(玉)に模様や文字を刻む刃物(すなわち章)が作りだす、「しるし」や「あや」。これらの模様があざやかで「あきらか」。刃物が刻んだ「ふみ」。ふみが集まって作る「まとまり」など広い意味となる。
覚え方 立(た)つのが、早(はや)い、章(あきら)君。
意味 (1)しるし(章)。あや(章)。模様。「印章インショウ」(はんこ)「腕章ワンショウ」「紋章モンショウ」(家・団体などのマーク) (2)文字でつづった文。「文章ブンショウ」「玉章ギョクショウ」(②美しい文。②他人からきた手紙を敬っていう)「断章ダンショウ」(文章の断片) (3)文や音楽などのひとまとまり。「楽章ガクショウ」「終章シュウショウ」「章節ショウセツ」(論文などのひと区切り。章は節より大きい区切り) (4)あきらか(=彰)。あきらかにする。「表章ヒョウショウ」「勲章クンショウ」「徽章キショウ」(衣服・帽子などにつける象徴的なしるし) (4)きまり。法律。「憲章ケンショウ」 (5)「章魚たこ」(頭足類タコ目の軟体動物) (6)名乗り。「あき」「あきら」「あや」など。
イメージ
「しるしをきざむ」(章・彰・瘴・璋)
意味(3)の、ひとまとまりの間「くぎり」(障・樟・嶂)
「その他」(鱆)
音の変化 ショウ:章・彰・瘴・璋・障・樟・嶂・鱆
しるしをきざむ
彰 ショウ・あきらか 彡部さんづくり
解字 「彡(たくさん)+章(しるす)」 の会意形声。しるされた文様がたくさんあり美しいこと。また、その美しさが、あきらかとなり、あらわれること。
意味 (1)あや。模様。飾り。 (2)あきらか(彰か)。あらわれる。世間に知らせる。「表彰ヒョウショウ」「顕彰ケンショウ」(功績などを世間にしらせ表彰する)「彰義ショウギ」(正義を彰かにする)「彰義隊ショウギタイ」(慶応4年に結成。新政府に同年5月上野で敗れた)
瘴 ショウ 疒部
解字 「疒(やまい)+章(=彰。あらわれる)」 の会意形声。南方の湿潤な地の気があらわれる病。「字統」によると、この字は後漢以後の文献にみえるという。この時期から南方との交渉がはじまり、それとともに軍の中にマラリアなどの風土病で死ぬ者が多く出たことから、「瘴疫」などの字が使われるようになった。
意味 山川の毒気。また、それによって起こるマラリアなどの熱病。「瘴気ショウキ」(熱病を起こす山川の悪気)「瘴疫ショウエキ」(瘴気によって起こる流行性の熱病)「霧瘴ムショウ」(毒気や悪気を含む霧)「瘴癘ショウレイ」(気候・風土が原因の熱病。風土病)
璋 ショウ 王部
璋を持つ神人(三星堆文化時期の器物)
解字 「王(玉。貴石)+章(しるしをきざむ)」の会意形声。刀など実用の道具類を玉で模した祭祀具。また圭ケイ(長方形で上が△の玉)を半分に区切った形もある。いずれも表面に模様が刻されている。
意味 しるしの玉。「玉璋ギョクショウ」「奉璋ホウショウ」(璋を奉ずる)「圭璋ケイショウ」(圭と璋)
くぎり
障 ショウ・さわる 阝部
解字 「阝(丘)+章(くぎり)」 の会意形声。丘が区切りとなり、さえぎられること。それにより、さしさわりがでること。
意味 (1)へだてる。さえぎる。しきり。ふせぐ。「障壁ショウヘキ」「障子ショウジ」「保障ホショウ」 (2)さわる(障る)。さしつかえる。「障害ショウガイ」「支障シショウ」
樟 ショウ・くす・くすのき 木部
解字 「木(き)+章(=障。さえぎる)」 の形声。木からでる芳香が虫をさえぎる防虫効果のある成分を出すクスノキ。
意味 くす(樟)。くすのき(樟)。楠ナンとも書く。クスノキ科の常緑高木。木には芳香があり枝葉を蒸留して樟脳をとる。「樟脳ショウノウ」(樟の枝葉を蒸留して抽出した結晶。防虫剤・医薬品などとして使う)「樟蚕くすさん」(樟などの葉を食べるヤママユ科の蛾。幼虫の絹糸腺を取り出して「テグス」を作る)
嶂 ショウ 山部
解字 「山(やま)+章(くぎり)」 の会意形声。高い山で区切られること。
意味 屏風のように連なる峰。「連嶂レンショウ」
その他
鱆 ショウ・たこ 魚部
解字 「魚(さかな)+章(ショウ)」の形声。章魚(たこ)を一字とした漢字。なお何故、「章魚」がタコの意味になるのかについては、章ショウ(呉音・漢音)の発音が「蛸たこ」の発音である、ショウ(呉音)・ソウ(漢音)と呉音が同一であるからと思われる。
意味 たこ(鱆)。「章魚ショウギョ・たこ」「蛸ショウ」「鮹ショウ・ソウ」とも書く。
<紫色は常用漢字>
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※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

解字 金文第一・二字は刃物の形である辛シンの先に丸い田形のふくらみが付く。このふくらみについて[字統]は、入れ墨の針である辛の針先の部分に墨だまりのある形としている。しかし金文で章は、玉(貴石)に模様のついた礼器である璋ショウの意味で使っていることから、入れ墨の針でなく、貴石に模様をきざむ刃物であると考えられる。では、この田形のふくらみは何か。私は刃物を手で持つための柄のふくらみと考えたい。印章を彫る刀は現在でも使う人によって籐などを巻いて太くしていることが多い。田形の部分は刃物を手で握って扱いやすくするための「ふくらみ」と解釈したい。写真の印章用彫刻刀は刃の根もとに革を巻いて滑り止めにしている。

篆文(秦)第一字は金文をほぼ引き継ぐが田の下が十になった。第二字の[説文解字]は田⇒日に変化した。しかし、隷書(漢)は上が立になったが下は相変わらず田のままで、篆文の形を保っている。これは楷書になっても同じであるが、第二字で下部が「早」になって立と分離した章が使われるようになり現在に至っている。こうした字形史をみると章の字は刃先の田が最後までキーポイントとなっている。
意味は、貴石(玉)に模様や文字を刻む刃物(すなわち章)が作りだす、「しるし」や「あや」。これらの模様があざやかで「あきらか」。刃物が刻んだ「ふみ」。ふみが集まって作る「まとまり」など広い意味となる。
覚え方 立(た)つのが、早(はや)い、章(あきら)君。
意味 (1)しるし(章)。あや(章)。模様。「印章インショウ」(はんこ)「腕章ワンショウ」「紋章モンショウ」(家・団体などのマーク) (2)文字でつづった文。「文章ブンショウ」「玉章ギョクショウ」(②美しい文。②他人からきた手紙を敬っていう)「断章ダンショウ」(文章の断片) (3)文や音楽などのひとまとまり。「楽章ガクショウ」「終章シュウショウ」「章節ショウセツ」(論文などのひと区切り。章は節より大きい区切り) (4)あきらか(=彰)。あきらかにする。「表章ヒョウショウ」「勲章クンショウ」「徽章キショウ」(衣服・帽子などにつける象徴的なしるし) (4)きまり。法律。「憲章ケンショウ」 (5)「章魚たこ」(頭足類タコ目の軟体動物) (6)名乗り。「あき」「あきら」「あや」など。
イメージ
「しるしをきざむ」(章・彰・瘴・璋)
意味(3)の、ひとまとまりの間「くぎり」(障・樟・嶂)
「その他」(鱆)
音の変化 ショウ:章・彰・瘴・璋・障・樟・嶂・鱆
しるしをきざむ
彰 ショウ・あきらか 彡部さんづくり
解字 「彡(たくさん)+章(しるす)」 の会意形声。しるされた文様がたくさんあり美しいこと。また、その美しさが、あきらかとなり、あらわれること。
意味 (1)あや。模様。飾り。 (2)あきらか(彰か)。あらわれる。世間に知らせる。「表彰ヒョウショウ」「顕彰ケンショウ」(功績などを世間にしらせ表彰する)「彰義ショウギ」(正義を彰かにする)「彰義隊ショウギタイ」(慶応4年に結成。新政府に同年5月上野で敗れた)
瘴 ショウ 疒部
解字 「疒(やまい)+章(=彰。あらわれる)」 の会意形声。南方の湿潤な地の気があらわれる病。「字統」によると、この字は後漢以後の文献にみえるという。この時期から南方との交渉がはじまり、それとともに軍の中にマラリアなどの風土病で死ぬ者が多く出たことから、「瘴疫」などの字が使われるようになった。
意味 山川の毒気。また、それによって起こるマラリアなどの熱病。「瘴気ショウキ」(熱病を起こす山川の悪気)「瘴疫ショウエキ」(瘴気によって起こる流行性の熱病)「霧瘴ムショウ」(毒気や悪気を含む霧)「瘴癘ショウレイ」(気候・風土が原因の熱病。風土病)
璋 ショウ 王部

解字 「王(玉。貴石)+章(しるしをきざむ)」の会意形声。刀など実用の道具類を玉で模した祭祀具。また圭ケイ(長方形で上が△の玉)を半分に区切った形もある。いずれも表面に模様が刻されている。
意味 しるしの玉。「玉璋ギョクショウ」「奉璋ホウショウ」(璋を奉ずる)「圭璋ケイショウ」(圭と璋)
くぎり
障 ショウ・さわる 阝部
解字 「阝(丘)+章(くぎり)」 の会意形声。丘が区切りとなり、さえぎられること。それにより、さしさわりがでること。
意味 (1)へだてる。さえぎる。しきり。ふせぐ。「障壁ショウヘキ」「障子ショウジ」「保障ホショウ」 (2)さわる(障る)。さしつかえる。「障害ショウガイ」「支障シショウ」
樟 ショウ・くす・くすのき 木部
解字 「木(き)+章(=障。さえぎる)」 の形声。木からでる芳香が虫をさえぎる防虫効果のある成分を出すクスノキ。
意味 くす(樟)。くすのき(樟)。楠ナンとも書く。クスノキ科の常緑高木。木には芳香があり枝葉を蒸留して樟脳をとる。「樟脳ショウノウ」(樟の枝葉を蒸留して抽出した結晶。防虫剤・医薬品などとして使う)「樟蚕くすさん」(樟などの葉を食べるヤママユ科の蛾。幼虫の絹糸腺を取り出して「テグス」を作る)
嶂 ショウ 山部
解字 「山(やま)+章(くぎり)」 の会意形声。高い山で区切られること。
意味 屏風のように連なる峰。「連嶂レンショウ」
その他
鱆 ショウ・たこ 魚部
解字 「魚(さかな)+章(ショウ)」の形声。章魚(たこ)を一字とした漢字。なお何故、「章魚」がタコの意味になるのかについては、章ショウ(呉音・漢音)の発音が「蛸たこ」の発音である、ショウ(呉音)・ソウ(漢音)と呉音が同一であるからと思われる。
意味 たこ(鱆)。「章魚ショウギョ・たこ」「蛸ショウ」「鮹ショウ・ソウ」とも書く。
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