漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「別ベツ」 <骨の関節を切り分ける> と 「拐カイ」

2016年09月12日 | 漢字の音符
 ベツ・わかれる   刂部                 

解字 甲骨文は、骨が連結した形に刀をそえたかたち。篆文は、「冎(骨が連結した形)+刀(かたな)」の会意。連結した骨の関節部分を刀で切りわけること。わける・はなれる意となる。現代字は別に変化した。
意味 (1)わかれる(別れる)。はなれる。「別居ベッキョ」「離別リベツ」 (2)わける(別ける)。わかつ。「区別クベツ」「識別シキベツ」 (3)異なる。よそ。ほか。「別人ベツジン」「別格ベッカク

イメージ  「わける」 (別・捌)
音の変化  ベツ:別  ハチ:捌

わける
 ハチ・ハツ・ベツ・さばく・さばける・はける  扌部
解字 「扌(手)+別(わける)」の会意形声。手で物を別々にわける動作をいう。日本では、「さばく・さばける・はける」という訓読みで、いろんな意味に使われる。
意味 (1)わける。ひらく。(2)[国]さばく(捌く)。 ①手にとって巧みに扱う。「手捌き」 ②商品を売りこなす。「売り捌く」 ③魚や鳥などを切り開く。「魚を捌く」 [国]さばける(捌 ける)。 ①売れてなくなる。 ②世慣れしている。「捌 けた人」 [国]はける(捌 ける)。とどこおらず流れる。品物が良く売れる。「捌 け口」( ①水の出口。 ②商品の売れ口) (3)[中国](発音がハチであることから)八の大字。領収書や契約書で、八の代わりに用いる。

<関連音符>
 カ  冂部
解字 手ないし足の骨が連結した形をしており、手足の骨や関節を表す。音符「冎を参照。


            カイ <かどわかす>  
 カイ・かどわかす・かたる  扌部
解字 「扌(手)+叧(連結する)」  の形声。隋・唐以後にできた字で古い字形はない。叧は、別の左辺と似ていることから冎の俗字と考らえる。冎は骨が連結したかたちであり、つながる意。これに扌(手)がついた拐カイは、手でつらね持つ形。手で物を持ち逃げしたり、手を引いて子供や女を無理やり連れ去ること。連れ去るときにウソを言うので、だます意ともなる。
意味 かどわかす(拐す)。かたる(拐る)。だましとる。「誘拐ユウカイ」「拐帯カイタイ」(預り物の持ち逃げ)「拐騙カイヘン」(かたる。だましとる)
覚え方  手()をひいて、くち()と、かたな()でおどして誘
<紫色は常用漢字>

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音符「頃ケイ」<頭をかたむける>と「傾ケイ」「穎エイ」

2016年09月10日 | 漢字の音符
 ケイ・ころ・しばらく  頁部 qǐng  


  上が頃、下が頁
解字 篆文は「右をむいた人+頁(ひざまずく人)」の会意。頁ケツは、ひざまずいた人の頭部を強調した字[頁を参照]で、通常は頭を意味するが、ここではひざまずく人を表す。頃ケイは、右向きの向かい合った人にひざまずく形で、相手に頭をかたむけてひざまずくこと。現代字は、右向きの人⇒ヒに変化した頃になった。頭をしばらく傾けることから、転じて、しばらく、ころあいの意となった。頃を音符に含む字は、「かたむける」イメージをもつ。
意味 (1)しばらく(頃く)。「頃刻ケイコク」(しばらくの時間) (2)ころ(頃)。ころあい。このごろ。時刻・時期を漠然とさしていう。「頃日ケイジツ」(このごろ)「近頃ちかごろ」「此の頃このごろ

イメージ 
 「かたむける」
(頃・傾・穎)
音の変化  ケイ:頃・傾  エイ:穎

かたむける
 ケイ・かたむく・かたむける  イ部 qīng  
解字 「イ(人)+頃(かたむける)」の会意形声。頃ケイは、もともと頭をかたむける意だが、「しばらく・ころあい」の意となったので、人をつけて元の意を表わした。
意味 (1)かたむく(傾く)。かたむける(傾ける)。「傾斜ケイシャ」 (2)心を寄せる「傾聴ケイチョウ」「傾倒ケイトウ」(傾いて倒れる。ある物事に夢中になる) (3)あやうくする。「傾国ケイコク」(国を傾け滅ぼす美女)
[頴] エイ  禾部 yǐng 
解字 「禾(いね)+頃(かたむける)」の会意形声。稲などが穂をかたむけること。実って穂がたれるさまをいい、①穂先、②穂先がするどい、③実って垂れる意から人に例えて、すぐれる・かしこい意となる。なお頴エイは、禾⇒示になった俗字。
意味 (1)ほさき。ほ(穂)。 (2)するどい。ふでさき。「穎毛エイモウ」(筆の穂先) (3)すぐれる。ぬきんでる。才能がある人。「穎才エイサイ」(すぐれた才能の人)「穎哲エイテツ」(すぐれてかしこいこと。また、その人)「穎脱エイダツ」(才能が群を抜いてすぐれる)「穎慧エイスイ」(すぐれてさとい)
<紫色は常用漢字>

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音符「向コウ」 <壁の通気口>  と 「餉ショウ」

2016年09月04日 | 漢字の音符
 コウ・キョウ・ショウ・むく・むける・むかう・むこう  口部

解字 「宀(いえ)+口(あな)」の会意。家屋の壁にあけた通気口(窓)を示す。室内の空気が通気口のある方向に流れて行くこと。
意味 (1)むく(向く)。むかう(向う)「向学心コウガクシン」 (2)むき(向き)。方角。「方向ホウコウ」「向日性コウジツセイ」(太陽に向かう性質)「向日葵ひまわり」 (3)おもむき。「意向イコウ」「傾向ケイコウ」 (4)[国]むく(向く)。~にちょうどよい。 (5)[国]むこう(向う)。あちらがわ。

イメージ 
 「むく・むかう」(向・餉)
音の変化  コウ:向  ショウ:餉

むく・むかう
 ショウ・かれい・かれいい  食部
解字 「食へんの旧字(たべもの)+向(むける)」の会意形声。田で働く人や兵役につく人向けの食べ物。干した飯など軍隊でつかう食料、また弁当など広く携帯用食料をいう。のち、食事の意味にもなる。
意味 (1)かれい(餉)。かれいい(餉)。干した飯。兵糧。弁当。「餉笥かれいけ」(餉を入れて携帯する器。曲げ物の弁当箱)「軍餉グンショウ」(兵卒の食糧) (2)おくる。食料をおくる。「餉給ショウキュウ」(兵糧を送り届ける)「餉運ショウウン」(食料輸送) (3)[国]食事。「朝餉あさげ」「午餉ゴショウ・ひるげ」「夕餉ゆうげ
<紫色は常用漢字>

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